著者
浜野 美代子 伊野 みどり
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.841-848, 1986-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

日常, 摂取する食事が唾液中に分泌されるNO3-およびNO2-濃度にどのような影響を与えるかを明らかにするため, 5日間にわたり, 種々献立の実験食を設定し, これを摂取したさいの, 唾液中のNO3-およびNO2-濃度の変化を経時的に追跡した.得られた結果を要約すると次のようになる.1) まず, 実験食の調理前後におけるNO3-およびNO2-量を測定した結果, 食事の種類によりNO3-およびNO2-量にかなりの差がみられた.とくに調理との関連をみると, ほうれん草のおひたしを用いた献立では, 下調理, つまり, ゆでることにより喫食部分に含まれるNO3-とNO2-量は著しく減少した.2) 実験食摂取後の唾液中のNO3-およびNO2-濃度を調べた結果, NO3-では食後30分ないし1時間で最高濃度を示し, NO3-ではNO3-よりも30分ないし1時間遅れて最高濃度に達した.3) 食事からのNO3-摂取量の多いほど, 摂取後の唾液中のNO3-およびNO2-濃度が顕著に上昇したが, NO3-やNO2-のレベルには大きな個人差がみられた.また, 口腔内における硝酸塩還元能, つまり, 唾液中のNO2-濃度についても個人差がみられた.4) 食事に含有されているレベルの硝酸ナトリウムを被検者に経口投与した結果では, 投与量の多いほど唾液中のNO3-濃度が高くなる結果が得られた.
著者
小林 武夫 熊田 政信 石毛 美代子 大森 蕗恵 望月 絢子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-34, 2014 (Released:2014-02-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

歌唱を職業とする者に,歌唱時においてのみ見られる痙攣性発声障害を「歌手の喉頭ジストニア(singer’s laryngeal dystonia)」と名づけた.痙攣性発声障害の一亜形である.通常の会話は問題がない.本症の発症前に過剰な発声訓練を行っていない.4例は第1例(女性31歳)ソプラノ,ポピュラー,第2例(女性28歳)ロック,第3例(男性40歳)バリトン,第4例(男性46歳)バリトンで,第4例のみが外転型痙攣性発声障害で,他の3例は内転型である.内転型は歌唱時に声がつまり,高音の発声障害,声域の短縮,ビブラートの生成が困難となる.外転型では,無声子音に続く母音発声が無声化する.治療は,内転型はボツリヌストキシンの少量頻回の声帯内注射が有効である.外転型では,後筋にボツリヌストキシンを注射する.
著者
杉藤 美代子
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.98-99, 2002-04-01

誌上フォーラム:「国語学」と「日本語学」において,すでに多くの方が論じられてきたように,改名についてはたしかに問題を多々抱えている。かつて亀井氏が提案された頃とはちがい,現に「日本語教育」学会があり,月刊誌『日本語学』もある。しかし,各大学で講座名を「日本語学」に変更する例もあり,学会誌の体裁からしても,名称変更についてはもう後へは退けない状況にあるといえよう。むしろ,中身を検討すべきであろう。積極的に日本語の学を統合する学会への進展を志向すべき時期と思われる。「日本語学会」,学会誌の名称は『日本語学会誌』あるいは『日本語学研究』であろうか。ここで,とくに重要な点は,改名を機に,これを前進のときとみるか,伝統を失い後退であると考えるかである。自信と実力をもって,日本語に関する研究(手法の新旧を問わず)を深め,内容の充実と統合を図る。この際,それが必要と思われる。先学の優れた研究の灯を消してはなるまい。また,現在「国語学会」所属の方には,何らかの形で国語教育に関連のある方が多いと思われる。そこへの影響や問題点をも考慮に入れる必要があろう。日本語は,日本の文学,思想,哲学,宗教,社会,学術全般,情報,教育,すべての基になる言語であり,その日本語の研究と教育の活性化が現在においては急務である。いうまでもないが,多読によらねば日本語を読み取る実力は育たず,語彙も豊かになりにくい。大学の講義,高校の授業では,細部の理解とともに多くを読み,書き,文字,音声をもって表現する能力の育成が重要である。実は,古典の数々も,とくに困難の多い現代を生きる人生の書として,ディベートの種にもなるはずである。コンピュータで打ち込んだデータを処理することで卒論を書く,そういう時代だからこそ教育においては部分と全体とを把握する能力と意欲がほしい。学生,生徒の頭脳と精神を活性化するような迫力がほしい。研究は地味なものだが,教育の原動力として働くものでありたい。一方,外国人を対象とする日本語教育の分野では,外国語を専門とする学部出身の教員が多く,外国人をふくめて,従来とやや異なる視点から日本語を検討する。伝統的観点からすれば,あるいは物足りず,または外国の理論だけをよしとする傾向には問題もあろう。が,従来の,日本語を母語とする話者の視点とは異なる視野の広がり,また,文法研究の進展も見られ新しい「日本語学会」ではこの傾向も受け入れる機会になろう。その他に,現在,教育の場で困難な問題とされている「音声言語」がある。コミュニケーションの問題は重要であるが,日本語の音声については一般に理解が足りない。しかし,1989年,筆者は文部省の重点領域研究「日本語音声」(正式には「日本語音声における韻律的特徴の実態とその教育に関する総合的研究」)を申請し採択された。終了時には参加の研究者数は281名であった。国語学,言語学,方言学等の研究者が主体であったが,情報工学,電子工学,音声言語医学などいわゆる理系の研究者,また,教育関係,放送関係者も糾合して,日本語音声の韻律的特徴,つまりアクセント,イントネーション,リズム,ポーズ等の総合的研究を目指した。そこでは国語教育との統合の難しさを実感した。が,現在,そこで収集された音声データベースを利用して教材用CD ROMを数名の共同により作成中である。大学の国語学,日本語学の教育に使われる予定であり,これは画期的なことと思われる。そこで,次には,上記の「日本語音声」をなぜ考えたか,その発想について。また,新しいCD ROM教材について少しのべよう。周知のことだが,日本語アクセントは,歴史的,地域的対応関係が明らかにされている。これは,前世紀最大の国語学的,言語学的知見と考えられるものである。まず,井上・奥本(1916)による古文献に付記された声点の発見があった。そして,かの,金田一春彦(1937,1974)による類聚名義抄の声点の分類と方言アクセントとの関係の明示,服部四郎(1931 33)の方言アクセントの対応関係,平山輝男(1957等)の実地踏査による方言アクセントの収集,これらが基礎となって現在も研究は継承され,全国の方言アクセントのほぼ全貌が明らかにされている。この日本語研究は誇りに思ってよい。ところが,各地の貴重な方言アクセントが近年急激に変化している。このままでは,先学の貴重な研究成果も真偽さえ疑われる時代がくるかもしれない。従来,日本語アクセントは一般に各自が聴取により記号化して論じられてきた。が,各地域の生粋の方言話者が健在のうちに,全国共通の内容について,日本全国のアクセント,イントネーション等の発話者声を録音し,音声データベース化する必要があると考えた。全国100地点の高年齢者の音声収集がこれである。また,変化過程を捕らえるために,各都市の年齢別音声の収集も計画した。当時,デジタル録音機が開発されたと知って,研究の申請を決意した。間に合った,というのが実感である。これが推進できたのは,参加された方々の熱意と協力によるものであった。教育材料としても,記号化された資料を提示されるのと,音声を聞いて自ら比較し,考えるのとでは価値が異なる。今回作成の教材CD ROMでは,まず,音声の生成とアクセントの特徴,知覚を実感し,一方,各地域の方言話者によるアクセントを聞いて分類し,さらに,古文献の声点により先人の業績を実感するとともに,高年齢から小学生までの現実に生じているアクセントの変化を確かめる。いわば,日本語の音声のうち,まずアクセントを総合的に体験し考える,一つの試みである。今後の「日本語学」に何か示唆することがあれば幸いと考えて,敢えてここに紹介させていただいた。学会の再出発に声援を送り,この学会の前途に期待をもちたい。
著者
山口 美代子 樋上 純子 北村 由香里
出版者
園田学園女子大学
雑誌
園田学園女子大学論文集 (ISSN:02862816)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.329-337, 1994-12-30
被引用文献数
3

1.さつまいもの糖化の適温は,65℃前後であった。2.さつまいもの糖化酵素の糊化デンプンに対する活性適温は,55℃前後であり調理の際の糖化適温とは,一致しなかった。3. 65℃での糖化酵素の作用は10分以内にほぼ完了した。4. 65℃前後の通過時間と糖の生成量との間には関連が認められた。5.各種加熱方法による生成糖量は,生いも1g当たりに換算すると乾式加熱よりも湿式加熱の方が多かった。6.生成糖量が少ないにもかかわらず,焼きいもが甘く感じられるのは蒸発水分が多く糖が濃縮されたためと考えられる。
著者
杉藤 美代子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.52-57, 2005-12-31 (Released:2017-08-31)
被引用文献数
1

This paper explains a speech database of prattle and chat of a female baby 'Emi' with her mother. They were recorded for about one hour almost every month since Emi was six months old until she became a child of forty-five months old. You can listen and analyze how she gradually develops her vowels and consonants, and after many repetitions of failure and success, she acquires words and sentences to chat fluently in her native language, Osaka Japanese.
著者
中山 裕子 大西 秀明 中林 美代子 大山 峰生 石川 知志
出版者
日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.292-298, 2008
参考文献数
17

本研究の目的は,肩甲下筋の機能的な違いを明らかにすることである。対象は健常成人6名とし,運動課題は5秒間の肩関節最大等尺性内旋運動で,筋力測定器(BIODEX)を使用した。計測肢位は肩甲上腕関節回旋中間位,内旋45度位,外旋45度位で,上肢下垂位,屈曲60度・120度,肩甲骨面挙上60度・120度,外転60度・120度の計21肢位であり,肩甲下筋上部・中部・下部の筋活動をワイヤー電極にて導出した。筋電図積分値は内外旋中間位上肢下垂位の値を基に正規化した(%IEMG)。最大トルク値と%IEMG値は挙上角度による比較を行った。肩内外旋中間位・肩甲骨面挙上および外転位での内旋運動において,最大トルク値は,120度の値が下垂位および60度の値より有意に低く,運動肢位により内旋トルクの変化が見られた。また,%IEMGについては,内外旋中間位・外転において,肩甲下筋上部は,下垂位が60度および120度に比べ高い傾向が見られた。また,内外旋中間位・肩甲骨面挙上において,肩甲下筋中部は,60度の値が,下垂位および120度の値に比べ高い傾向が見られた。下部においては,120度の値は下垂位,60度に比べ高い傾向が見られた。以上より,肩甲下筋は肩内外旋中間位における挙上角度の変更により上腕骨長軸に対し垂直に近い線維が最も強く肩関節内旋運動に作用することが示唆された。
著者
石毛 美代子 新美 成二 森 浩一
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.347-354, 1996-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
25
被引用文献数
4 3

声帯振動の状態を調べる方法の一つにElectroglottography (以下EGG) がある.EGGは非侵襲的で, 操作が容易, かつ装置が高価でないなど, 音声の研究のみならず臨床においてもすぐれた有用な特徴を持っている.欧米では音声障害患者のルーチンの検査として用いることも少なくない.しかしわが国においては, EGGを使用している施設はむしろ限られており, 声帯振動の一般的な評価方法として普及しているとはいい難い.そこで, あらためてEGGの原理や必要最小限の装置としてどんなものがあれば実際に使用することができるか, 波形から声帯振動の何がわかるか, さらにEGGの模式波形と実際の波形はどのように異なるか, などについてこれまでの研究結果を概説し, EGGが声帯振動の評価として, また音声訓練のバイオフィードバックとして, 簡便でかつ有効な方法であることを述べた.
著者
杉藤 美代子
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.74, pp.57-82, 1978-10-31 (Released:2010-11-26)
参考文献数
15

The kinds and number of word accent types of Japanese differ according to the dialect. Some dialects lack phonological distinction of word accent types. Systematization of accent types and distribution of dialectal accent areas have already been investigated by many scholars but quantitative studies concerning the accuracy of identification of accent types have rarely been tried before.Using synthetic stimuli, the auther conducted some identification tests of word accent types on high school students in six cities, which covered four different dialectal accent areas. In addition, stability of dialectal accent types pronounced by many informants in Nagasaki was compared with that in Osaka, and the Nagasaki dialect was found more unstable in producing accent types than the Osaka dialect.As the result of some perception experiments, individual differences were found both in the categorical boundary and in the identification accuracy. Dialectal difierences in boundaries were also found between certain accent types when one of the types was meaningless for certain dialectal subjects. The identification accuracy of subjects in Osaka, Tokyo, and Osaka had no significant difference, while it was significanly lower in Nagasaki where production of accent was unstable, and also in Fukui and Yonezawa whose dialects lack phonological distinction of accent types.Accent perception was presumed to have some connection with accent production.
著者
植木 琢也 平岡 俊也 大澤 美代子 黒川 理加 塚本 佐保 辻 恵子 矢野 実穂 横島 由紀 萩原 章由 松葉 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11585, (Released:2019-09-25)
参考文献数
47

【目的】回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟における脳卒中患者の身体活動量を生活活動度計により定量的に評価し,入院時と退院時における変化や自立歩行の可否による相違を明らかにすること。【方法】当院回リハ病棟に入院した脳卒中患者169 名を対象とした。対象に生活活動度計を連続24 時間装着し,回リハ病棟入院時および退院時における身体活動量(歩行・立位・車椅子駆動・座位・臥位の各時間)を測定した。24 時間,日中,理学療法中,作業療法中の各時間帯別に入院時と退院時の比較,歩行介助群と自立群との比較を行った。【結果】退院時,歩行や立位の時間が増加する一方,臥位の時間は減少した。歩行や立位の時間は介助群で短い傾向にあった。【結論】回リハ病棟入院中の脳卒中患者の身体活動量は入院時と比べ退院時には増加する。一方で歩行自立に至らない患者の立位歩行時間は相対的に短く,身体活動量の確保に向けた方策の検討が必要である。