著者
大井田 寛 上遠野 冨士夫 清水 喜一
出版者
千葉県農業総合研究センター
雑誌
千葉県農業総合研究センター研究報告 (ISSN:13472585)
巻号頁・発行日
no.7, pp.53-61, 2008-03
被引用文献数
1

広食性の捕食者であるオオメカメムシ及びヒメオオメカメムシは園芸作物害虫の天敵として生産現場での活用が期待されるが、産卵特性が不明であり、大量増殖に不可欠な飼育法も開発されていない。そこで、野外及び室内で両種の産卵特性等を調査するとともに、これらの知見に基づいた累代飼育法を開発した。1.オオメカメムシの生息地において、クズ、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、カナムグラ及びヤブガラシを対象に産卵の有無及び産卵部位を調査したところ、クズとセイタカアワダチソウの葉裏への産卵が確認できた。産卵数は葉面に毛茸が密生するクズで多かった。2.オオタバコガの冷凍卵のみを餌として26℃、15L:9Dでオオメカメムシ及びヒメオオメカメムシの幼虫を飼育したところ、羽化までの所要日数はオオメカメムシのほうがヒメオオメカメムシよりも約6.5日長かった。幼虫期を通じたオオメカメムシのオオタバコガ卵捕食数は雌雄それぞれヒメオオメカメムシの約2.9倍及び約2.4倍であったが、生存率はオオメカメムシのほうが低く、特に1齢幼虫期に死亡する個体が多かった。3.室内で脱脂綿、キッチンペーパー及びコピー用紙を対象とした産卵場所選択実験を行ったところ、オオメカメムシ、ヒメオオメカメムシともに大部分の卵を脱脂綿に産んだ。キッチンペーパーにも若干の産卵が認められたが、コピー用紙には両種とも産卵しなかった。4.以上の知見を踏まえ、スジコナマダラメイガの冷凍卵及び水を餌とし、脱脂綿を産卵基質とすることによるオオメカメムシ及びヒメオオメカメムシの累代飼育法を開発した。
著者
清水 敦彦
出版者
足利短期大学
雑誌
足利短期大学研究紀要 (ISSN:03893278)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.a1-a12, 2007-03-01

「作家と自殺 太宰治について」と題してその考察を試みたのは、かなり以前のことで、前任の短期大学勤務中で、家政科の「教育心理学」や食物栄養科の「精神保健」(当時「精神衛生」という名称であった)などを担当しつつ、群馬大学の医学部精神神経科の医局に所属し、精神科臨床に取り組んでいた頃である。特に統合失調症(当時は精神分裂症と呼でいた)の青年期の患者に焦点をあてていたが、当時勤務する大学の学生に躁うつ病の患者がおり、その学生が「自殺したい」と訴えてきたことにより、自殺という言葉にも興味を持ち、さまざまな文献にあたった。そうした中にあって、岩手大学教授で教育心理学を担当しつつ、石川啄木の研究をしていた大沢博著『啄木の病跡』を読み、また、福島章著『天才の精神分析』に触れ、病跡学(pathographie)という言葉を発見した。その後、日本病跡学会のあることを知った。そして足利短期大学へ赴任してから『栃木いのちの電話』のあることを知り、自殺に関する関心も高まり、「作家と自殺」や「文学と自殺」に興味を持ち続けてきた。この論文では、二十五歳の若さで自殺した「薄幸の歌人江口きち」のただ一冊の著書『武尊乃麓(ほたかのふもと)』に基づいて、その作品と生涯についての考察を試みたのである。
著者
阿久津 哲也 清水 得夫 上原 伸夫
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.693-698, 2009-08-05
参考文献数
18
被引用文献数
2

<i>in situ</i>抽出剤生成法とミクロ溶媒抽出法を組み合わせた水試料中のクロム(III)とクロム(VI)の分別法を開発した.試料水25 mLに,モル比を1 : 2とした二硫化炭素とピロリジンを3 v/v% 含むキシレンの混合溶媒を500 μL加え,ミクロ溶媒抽出して50倍濃縮を行った.有機相を分取し,黒鉛炉原子吸光測定した.pH 3.0においてクロム(VI)は,系内で生成したピロリジンジチオカルバミン酸と錯形成し,選択的に抽出される.pHを6.0として35℃ の水浴で30分間加温することで,酸化することなくクロム(III)をクロム(VI)と共に抽出できる.50倍濃縮における検量線は直線性を示し,クロム(VI)及び全クロム[クロム(III)]の検出限界(3σ)はそれぞれ0.75 ng/L,0.64 ng/Lであった.本法をミネラルウォーターと河川水試料に適用した.また,添加回収試験を行ったところ,本法は水試料中のクロム(III)とクロム(VI)の分別に有用であることが分かった.
著者
清水 嘉子
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.26-34, 2006-01

父親の育児ストレスを,育児信念との関連で検討することを目的に,乳幼児期の子育てをしている父親を対象に半構成式自由記述によるアンケート調査を実施し,93名(24〜51歳,平均年齢37±5.2歳)より有効回答を得た.その結果,父親の育児ストレスは「子どもの自己本位な特性」(75件),「育児への自信のなさ」(30件)など9要因に分類され,育児信念6項目すべてを肯定する信念傾向をもつ父親は不安を感じる傾向にあり,育児に対して「こうあるべき」と考えるほど不安傾向が高まることが示唆された
著者
清水 大地 岡田 猛
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

本研究ではブレイクダンスにおける特定の踊り(技)の習得過程に注目し,エキスパートダンサーを対象とした長期のフィールドワーク,インタビューによる縦断的検討を行った.インタビュー回答や映像の分析より,複数のスランプを経て踊りの質を向上させたこと,スランプでは身体の使い方を試行錯誤し新しい使い方を発見したこと,その踊りにおける身体動作を利用して新しい踊りを随時創作したことが示された.
著者
小塚 良允 田村 博昭 清水 保 長谷川 美知子 田中 熟 日高 敏男 鳥浜 慶熈 杉山 陽一 石井 奏
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.684-686, 1975

近年における抗生物質の開発進歩には目覚しいものがあり, 各種感染症に対してあるいは汚染手術の術後感染予防に対して著明な効果を期待できるまでに至つている。しかし, その投与方法に関しては, 未だに慣用的な要素が多く, 今後の研究の余地が残されている。抗生物質の本来の効果を期待するには, 薬剤の濃度と起炎菌の感受性との関係を解明した上での正しい投与法をおこなう必要がある。<BR>産婦人科領域における術後感染症として最も重要なのは, 子宮頸癌-広汎子宮全摘除術における骨盤死腔炎である。私どもは, この種の手術にさいして, 子宮全摘除後の骨盤死腔内に, Sodium cophalothin (商品名, ケプリン, 以下CETと略す) の粉末29を散布し, 術後骨盤死腔炎の予防効果を挙げている。今回, CET2g骨盤死腔内投与後の血中濃度を測定し, 術後の抗生物質の投与方法について検討する機会を得たのでその成績を報告する。
著者
近藤 司 清水 つばき
出版者
函館工業高等専門学校
雑誌
函館工業高等専門学校紀要 (ISSN:02865491)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.7-12, 2015

A lot of structures, such as a bridge, a tunnel, an expressway and a steel tower, which give the damage to the society by the destruction exist in this country. The safety inspection of the bolt used for those joining part is the work on which a lot of time is spent and is high-cost. The sensor which could easily visualize a destruction risk was developed by this study. The sensor consists of the first material, the second material and spring. The second material is installed for the first material in parallel, and one end is fixed. The second material has a fragile characteristic than the first material, under the elastic deformation or plastic deformation. When a joining part is deformed by external force, the first material also is deformed. Then, the second material breaks and jumps out by the spring force to outside. Therefore the destruction risk of the junction can be visualized. The destruction detection system was developed by converting an electrical signal by a switch with the signal that the second material protruded. The break of the second materials was able to be confirmed as electrical signal by a simple experiment.
著者
筒井 幸 神林 崇 田中 恵子 朴 秀賢 伊東 若子 徳永 純 森 朱音 菱川 泰夫 清水 徹男 西野 精治
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-50, 2012-01-15 (Released:2015-08-26)
参考文献数
42

近年,統合失調症の初発を想定させる精神症状やジスキネジア,けいれん発作,自律神経症状や中枢性の呼吸抑制,意識障害などの多彩な症状を呈する抗NMDA(N-メチルD-アスパラギン酸)受容体抗体に関連した脳炎(以下,抗NMDA受容体脳炎と略する)の存在が広く認められるようになってきている。若年女性に多く,卵巣奇形腫を伴う頻度が比較的高いとされている。われわれは合計10例の抗NMDA受容体抗体陽性例を経験し,これを3群に分類した。3例は比較的典型的な抗NMDA受容体脳炎の経過をたどり,免疫治療が奏効した。他の7例のうち3例は,オレキシン欠損型のナルコレプシーに難治性の精神症状を合併しており,抗精神病薬を使用されていた。また,残り4例に関しては,身体症状はほとんど目立たず,ほぼ精神症状のみを呈しており,病像が非定型であったり薬剤抵抗性と判断されm-ECTが施行され,これが奏効した。
著者
清水信夫 編
出版者
清水信夫
巻号頁・発行日
1883
著者
竹越 智 赤松 陽 山田 誠一 杉山 明 清水 正明 木元 好一 佐瀬 和義 石橋 晃睦 久津間 文隆 桂 雄三 石垣 忍 本間 岳史 上野 一夫 滝田 良基 久家 直之 川畑 昭光 関根 勇蔵 藤井 克治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.13, pp.299-311, 1976-12-30
被引用文献数
3

The geology of the south-western region of the Tanzawa massif has remained unresearched except the horizons higher than the Pliocene series. After the writers' previous study on the geology of the crystalline schist region on the Tanzawa massif, the above mentioned area was surveyed. In this area the following formations are distributed; that is the Miocene series (so-called Misaka series) which consists largely of volcanic and pyroclastic rocks, the Pliocene series (the Ashigara group) of conglomerate and sandstone, the Pleistocene series (the Yufune formation or the Suruga gravel bed) of fluvial deposit, and the Alluvium of thick volcanic ash and river bed deposit. The Miocene series is divided, in ascending order, into the Kurokura formation, the Yozuku formation, the Hirayama formation and the Shirakurazawa member. The former three formations correspond to the westward extensions of those in the crystalline schist region, and they are superposed one upon the other conforrnably. They strike from NE to SW and dip northward, but are overturned. The Shirakurazawa member is distributed only in the surveyed area. Though it is contiguous to the Yozuku and the Hirayama formations with faults, it may be, judging from its lithofacies, the uppermost horizon of the Miocene series in this area. It strikes E-W and shows a synclinal structure as a whole. It is overturned near the northern marginal fault. The Kurokura formation and the lower part of the Yozuku formation are changed into crystalline schists with bedding schistosity. The fault, which separates the Miocene series from the Pliocene series, has been considered to be one continuous reverse fault and was named the Kannawa fault. But it may be a complex of two or three systems of fault judging from the phenomena observed at several very points and also from the geometry as a whole.