45 0 0 0 OA 手掘り中山隧道

著者
藤原 俊雄 南木 均
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.361-366, 1999-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
2

中山隧道は新潟県の山間地、山古志村小松倉地区に在り、1998年12月に新トンネルが開通して50年間余の大役を終えた。手掘り隧道建設以前の小松倉は集落戸数が60戸余り、生活の不便はいうにおよばず、積雪深4m以上となる冬季には医療の恩恵を受けられぬまま生命の危険にさらされていた。地域社会の将来を考え、集落の人々は私財を投げうち、自らの手でツルハシを握り、長さ約1kmに及ぶ全国一の手掘り隧道を昭和8年から16年間の歳月をかけて掘り抜いた。住民の力にあまる長大な隧道を自らの手で造り上げた精神と行為は、改めて社会資本の意義、役割を考えさせる貴重な土木遺産であり、さまざまな角度から研究するに値する遺産である。
著者
補永 薫 藤原 俊之
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.957-960, 2017-12-18 (Released:2018-01-10)
参考文献数
12

廃用症候群では,呼吸器系のみならず筋骨格系,精神系,循環器系など幅広い器官における変調をきたし,しばしば息切れ症状が発生する.息切れはさまざまな動作や活動に対する心理的,物理的なハードルとなり,患者のADL,QOLの低下因子となる.息切れのへの対処においては,その発生状況を詳細に把握したうえで,悪化の予防,教育,運動療法を行う.必要であれば補助具や環境整備も考慮する.整容動作など,一見負荷が少なそうにみえる動作でも,上肢の挙上位の保持が必要な動作では息切れをきたしやすいため注意が必要である.単一の介入のみで息切れ症状を克服することは困難であることが多く,総合的に介入を行っていく必要がある.
著者
飛山 義憲 藤野 雄次 高橋 哲也 藤原 俊之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.353-361, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
24

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)前後のリハビリテーションプロトコル(以下,プロトコル)の実施状況およびその内容を調査することを目的とした。【方法】対象はTKA 前後のリハビリテーションを実施している442 施設とし,TKA 前後のプロトコルの有無とその内容を問う自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。回答の記述に加え,手術件数および地方区分によるプロトコルの実施割合の違いを検討した。【結果】術前のプロトコルの実施割合(45.4%)は術後(87.6%)に比べ低く,術後プロトコルは手術件数の四分位範囲でもっとも少ない群に比べもっとも多い群,次いで多い群が有意に高い実施割合を示した。術前後ともに地方区分による有意な違いは認めなかった。【結論】術後に比べ術前のプロトコルを実施している施設は少なく,術後は手術件数によるプロトコルの実施割合の違いがあることが示された。
著者
羽場 政法 駒澤 伸泰 藤原 俊介 上嶋 浩順 水本 一弘
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.241-246, 2016-03-15 (Released:2016-04-20)
参考文献数
15

日本麻酔科学会が行っている麻酔関連偶発症例調査によると手術による大量出血は,死亡原因の上位を占めている.また術中発症の病態として「急性冠症候群」は発症頻度も高く,心停止への移行頻度が高い.二次救命処置講習会で学んだことを実践するには,二次救命処置講習会受講により,適切な知識を得た後,1.手術室の状況に合った患者モデルの使用,2.原因疾患に応じた知識の習得,3.症例に対応するための環境整備の検討,4.メディカルスタッフとのチームコミュニケーションを学ぶ方法が必要である.Problem-based Learning Discussion形式のトレーニングは,それぞれの受講生に応じた知識の体系化が可能であり,ディスカッションを通してチームコミュニケーション(ノンテクニカルスキル)をつくることも期待される.チーム医療を推奨する周術期管理において,これらのPBLD形式のツールが医療安全向上に貢献できるのではないかと考えた.
著者
正田 誠 松浦 明 藤原 俊六郎 仲 勇治
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

大量の食品廃棄物が排出され、適当な処理方法が無い一方で、農業においては、植物病が多発し、化学農薬の過剰使用が起こっている。この問題を同時に解決するために、以下の研究を遂行した。(i)我々が分離した枯葉菌B.subtilis RB14を用い、オカラを培地とした固体培養物を微生物農薬として生産するするために、枯葉菌によるオカラの固体培養のスケールアップにおける最適条件の検討を行った。最適水分、最適温度、通気方法、センサー配置、冷却方法などの検討とそれらの制御方式の解析を行い、オカラの成分変化と抗菌物質の生産の関係の解析を行った。(ii)この培養でできた有機物の肥料効果および微生物農薬効果をポット試験にて実証した。枯葉菌によるオカラ分解物の土壌施用と分解過程の解析を行い、オカラの有機炭素、有機窒素の土壌中での変化をゲルクロ分析し、枯葉菌およびこの菌の生産する抗菌物質iturin Aおよびバイオサーファクタントsurfactinの動態変化を検討した。(iii)枯葉菌によるオカラ分解物の農薬作用の試験の実施を病原菌で汚染した土壌を用い、トマトについて実施した。病原菌はRhizoctonia solani,を対象とし、枯葉菌数の計測、iturin Aおよびsurfactinの土壌中の定量も行なった。(iv)抗菌物質iturin Aおよびsurfactinの合成に関与する遺伝子の解析とこの遺伝子と病害の抑制との関係を明らかにした。本菌の遺伝子解析および組換え体を用いた。植物試験を行い、その抑制メカニズムをあきらかにした。(V)神奈川県における有機物質の流れに関する調査を行い、システム作成の基礎を作った。
著者
藤原 淳 森本 賢治 藤原 俊介 西村 渉 田中 源重 南 敏明
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0014, (Released:2014-09-30)
参考文献数
9

硬膜外ブロック後の合併症の頭痛には,硬膜穿刺後の髄圧性が一般的であるが,硬膜下腔やくも膜下腔に迷入した空気による気脳症由来も知られている.今回,生理食塩水を用いた抵抗消失法での腰部硬膜外ブロック後に気脳症を生じた症例を経験したので報告する.症例は70歳代,女性.腰部脊柱管狭窄症増悪のため,腰部硬膜外ブロックを施行した.ブロック施行後,突然激しい頭痛を訴えたため,頭部CT撮影を行った.橋から延髄にかけて空気像を認め,1週間の入院加療となった.頭蓋内へは少量でも空気が迷入すると集積する部位によっては頭痛が引き起こされる.空気を用いた抵抗消失法による硬膜外ブロック施行では気脳症発症を助長するとの報告があり,当院では生理食塩水を用いた方法を推奨している.しかし,生理食塩水を用いた手技においても気脳症を発症したことから,施行時,穿刺方法以外に,穿刺部位や硬膜外ブロックの適応についても十分な検討が必要である.
著者
藤原 俊哉 片岡 和彦 松浦 求樹 妹尾 紀具
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.753-759, 2008-07-15 (Released:2009-02-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

肺癌診療においてFDG-PET検査の有用性は知られているが,偽陽性,偽陰性症例も少なからず認められる.我々は,2005年7月~2007年6月までの2年間で良悪性診断または病期診断の目的でPET検査を行い,最終的に当施設で手術を施行した283症例を対象として,その有用性と問題点について検討した.内訳は男:女=156:127,平均年齢は66.3歳であった.良悪性診断の感度72.7%,特異度60.5%で,腫瘍径20mm以下のものでは偽陰性が多かった.組織型では肺胞上皮癌の成分を多く含む高分化腺癌や粘液の多い病変は多くの場合PET陰性であった.その一方で細胞密度の高い扁平上皮癌などは高感度に検出された.リンパ節転移診断は感度68.0%,特異度93.2%で特異度は高いものの偽陰性が多く,過小評価をする可能性があった.PET検査の有する長所,短所を十分理解し,臨床的に活用していく必要がある.特に腺癌では原発病巣が偽陰性を呈することが多く,CT診断と併せて手術適応を決定すべきである.
著者
林 祐介 吉原 聡 吉田 久雄 見川 彩子 林 明人 藤原 俊之
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11613, (Released:2019-11-22)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)術後患者における術後早期膝関節可動域が自立歩行獲得期間および在院日数に及ぼす影響を検討した。【方法】TKA 術後患者78 例を対象とした。年齢とBody Mass Index,術後4 日時点の膝関節可動域(自動・他動屈曲,自動・他動伸展),運動時痛と歩行時痛(Visual analogue scale),炎症所見(血清C 反応性蛋白)と術後7 日時点の膝関節伸展筋力(ハンドヘルドダイナモメーター)を評価し,在院日数および自立歩行獲得期間に与える影響を重回帰分析(ステップワイズ法)にて検討した。【結果】重回帰分析の結果,在院日数および自立歩行獲得期間に有意に影響する因子は,それぞれ自動膝屈曲可動域と年齢,および自動膝屈曲可動域と自動膝伸展可動域が抽出された。【結論】TKA 術後患者において,術後早期の自動膝関節可動域の拡大は,自立歩行獲得期間および在院日数の短縮に影響を与える可能性がある。
著者
村岡 慶裕 正門 由久 富田 豊 藤原 俊之
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.453-458, 2000-07-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
11
被引用文献数
6 6

治療的電気刺激(TES)の作用機序を解明する目的で,脳卒中患者15名の前脛骨筋にTESを行い,その前後で,ヒラメ筋H波と前脛骨筋H波を指標とし,前脛骨筋とヒラメ筋間の2シナプス性Ia相反抑制を観測した.前脛骨筋Ia線維からヒラメ筋へのIa相反抑制は15名中6名が有意に増加し,一方,ヒラメ筋Iaから前脛骨筋へのIa相反抑制は,前脛骨筋にH波の誘発可能であった3名全ての患者が有意に減少した.TESは,電気刺激した筋肉の抑制介在ニューロンからその拮抗筋の運動ニューロンと抑制介在ニューロンへのシナプスの伝達効率を増強させ,それが,主動筋の随意性の向上,拮抗筋の痙縮の抑制に関与している可能性が示唆された.
著者
藤原 俊之 園田 茂 三田 しず子 岡島 康友 木村 彰男 千野 直一
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.253-258, 2001-04-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
16
被引用文献数
4 5

Functional Assessment Measure (FAM)日本語版を外傷性脳損傷(TBI)患者に用い,Short Behavior Scale (SBS), Mini-Mental State Examination (MMSE), Disability Rating Scale (DRS)との比較を行った.またFAMを用いて,脳血管障害患者とのADL構造の比較を行った.FAM合計点とSBS,MMSE,DRS得点とは統計学的に.有意な相関を認めた.また項目別自立度の検討ではTBI群では特に脳血管障害(CVD)群と比較して,問題解決,記憶,見当識,注意,安全確認の項目での自立度が低く,いわゆる認知機能の障害がADLに強い影響を与えていることが客観的に明らかとなった.FAMはTBI患者の能力低下の評価法として有用と考えられた.
著者
藤原 俊之 園田 茂 三田 しず子 岡島 康友 木村 彰男 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.253-258, 2001-04-18
参考文献数
15
被引用文献数
2

Functional Assessment Measure (FAM)日本語版を外傷性脳損傷(TBI)患者に用い,Short Behavior Scale (SBS), Mini-Mental State Examination (MMSE), Disability Rating Scale (DRS)との比較を行った.またFAMを用いて,脳血管障害患者とのADL構造の比較を行った.FAM合計点とSBS, MMSE, DRS得点とは統計学的に有意な相関を認めた.また項目別自立度の検討ではTBI群では特に脳血管障害(CVD)群と比較して,問題解決,記憶,見当識,注意,安全確認の項目での自立度が低く,いわゆる認知機能の障害がADLに強い影響を与えていることが客観的に明らかとなった.FAMはTBI患者の能力低下の評価法として有用と考えられた.(リハ医学 2001;38:253-258)
著者
藤原 俊義 田中 紀章
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.11-18, 2008-06-30 (Released:2008-12-28)
参考文献数
19
被引用文献数
3 5

ウイルスは本来ヒトの細胞に感染,増殖し,その細胞を様々な機序により破壊する.遺伝子工学技術によりこの増殖機能に選択性を付加することにより,ウイルスを癌細胞のみを傷害する治療用医薬品として用いることが可能となる.Telomelysin(OBP-301)は,かぜ症状の原因となるアデノウイルスを基本骨格とし,ウイルス増殖に必須のE1遺伝子をテロメラーゼ・プロモーターで制御するよう改変された国産のウイルス製剤である.In vitroでは肺癌,大腸癌,胃癌,食道癌,頭頸部癌,乳癌,肝癌,膵癌,前立腺癌,子宮頸癌,卵巣癌などに対して広範な抗腫瘍活性がみられ,in vivoでは腫瘍内投与による有意な増殖抑制が認められるとともに,ウイルスは血中を循環し,遠隔部位の腫瘍内でも増殖することが確認された.固形癌に対するTelomelysinの第I相臨床試験は,米国食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)の治験承認のもと米国にて進行中である.TelomelysinにGFP蛍光遺伝子を搭載したTelomeScan(OBP-401)は,高感度蛍光検出装置により微小癌組織を可視化することができ,診断用医薬品として応用可能である.原発巣内に投与されたTelomeScanは所属リンパ域へ拡散し,微小リンパ節転移でGFP発現を発する.高感度プローブあるいはビデオスコープにより転移リンパ節を同定することができ,本技術は微小癌,微小転移の早期発見に有用であるとともに,優れた外科ナビゲーション・システムとなりうると期待される.本稿では,従来のがん治療とは異なる新たな戦略として開発されているこれらの新規ウイルス製剤のがん診断・治療への応用の可能性を概説する.
著者
坪井 謙 八坂 剛一 田村 洋行 榎本 真也 中山 祐介 藤原 俊文 百村 伸一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.524-528, 2011-08-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
8

病院前救護においてAutoPulse®️の使用が蘇生に奏効し,神経学的予後が良好であった心肺停止(cardiopulmonary arrest,以下CPA)患者の1例を経験した。症例は40歳,男性。自宅内で卒倒し呼名に反応しないため救急要請された。bystanderによる心肺蘇生はなかった。覚知6分後に患者と接触したが,心電図モニター上心静止であった。覚知9分後より心肺蘇生を開始し,AutoPulse®️を装着・作動開始した。覚知17分後当院搬入時心静止であったが,その後心室細動となり計4回の除細動にて心拍再開した。左冠動脈回旋枝に閉塞を認め,冠動脈ステント留置術を施行した。術後低体温療法を施行し,第39病日に自立生活可能となり退院した。CPAの病院前救護においてAutoPulse®️の有用性が示唆された。
著者
阿瀬 寛幸 髙木 辰哉 藤原 俊之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.633-640, 2021-10-15 (Released:2021-10-15)
参考文献数
17

乳がん転移性胸椎腫瘍により切迫麻痺を認めた症例に対し,最小侵襲脊椎安定術前後の入院作業療法を実施した.当初,背部疼痛や神経症状に加え,家事や子育てが行えないことによる精神的・社会的苦痛を認めていた.術前安静時から生活行為の評価を行い,術後の動作指導を円滑に行うことで術後8日目に退院し,家事と子育てに復帰した.術後1年が経過し,役割を変えることなく生活を送っている.乳がんは骨転移後も放射線や化学療法の併用により長期予後が見込めることが多い.術前・術後の症状や生活行為を他職種とともに評価し,骨転移部に対する愛護的な動作指導や環境調整,社会資源の提案など退院後の生活に向けた支援が有効であったと考えられた.
著者
宮田 知恵子 藤原 俊之 補永 薫 辻 哲也 正門 由久 長谷 公隆 里宇 明元
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.301-307, 2008-05-18 (Released:2008-06-10)
参考文献数
17

上肢局所性ジストニア患者においては,大脳皮質興奮性の増大が認められ,皮質興奮性を低下させる低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が,症状の改善に有効であることが知られている.より簡便な経頭蓋直流電流刺激(tDCS)も皮質興奮性の修飾をもたらすことが報告されており,局所性ジストニアの治療に有効な可能性がある.さらに装具を用いた上肢運動の抑制により,局所性ジストニアが軽減することも報告されている.そこで,われわれは,上肢局所性ジストニアに対して,tDCSと装具の併用療法を施行した.Cathodal tDCSは刺激強度1 mA,刺激持続時間10 分間,1 日1 回,5 日間連続して施行し,その後,右母指と右示指の指節関節固定装具を装着させた.5 日間連続のtDCSの後には,書字動作時の長母指屈筋と第一背側骨間筋の過剰な筋活動が減少し,刺激間隔20 ms,100 msにおける相反性抑制ならびに皮質内抑制の出現を認めた.さらにスプリントの装着により,その効果は3 カ月後にも維持されていた.tDCSとスプリントの併用療法は,局所性ジストニアの治療に有効である可能性が示唆された.
著者
宮崎 有 駒澤 伸泰 城戸 晴規 兵田 暁 藤原 俊介 南 敏明
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.47-50, 2017

小児の複合性局所疼痛症候群(CRPS)に対して末梢神経ブロックを施行し,症状改善を認めた症例を経験したため今回報告する.症例は13歳,女性.転倒による右足関節の捻挫に対し,近医でギプス固定を受けた.その後3カ月間受診せず,両松葉杖での免荷歩行をしていた.ギプス脱後,再度3カ月間受診をせず,右足部の腫脹,痛み,運動障害を認めたため,総合病院整形外科を受診し,CRPSと診断された.入院のうえ加療するも痛みによりリハビリテーション困難となり,当院ペインクリニック科に紹介となった.持続硬膜外麻酔を施行するも,リハビリ中の体動による抜去を繰り返したため,持続坐骨神経ブロック,大伏在神経ブロックを併用し,症状の改善を認めた.さらに病院関係者だけでなく両親および学級担任を含めた心理社会的サポートを追加することで,運動療法を継続でき寛解を得た.小児のCRPSに対して心理社会的なサポートおよび末梢神経ブロックと運動療法の併用は有効な可能性がある.