著者
飯岡 智子 瀬川 真砂子 古川 宇一〔他〕
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51-56, 1996-03-15

旭川市愛育センターみどり学園では,TEACCHプログラムを導入して4年目となった。飯岡は自閉症児T君とコミュニケーションを深めることを試みた。学園での関わりの初期は,T君に嫌な存在・邪魔な人という印象を与えないよう,まるで腫れ物に触るかの様な関わり方しかできなかった。関わりの回数を重ね,さらに大学のプレイルームという構造化された環境での抽出指導を通して,手をつなぐこと,愛着行動がみられ,学園でも歯を磨かせるなどの関係の深まりが見られた。自由遊び場面(ラポートを形成する段階)と,プレイルームでの個別学習への取り組み場面の記録から,その変容を,飯岡自身をも対象化しながら報告する。
著者
初瀬川 弘樹
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会 第51回近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.55, 2011 (Released:2011-10-12)

【目的】 視床痛の病態は複雑で症例により異なるが,1つの仮説として植村は,視床における正中中心核(以下CM核)の後外側腹側核(以下VPL核)からの脱抑制によって生じると述べている.今回,視床痛を呈している発症後7年目の症例に対して,触覚を用いたVPL核によるCM核の再抑制を目的としたアプローチを実施し,疼痛の質と量において改善を認めたので報告する. 【症例】 対象は70代女性.2003年11月に左視床出血により右片麻痺,視床痛を認めた.出血部位はVPL核から視床枕にかけて広がっていた.同年12月にADL自立して退院し,同施設の通所リハビリテーションを利用している. Brunnstrom recovery stage(以下BRST)は上肢5,手指5,下肢5,感覚は触覚,痛覚,冷覚ともに脱失,運動覚は肩関節,肘関節が軽度鈍麻,手関節より末梢が重度鈍麻,筋緊張に関してはModified Ashworth Scale(以下MAS)にて2,疼痛はVisual Analogue Scaleにて4~7cmと,日によって大きく変動する.McGill Pain Questionnaire(以下MPQ)では合計42点で,中でも「ぴりぴりした」「針で刺されるような」という表現が最も近いとの記述あり. 【方法】 2010年6月より,触覚情報を再構築する課題を実施した.課題は端座位にて閉眼で両側手掌下に柔らかい布を置き,非麻痺側を自動運動,麻痺側を自動介助運動とし,両側同時に動かしながら健側の運動イメージを少しずつ転移させた.その際健側運動イメージをメタファーにて記述させると,「綿の花のようなふわふわ」であり,逆に患側運動イメージは「蚕の繭のふわふわ」との記述があった.そのメタファーを用いて課題を進めていくと,「蚕の繭」から「羊の毛」のふわふわ感に変化したとの記述あり.それに伴い上肢筋緊張、疼痛が変化した. 【説明と同意】 本発表にあたり対象者には口頭にて発表内容を説明し,署名にて同意を得た. 【結果】 触覚情報の再構築課題によって同年9月にはMASは1+,VASは0.8,MPQは合計35点,最も近い表現が「重い」に変化し,治療を開始して初めて「痛くない」との発言があった.また感覚検査において手掌尺側の痛覚,冷覚が出現した.しかし触覚に関しては,感覚検査上は初期評価と同様に脱失であった. 【考察】 今回のアプローチは視床痛の病態を植村の,視床におけるCM核のVPL核からの脱抑制という仮説に基づいて構築した.C繊維は脊髄後索を通り,脊髄視床路を上行しCM核を経由する.視床痛は主にC繊維由来の鈍痛であり,C繊維の中継核であるCM核は本来VPL核によって抑制されている.VPL核は,Aβ繊維が脊髄後索を通り,延髄にて交叉して対側を上行し,中継する核である.以上のことから,Aβ繊維からの正しい情報を再び入力することによりVPL核のCM核への抑制機能を取り戻し,C繊維由来の疼痛を軽減できないかと考えた.その際にメタファーを用いることで,感覚情報と今までの経験との共通項を見つけ,身体と経験を重ね合わせることで運動イメージを明確化し,健側イメージの転移を容易にした.感覚検査上は,触覚は初期評価と比較して変化しなかったものの,自動運動で両側同時に同一の布に触れると両側とも同じように感じることができていたことから,触覚情報の入力が疼痛の軽減に影響を及ぼしたと考えられる. 【理学療法研究としての意義】 視床痛に対してメタファーを用いて触覚情報を再構築することにより,VPL核によるCM核の抑制機構が修正されたと考える.視床痛の病態は明らかにはされていないが,対処療法で済ますのではなく,痛みの原因を神経,生理学的な視点からも観察し,アプローチを考案していく必要性があるといえる.また今回,運動イメージを明確化するためにメタファーを用いて有用であったことから,メタファーは理学療法を実施する際に有効な手段となり得るのではないかと考える.
著者
宇山 政志 岩山 登 瀬川 智子 石垣 一司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.69, pp.31-36, 1996-07-25
被引用文献数
1

HARPは、)個人の情報活動(参照、整理、発言)総てをアノーテーションとみなし、収集し共有すること、)コミュニケーションの場を構成する要素を「話題」と「コミュニティ」とに分離し、利用者が独自にコミュニケーションの場を組立てること、以上2点を基本指針とするハイパーアノーテーション・システムである。総てのアクションをアノーテーションとして共有することで、他の利用者の動向に早い時期に気づくことができる。利用者はコンテンツの検索、整理により話題を特定し、次にコミュニティを指定することで場を生成できる。利用者は、話題に関する過去の発言をコミュニティを切替ながら参照し、新たに発言を付加することができる。HARP is the hyper-annotation system based on two basic principles: (1) Users' all actions on contents should be maintained as annotations and shared in a community. (2) Users can construct their own communication spaces by selecting two orthogonal components: "community" and "topic." Annotations allow users to be aware of a group of people who share hot topics. HARP communication space is created in two steps. First users designate their field of interests (topic) by retrieval or categorization. Second, they designate a community, then they can read comments from the specified community and post new comments to the community.
著者
瀬川 大輔 羽島 信郎 吉津 博 瓜生田 曜造 志水 正史 田中 勧
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1126-1129, 1995-12-15
参考文献数
13

VDDペースメーカー植込み後, ジェネレーター交換時に, 同一機種の販売停止, 後継機種の未認可という状況に遭遇した. そこで, 次善策としてDDDジェネレーターを接続し, 良好な結果を得たので報告する. 症例は41歳の女性と77歳の男性で, 過去に房室ブロックの診断でVDDペースメーカー植込みを受けている. その後, 電池消耗のためジェネレーター交換となったが, この際利用できるVDDジェネレーターがなく, 種々の体位, 深呼吸時, 咳嗽時などで心内P波を測定の結果, DDDジェネレーターに接続可能と判断し接続した. 術後の心電図は, 共に心房同期心室ペーシングを示した. 現在, 両名とも外来通院中である. VDDリードは, 心内P波が使用ジェネレーターの最高感度以上あれば, DDDジェネレーターに接続できる可能性がある.
著者
下瀬川 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.3162-3167, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
瀬川 純 数野 憲二 松岡 正人 網本 功 尾崎 正邦 松田 真人 冨井 由文 北野 正彦 黄瀬 正博
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.1238-1240, 1995-07-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
13
被引用文献数
3 7

Optically active isomers of 6-fluoro-1-methyl-4-oxo-7-(1-piperazinyl)-4H-[1, 3]thiazeto[3, 2-a]quinoline-3-carboxylic acid (NM394, 3) were prepared through optical resolution of their racemic intermediate (±)-1 by high-performance liquid chromatography (HPLC). The absolute configuration at the C-1 position in the thiazetoquinolone ring of (-)-3 was confirmed by X-ray analysis of (-)-4 to be S. The in vitro antibacterial activity of (-)-3 was 2-8 times that of (+)-3.
著者
瀬川 純 数野 憲二 松岡 正人 白波瀬 一朗 尾崎 正邦 松田 真人 冨井 由文 北野 正彦 黄瀬 正博
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.63-70, 1995-01-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
6 13

A seried of 1, 8-disubstituted 6-fluoro-4-oxo-7-piperazinyl-4H-[1, 3]thiazeto[3, 2-a]quinoline-3-carboxylic acid derivatives was prepared and evaluated for antibacterial activity. In the 7-piperazinyl series, addition of a fluorine at C-8, which increased the in vitro activity for the 1-hydrogen and 1-methyl analogues and decreased it for the 1-phenyl analogue, improved the in vivo activity of all the analogues. Introduction of a methoxy group at C-8 of the 1-methyl-7-piperazinyl analogue also improved its in vivo antibacterial activity. The effect of 8-substituents on the in vitro and in vivo antibacterial activity of the 1-methyl-7-(4-methyl-1-piperazinyl) series is also discussed.
著者
瀬川 拓郎
出版者
旭川市博物館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

11~12世紀に平泉を拠点に権勢を誇った奥州藤原氏の財政基盤は、オオワシの尾羽や海獣皮といった北海道の産物と、北上産地をはじめとする北東北の砂金にあったとされる。しかし、具体的な砂金産地やその生産実態はもとより、北海道集団との交流の実態解明もほとんど行われていない。本研究では、奥州藤原氏と古代北海道集団の関係を明らかにするため、砂金を手がかりとし、化学分析により北海道と東北北部の砂金の成分的な異同を比較検討して、北海道産砂金が平泉に流通した可能性を検証した。平成26年度には次の調査・研究を実施した。1)東北各地31カ所の砂金サンプルについて研究協力者から提供を受け、函館高専において化学分析を実施した。その結果、微量元素の構成で北海道と東北の砂金に有意な差は認められなかったが、専門家のアドバイスを受け、今後比較検討する微量元素の数を増やすとともに、より精度の高い分析機器による分析を検討することになった。2)奥州藤原氏関連遺跡から出土している坩堝など金付着関連遺物について26年度に化学分析を行う予定であったが、平泉町教育委員会と協議を行い、来年度にこれら資料の化学分析を実施することになった。3)北海道厚真町では、常滑焼など奥州藤原氏関連遺物が出土し、近年奥州藤原氏の移住の可能性が指摘されていることから、移住と砂金の関係を明らかにするため、これまで砂金産出の記録がない同町の厚真川において26年度には砂金調査を2回にわたって実施し、砂金を得た。4)上記の東北各地砂金サンプルの化学分析結果とこれまでの研究遂行状況について、3月に函館高専において報告検討会を実施した。
著者
福山 幸夫 杉浦 節子 平山 義人 瀬川 昌也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.494-500, 1971-09-01 (Released:2011-05-24)
参考文献数
17

The results of follow-up studies on 38 cases of myasthenia gravis in infancy and childhood were reported. The duration of observation in this study ranged from three to 17 years (eight years in average) after the onset of the disease.In 22 cases the myasthenic symptoms remained locally in the extraocular muscles throughout the course, while in other 16 cases bulbar, trunk and extremity muscles were involved at some occasions during the course. The spreading of symptoms in these cases occured at various stages from two weeks to four and half years after the onset of ocular symptoms.The condition of patients at the last observation was considered as complete cure in 5 cases, remarkably ameliorated in 31, not changed in 1, and aggravated in 1.The disturbance of ocular movement was the most frequent symptom persisting at the last observa tion, followed by ptosis, double vision, reduced visual acuity and photophobia in frequency, but no bulbar nor extremity symptoms were observed at that time.Based on both clinical findings and the Tensilon response, symptoms present at the last follow-up observation were considered to be myasthenic as yet only in 25 out of 33 cases, while in other 5 cases symptoms became stationary and not myasthenic.
著者
三輪 哲 下瀬川 陽
出版者
広島大学高等教育研究開発センター
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.193-208, 2016

The purpose of this article is to explore the relationship between dropout from higher education and social class origin. It focuses on the following three points; 1) to investigate the pattern of association between class origin and the risk of dropout; 2) to compare the impact of class origin on dropout among several educational transition stages; 3) to examine the trends in the effect of class origin on dropout from higher education.In order to conduct the empirical analysis, large-scale datasets which were merged from various Japanese national representative survey datasets, such as the Social Stratification and Mobility surveys (SSM), Japanese General Social Surveys (JGSS), and Japanese Life-course Panel Surveys (JLPS) are used. The risk of dropout is estimated using binary logit models, rare-event logit models, and transition models.Results show that the risk of dropout from higher education is affected by class origin. Non-manual and agricultural classes are less likely to drop out, while manual and self-employed classes are more likely to drop out from higher education. As for dropout from secondary education, the same pattern of inequality of the risk of dropout among classes is observed. The degree of impact of class origin on dropout is smaller than that on entering into next stage of education. There are no trends in the effects of class origin on dropout. This finding supports Maximum Maintained Inequality (MMI) hypothesis because educational expansion did not affect the pattern of educational inequality including dropping out stage.In conclusion, stable, huge inequality of dropout among social classes is found. Class origin is crucial factor for predicting the risk of dropout from higher education, also a long time ago even now.本研究は,科学研究費・特別推進研究(25000001)および基盤研究C(16K04029),2016年度参加者公募型共同研究(二次分析研究会テーマB)の成果の一部である。
著者
瀬川 高央
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.167-182, 2008-12-11

本稿の目的は,1983年のウィリアムズバーグ・サミットで,中曽根康弘政権が,米ソの中距離核戦力(INF)削減交渉に対し,極東配備のSS-20も交渉対象にすべきだとする立場を貫徹することで,ソ連による日米欧離間を封じていく過程を,日米外交資料の分析から解明することである。本稿は全5節で構成される。1節では,SS-20配備に対する西欧と極東の戦略状況の相違を明確にする。2節では鈴木善幸政権から中曽根政権にかけてSS-20問題での対外交渉姿勢の変化を検討する。3節と4節では,レーガンのゼロ・オプションが危機に直面したことを受け,日本が西側結束に向けて展開した秘密交渉について分析する。5節では大韓機撃墜事件により,東西緊張が再燃する中で,日米欧関係が強化されていく過程を考察する。最後に結語では,中曽根による西側決裂回避という成果を,首相のパフォーマンス外交ではなく,SS-20極東移転やINF暫定案の浮上という外生要因に対して,外相・事務方が行った対外交渉の結果として位置づけ直す。その上で,INF問題に対する中曽根政権の取り組みを契機として,日本の外交的地平が西側全体に拡大したことを論証する。
著者
井沢 邦英 瀬川 徹 門原 留男 岩田 亨 山本 正幸 佐々木 誠 矢次 孝 松元 定次 江藤 敏文 元島 幸一 角田 司 土屋 涼一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.2757-2763, 1990-12-01
被引用文献数
10

肝細胞癌自然破裂18例について病態, 治療法, 予後を検討した. 教室経験した肝細胞癌の 7.1% を占め, このうち11例 (61%) が出血性のショック状態を呈していた. 治療法は, 1期的根治的肝切除が5例で, 1例が術死の外は, 4例が1年以上生存し, そのうちの1例は7年3ヶ月の現在生存中である. 姑息的治療は6例で, 破裂部肝部分切除あるいは破裂部縫縮が3例, 肝動脈塞栓術 (以下 TAE) 2例, 肝動脈枝結紮1例で, すべてが両葉多発であった. 術死が2例, 最長生存期間は5ヶ月18日であった. 全身管理のみで, 破裂に対し処置が出来なかったものは7例で, 自然止血後の2ヶ月目肝不全死が最長生存であった. 検査値ではコリンエステラーゼ, 血小板数, プロトロンビンタイムで肝切除群と姑息的治療群, 無治療群の間に有意差がみられた. 切除可能であるならば可及的に切除することにより長期生存が期待されると考えられた.