著者
瀬川 槙哉 齊藤 明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1356, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:以下DVT)の予防は術後管理や長期臥床時に重要であり,その原因静脈はヒラメ静脈,後脛骨静脈,腓骨静脈とされている。解剖学的には後脛骨静脈や腓骨静脈はヒラメ筋と後脛骨筋,足趾屈筋群に囲まれて存在しており,筋ポンプ作用の影響を受けやすいものと推察される。そのためDVTの予防のために行う足関節底背屈運動の際に,上記の血管に対して背側に位置する下腿三頭筋だけではなく,腹側に位置する足趾屈筋群,後脛骨筋を働かせ,両方向から筋収縮を加えることによって,より効果的な筋ポンプ作用が得られると考えるが,そのような報告はない。そこで本研究の目的は,足関節底背屈運動と足関節底屈時に足関節内反ならびに足趾屈曲を加えた底背屈運動における大腿静脈血流速度の測定を行い,DVTに効果的な運動を明らかにすることである。【方法】対象はA大学に在籍する健常男子学生33名を対象とした。測定には超音波診断装置(HI VISION Avius)を使用し,背臥位,股・膝関節伸展位で右大腿静脈血流速度をパルスドプラ法にて測定した。運動条件は①足関節底背屈(以下,単独運動群),②底屈時に足趾屈曲を行う足関節底背屈(以下,足趾複合運動群),③底屈時に足関節内反を行う足関節底背屈(以下,内反複合運動群)とした。手順は背臥位にて5分間の安静を保持し,安静時の血流速度を測定した。その後,各条件で測定をランダムに行い,測定間には3分間の休息を設けた。足関節底背屈の運動速度は50回/minとした。解析は運動開始後の20~40秒の間で波形が安定した状態を視覚的に確認し,最大血流速度(単位:cm/s)を計測した。また,運動中及び直後には脈拍を計測した。データ処理は運動時の血流速度を安静時の血流速度で除して,安静時に対する各運動条件での最大血流速度比を算出した。統計学的解析は各条件での最大血流速度比を比較するためFriedman検定を用いた。その後,有意差の認められたものに対しBonferroniの多重比較検定を行った。また各条件とも運動後と安静時の心拍数の差を求め,一元配置分散分析を用いて比較した。統計処理には,PASW Statistics18(IBM社製)を用い,危険率5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には事前に研究目的および測定方法を十分に説明し書面で同意を得た。【結果】各条件での最大血流速度比の中央値(四分位範囲)は,単独運動群で2.64(1.94-3.71),足趾複合運動群では3.36(2.58-5.49),内反複合運動群では3.93(3.04-5.2)で足趾複合運動群及び内反複合運動群が単独運動群より有意に最大血流速度が速かった(それぞれp<0.01)。安静時に対する各運動時の心拍数の差は,単独運動群3.03±0.96回/min,足趾複合運動群2.97±1.12回/min,内反複合運動群4±1.27回/minであり,各条件間では有意な差は見られなかった。【考察】単独運動群と複合運動群の血流速度に差が認められた理由の一つとして,下腿における筋と静脈の位置関係が考えられる。単独運動群では底屈時に主にヒラメ筋静脈での静脈環流が促される。これと比して複合運動群では底屈によるヒラメ筋静脈の圧迫に加え,足趾屈曲では後脛骨静脈,足関節内反では後脛骨静脈と腓骨静脈に対しての圧迫が更に加わると考えられる。よって,下腿深部静脈を背側・腹側の両方向から圧迫できる複合運動群では,単独運動群に比べ,より速い血流速度が得られたのではないかと考える。また内反複合運動においては非荷重位の影響が大きいと考えられる。下腿三頭筋は非荷重位においては十分な筋収縮が得られないが,一方で後脛骨筋は非荷重位での筋活動が高いとの報告がある。本研究においても非荷重位で測定を行ったため,後脛骨筋の活動が高まり内反複合運動がより速い血流速度を得ることが出来たのではないかと考える。このことは特に内反複合運動が術後やベッド上での安静を要する時期のDVT予防に有用であると考える。血流速度と心拍数の関係について,心拍数の上昇は,動脈血流量が増大を引き起こし,結果として静脈還流促進に伴う血流速度上昇が生じる可能性がある。本研究においては各運動群での心拍数の変化に有意差は認められず,各運動条件間の血流比較において心拍数の上昇が与える影響は少なかったものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】以上のことから底背屈単独運動に比べて複合運動では,より大きな静脈還流促進効果が期待でき,臨床において効果的なDVT予防方法となりうることが示唆された。一般に臨床場面では足関節の底背屈運動によってDVT予防を図ることが多いが,今回の研究の結果より底背屈単独運動だけではなく,足趾屈曲や足関節内反の複合運動で行うことで,より高いDVTの予防効果が期待される。
著者
徳本 静代 武井 直己 瀬川 和幸
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.193-199, 1982-03-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
12

1979~1980年のインフルエンザは複数の型のウイルスによる流行であったが広島県でもA (HIN1) 型とA (H3N2) 型の両ウイルスが分離された.発症者 (41名) ペア血清と非発症者 (234名) 血清を供試して, HI反応によりA (HIN1) 型の流行とA (H3N2) 型の流行の疫学的検討をするとともに, ゲルク揖マトグラフィ (SephacrylS-300Super負ne) により分画された (各分画についてmicro ouchterlony法でウサギ抗ヒト血清を用い, IgM, IgG, IgAおよびα2マクログロブリンの同定を行いインヒビターの含まれるα, マクログロブリンを除去した) 発症者ペア血清のIgMおよびIgG (lgAを含む) 分画におけるこれら両型のウイルス抗原に対するHI抗体価の変化を明らかにすることで流行に関与した両ウイルスの動態を具体的に把握しようとした.発症者ペア血清のHI抗体価の有意な上昇からA (HlN1) 型とA (H3N2) 型の流行を確認したが, IgG (lgAを含む) 分画におけるHI抗体応答が著しく上昇してこれを裏付けた.感染ウィルスが確認された発症者集団の回復期血清のHI抗体価のG, M. (A/USSR/92177 (HlN1);1: 547, A/山梨12/77 (H3N2);1: 427) とHI抗体価の逆r字型分布パターンを感染の指標とした場合, 非発症者血清においてもA (HlN1) についてはその感染指標に近いものが認められたが, A (H3N2) 型についてはそれが認められず, A (HIN1) 型が流行の主流であったものと推察された.IgM抗体のもつ臨床的意義から感染ウイルスの抗原刺激の時期を把握しようとしたが, IgM分画で認められたHI抗体応答からは直接的には明らかにされなかった.したがってA (HIN1) 型とA (H3N2) 型の同時流行については明らかにすることができなかった。
著者
瀬川義雄編
出版者
瀬川義雄
巻号頁・発行日
1988
著者
金森 達之 岩田 祐子 瀬川 尋貴 山室 匡史 桑山 健次 辻川 健治 井上 博之
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.123-133, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
13

The isomers of fluoro-butyrylfentanyl, fluoro-isobutyrylfentanyl, and fluoro-methoxyacetylfentanyl, in which the position of fluorine on the N-phenyl ring varies, were synthesized, characterized, and differentiated by infrared (IR) spectroscopy, liquid chromatography/mass spectrometry (LC/MS), and gas chromatography/mass spectrometry (GC/MS). The isomers could be clearly differentiated by their IR spectra. In the LC/MS chromatograms, the separation of the fluoro-butyrylfentanyl and fluoro-isobutyrylfentanyl isomers was insufficient. However, in the GC/MS extracted ion chromatograms, all compounds were completely separated. The LC/MS and GC/MS mass spectra of the isomers were similar, demonstrating that it is difficult to distinguish the positional isomers of fluorinated fentanyl analogs by their mass spectra.
著者
金森 達之 岩田 祐子 辻川 健治 桑山 健次 山室 匡史 瀬川 尋貴 井上 博之
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.139-147, 2016 (Released:2016-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

Simultaneous analytical methods for 18 compounds of fentanyl and its analogues by thin-layer chromatography (TLC), gas chromatography/mass spectrometry (GC/MS) and liquid chromatography/mass spectrometry (LC/MS) were developed. In TLC, fentanyl analogues were well separated by using toluene-acetone-28% aq. ammonia (20:10:0.3, by vol.) as a developing solvent. In GC/MS, fentanyl analogues, except for fentanyl and acetyl-α-methylfentanyl, could be separated on the extracted ion chromatograms (EIC) of the characteristic fragment ions of each compound. In LC/MS, fentanyl analogues could be separated on the EICs of the protonated molecule of each compound. All of the fentanyl analogues tested were identified correctly by using the combination of TLC, GC/MS and LC/MS.
著者
佐藤 賢一 下瀬川 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.7-16, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
29
被引用文献数
3 3

膵癌はK-ras遺伝子の変異にp16やp53などの癌抑制遺伝子の欠失や変異が加わり,前癌病変のPanINを経て多段階的に発生する.膵癌の浸潤・転移機構には癌と間質の相互作用や上皮-間葉形質転換(EMT)といった現象が重要な役割を演じている.また,他の癌で示されているように,膵癌においてもEMTが誘導されている細胞が癌幹細胞の性質を獲得し,悪性形質をさらに増している可能性がある.
著者
瀬川 行太
出版者
北海道大学大学院法学研究科
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.154-123, 2018-11-30

1 0 0 0 OA 時雨の袖 8巻

著者
東籬園瀬川路考 作
巻号頁・発行日
vol.下篇上, 1825
著者
瀬川 智一 松川 晃 佐多 和子 稲本 元
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.325-330, 1983-10-31 (Released:2010-03-16)
参考文献数
26

細胞培養法を用い, 医療用プラスチックの水溶性および脂溶性抽出物質の細胞に及ぼす影響を検討した.ethylene-vinylacetate copolymerならびに可塑剤無添加および添加のpolyvinyl chlorideのエタノールあるいは血清抽出液は, 蒸留水あるいは生理食塩水抽出液と異なり, いずれもマウス由来L-929細胞の増殖を濃度依存性に抑制し, 形態学的な変化も惹起した. 一方, polyethyleneの抽出液はいずれも培養細胞に影響を及ぼさなかった.現在の溶出物に関する安全性試験では主に蒸留水および生理食塩水を抽出溶媒としているが, 直接血液と接触する器材に対しては水溶性のみならず脂溶性物質の溶出にも十分注意を払うべきであろう.
著者
瀬川 裕司
出版者
明治大学教養論集刊行会
雑誌
明治大学教養論集 (ISSN:03896005)
巻号頁・発行日
no.444, pp.19-31, 2009-03

ダニエル・ケールマン『僕とカミンスキー』(Daniel Kehlmann:lch undKaminski.Suhrkamp Verlag,Frankfurt am Main)は、2003年にドイツで出版されるとただちに新聞雑誌で好意的に紹介され、ベストセラー・リスト上位に躍り出た。ドイツでもっとも有名な文芸評論家、毒舌で知られるマルセル・ライヒ=ラニッキがZDFの「Lesen!」で「私はケールマンを絶対的に推薦する。素晴らしい知性、観察の才能、それに何という台詞の多彩さだろうか!」と賞賛し、マルティン・クールボルトが「フランクフルター・ルントシャウ」で「近年のドイツ小説で、これほど笑える作品は絶えて久しかった」と評したのをはじめ、圧倒的な賛辞に包まれた同作品は、これまでにドイツ国内で18万部の売り上げを記録しているだけでなく、26ヶ国語に翻訳され、若き才能としてのダニエル・ケールマンの名を世界に知らしめた記念碑的作品である。
著者
瀬川如皐三世
出版者
巻号頁・発行日
1868
著者
佐竹 洋之 福田 浩二 近藤 正輝 中野 誠 瀬川 将人 伊藤 健太 下川 宏明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SUPPL.1, pp.S1_147-S1_152, 2015 (Released:2016-12-14)
参考文献数
5

症例は30歳代男性, 市民ハーフマラソン大会に出場し, スタートから15km付近を走行中に心肺停止状態となった. 同マラソン大会に救命救急のプロジェクトとして参加していた医師・看護師により, 速やかにCPRが施行され, AED (VFドキュメント) にて心拍再開を得た. その後, 当院へ救急搬送・低体温療法にて神経学的後遺症を残さず回復した. 心エコーおよび画像検査からは器質的心疾患の存在は否定的であり, 後日施行した冠動脈造影では器質的狭窄は認めず, 冠攣縮誘発試験でSpasm陽性, 電気生理検査ではVFは誘発されず, サンリズム負荷試験も陰性であった. VFの発生に冠攣縮の関与も疑われたが, 過去, またCPA時に胸痛がないため, 特発性心室細動と診断し, ICD植込みを施行, Ca拮抗薬の内服も開始し退院となった. 若年者のスポーツ中の突然死は, 肥大型心筋症などの器質的心疾患に多いとされているが, 今回, 器質的心疾患を認めない若年者に発生した特発性心室細動を経験したので報告する.