著者
田中 達也
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.111-116, 2001-09-17 (Released:2017-04-27)
参考文献数
14

「身体」は「主体」の実質的器であり、それに対する医療は「主体」の大きな関心事である。現在、医療は患者主体の契約と考えられるようになり、そこではインフォームド・ディシジョンという言葉に表されるような患者の自己決定権と医師の裁量権が重要な概念となる。前者は「実際に医療を受け、医療サービスの顧客である患者が、自らの身体に関して、医師の説明を理解した上で、社会的に認められる範囲で決断する権利」と、後者は「説明、理解、決断のいづれかが不可能な場合や、患者の意志が社会的に認められない場合、あるいはやむを得ない現場の事情によって、医師が専門的立場から、社会的に認められる範囲で、生命優先で対処する権利」と定義できる。今後は、患者の自己決定が浸透する一方で、高齢化に伴い意志が不明解な患者も増加すると思われる。双方の権利の区分を明解にした上で、適切に用いる必要性を痛感する。
著者
池田 龍介 鈴木 孝治 田中 達朗 谷口 利憲 白岩 紀久男 卞 在和 津川 龍三 中村 武夫 岩佐 嘉郎 田近 栄司
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.183-189, 1984-02

当科において1974年より1981年までの7年4ヵ月,富山県立中央病院泌尿器科において1961年より1981年までの20年11ヵ時間と経験した尿路結石のうち,赤外線分光分析が行なわれた1514結石についてマイクロコンピューターを用いて臨床的分析を試みた.男子930例,女子344例,年齢は1歳より90歳に及び平均は男子44.7歳,女子41.6歳であった.結石成分分析には日立赤外線分光光度計EPI-G3型を,マイクロコンピューターとしてはSHARP MZ-80Cを用い,年齢,性別,発生部位,内層成分,外層成分,血清電解質,尿中電解質などを入力し,color display, green display, printer, X-Y plotterに出力,表示させた.4年前に報告した300個の結石における成績と比較すると,若干の変化が見られ,年齢分布において腎結石,膀胱結石含有患者の老齢化の傾向が認められたIn our laboratories, more than 1,500 urinary calculi have been analyzed by infrared spectroscopy. These data were statistically analyzed by microcomputer. The most frequent type was calcium oxalate combined with calcium phosphate, followed by pure calcium oxalate and magnesium ammonium phosphate combined with calcium phosphate. In particular, the composition of magnesium ammonium phosphate combined with calcium phosphate increased as compared with that four years earlier. Four years ago, we spent one month to statistically analyze 300 urinary calculi. But in this study, only sixteen days was required to analyze 1,500 urinary calculi by using a microcomputer.
著者
田中 達也
出版者
大東文化大学
雑誌
大東文化大学紀要. 人文科学 (ISSN:03861082)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.A121-A137, 2006-03-31

中世の武蔵国入間郡府川郷は、近世の八か村に及ぶ領域をもつ地域単位であったが、中世末期には石田本郷・谷中村・石田村といった新たな地域単位が成立、府川郷から分離していた。天正五年(一五七七)に検地が実施された「府川郷」も、近世菅間村へと引き継がれる地域単位であると捉えられ、これらの村落の自立により中世府川郷は解体した。「府川郷」や「河越本郷」の検地に関与した大野縫殿助は、在所とする谷中村の範囲を越えた広域的な開発の推進者であり、広域的開発の推進者と開発対象地における協力者の連携により実現した開発によって、中世郷の解体・再編がもたらされたと考えられる。
著者
長谷川 千洋 博野 信次 小幡 哲史 宗佐 郁 田中 達也 横山 和正
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は情動の神経基盤を調べることを目的に,幸福情動を賦活させる手段として実験参加者に催眠暗示を行い,脳のどの部位で賦活化が生じているかについてfMRIを用いて測定した。予備実験として催眠感受性の高い実験参加者に対してfMRI環境下での情動賦活法としての催眠の有用性を確認した後,安定した幸福情動の産生が確認された実験参加者に対して聴覚提示による催眠誘導を行い幸福情動産生時と非幸福情動産生時の違いを調べた。この結果,幸福情動産生時での共通の賦活部位として補足運動野が示された。関連研究として,情動及び催眠に関する実験研究も行い,情動の脳内メカニズムの解明を試みた。
著者
石丸 雄二 武藤 福保 千葉 茂 宮岸 勉 橋詰 清隆 田中 達也
雑誌
てんかんをめぐって (ISSN:13493078)
巻号頁・発行日
pp.104-109, 1998-02

雑誌掲載版30歳男性患者,3歳で脱力発作,6歳で口唇自動症と失平衡をもつ複雑部分発作(CPS),16歳で両下肢自転車運動,夜間の躯幹の屈曲,ねじれをもつCPSを認めた.難治性が時に重延状態となった.発作時脳波では両側前頭,中心部優位の13-16Hz,40-60μV活性以外には明らかな発作波を認めなかった.発作時SPECT左前頭-側頭葉における血流増加を認め,MRIで小脳に軽症萎縮を認めた.これらの所見から本例の発作発現は前頭葉と関連するものと推測される
著者
田中達 渡邊龍聖共述
出版者
私製
巻号頁・発行日
1901
著者
諏訪 大八郎 西野 暢彦 松浦 めぐみ 神谷 欣志 松本 圭五 馬場 恵 田中 達郎 今野 弘之 中村 達 馬塲 正三 青木 克憲
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.378-385, 1998-08-10 (Released:2010-10-20)
参考文献数
47
被引用文献数
3 2

Esophageal perforation is a serious acute disease. In this paper, a case of esophageal perforation by a fish-bone with severe mediastinitis and a cervical abscess is reported.For a 50-year-old male, the diagnosis was made 15 days after he had swallowed a fish-bone, because the symptoms were slight before severe chest pain began. Two esophageal perforations (19-21 cm and 24-31 cm from his initial tooth line) were confirmed by endoscopy. Moreover, mediastinitis and a huge cervical abscess were recognized perioperatively. Most of his esophagus was resected due to the two long perforations, and mediastinal drainage, cervical esophagostomy and gastrostomy were also performed. After the operation, the patient suffered from a severe pyothorax, but he fortunately recovered. 10 months later, an esophageal reconstraction by gastric tube was done. Since fish-bones sometimes cause esophageal perforations and severe complications are often seen, strict follow-up is needed for patients who accidentally swallow them.
著者
田中 達也 神山 真一 山本 智一 山口 悦司
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.119-131, 2021-07-30 (Released:2021-07-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究の目的は,児童におけるアーギュメント自己評価能力とアーギュメント構成能力には関係があるのか,また,関係があるとすればどのような関係があるのかを予備的に検討することであった。本研究では,まず,両者の関係の有無を検討するため,主張-証拠-理由付けを含むアーギュメントを導入した小学校第3学年の単元「物と重さ」を実施する中で,児童計65名を対象に,アーギュメントを記述させる課題による調査と,児童に自身のアーギュメントを自己評価させる課題による調査を実施した。2つの調査結果から,次の2点が示唆された。(1)アーギュメント自己評価能力が高い児童は,アーギュメント構成能力が高い傾向にある,(2)アーギュメント自己評価能力が低い児童は,アーギュメント構成能力が低い傾向にある。次に,アーギュメント自己評価能力のアーギュメント構成能力への影響を検討するため,アーギュメント構成能力の向上の仕方が異なる児童計16名を対象に,アーギュメントの自己評価の詳細をたずねる面接調査を実施した。この調査の結果から,次の2点が示唆された。(1)自分が記述したアーギュメントの成否を適切に判定したり,自分が記述したアーギュメントの問題点を説明したりすることができる児童は,アーギュメント構成能力が向上していた傾向にある,(2)自分が記述したアーギュメントの成否を適切に判定したり,自分が記述したアーギュメントの問題点を説明したりすることができない児童は,アーギュメント構成能力が向上していない傾向にある。
著者
石川勲 近澤 芳寛 佐藤 一賢 奥山 宏 今村 秀嗣 羽山 智之 山谷 秀喜 浅香 充宏 友杉 直久 由利 健久 鈴木 孝治 田中 達朗
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医大誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.522-530, 2005
被引用文献数
1

金沢医科大学腎移植チームでは,1975年3月より2005年6月30日までの約30年間に,260例の腎移植を行ってきたが,この間における移植成績の向上には隔世の感がある。これには長年にわたる経験の積み重ねに加え,免疫抑制療法や急性拒絶反応に対する治療法の飛躍的な進歩が深く関わっていると思われる。そこで我々が行ってきた腎移植の成績はどのように変化してきたか,また移植腎が生着し,現在も外来に通院中の患者について現状はどうかまとめてみた。腎移植260例の内訳は,生体腎移植212例,死体腎移植48例で,生体腎移植は透析導入直後の例で多く,死体腎移植は長期透析例で多かった。また提供者をみると生体腎移植では親が多く,死体腎移植では若い人から高齢者まで様々であった。30年にわたる移植時期を10年ごとに区切って,その間の移植成績をみると,すなわち,免疫抑制薬としてステロイドとアザチオプリンを使用した最初の10年,それに続き,ステロイド,アザチオプリン,シクロスポリンを使用した次の10年,さらに,ステロイド,ミコフェノール酸モフェチル,シクロスポリンまたはタクロリムスを使用したここ10年に分けて,5年腎生着率を比べてみると,それぞれ68.3%(n=89),73.0%(n=86),93.7%(n=37)と大きく向上してきている。1975年に行われた最初の4例は現在も生着し,腎機能も良好である。またこの間12例の患者が18児を出産した。外来通院中の134例について高血圧の頻度は86.6%で,うちコントロール良好例は86.2%,糖尿病の頻度は18.7%で,うちコントロール良好例は80.0%であった。以上より金沢医科大学における腎移植の成績は良く,生活習慣病関連事項もコントロール良好と言える。近年では,移植数の減少が最大の問題点となってきている。死体腎移植に対するさらなる理解と啓発・提供者の増加,生体腎移植における適応の拡大(ABO不適合移植,夫婦間移植)がなによりも求められるところである。
著者
岡部 幸子 森本 泰宏 田中 達朗 安細 敏弘 高田 豊 竹原 直道 大庭 健
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会総会抄録プログラム
巻号頁・発行日
vol.66, pp.9, 2006

高齢者のパノラマX線写真上で検出された茎状突起の長さ及び形状の臨床的意義を検討する。8020データバンク構築の疫学調査で集められた659名の80歳のパノラマX線写真を対象に茎状突起の長さの計測及び形状のパターン分類を行った。被検者の全身状態に関する各種データ(骨密度、血圧、心電図の異常の存在、心拍数、血清カルシウム値及び身体的スタミナ)に関して、茎状突起の長さとの間で関連性の有無を検討した。80歳における茎状突起の長さはパノラマX線写真上0.0 mm から153.0 mmで左右には有意差はなく、男女間では有意差を示した。形状のパターンは、MacDonald-Jankowskiの分類中、パターンEに属するものが、次いでパターンDに属するものが多く認められたが、男女間に有意差はなかった。茎状突起の長さと各種データに関する関連性は、血清カルシウム値と骨密度に関連性を示し、他には明らかな関連性はなかった。高齢者のパノラマX線写真を読影する上で我々歯科医は茎突舌骨靱帯の骨化に伴う茎状突起の変化について把握しておく必要がある。同時に、顕著な骨化を来している症例は血清カルシウム値の上昇を意味する可能性があることを考慮しておくべきである。