著者
東 剛志 田中 宏明
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.282-289, 2012-10-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
57

近年,タミフル等に代表される抗インフルエンザ薬成分の河川環境中への流出が新たな社会的問題を提起している.タミフルは,新型インフルエンザパンデミックの被害軽減の切り札として位置付けられており,日本の依存度は季節性インフルエンザにおいても使用されており世界の中でも特に高い.そのため,水環境中に流出する抗インフルエンザ薬成分の問題は,生態系への毒性影響に加え,水環境中からの薬剤耐性ウイルス発生の危惧を生み,日本ばかりではなく世界的に新型インフルエンザ対策を検討するきっかけとなっている.そこで,本稿では近年明らかになりつつある最新の知見を踏まえ,河川環境中における抗インフルエンザ薬成分の汚染実態・環境動態や,下水処理場での除去効率,そして環境毒性及び薬剤耐性ウイルスの発生危険性について概説し,今後の環境リスク評価・リスク管理の展望についてまとめる.
著者
田中 宏明
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.145-167, 2007

チャールズ・ベイツ、トーマス・ポッゲ、そしてマーサ・ヌスバウムがコスモポリタニズムに関する議論をリードしていると言っても過言ではない。ベイツとポッゲは、ジョン・ロールズの正義論を出発点としながらコスモポリタン正義論を構築してきた。しかし、ロールズはコスモポリタンではなく、むしろコスモポリタン正義論の批判者であり、そして国際正義論を提起している。ベイツもポッゲもともにロールズの国際正義論には批判的であり、それぞれ独自のコスモポリタン正義論を提示する。そしてロールズの正義論を批判的に論じてきたのがヌスバウムである。本稿では、最初に、ロールズの国際正義論の概要を述べ、その立場からのコスモポリタン正義批判について述べる。次に、ベイツの『政治理論と国際関係』をもとに彼のコスモポリタン正義について考察する。ベイツはホッブズに依拠する政治的リアリズムを批判する中で、国際的相互依存の深化(今日でいうグローバリゼーション)にともなって国際社会と国内社会の類似性に着目し、そして国家を自律的存在とみなしうるのはすべての人間であると論じる。ベイツは、ロールズの正義論をグローバルに拡張し、グローバルな分配の正義論を展開する。さらにベイツはロールズの立場を社会的リベラリズムと捉え批判する。そしてベイツに対する批判も検討する。
著者
山本 佳祐 田中 宏明
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.26-37, 2018-07-31 (Released:2018-08-01)
参考文献数
18

The present study aims to investigate when and why helping behaviors are criticized by a third party. We propose that people infer an ulterior selfish motive for others’ helping behaviors that occur in some self-presentational contexts. A vignette study was conducted with 149 undergraduates who read scenarios describing helping behaviors in various kinds of contexts. Analysis using a multi-level structural equation model provided partial support for our notion. It was shown that selfish motives were more likely inferred in situations in which observers who happened to be there praised the helping behavior than otherwise. However, this did not lead to increased criticism. It was also shown that the help was more likely regarded as needless, and, therefore, selfish motives were more strongly inferred when the help was refused than when it was requested by a recipient. Some methodological problems and future directions are discussed.
著者
田中 宏明
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.147-173, 2009-03-06

トマス・ペッゲは、現代においてコスモポリタニズムを提唱する代表的な政治理論家であり、ロールズの国際正議論の忌憚のない批判者でもある。ポッゲのコスモポリタン正議論は自らのグローバル正議論に基づいており、そのグローバル正議論は、ロールズに従って、社会構造、とりわけ社会制度の観点から提起されている。ポッゲは、西洋の豊かな市民が形成するグローバルな制度秩序がグローバルな貧しい人々に対して危害を加えており、それゆえ、西洋の豊かな国々には、危害を加えないという正義の消極的義務があると主張する。ポッゲの制度的アプローチによれば、危害を加える制度秩序を支える人は、もし危害を被る人の保護と制度改革の推進に向け道理に適った努力をしないのであれば、その制度に協力し、消極的義務を犯しているとみなされる。ポッゲが提唱する制度的コスモポリタニズムも社会正義コスモポリタニズムもともに、人権の制度的理解に基礎を置く。制度的人権は、「人権は消極的義務のみを伴う」というリバタリアンの制約のもとで理解されている。ロールズの正議論に依拠するように見えても、ポッゲの理論は、それをグローバルに拡大するコスモポリタニズムではなく、リバタリアンの規範を前提に構築されており、それがポッゲ批判の焦点となっている。
著者
田中 宏明 辻 利則 川瀬 隆千 竹野 茂
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.193-221, 2006

なぜ国際関係論を教育するかという問いに対してカントのコスモポリタニズムから回答できる。なぜならば、カントのみが戦争と平和、コスモポリタン秩序、そして世界市民教育ということを国際関係論において教育する理由をトータルに考える糸口を提供するからである。最初に、国際関係論におけるカント的伝統を否定的に規定している英国学派と、カントの平和論を肯定的に捉えそれに依拠するリベラリズムの代表的研究としてデモクラティック・ピース論を取り上げる。次に、カントのコスモポリタニズムについての理解を深めるために、国際関係論の議論の枠組みを越えて寺田俊郎らの哲学者の議論を踏まえ、カントのコスモポリタニズムについて考察する。ユルゲン・ハーバーマスによると、カントの平和連合の構想にいかなる問題があるか、そして現代のグローバルな情勢を踏まえて、カントのコスモポリタン秩序はいかに改めるべきかが明らかになる。さらに、カントのコスモポリタニズムの観点から、英国学派とデモクラティック・ピース論におけるカントのコスモポリタニズムの捉え方を批判する。最後に、世界市民教育とはどのようなものなのかをマーサ・ヌスバウムに依拠して考え、世界市民教育の立場から、国際理解教育とグローバル教育を批判的に検討する。
著者
田中 宏明
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.101-126, 2009

マーサ・ヌスバウムは、社会正義の三つの未解決の問題のひとつとして、正義をすべての世界市民に拡大するという問題を取り上げている。ヌスバウムは、この問題に対してケイパビリティが国際的な重なり合うコンセンサスの対象となりうる構想を提唱する。この構想がヌスバウムのグローバル正議論である。ケイパビリティ・アプローチには人間の尊厳に基づいた人の権原という構想が中核にあり、グローバル正議論はケイパビリティ・アプローチをグローバル化するアプローチである。ケイパビリティ・アプローチをグローバル化する際に制度が重視され、グローバル構造のための十原理が提起される。この十原理は、不平等な世界において人間のケイパビリティがいかに促進されうるかについて少なくとも考える手助けとなるものである。ヌスバウムのグローバル正議論はコスモポリタン正議論と見なしうる。ヌスバウムは、ロールズの政治的リベラリズムを受け継ぐにもかかわらず、ロールズの正議論と国際正議論には批判的である。ロールズの正議論において正義の主体が人間であるのに対して、ロールズの国際正議論においては民衆が主体となり、ロールズの正議論と国際正議論ともに、社会契約論にヒュームの正義の環境を結びつける理論に基づいて、契約の形成者と正義の主要な主体を合成するために、相互利益が得られるおおよそ平等ではない当事者を正義の主要な主体とは数えないという問題がある。ヌスバウムのグローバル正議論に対する社会科学者からの批判を検討する。最後に、コスモポリタン正議論としてのベイツ、ポッゲ、そしてヌスバウムの理論を検討し問題点を指摘する。
著者
吉田 索 浅桐 公男 朝川 貴博 田中 宏明 倉八 朋宏
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.169-175, 2019 (Released:2019-09-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

近年,生体電気インピーダンス分析法(以下BIA)は,日常の診療や栄養評価,スポーツなどのさまざまな分野に用いられている.このBIAを利用して算出されるPhase angle(以下PhA)は細胞膜の抵抗を表した角度であり,細胞や細胞膜の栄養状態と関係が深く,体細胞量に反映する.健常者やアスリートなどの構造的完成度の高い細胞膜をもった正常細胞では,PhAは高く計測され,老化やがんなどの細胞膜の構造的損傷や細胞密度の低下した障害細胞では,PhAは低く計測される. PhAは細胞の健常度や全体的な栄養状態を反映することから,各種疾患の予後予測因子や栄養指標として注目されている.また,PhAは人体に微弱電流を流し細胞膜の抵抗値を直接測定して算出する実測値であるため,身長や体重だけでなく体液過剰の影響を直接受けない利点がある.そのため,通常の体成分分析には則さない重症度の高い患者や重症心身障害者などの正確な栄養評価が困難な患者にPhAは有用と思われる.
著者
山地 祥隆 古城 直道 樋口 誠宏 山口 智実 島田 尚一 田中 宏明
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2009年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.61-62, 2009 (Released:2010-02-25)

本研究では,ダイヤモンドと被削材種間の標準自由エネルギー変化の計算,および拡散実験の結果により工具の摩耗メカニズムを推定した.その上で,炭素拡散により摩耗させる鉄,酸化物の還元により摩耗させる銅,炭化物の生成により摩耗させるアルミニウムの切削実験により,摩耗形態と耐摩耗性を調査した.その結果,明らかになった事柄について論じる.

2 0 0 0 OA 測量法の改正

著者
田中 宏明
出版者
日本地図学会
雑誌
地図 (ISSN:00094897)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.11-23, 2003-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
2
著者
田中 宏明
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.77-100, 2011-03-04

国際政治経済学にはアメリカン学派とブリティッシュ学派の間に「相互無視」という状態がある。ブリティッシュ学派の創始者の一人としてスーザン・ストレンジにその責任の多くが負わせられている。しかしながら、ストレンジは、国際政治経済学におけるブリティッシュ学派の確立ではなく、むしろ国際政治経済学という学問分野の確立をめざしてきたのである。ストレンジは、安全保障、生産、金融、そして知識からなる構造的権力に基づくリアリズムを主張し、そして既存のリアリズムには批判的であった。この立場からすると、古典的リアリズムの多極システム、ネオリアリズムの双極システム、そしてリアリズムの覇権国モデルが批判されることになる。そしてストレンジはグローバル政治経済のリアリティを直視するという意味でもリアリストであった。それゆえ、ストレンジは変貌するグローバル政治経済についての認識を欠くアメリカの政策とアメリカの国際政治経済学にはきわめて批判的であった。なぜならば、ストレンジは、アメリカの衰退どころかアメリカを非領土的帝国であると捉え、そしてグローバル政治経済において国家から市場へと権威がシフトし、グローバル・ビジネス文明が出現していると捉えたからである。さらに、ストレンジは、経済学の方法論を援用するアメリカン学派の国際政治経済学にも批判的であった。こうした意味でストレンジを批判的リアリストと呼べるかもしれない。最後に、アメリカン学派からの批判とそれに対するストレンジの反論を検討するとともに、ストレンジの国際政治経済学を批判的に考察する。
著者
八十島 誠 山下 尚之 中田 典秀 小森 行也 鈴木 穣 田中 宏明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.707-714, 2004-11-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
45
被引用文献数
4 5

In recent years, antibiotics resident in sewage and in the water environment have become an emerging public concern in many developed countries. However, limited knowledge is available on the occurrence of antibiotics in sewage and discharge from wastewater treatment plants (WWTPs) in Japan. Moreover, little is known on the significance of their occurrence in the water environment from the viewpoints of biological adverse effects. The objectives of this research were, therefore, to determine the occurrence of selected antibiotics, namely levofloxacin (LVFX) and clarithromycin (CAM). That are commonly used in Japan, in discharge from WWTPs and then to evaluate their possible effects on algal growth. Therefore, we developed a novel analysis method for LVFX and CAM in wastewater by LC/MS/MS whose detection limits and recovery ratios are 2-3ng·l-1 and 53-87%, respectively. We also conducted algal growth inhibition tests using Pseudokirchneriella subcapitata, and results showed that the EC50s of LVFX and CAM are 1200μg·l-1 and 11μg·l-1, LOECs are 630μg·l-1 and 6.3μg·l-1, and NOECs are 310μg·l-1 and 3.1μg·l-1, respectively, LVFX and CAM concentrations in secondary effluent of five WWTPs that use the activated sludge process ranged from 152-323ng·l-1 and 303-567ng·l-1, respectively, which indicates that the PEC/PNEC ratio of LVFX is less than one but that of CAM exceeds two at the maximum secondary effluents if a safety factor of ten is considered. This suggests a possibility of algal growth inhibition due to CAM in WWTP discharge in the case of insufficient dilution of the receiving waters.
著者
田中 宏明
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.99-118, 2004

現代日本は愛国主義化している。その日本とはどのようなものであり、そしてそれがどのような問題をもたらすのか。こうしたことを考察するために、愛国主義への対抗軸とじてコスモポリタニズムを置き、それに「大きな政府とリベラル・デモクラシー」と「強い国家とネオリベラリズム」との対抗関係を交え、その中で特に、「強い国家とネオリベラリズム」と「民主的コスモポリタニズム」の対抗関係に注目したい。この対抗関係はグローバリゼーションの文脈における対抗関係でもある。これを軸に現代日本における争点となる問題を検討する。すなわち、憲法、教育基本法、そして歴史認識/戦争観について考えることにしたい。最後に、以上の議論を現代日本の課題としてまとめ結論とする。
著者
八十島 誠 友野 卓哉 醍醐 ふみ 嶽盛 公昭 井原 賢 本多 了 端 昭彦 田中 宏明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.III_179-III_190, 2021 (Released:2022-03-10)
参考文献数
37

本研究では,感染者の排泄物に由来する陽性反応の利用が容易な個別施設を対象に,トイレ排水を排除するマンホールでの下水疫学調査でSARS-CoV-2の回収・検出を通じて感染者の早期発見を目的としたパッシブサンプラー(PoP-CoVサンプラー)を開発し,有効性を検証した.SARS-CoV-2中等症感染者が入院する病院施設と軽症者等宿泊療養施設での検証実験の結果,PoP-CoVサンプラーにはSARS-CoV-2が残存しており,マンホール調査での有効性が確認された.またPoP-CoVサンプラーでのCt値はグラブサンプルより最大7.0低かった.本法の社会実装を想定し,111名が勤務する事業場施設で調査を行ったところ,下水から陽性反応が得られた.陽性反応の原因として無症候性感染者からの排泄は否定出来ないものの,下水疫学によって1名の症候性感染者を陽性確定日の4~5日前に発見できる可能性が示唆された.
著者
田中 宏明 花本 征也 小川 文章 山下 洋正
出版者
京都大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

抗生物質による水環境汚染は、世界的に解決すべき喫緊の課題となっている。我々は抗生物質の自然減衰に対して先駆的に研究を行い、英国テムズ川では、国内河川よりも抗生物質の減衰が大幅に速いこと、金属錯体形成反応や河床間隙水塊との水交換といった日本では観測されない反応や現象が生じていることを見出した。しかし、これらの反応・現象に対する知見はまだほとんどない。そこで本研究では、英国テムズ川を対象とし、現地調査、室内実験、数理モデルを駆使して、ⅰ)金属錯体形成反応を考慮した抗生物質の底質への収着のモデル化、ⅱ)河床間隙水塊を考慮した河川水-底質間の抗生物質の移動現象のモデル化、ⅲ)抗生物質の水環境中濃度予測モデルの構築を実施する。本研究は、新たな反応・現象のモデル化により、化学物質、特に現在、世界的課題となっている抗生物質管理に資する普遍的な環境濃度の予測システムを構築するものである。新型コロナウイルス蔓延のため、英国への渡航ができない状況が続いている。令和3年度は、これまで英国との交流のコアとなってきた、第23回日英内分泌かく乱物質・新興化学物質ワークショップが11月29日-30日にオンラインで開催され、それに参加するとともに、以下の内容を共同発表した。人に投与された医薬品の水圏への排出源は概ね明らかになっているが、家畜に投与された医薬品の水圏流出経路は国や地域によって異なっており、十分な知見は得られていない。そこで、本年度は動物用及び人用医薬品の河川調査を、全国各地の畜産地域において年間を通して実施した。また、昨年度構築した、畜産場・下水処理場・浄化槽を排出源とした医薬品の水圏排出モデルによる河川負荷量の予測値と、現地調査による観測とを比較することで、動物用及び人用医薬品の水圏流出量の予測可能性を評価した。
著者
西 憲祐 西 隆四郎 木村 翔一 西 総一郎 田中 宏明 山野 貴史
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.37-42, 2022 (Released:2022-07-15)
参考文献数
18

アレルギー性鼻炎は日本において最も頻度が高いアレルギー性疾患の一つである.特にスギ花粉症患者は人口の約40%が罹患しており,重要な治療標的である.アレルギー性鼻炎はしばしば上咽頭のかゆみなどの咽頭症状を誘発する.慢性上咽頭炎に対して上咽頭擦過療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy:EAT)が有効であるという報告が多数されており,後鼻漏,咽頭違和感,慢性咳嗽,頭痛といった典型的な症状以外にもアレルギー性疾患に有効であると報告されている.しかしながらEATがアレルギー性疾患に有効とされる機序に関しては不明な点が残されている.今回我々はEATがスギ花粉による上咽頭アレルギーに対して有効であった一例を報告するとともに,病理組織学的所見からその機序に関して考察した.症例は34歳男性でスギ花粉飛散時期に上咽頭の掻痒感を自覚していた.本患者に継続的にEATを施行することで,スギ花粉による上咽頭アレルギーを抑制する事が出来た.更に,この効果発現機序に関しては,EATによる繊毛上皮の扁平上皮化生と粘膜上皮直下の線維性間質の出現によるものと考えられた.
著者
田中 宏明
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.19-25, 2008 (Released:2008-04-01)
参考文献数
19

For a reconfigurable antenna system, antenna surface deformations should be measured to achieve a high precision antenna system. In this study, a novel measurement method of antenna surface deformations is proposed. Relations between surface errors and changes of the antenna gains caused by intentional deformations are derived from the Ruze equation. In this method, an antenna surface is deformed additionally using surface adjustment mechanisms and changes of the gains caused by the intentional deformations are measured. An original deformation of the antenna surface is estimated using the relations. Some numerical simulations are carried out to investigate the feasibility of this method. From the results of the simulations, it is shown that the antenna deformations are estimated adequately by using this method.
著者
荒木 速雄 加野 草平 西間 三馨 小笠原 正志 松崎 守利 田中 宏明 田中 守 進藤 宗洋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3-1, pp.205-214, 1991-03-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

気管支喘息児12名に自転車エルゴメーターを用いて4週間のトレーニングを行い, WBPLA_1 (work load at first braking point of lactic acid) より設定した5段階負荷強度にて physical working capacity の向上, EIB の改善をトレーニング前後で比較した. また, 高張食塩水吸入による気道反応の変化についても検討し, 以下の結果を得た. 1)心拍数はトレーニング前の WBPLA_1 175%強度に相当する仕事率で, トレーニング前値の188.5±9.6bpmよりトレーニング後178.4±9.7bpmへと, また WBPLA_1 150%強度では174.0±11.9bpmより165.6±11.3bpmへと, それぞれトレーニング後に有意に低下した. また最大酸素摂取量(Vo_2max/wt)は34.5ml/min/kgより41.lml/min/kgに有意に上昇した. 2) FEV_<1.0>の運動負荷後のMax.%fall は WBPLA_1 175%強度にて, トレーニング前37.4±17.4%よりトレーニング後30.3±17.4%へと, また WBPLA_1 150%強度では27.1±24%より18.0±17.1%へとそれぞれトレーニング後に有意に低下した. 3) 3.6%高張食塩水吸入試験ではトレーニング群においてPD_<20>は4.2±5.9mlから8.1±8.0mlへと有意に増加した. なお, コントロール群では3.7±5.8mlより4.3±6.3mlへと有意な変化は認められなかった.