著者
ハーランド 泰代 植野 拓 渡辺 恵都子 青木 尚子 豊田 文俊 高畠 由隆 舟越 光彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.DbPI2348, 2011

【目的】心疾患を有する患者は、長期間運動を継続し、運動耐容能を維持・向上することが望ましく、運動を継続することが生命予後に関係するとされている。しかし、社会背景や身体的問題などの影響から、中には継続困難となり中断してしまう患者も経験する。そこで今回、外来通院による心臓リハビリテーション(以下、心リハ)の参加者を対象に、継続および非継続に関わる因子を調査および検討したため報告する。<BR>【方法】対象は、当院にて2008年1月から2009年11月の間に、外来通院型心リハプログラムに参加した心疾患患者63名(男性52名、女性11名、平均年齢69.9±10.4)である。疾患内訳は狭心症29名、心筋梗塞5名、慢性心不全12名、閉塞性動脈硬化症11名、開胸術後4名、大血管疾患2名である。公的医療保険給付の心リハ期限である150日以上の継続可能であった群を継続群、150日未満であった群を非継続群に分けて比較検討を行った。グループの内訳は、継続群30名(男性22名、女性8名)および非継続群33名(男性30名、女性3名)であり、検討内容は年齢、性別、疾患名、家庭環境(同居、独居)、冠危険因子数、費用負担、通院手段、通院距離、参加期間、NYHAの重症度分類の各値を診療録情報より調査し、後方視的に比較検討した。統計処理方法はX2検定、t検定を用いて統計学的検討を行い、危険率5%未満を有意差ありとした。さらに費用負担の有無に区分し、カプランマイヤー曲線により心リハ継続群の比較、およびコックス比例ハザードモデルにより費用負担有無による非継続群のハザード比を求めた。<BR>【説明と同意】対象者には研究の趣旨を説明し、同意を得た。<BR>【結果】今回の結果、継続群は30名(47.6%)であった。NYHAの分類のclassIIおよびclassIIIの継続群は有意に相関が高く、非継続群は低い結果となった(P<0.05)。性別では相関は認められなかったが、男性に比べて女性の継続率が高い傾向があった(P=0.1)。家族形態(同居ありおよび独居)の結果では、継続群と非継続群において有意な相関は認められなかった(P=0.7)。通院距離(遠方または近隣)においても有意な相関は見られなかったが、非継続群に比べて継続群は高い傾向にあり、近隣に比べて遠方の方が継続しやすい傾向であった(P=0.2)。また費用負担ありについても両群で相関は認められなかったが、継続群に対して非継続群は高い傾向があり、費用負担があると心リハ実施の継続率が低下しやすい傾向があった(P=0.1)。さらに、費用負担ありと非継続の年齢等を調整したハザード比では、1.67(95%CI 1.01-2.52)と有意に高く、自己負担があると継続が難しいという結果となった。<BR>【考察】重症度が低く、リスクファクターが少ない参加者が非継続の傾向が示唆された。おそらく重症度が低ければ自覚症状が少なく、意欲も低下するため継続困難であったのではないかと考えた。そのため、介入時から心リハの必要性や効果について十分な説明を行い、疾患を自己管理できるように教育などの介入を十分に行っていく必要がある。また重症度が高いと継続率は高い傾向があるが、急性増悪などを起こす可能性も高いため、増悪予防やセルフコントロールの徹底が必要である。社会的な面では、独居の方が継続率が高いと予想していたが、結果的に家族形態には違いは見られなかった。また通院距離では、近隣の対象者に比べて、遠方の対象者の方が継続しやすい結果となった。これは交通機関を利用して来院される方が多く、近隣の徒歩や自転車での通院に比べて、時間的スケジュールが確立されている事や運動負荷が少ない事などが上げられる。また加えて、医療費の自己負担がある対象者の方が、非継続の傾向が強い結果であった。このことにより、自己負担の有無が心リハの継続に影響を与える因子の一つになることが分かった。このような結果を踏まえて、心リハ開始時の情報収集では十分な社会的な特性を考慮し、必要な援助を行う必要があると考える。また心リハの通院期間や終了時期を明確に設定し、その後負担の少ない民間のスポーツジムや市町村の運動教室などへ繋げて、運動を継続するなどの配慮が必要である。また今後さらに症例を増やし、詳細な分析を行う必要がある。<BR>【理学療法学研究としての意義】患者の社会的な背景や重症度の違いにより、心リハ継続に影響を及ぼす一要因になることが示唆された。情報収集の際に社会的な背景に問題がある方に対しては、民間の施設への斡旋や連携を強化し、運動を継続していく必要がある。<BR>
著者
渡辺 恵三 中村 太士 加村 邦茂 山田 浩之 渡邊 康玄 土屋 進
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.133-146, 2001-12-27 (Released:2009-05-22)
参考文献数
55
被引用文献数
24 21

本研究では河川構造の空間スケールの階層性および関連性に着目し,河川改修が底生魚類の分布よび生息環境におよぼす影響を明らかにすることを目的とした.調査は,1998年9月から1999年9月までの1年間,石狩川水系真駒内川において施設整備の異なる約2km区間を河道区間スケール(護岸区間,自然区間,流路工区間)として設定し,各区間を通過する物質量を測定した.さらに各河道区間内において瀬と淵を流路単位スケールとして設定し,各流路単位における底生魚類と生息環境の関係の解析をおこなった.ハナカジカの生息密度は,自然区間,護岸区間に比べて流路工区間で著しく低かった.しかし,フクドジョウの生息密度は河道区間による差はみられなかった。パナカジカの生息密度が低かった流路工区間では自然区間,護岸区間と比較して河床の特性に違いが認められ,特に小粒径砂礫が多く,浮き石が少なかった.また,ハナカジカの生息密度は,巨礫と浮き石の割合に強い正の相関が認められた.このことから,流路工区間で生息密度が低かったのは,生息環境や産卵環境および避難場所として利用可能な巨礫や浮き石の減少によるものと考えられた.流路工区間の瀬において巨礫や浮き石の割合が自然区間および護岸区間に比べて低かったのは,河道区間スケールの影響として増水時における掃流力の低下にともなう小粒径砂礫の堆積および河床が動きづらくなったことすなわち攪乱が起こりにくくなったことが考えられた.さらに,流路単位スケールにおいては,平水時における微細粒子の被覆・堆積によるものと考えられた.このように,河道区間スケールおよび流路単位スケールの階層性のある各空間スケールに関連した要因によって,ハナカジカの主な生息場所である瀬の河床材料およびその状態が改変した結果,流路工区間においてハナカジカの生息密度は低かったと考えられる。
著者
渡辺 恵子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
Progress in informatics (ISSN:13498614)
巻号頁・発行日
no.2, pp.77-86, 2005-11

本稿では、各大学や学習者のe ラーニングへのニーズに焦点を当てた考察を行う。本稿では、e ラーニングについて次のような類型化を行う。類型I:通信制でe ラーニングを主体として単位又は学位取得が可能。類型II:通学制で一部の授業についてはe ラーニングを主体として単位の取得が可能。類型III:通学制の授業において補助的にe ラーニングを活用。その上で、まず、メディア教育開発センターが公表している利用実態調査に基づいて、類型IIIについては大学側のニーズが比較的高いことを明らかにする。次に、事例分析に基づき、類型I、IIは社会人や外国人学生、専門的な内容を学ぶ学生などのニーズに応えている形態であること、また、全ての類型が教育内容、方法の質の向上に役立つという点で学生のニーズに応えるものであることを明らかにする。多くの大学にニーズがあり、学生のニーズにも応えることになる類型IIIが今後最も進むe ラーニングの形態であることが予測でき、類型I、IIの普及については、潜在的な学習者の発掘がどの程度できるかが鍵であると結論付けられる。
著者
安藤 寿康 渡辺 恵子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.171-198, 1984

序 : 遺伝と教育第1節. 知能は遺伝的影響を受けている第2節. 遺伝的すなわち固定的か第3節. 「相互作用」の混乱 (1) 種レベルと個人レベルの混同 (2) 遺伝率に関する誤解 (3) 相関(correlation)と交互作用(interaction)の混同第4節. 遺伝要因の発達的意味第5節. 一次元尺度を越えておわりにThe present paper tried to review the recent trend of the studies on the nature/nurture problem. (1) Several researches in the last decade have revealed that the genetic factor has a strong influence on the individual differences of IQ, even if the shortcomings of the traditional twin and adoption studies are revised. (2) Intelligence in the sense of Piagetian scheme, however, changes developmentally, and its developmental prosess is influenced successively by gene throughout one's life. (3) The belief that to be genetic implies to be stable should be discarded, if we distinguish between the perspective of individual differences and the persprective of species. In addition, confusion and misunderstanding in the usage of the terms "interaction" and "heritability" must be avoided. (4) Several aspects of correlation underlying the interaction pattern at the phenotypic level were reconsidered. (5) As an attempt to overcome the shortcomings of past studies which treated the character in terms of one dimension, an experimental study using multidimensional scaling was proposed.
著者
渡辺 恵司
出版者
花園大学
雑誌
花園大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:09192042)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.41-53, 2013-03

精神障害者の精神科病院における社会的入院患者は、7 万人以上いると言われており、社会的入院者の解消は、早急に行われなければならない精神保健福祉の課題の1 つに挙げられている。京都府・京都市では、平成17 年度から精神科病院における社会的入院者の退院を促進するための事業を実施しており、平成22 年3 月末で50 名の方に地域移行推進員が関わりを持ち、29 名の方が退院に至っている。本研究は、平成17 〜 21 年度の地域移行支援事業(以下、事業)を利用し退院された方を対象とし、生活状況等の調査のほか、事業利用者の自由な意見も聴き、それらをまとめて考察を行った。特に事業利用者の意見として、退院して良かったことや、苦労していること、これからやってみたいことなど、入院生活では感じられない「ふつうの生活」の中で、「あたりまえの生活」を望んでいることが浮かび上がってきた。一人一人の生活における悩みや希望は様々であるが、退院し生活の中に「自由さ」という環境が生まれ、その自由さから生活の質の向上が得られていることがわかった。
著者
小林 勉 西村 伸也 棒田 恵 渡辺 恵 樋口 雅希
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.634, pp.2557-2564, 2008-12-30

"Machiya" houses in the "segai-style", which is characterized by its use of cantilevers as the ceiling beams to hold the roof, can be seen all over Niigata Prefecture. "Machiya" houses in the Shinano and Agano river basins and on the Japan Sea coast were examined and house systems and their use of interior space investigated. "Segai-style" houses were consequently divided into four groups according to defferences in details: houses on Sado Island; houses downstream on the Shinano and Agano rivers; houses midstream on the Shinano river; houses upstream on the Shinano river and on the Japan Sea coast.