著者
石川 秀平 横嶋 哲 久末 信幸 早瀬川 拓馬
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_439-I_449, 2020 (Released:2021-02-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1

レベルセット法と VOF 法は共に気液混相流の数値解析によく利用される.しかし両者を客観的に比較した例はほとんど存在しない.本研究ではレベルセット法系統の ACLS 法と VOF 法系統の CICSAM 法を同一問題に適用し,両者の特徴理解を試みた.検証の結果,同一条件下では ACLS 法が高い精度を示した.CICSAM 法はCFL 数の制約が厳しいものの,低 CFL 数条件下では ACLS 法に匹敵する結果を得た.VOF 法は界面法線や曲率の算出精度に難があり,表面張力が重要な問題では曲率評価の精緻化が必要となる.ACLS 法は 2 種類の界面識別関数の保持,および VOF 法では不要な再初期化が必要であり,CICSAM 法よりも実装の難易度と計算負荷は高い.界面捕獲法の選択においては,これらの要素を総合的に判断することが必要となる.
著者
下瀬川 陽
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.71-81, 2015-07-16 (Released:2018-03-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年,日本における大学・短大中退者は増加し,中退への関心は高まっている.一方で,中退者の社会経済的地位達成に着目した研究はあまりなされていない.本稿の目的は,大学・短大を中退したことがその後のライフコースへ与える影響について,計量的アプローチを用いて明らかにすることである.「正規雇用に就くことができるか」「獲得可能な賃金」の2点を達成の指標に分析を行ったところ,大学・短大中退者は中長期的にも正社員就業しづらいこと,同じ正社員経験のない者であっても卒業者に比べ賃金が低くなることが明らかになった.正社員になることのできない大学・短大中退者は,大学・短大卒業者に比べて賃金の面では不利であり,より条件の良い仕事は卒業者に取られてしまうのである.
著者
辰巳 佐和子 桑原 頌治 瀬川 博子 宮本 賢一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.135-140, 2021 (Released:2021-04-06)
参考文献数
30

血中リン濃度は,主に腸管吸収,骨代謝(骨形成・吸収),腎臓における排泄と再吸収,肝臓,筋肉などの軟組織への組織移行により維持される。血中リン濃度は日内リズムを形成し,その形成機序は早朝空腹時のリン濃度を規定する重要な要因と考えられている。慢性腎臓病(CKD)では非常に早期よりリン代謝異常が生じている。CKDや維持透析患者の死亡リスクは,早朝空腹時の血中リン濃度と正の相関を示すことが知られている。最近,Nampt(nicotinamide phosphoribosyl transferase)/NAD(nicotinamide adenine dinucleotide)系が,ナトリウム依存性リン輸送体であるNaPi-IIa(Npt2a),NaPi-IIc(Npt2c),NaPi-IIb(Npt2b)の発現量を調節することで,血中リン濃度の日内リズム形成に関わることが明らかにされた。実際に,Namptヘテロ欠損マウスでは,血中リン濃度の日内リズムは消失する。また肝臓特異的Nampt欠損マウスでは,異常な日内リズム形成を示すことから,Nampt/NAD系がリンの組織移行にも関与する可能性が示唆されている。血中リン濃度の日内リズム形成のさらなる理解は,CKDや維持透析患者のリン管理において重要である。
著者
山室 匡史 岡田 侑己 瀬川 尋貴 桑山 健次 辻川 健治 金森 達之 岩田 祐子
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
pp.837, (Released:2022-06-16)
参考文献数
10

In Japan, forensic examination of cannabis seeds requires proof of “being cannabis” and “being germinable”, and is currently conducted by continuing cultivation of the seeds for several weeks after germination tests and performing morphological observations and chemical analysis on the true leaves. We have previously constructed a rapid and simple method for identification of cannabis seeds by combining the color reaction with DNA testing. In this study, the effectiveness of the cannabis seed identification methods by combining the color reaction, germination test, and DNA testing that does not involve a cultivation process was verified on seized cannabis seeds. As previously reported, the combination of the color reaction using 2,3,5-Triphenyl-2H-tetrazolium Chloride and DNA testing using a commercial kit proved that the seized materials were germinable cannabis seeds within one day. Furthermore, the germination test, in which the young roots and cotyledons were visually checked one week after sowing, was able to more directly confirm germination ability. In addition, DNA testing was possible for the young roots after germination, indicating that they were cannabis. This study shows that the methods of cannabis seed identification, which does not involve a cultivation process, are effective even for seized materials whose storage conditions are unknown.
著者
山室 匡史 宮本 重彦 立入 直紀 石井 歩 松田 駿太朗 岩田 祐子 瀬川 尋貴 桑山 健次 辻川 健治 金森 達之 井上 博之
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.29-48, 2021 (Released:2021-01-31)
参考文献数
31
被引用文献数
3 1

The forensic identification of cannabis is performed by a combination of chemical analysis and morphological examination. Recently, molecular biological analysis using cannabis DNA information has been noticed as a new approach. In this study, the cannabis DNA detection kit using a DNA chromatography chip was developed, and the demonstration evaluation in the forensic chemical laboratory was carried out. The DNA detection kit of a “four-line version” which had the function to distinguish fiber-type from drug-type cannabis showed as high accuracy (98.3%) as the current identification method on cannabis identification. However, there was a tendency to mistake a part of the drug-type samples as “fiber-type cannabis”. In the kit of a “three-line version” which was specialized for the cannabis DNA detection, the accuracy of 99.0% was confirmed on the cannabis identification. There were no false positives throughout all evaluations. In addition, some of the combustion residues that could not be identified as cannabis by the current identification method were classified to be “cannabis positive” by the DNA detection kit, indicating the effectiveness of a new approach. As a result of this study, it was shown that the quick and accurate cannabis DNA analysis could be carried out by the DNA detection kit even by analytical chemists who didn't have expertise in molecular biology.
著者
瀬川 典久 村山 優子 権藤広海 山根 信二 宮崎 正俊
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.815-824, 2002-03-15

WWW(World Wide Web)上で動作するコミュニケーションシステムの1つである電子掲示板システムは様々なシステムに搭載され幅広い人たちに利用されている.これらのシステムの多くは,文字情報の交換を基本としている.そのため,情報の受け手と送り手とであらかじめ使用する文字コードについて合意する必要があり,さらに,図などを用いることができない.本研究では,文字コードによらないエンターテイメントコミュニケーションのための手書き伝言板システム「戸口伝言板」をWWW上に実装した.戸口伝言板とは,学生寮などで個人の部屋の扉に設置した伝言板のことである.実装したプロトタイプシステムでは,ユーザがマウスなどを用いて手書きでメッセージを作成する.このようなシステムでは自由で活発なコミュニケーションのために匿名性が必要となる.従来の電子掲示板のメッセージは,利用者自身が明らかにしない場合,匿名性が保証される.戸口伝言板では,利用者が手書きのメッセージを伝言板に残すため,筆跡から書き手を特定される恐れがある.本論文では,戸口伝言板のような手書きのメディアにおけるメッセージの匿名化について報告する.筆跡から書き手を特定できないようにするためには,書き手の筆跡の癖をその筆跡から取り除くことが必要であるが,同時に筆跡を取り除いた後のメッセージは読める形でなければならない.本論文では,筆跡における匿名化アルゴリズムを提案し,実装した.ユーザによる利用実験により匿名化アルゴリズムの評価を行い,その有効性を確認した.
著者
樋口 恵太 永井 清仁 服部 文弘 前山 薫 瀬川 進 本城 凡夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.608-618, 2016 (Released:2016-08-25)
参考文献数
56
被引用文献数
2 2

真珠収穫後のアコヤガイ貝肉を主原料とし,海事作業から発生する貝掃除屑を加えてコンポスト化試験を行った。その結果,アコヤガイ貝肉は約 45 日の処理でコンポスト化が可能である事が分かった。また,貝掃除屑はコンポスト材料の通気性向上や,コンポストの肥料成分を増加させる効果が認められた。完熟したコンポストは,塩分を含むが,コマツナに対して肥料効果を示した。以上より,真珠養殖過程で廃棄される貝肉および貝掃除屑は,農業資材として有効活用できる事が示され,真珠養殖による環境負荷の低減につながると期待された。
著者
瀬川 智哉
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.59-63, 2013-01-01

2011年9月3日,高知県東部に上陸した台風12号が紀伊半島において驚異的な雨量をもたらし,熊野川が上流にあるダムの放流の影響もありこれ迄にない水位を記録し,紀州工場から直線で約6km上流にある工業用水取水設備及び工場内KP,ボイラー周りの電気室及び機器が浸水した。これにより工場が16日間に渡って操業が不能となった。<BR>紀州工場における浸水被害は,工場内及び工業用水取水場共に電気設備の被害が大きく,また,工業用水取水口においては熊野川上流の崩落,土砂崩れによる岩及び土砂の流入でほぼ閉塞状態となり,浚渫による復旧に時間を要した。<BR>しかし,全社を挙げての支援体制を被害直後に整え,応援部隊派遣を直ぐに決定するという迅速な対応をとり,また,メーカー他の支援協力があり早期の操業再開を実現した。<BR>更に,今回と同規模の水害発生による工場操業への影響を最小限に抑える対策も復旧直後より検討し,第一期対策の実施を決定した。<BR>本稿では,今回の浸水被害の状況及びその復興作業,そして浸水対策の取り組みについて報告する。
著者
蜂須 貢 村居 真琴 田中 正明 瀬川 克己 武重 千冬
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.543-550, 1979-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

1.D-フェニルアラニンのペプチダーゼ阻害作用を生物学的に検定した.モルモット空腸の収縮はエンケファリンで抑制されるが, この抑制はペプチダーゼを含む脳の抽出液が存在する時は消失するが, D-フェニルアラニンを添加すると消失しないで, 脳の抽出液を熱処理して酵素活性を失わせた時と同じになる.2.ラットの脳室内に投与したエンケファリンによる鎮痛はD-フェニルアラニンの腹腔内投与によって著しく増強される.3.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛覚の閾値として, 針麻酔の刺激を加えると, 5%の危険率で有意の差のある鎮痛が現われるラットと現われないラットがあり, それぞれ針鎮痛有効群, 無効群とに区分できる.4.D-フェニルアラニンを投与すると, 針鎮痛無効動物の針鎮痛は著しく増強され, 有効群にD-フェニルアラニンを投与した時のわづかに増強された針鎮痛とほぼ等しくなり, 針鎮痛の有効性の個体差は消失する.5.針鎮痛有効群ラットは中脳中心灰白質刺激による鎮痛も有効で, 針鎮痛の有効性の個体差と中脳中心灰白質刺激による鎮痛の有効性の個体差はよく並行する.D-フェニルアラニンを投与すると, 針刺激ならびに中脳中心灰白質刺激無効群ラットの, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛は増強し, D-フェニルアラニン投与後わづかに増強された針刺激有効群ラットの中脳中心灰白質刺激による鎮痛とほぼ等しくなり, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛の有効性の個体差は消失する.6.モルヒネ鎮痛の有効性の個体差も針鎮痛の有効性の個体差と並行するが, D-フェニルアラニン投与後はモルヒネ鎮痛は増強され, 鎮痛の程度は両群ともほぼ等しくなり, モルヒネ鎮痛の有効性の個体差は消失する.7.針鎮痛, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛, モルヒネ鎮痛何れにも鎮痛性ペプタイドの内因性モルヒネ様物質が関与し, これら鎮痛の有効性の個体差はぺプチダーゼの活性の個体差に依存していると考察した.
著者
瀬川 滋
出版者
日経BP
雑誌
日経コンストラクション = Nikkei construction (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.729, pp.64-69, 2020-02-10

第2回 2020年7月24日に開会式を迎える東京五輪まであと半年。東京都心では世界の人々を出迎える新しいインフラの整備が最終盤を迎えている。これまで何度も都市改造を繰り返してきた街は、五輪を機に再び変貌を遂げようとしている。
著者
瀬川 拓未 木下 裕介 梅田 靖 瀧居 真梨子 今村 剛 櫻井 秀夫
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.21-22, 2021

<p>サーキュラー・エコノミーは企業にとって重要な問題として認識されるようになってきている.これにはライフサイクル設計が必要となる.本研究では,複写機の部品の一つであるトナーボトルを例題として実データを収集し,Life Cycle Simulatorを用いて循環性評価を行った.循環性向上の鍵となる設計変数を特定し,追加シナリオにおいて改善策の検討を行った.</p>
著者
荒川 房江 秋山 ますみ 豊田 梓 高橋 恵美 阿瀬川 満枝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.172, 2005

〔はじめに〕<BR>当院では、整形外科で牽引手術台を使用する際バスタオルで前腕を巻き、離被架につり下げる方法で長時間上肢の固定を行っていたが、いくつかの問題点が生じていた。そのため問題点を改善する目的で手台を作成したが、痛みを訴える患者があった。その痛みの原因を腕の太さと手台のサイズの不一致と考え、数種類のプロトタイプを作成し有効性を検証した。<BR>〔研究方法〕<BR>1.対象:手術室看護師6名<BR>2.手台の作成:3種類(S/M/L)のソフラットシーネを約40cmのところで屈曲させ肘関節部に約10cm四方の穴を開け、周囲を綿包帯で覆い、離被架につり下げるようにした。<BR>3.手台の実施:対象者の肘関節部の太さを測定し、3種類の手台で1時間体位を保持し、10分毎に痛みのレベルを4段階で評価した。<BR>〔結果および考察〕<BR>Sサイズの場合は腕の太さにかかわらず全員が時間の経過とともにレベル1-3の痛みを訴えている。その原因として最も多かったのは圧迫による痛みでありそのことにより体位の維持が出来なかった。よって肘関節の周囲が22.0cm以上の人には不適切と考えられる。Mサイズの手台では、腕の太さが22.0cm-23.0cmの人はほとんど痛みがなく、体位固定に安定性が見られた。一方27.5cmの2名には圧迫によりレベル2の痛みの出現が見られたことから、22.0cm-23.0cmの人にはMサイズの手台が適切であったと考えられる。Lサイズの手台では22.0cm-23.0cmの人には手台が大きすぎることで腕の引き抜きやずれが起こり、レベル2-3の強い痛みが出現し、固定の安定性もなく術者の視野確保の意味でも不適切であったと考えられる。27.5cmの2名には痛みの出現がなく体位を保持できたことから手台が適切であったと考えられる。腕の太さと手台のサイズの関連性を考慮したことにより、個々のニーズに応じてより安全安楽を考えた体位固定の工夫が出来たと考えられる。<BR>〔終わりに〕<BR>今回の研究では、対象人数が少なく腕の太さにバラつきがなかったため、Sサイズが適切とされる腕の太さやM・Lサイズの境界線といった細かい基準を明らかにすることが出来なかった。今後さらに研究を進めることでスタッフ間での統一を図り、いかに効果的な固定方法でも長時間の同一体位は、患者にとって精神的なストレスになることも考慮し、より安全で安楽な体位固定が出来るよう検討していきたいと思う。