著者
川島 茂人 藤田 敏男 松尾 和人 芝池 博幸
出版者
日本花粉学会
雑誌
日本花粉学会会誌 (ISSN:03871851)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.5-14, 2004-06-30

遺伝子組み換え体作物が生態系に与える環境影響を評価する研究に関連して,遺伝子組み換え体作物の花粉が標的外の昆虫を殺傷してしまうことや,近縁種への遺伝子のフローが問題となっている.このような問題に適切に対応するためには,問題となる作物に適した空中花粉自動測定手法の開発が必要である.そこで我々は,代表的な組み換え体作物であるトウモロコシを対象として,簡易かつ連続的に自動計測が可能な花粉モニターを開発するとともに,野外において,トウモロコシ群落の開花期間を通して,気象要素とともに花粉飛数量の計測を行った.その結果,トウモロコシ花粉モニターによる花粉飛散量は,空中花粉測定法として広く用いられているダーラム法による花粉飛散数との相関が極めて高く,相関係数は0.95となった.花粉モニターで計測されたトウモロコシ花粉飛数量の経時変化と気象要素の変化から,花粉飛散量の日変動パターンは,気象要素の日変動パターンとは異なった形状を示していること,午前中にピークがあり,正午にはピーク濃度の半分以下に減少していること,日の出後の濃度増加は急であるが,ピーク後から夜にかけての濃度減少は緩やかであることなどがわかった.また,花粉飛数量は気温の時間的変化率と関係しており,気温上昇量が大きいときに,大量の花粉が放出され,群落外に拡散することが明らかになった.
著者
藤枝 郭俊 高橋 〓 藤田 敏美 岩崎 昭人 奥山 政広
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.197-200, 1990

Aircraft adopting USB(Upper Surface Blowing) concept as a powered lift system achieves powered lift augumentation by deflecting the engine exhaust flow over the wing and the extended USB flap by Coanda principles. To obtain higher powered lift, optimal engine exhaust nozzles design and engine allocation which enhance effectively exhaust flow turning performance are important factors.<BR>This report describes the exhaust flow characteristicsin the case of varying space between two engines installated on the semi-span USB powered lift model. Measurements of Exhaust flows behind two engines were made by a traversing wake rake with 5-holes pitot tube in NAL 2m×2m Gust Wind Tunnel.
著者
岩本 誠一 木村 寛 藤田 敏治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.359-363, 2014-07-01

映画「ダ・ヴィンチ・コード」ではフィボナッチ数が暗号として用いられている.この報告では,一対の主問題と双対問題を導入して,その最適解を交互に編むとこの暗号が得られることを示す.映画では8つの数字からなる暗証番号が中心的な役割を果たしている.本論文ではこの暗証番号が双対最適化理論の格好の教材でもあることを数学的に示す.主問題と双対問題の最適解の間に美しい関係-フィボナッチ相補双対性-が成り立つことを示している.
著者
安東 克之 伊東 康 藤田 敏郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.241-246, 1984-03-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
32

甲状腺機能亢進症における循環動態異常は交感神経充進状態に類似している. そこで,本症における交感神経系の役割を調べる目的で, 7名の本症患者にプロプラノロール 60mg/日を 3 日間投与し, 循環動態, ホルモン動態の変化について検討した. プロプラノロール投与により, 心拍出量, 心拍数は有意の減少を認めたが, 一回拍出量は変化しなかった. さらに, 血漿ノルエピネフリン濃度も有意に低下し, 血漿ノルエピネフリン濃度と心拍出量の間には有意の正の相関が認められた.血漿レニン活性も有意の減少を示した. 以上のことから, プロプラノロールは甲状腺機能亢進症の循環動態異常を改善し, これには効果器のβ受容体阻害作用に加えて, 中枢神経系を介するノルエピネフリンの放出の抑制やシナプス前 β 受容体遮断によるノルエピネフリン遊出阻害作用も重要な役割を果していることが示唆された. また, レニンーアンジオテンシン系の関与も考えられた.
著者
西田 十紀人 桂田 雅大 藤田 敏忠 角 泰雄 生田 肇 大瀬 貴之
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.319-323, 2011-03-01

33歳女。患者は上腹部痛および嘔吐を主訴とし、2004年から潰瘍性大腸炎の治療通院中であった。今回、CTで横行結腸左側に直径5cm大の嚢胞性病変と、これを先進部とした同心円状の腸重積像が認められた。また、注腸造影では盲腸内に突出する球状の陰影がみられ、大腸内視鏡では盲腸の粘膜下腫瘍状隆起の頂点に、虫垂開口部と思われる陥凹部が確認された。以上より、本症例は虫垂粘液嚢腫が先進部となった腸重積と考えられ、腹腔鏡補助下回盲部切除術ならびにD2リンパ節郭清が施行された結果、病理組織学的所見では虫垂に単房性粘液嚢胞、内壁に平坦で軽度の乳頭状増殖がみられ、一層の粘液性上皮で覆われていた。一方、悪性所見はなく、最終的に虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された。尚、術後の経過は良好であった
著者
木村 由貴 竹林 崇 徳田 和宏 海瀬 一也 藤田 敏晃
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.423-429, 2017-08-15

要旨:脳卒中患者は脳卒中によって上下肢の麻痺が生じる.特に上肢麻痺は脳卒中患者のQOLを低下させる.複数の研究者は,分枝粥腫病(Branch Atheromatous Desease;以下,BAD)の上肢の機能予後は,通常の脳卒中に比べ,不良と報告している.今回,我々は入院後2日の間に麻痺の悪化を認めた中等度の上肢麻痺を呈したBAD患者を担当した.急性期から,上肢麻痺に対して対象者の意味のある作業を用いた課題指向型アプローチを提供した結果,上肢機能は臨床上意味のある最小変化を超える改善を認めた.本事例報告では,経過と結果について,BADの梗塞の深さ,梗塞層の大きさ,さらには発症当初の身体機能を用いた予後予測に関する考察を加えて報告する.
著者
木村 妙子 木村 昭一 自見 直人 角井 敬知 冨岡 森理 大矢 佑基 松本 裕 田邊 優航 長谷川 尚弘 波々伯部 夏美 本間 理子 細田 悠史 藤本 心太 倉持 利明 藤田 敏彦 小川 晟人 小林 格 石田 吉明 田中 颯 大西 はるか 締次 美穂 吉川 晟弘 田中 正敦 櫛田 優花 前川 陽一 中村 亨 奥村 順哉 田中 香月 Kimura Taeko Kimura Shoichi Jimi Naoto Kakui Keiichi Tomioka Shinri Oya Yuki Matsumoto Yu Tanabe Yuki Hasegawa Naohiro Hookabe Natsumi Homma Riko Hosoda Yushi Fujimoto Shinta Kuramochi Toshiaki Fujita Toshihiko Ogawa Akito Kobayashi Itaru Ishida Yoshiaki Tanaka Hayate Onishi Haruka Shimetsugu Miho Yoshikawa Akihiro Tanaka Masaatsu Kushida Yuka Maekawa Yoichi Nakamura Toru Okumura Junya Tanaka Kazuki
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学フィールド研究・技術年報 = Annals of Field Research and Technology Mie University (ISSN:13496824)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-32, 2018-10

In this study, we had investigated the benthic deep-sea fauna using the dredge and beam trawl in the region from the continental shelf to the continental slope of the Sea of Kumano, Mie Prefecture, during the No.1722 research voyage of the training ship Seisui-Maru of Mie University. The survey was carried out at 16 stations covering a depth range of 113-1059 m. The results of the survey, 14 phyla had been confirmed. Arthropod, echinoderm, annelid and molluscan macrobenthos were collected from all of the stations. The phylum number of each station was in the range from 4 to 11. The largest number of phyla had been confi rmed at St.10D of boulders bottom(768-800 m depth). Meiobenthos confi rmed in our sample were kinorhynchs, nematodes, tardigrades, loriciferans and small arthropods such as tanaidaceans, copepods and cumaceans. In addition to free-living species, parasitic copepods, isopods, platyhelminthes, acanthocephalans and nematodes had been found in fish, crustaceans and polychaetes.
著者
中尾 睦宏 野村 忍 久保木 富房 末松 弘行 下澤 達雄 藤田 敏郎
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.71-78, 1995

高血圧患者10名を対象にパイオフィードバック療法による白衣高血圧症の降圧効果の検討を行なった。治療前の自己血圧値と医師測定値が収縮期において25mmHg以上差があった者を白衣高血圧群(以上W群;5名),それ以外の者をN群(5名)とした。治療は週1回計4回行なった。治療による自己血圧の低下はわずかであったが,医師測定血圧は,収縮期でW群18mmHg,N群11mmHg,拡張期圧でW群11mmHg,N群8mmHg低下し,W群の降圧が著しかった.また,暗算負荷テストによる血圧上昇もW群の方が治療による抑制が著しかった。本治療法にストレスによる昇圧反応を抑制する効果があり,白衣高血圧によい適応があることが示唆された。
著者
藤枝 郭俊 藤田 敏美 岩崎 昭人 高橋 〓 奥山 政広
出版者
The Visualization Society of Japan
雑誌
可視化情報学会誌 (ISSN:09164731)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.35-38, 1993

The aircraft employing the Upper Surface Blowing(USB) system as a poweredlift technology makes use of the energy of the engine exhoust to augument wing lift. The aircraft with the USB system achieves higher powered-lift by turning full downward the engine exhaust flow. To studying powered-lift characteristics, the wakes of the semi-span aircraft model with USB Powered high lift system were measured by a taversing wake rake with 5-pitot tube in NAL 2×2m Gust Wind Tunnel.<BR>In this report, the characteristics for the wake having different turning angle of exhaust flow are described.
著者
岩本 誠一 前園 宜彦 中井 達 時永 祥三 藤田 敏治
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

従来のポートフォリオ理論では平均・分散基準の確定的最適化を数理計画法によっておこなっているが、本研究においては、数理ファイナンス分野おける新しい評価基準として単一評価クラスと複合評価クラスを導入して、その不確実性の下での動的最適化手法を提案している。とくに、リスクとリターンを確率変数そのものとして取り扱い、制御マルコフ連鎖上で分数型基準の条件つき期待値を再帰的に最適化している。分数型評価は複合評価の典型的な基準の一つであるが、他に、比型、分散などの複合型基準の動的最適化をおこなっている。さらに、動的計画法を中心とした動学的最適化手法として、(1)全履歴法、(2)パラメトリック法、(3)マルコフ法、(4)多段確率決定樹表を開拓し、既存の最適化手法では解けない問題を提案し、これらの最適解を導いた。また、動的最適化手法をより分かりやすく、説得力あるものにするために、各種グラフィックス表示およびその開発をおこなった。とくに、不確実性の下において非加法型評価の多段階意思決定過程の最適化を動的計画法によって行った。具体的には、(1)事前条件付き意思決定過程と(2)事後条件付き意思決定過程の二つを新たに導入し、(3)条件なし(本来の)意思決定過程との最適解の構造およびそのアプローチにおいて三つの過程の相違点を明らかにした。本研究によって、閾値確率制御問題が上述の多様な方法で解けることが明らかになった。とくに、閾値確率最大化問題の逆問題は数理ファイナンスにおけるバリュー・アト・リスクの最小化問題なることがっわかり、バリュー・アト・リスクの最小化に新たに動的計画法・埋め込み法が適用できることになった。この二つの方法はこれまで確定的システムの最適化に多用されて成果を上げてきたが、本研究によって確率システム・あいまいシステムに対しても動的計画法・埋め込み法が適用できることが判明した。したがって、本来不確実性の下で変動するポートフォリオシステムの最適化方法が多様・多彩になってきた。これらはまさしく本萌芽的研究の成果である。
著者
藤田 敏彦 並河 洋
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.31-37, 2006
被引用文献数
1

トゲクモヒトデ科のOphiocnemis marmorataは,通常砂泥底に棲息しているが,インド・太平洋域で鉢水母のビゼンクラゲ類に付着している姿が稀ながら目撃されていた.最近,フィリピンのパラワン島で,多くのビゼンクラゲRhopilema esculentumの傘内や口腕に本種が1〜数個体付着しているのが潜水によって観察された.また,鹿児島で得られたビゼンクラゲにもこれが付着していることが判明し,ビゼンクラゲ類を分散の手段として利用している可能性が示唆された.1.クモヒトデ類の浮遊生物への付着現象はOphiocnemis marmorataのみで見られる珍しい現象であり,ビゼンクラゲへの付着を初めて報告した.付着母体となるのがビゼンクラゲ類に限られていることから,ビゼンクラゲ類に特有な強固な体や複雑な口腕といった形態的な特徴や,内湾性で上下運動を行うといった生態的な特徴が,付着母体になりうる要因であると考えられる.2.Ophiocnemis marmorataの鹿児島での出現は本クモヒトデの日本初記録である.日本国内では砂底での分布記録はなく,この個体が遠方よりビゼンクラゲに付着して運ばれた可能性もある.強い遊泳力を持たない海産底生動物の分散は,通常,生活史の一部である浮遊幼生の時期に行われるが,Ophiocnemis marmorataのビゼンクラゲ類への付着は,浮遊幼生以外での分散という特殊な役割を持っている可能性がある.