著者
波田野 結花 吉田 弘道 岡田 謙介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.151-161, 2015 (Released:2015-08-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 5

これまでの心理学データ分析では, 概して統計的仮説検定の結果は報告されるが, 効果量の報告や議論は軽視されがちであった。しかし近年の統計改革の中で, 効果量を活用することの重要性が再認識されている。そこで本研究では, 過去4年間に 『教育心理学研究』誌に掲載された論文中で報告された仮説検定について, 論文中の情報から対応する効果量の値を算出し, 検定におけるp値と効果量との間の関係を網羅的に調べた。分析対象は, 独立な2群のt検定, 対応のある2群のt検定, 1要因および2要因の被験者間分散分析におけるF検定であった。分析の結果, いずれの場合においても報告されたp値と効果量の相関係数は-0.6~-0.4であり, 両者の間には大まかな対応関係が見られた。一方で, 検定結果が有意であるにもかかわらず小さな効果量しか得られていない研究も決して少なくないことが確認された。こうした研究は概ね標本サイズが大きいため, 仮説検定の枠組みの中では検定力分析の必要性が考えられる。また仮説検定の枠組みに留まらず, メタ分析によって関心下の変数ごとに効果量の知見を蓄積することや, ベイズ統計学に基づく新たな方法論などが今後の方向性として考えられる。
著者
熊田 真宙 吉田 弘司 橋本 優花里 澤田 梢 丸石 正治 宮谷 真人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.56-62, 2011 (Released:2011-08-29)
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

Elderly people have lower ability for recognizing facial emotions than younger people. Previous studies showed that older adults had difficulty in recognizing anger, sadness and fear, but there were no consistent results for happiness, surprise and disgust. Most of these studies used a small number of stimuli, and tabulated the number of correct responses for facial expressions. These characteristics of the task might be the source of the discrepancy in the findings. The present study used a task which measures participants' discrimination thresholds for six basic emotions using psychophysical measurement methods. The results showed that the thresholds for elderly participants (74.8±6.5 yrs) were significantly higher than for younger participants (20.1±1.6 yrs) for sadness, surprise, anger, disgust and fear. There was no significant difference for happiness. Since the task that we developed was sufficiently sensitive, it is a useful tool for assessing individuals' ability to perceive emotion.
著者
李 宗子 八幡 眞理子 三根 真 山本 将司 小松 香子 吉田 葉子 吉田 弘之 荒川 創一
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.164-171, 2014 (Released:2014-08-05)
参考文献数
17
被引用文献数
1

ここ数年,アルコール手指消毒剤が効きにくいとされるエンベロープを持たないウイルスに対する効果が改善された製剤が開発・販売され,臨床現場に導入する施設もみられるが,その有用性についていくつかの報告があるのみである.そこで当院において,このような製剤が臨床現場での継続使用に耐え得るか,手肌への影響面から調査,検討することにした.   冬季に,看護師40名に対し,リン酸配合によりpHが酸性に調整された試験製剤であるアルコール手指消毒剤(P–AL)使用群と,従来から使用しているほぼ中性のアルコール手指消毒剤(従来品)使用群の2群に分け,約1ヶ月間使用し,使用前後に客観的および主観的評価をした.客観的方法として,経表皮水分蒸散量,角層水分量,皮膚pH,角層細胞剥離率,皮溝の均一性を各々の対応機器で計測・評価し,主観的方法として皮膚状態に関するアンケート調査を行なった.   その結果,客観的評価では,P–AL使用前後の比較において角層水分量に有意な改善が認められ,その他の項目と主観的評価では使用前後で有意差はなく肌荒れの兆候もなかった.   本研究により,P–ALは,手荒れが発生しやすい冬季でも医療従事者の手肌に対する影響は問題なく,エンベロープを持たないウイルスに対する常時の感染対策として継続使用できる可能性があると示唆された.
著者
石橋 正二郎 田中 聖隆 前田 洋作 吉田 弘
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会関東支部総会講演会講演論文集 2021.26 (ISSN:24242691)
巻号頁・発行日
pp.17C09, 2020-03-13 (Released:2021-03-02)

There are lots of knowledge gaps concerning the sea ice of the Arctic Ocean, such as sea ice thickness, sea ice dynamics and sea ice – ocean interactions. Therefore JAMSTEC is now developing a special platform that will be able to move under ice and measure various kinds of data continuously and automatically. It is an intelligence underwater drone for the Arctic Ocean named as COMAI-Drone (COMAI-Drone:Challenge of Observation and Measurement under Arctic Ice - Drone). Now its proto-type have been already designed and initiated to build. Additionally, some aid systems, which can detect its position, can detect the relative direction to a support ship and can communicate between the drone and the support ship, are now developing. At the same time, watertank-tests and field-tests have been conducted gradually. In near future, COMAI-Drone will collect invaluable data under the sea ice in the Arctic Ocean. In this paper, its outline including its mechanism, functions and operation system are described.
著者
吉田 弘樹 山平 優
出版者
一般社団法人 レーザー学会
雑誌
レーザー研究 (ISSN:03870200)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.343-347, 2004-05-15 (Released:2008-11-15)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3 3

Target injector is an essential device to be established for a laser-fusion reactor. This paper describes current status of the injector research and introduces our research results of a coil gun. The drive circuits and trigger timing of the coil gun were optimized to improve injected projectile speed. The maximum speed at the first stage achieved to 8.7 m/s after optimization. The laser shot demonstration was carried out by the coil gun with an optically triggered Nd:YAG laser. The design guideline for a coil gun is discussed with experimental results and numerical simulation.
著者
山本 駿一 家里 憲二 長谷川 茂 塚原 常道 近藤 洋一郎 吉田 弘道 寺野 隆
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.597-602, 2000-10-25 (Released:2010-07-05)
参考文献数
17

A 38-year-old woman was admitted to our hospital on for evaluation of thirst, bilateral backache and a feeling of abdominal fullness. She had hypokalemia, normotension, hyperreninemia, hyperaldostronism and hyperplasia of the juxtaglomerular apparatus on renal iopsy. Ultrasonography, intravenous pyelography and computed tomography showed marked bilateral renal calcification. Considering her history of persistent soft stool caused by chronic laxative abuse for 15 to 16 years and past diuretic abuse for several years since 1986, we diagnosed her as pseudo-Bartter's syndrome with nephrocarcinosis. The value of urinary Ca excretion was in the normal range, and acidification disturbance in NH4C1 loading test was revealed. In addition, she had taken analgesics for 2 to 3 years and interstitial nephritis on renal biopsy was seen. It is thus suggested that the cause of nephrocarcinosis in this case was the reduction of Ca solubility in the tubular cavity induced by incomplete renal tubular acidosis associated with analgesic nephropathy or interstitial nephritis caused by hypokalemia.
著者
波田野 結花 吉田 弘道 岡田 謙介
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.151-161, 2015
被引用文献数
5

これまでの心理学データ分析では, 概して統計的仮説検定の結果は報告されるが, 効果量の報告や議論は軽視されがちであった。しかし近年の統計改革の中で, 効果量を活用することの重要性が再認識されている。そこで本研究では, 過去4年間に 『教育心理学研究』誌に掲載された論文中で報告された仮説検定について, 論文中の情報から対応する効果量の値を算出し, 検定における<i>p</i>値と効果量との間の関係を網羅的に調べた。分析対象は, 独立な2群の<i>t</i>検定, 対応のある2群の<i>t</i>検定, 1要因および2要因の被験者間分散分析における<i>F</i>検定であった。分析の結果, いずれの場合においても報告された<i>p</i>値と効果量の相関係数は-0.6~-0.4であり, 両者の間には大まかな対応関係が見られた。一方で, 検定結果が有意であるにもかかわらず小さな効果量しか得られていない研究も決して少なくないことが確認された。こうした研究は概ね標本サイズが大きいため, 仮説検定の枠組みの中では検定力分析の必要性が考えられる。また仮説検定の枠組みに留まらず, メタ分析によって関心下の変数ごとに効果量の知見を蓄積することや, ベイズ統計学に基づく新たな方法論などが今後の方向性として考えられる。
著者
吉田 弘輝 藤井 章博
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2012-EIP-57, no.19, pp.1-6, 2012-09-06

従来, CAD 図面の運用機能は限られたニーズに対応するプロプライエタリ-なアプリケーションソフトウエアによって提供される場合がほとんどである. Web 技術の進展により多様な Web サービスが,共通の運用基盤,すなわち Web ブラウザと HTTP プロトコルによって提供できるようになっている.特に,最近 Web ブラウザに導入が進んだ HTML5 の canvas 機能により SVG 形式の画像情報をタブレットや PC 上に柔軟に利活用することが可能になった.本研究では,機械部品の CAD 図面等を基に作成した SVG データをリソースとして蓄積し, RESTful なアクセス機能を実装したデータベースシステムを構築した.また,こうしたリソースを利用して多様な電子商取引のニーズに対応するためのマッシュアップ機能を備えたミドルウエアの開発を行っている.機械部品流通などの分野における EDI に対するニーズは多岐にわたる.本稿では,開発中のシステムを利用して機械のメンテナンスのために部品の在庫管理を行うシステムの実装を述べ,特に SVG の利活用に関する課題を検討する.
著者
澤 隆雄 青木 太郎 大澤 弘敬 井上 朝哉 田原 順一郎 伊藤 和彰 吉田 弘 石橋 正二郎 渡辺 佳孝
出版者
特定非営利活動法人 海洋音響学会
雑誌
海洋音響学会誌 (ISSN:09165835)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.26-32, 2009 (Released:2009-08-18)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology is developing an automatic bottom inspection and sampling mobile (ABISMO), which is a full-depth rating ROV (Remotely Operated Vehicle) for reaching to the deepest sea bottom, observing it with a camera and sampling the bottom layer. ABISMO consists of a launcher and a vehicle. The launcher is a kind of depressor with many observation devices, and the vehicle is an underwater crawler to move on the sea bottom and inspect it. The mother ship can determine the vehicle's position directly with the ultra-deepwater transponder. The transponder is small and lightweight, with a release system, and it operates at about a 14-kHz frequency. The frequency is higher than that of a conventional full-depth transponder, and it features greater navigation accuracy in shallow water, where many ROV do most of their work. These advantages are emphasized when the transponder is loaded onto an ultra-deepwater vehicle, which needs to be small and lightweight.
著者
吉田 弘
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.262-270, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

水中無線技術の歴史は古く,音波による測深技術や潜水艦の長波通信は,1900 年代前半に既に利用されていた.世界においては現在も積極的に石油・ガス産業や防衛・軍事産業で水中無線技術が多用されているが,我が国では,海洋産業の衰退もあり,市場の縮小とともに技術者も減ってきている.しかしながら,我が国は世界で6 番目の広さの海洋面積(領海+排他的経済水域)を有する国であり,そこには多くの資源があり,また,国家としても海洋立国をうたっている.国内の海洋市場が縮小しているならば,市場を創るという行動をするべきだ.また,普段,空気を媒質として研究を進めている多くの研究者にとって,液体導電性媒質の海水は非常に面白い研究ターゲットである.市場形成を迎える前に,基礎研究を進め,いつでも応用が利くようにしておくべきだ.本稿では水中無線技術の総論として,研究内容だけでなく,心構えや市場性,将来性について紹介する.
著者
巻 俊宏 吉田 弘
出版者
低温科学第76巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.259-267, 2018-03-31

自律型無人探査機(AUV)は母船とケーブルで繋がれておらず,全自動で活動できることから,氷の下のようなこれまで調査の難しかった場所の観測を実現できると期待されている.本稿ではAUVの概要および一般的な構成について紹介するとともに,氷の下に展開する際の課題,これまでの研究開発事例,そして我々が今後開発を目指すAUV の設計方針について紹介する.
著者
相川 啓子 吉田 弘喜 三国 主税
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.458-464, 1984

急性白血病のFAB分類と臨床所見及び染色体変化について検討した. 急性白血病120例の内, acute myeloid leukemiaは108例, acute lymphoblastic leukemiaは12例であつた. acute myeloid leukemiaではM1 25例, M2 53例, M3 17例, M4 7例, M5 6例でM6はなかつた. 男女比は1.4:1で, M3は若年者に多く, M4, M5は中, 高年者に多かつた. M2では骨髄白血病細胞比率の低い例が多く, 白血性髄膜炎はM1で36%の高率にみられ, 皮膚浸潤はM5に, 歯肉浸潤はM4, M5に高率にみられた. 染色体異常は71例中43例, 60.6%に認め, ph<sup>1</sup>染色体はM1で7例, M2で1例, t(8, 21)は11例で全例M2であり, その内4例に性染色体欠失を伴つていた. t(15, 17)は11例で全例M3であつた. 50%生存期間はM1 9カ月, M2 6カ月, M3 1カ月, M4 6.3カ年, M5 2カ月であるが, M2ではM1に比しCRに達するとCR期間が延長する傾向にあつた. acute lymphoblastic leukemia12例中, L1 5例, L2 7例, L3はなかつた. 表面形質による差はなく, 肝, 脾, リンパ節腫共L1に高率にみられ, 生存期間に両者で差はなかつた.