- 著者
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橘高 弘忠
西本 昌義
福田 真樹子
西原 功
小畑 仁司
大石 泰男
秋元 寛
- 出版者
- 一般社団法人 日本救急医学会
- 雑誌
- 日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.7, pp.406-412, 2013-07-15 (Released:2013-10-16)
- 参考文献数
- 11
- 被引用文献数
-
1
症例は61歳の男性。3年前にKlebsiella pneumoniaeを起因菌とした肝膿瘍の既往があった。発熱と全身倦怠感を主訴に他院に救急搬送され,精査の結果,肝膿瘍による敗血症,播種性血管内凝固症候群と診断され当センターへ転院となった。腹部超音波検査,腹部造影CT検査所見では,肝外側区域に隔壁を伴う膿瘍形成を認め,抗菌薬(BIPM)の投与を開始した。第2病日に呼吸状態が悪化したため,気管挿管し人工呼吸器管理を開始するとともに超音波ガイド下経皮経肝的膿瘍ドレナージ術を行った。ドレーン造影を行うと,蜂巣状の膿瘍とそれに連続して胆管が造影された。穿刺液細菌培養の結果,Klebsiella pneumoniaeが検出された。発熱が続いたため,第10病日に腹部CTを撮影したところ,肝膿瘍の増大,右腸腰筋膿瘍およびL3/L4の化膿性脊椎炎の合併を認めた。また第11病日より項部硬直が出現した。髄膜炎を疑い,髄液採取を試みたものの採取できなかったため,頭部MRIを行ったが異常所見はなかった。肝膿瘍に対してドレナージ治療の限界と判断し,第12病日に肝外側区域切除術を施行したが,発熱・意識障害は遷延した。第18病日に髄液採取に成功し,細菌培養検査を施行したところ,多剤耐性のEnterococcus faeciumが検出された。Linezolidの追加投与を開始したところ,解熱とともに意識レベルは改善し,第30病日のCTでは腸腰筋膿瘍と脊椎炎の消失を認めた。意識レベルの改善とともに視力障害の訴えがあったため,眼科へコンサルトしたところ細菌性眼内炎と診断され転院となった。本症例は肝膿瘍から転移性病変を生じ,さらに菌交代を伴ったためEnterococcus faeciumが起因菌となったものと考えた。