著者
高木伸也 佐々木淳
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第58回総会
巻号頁・発行日
2016-09-22

問題と目的 DSM-5が2014年に発刊され,新しく不安症の中に選択性緘黙(Selective Mutism; 以下,SM)が加わった。中でも社交不安症(Social anxiety disorders; 以下SAD)はSMと近い症状があることが知られており,併存する確率が高い(Vecchio et al,2003)。SM自体の研究は臨床心理学の研究としてSMに対する事例研究として行動療法(沢宮・田上,2003)・遊戯療法(上野,2010)などが適用されてその効果が検討されている。しかしSMのメカニズムを明らかにする研究は数少ない。中でも維持期における認知行動モデルが解明されることは、今後の臨床でのより細やかな認知行動療法の適用だけでなく,SM児と日々接している教師・保育士に対して有益な見立てを提供できる可能性を秘めている。 SADの認知モデル(Clark&Wells,1995)はこれまでの研究の蓄積が多い。これを参考にしつつSM独自のモデルを作成することは意義深い。また,SMに関する尺度はSMQ(Selective Mutism Questioner; Bergman,2008)やその日本語版の場面緘黙質問票(以下,SMQ-R; かんもくネット,2011)があるが,これは行動指標を主に捉えているスクリーニング用の質問紙であり,苦手とする状況の最中で考えていること(認知)に着目した尺度は存在していない。そのため本研究では,⑴SMの維持期における認知行動モデルの作成,⑵SMの認知行動尺度の項目作成を目標としたインタビューを行う。方 法手続き 半構造化面接の方法を用い,事前に作成したインタビューガイドに基づいて70分程度のインタビューを行った。SMの症状があった時期の脅威的状況および克服した現在における同様の状況の場合の双方を想定し,その状況下の認知・感情・行動・身体的変化について焦点を当てて質問した。対象者は筆者がSMの治療の経験が豊富な臨床心理士等に依頼し,現在は克服しているSMの経験者の紹介を求めた。インタビューで得られたデータは内容分析によって,質的研究の観点から⑴SMにおける認知行動モデルを作成,⑵SMの認知行動尺度を作成することを念頭においてまとめられた。 なお,本研究は,大阪大学大学院人間科学研究科教育学系研究倫理委員会において承認されている(受付番号15-061)。対象者 現在3名(女性3名)。年齢平均21.3歳であり,過去に緘黙の診断をもっていたのは2名であった。質問紙 インタビューを始める前に,SMの程度を把握するためにSMQ-Rを二枚用意して回答を求めた(一枚目はSMの症状が一番顕著に表れていた時,二枚目は,現在の状態を想定する)。SM時の平均得点は12.3,現在の平均得点は37.3であった。なお,Bergman(2008)によると,健常児は43点,SM児は12点であった。結 果 想起された状況は,「自己紹介の場面」「スピーチの場面」「話すことを強制させられる場面」であった。本研究では,感情,行動,身体的反応のうち特に認知と行動に焦点を当てて報告したい。認知は主に2つに分類することができた。<受動的な認知>と<能動的認知>である。<受動的認知>は「自分の番でどうやってやり過ごそう」「早く終わらないかな」などの受身的な考えやイメージであった。<能動的認知>は「何を話そうかな」「1対1の時のように話そう」などの自発的な考えやイメージであった。また,行動は主に2つに分類された。即ち,<受動的行動>と<能動的行動>であった。<受動的行動>は「先生がもういいよと言うまで待つ」「話せなくなる」などの受身的な行動であった。<能動的行動>は「ネットでコツを調べた」「職場だったら頑張って話すようにする」などの自発的な行動についてであった。 また社交不安症の維持要因として考えられている自己注目や安全行動などは,緘黙を克服した現在においてもなお続いていた。考 察 SMの経験者の認知と行動には受動的側面と能動的側面が共通して見られた。SMの維持期においては受動的側面が多く,克服した現在においては能動的側面が多く見られる傾向が示唆された。そしてインタビューにおける文脈から<受動的認知>が<能動的認知>に変化して,それが<能動的行動>を促進していることが推測された。即ち,受動的体験から能動的体験にシフトしていると捉えることができた。 また,SMを克服した者でも現在において社交不安傾向があったため,SMの維持期は,社交不安の維持期よりもさらに複雑な仕組みを持っていることが考えられる。そのため,今後は,SM独自の維持要因という視点からもデータ収集と分析を行っていく必要がある。 最後に本研究の結果から,SMに対する支援のあり方として,受動的認知という内的な側面に働きかける試みがその糸口となることが考えられた。
著者
出島 健司 竹中 洋 水越 文和 斉藤 憲治 河田 了 高木 伸夫 斎藤 祐子 昌子 均
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.1405-1412, 1992
被引用文献数
21

1989年より1991年の3年間に, 京都府立医科大学耳鼻咽喉科アレルギー外来を訪れたスギ花粉症患者延べ305人を対象に, そのシーズンで初めて発症した (以下初発と略す) 日の統計を行った. 初発日は個体差があり, 約1カ月間にわたって分布するが, 患者数統計では3年とも明瞭な一峰性のピークを示した. 最も多くの患者が初発した初発ピーク日は, 1月1日からの最高気温積算が約450℃, 日最高気温が15℃を越える暖かい日で, ほとんど雨が降らず, 南からの強い風が吹く日になる傾向があると考えられた. このような初発ピーク日は, 花粉飛散開始日より約3週間後で, 本格的飛散開始となる飛散第一ピークより3, 4日前であることがわかった. また, 初発ピーク日より前1週間の間に花粉症患者の発症率が約1割から一気に半数以上まで増加し, 飛散第一ピークの頃には全体の7, 8割が発症していることが明らかとなった. 今回の結果は, 花粉予報や花粉症初期治療を行う上で有用なものとなると考察した.
著者
長谷川 隆明 高木 伸一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.3694-3705, 1999-10-15
被引用文献数
7 10

インターネットの普及にともない,電子メールはコミュニケーションの主要な手段となった.一方,Personal Information Manager (PIM)ソフトウェアの普及にともない,個人情報を計算機で管理するユーザが増えている.ユーザの個人情報として,アポイントメントの日時や場所等のスケジュールや,期限をともなう電子メールの返信等のToDoがあげられる.しかしながら,電子メールにより伝達されるスケジュールやToDoに関する情報の管理は,これらの情報を含む文書の整理やPIMソフトウェアとの連携の際に,電子メールを受信するユーザの人手を必要としていた.本稿では,ユーザが受信した電子メール文書からユーザに伝達されるスケジュールとToDoの情報を抽出する手法を提案する.電子メール文書は,任意の目的への使用と自由な形式による情報伝達のため,文書構造や言語表現が一様ではない.本手法の特徴は,スケジュールやToDoを含む電子メール文書の構造と言語の特徴に着目したレイアウト情報とパターンマッチングを用いた,文書構造の認識と情報抽出および情報の関連付けである.電子メールの実文書を対象とした抽出実験により,電子メールのフィルタリングやPIMソフトウェアへの入力等の実用に耐えうる高い精度で,スケジュールとToDoを抽出できることを示す.As the Internet has become popular,e-mail is now an important means of communication.On the other hand,as the Personal Information Managers (PIM) applications have come into wide use recently,many users manage their schedules,such as event date and event location,and to-do items,such as answers to e-mail messages from someone by the appointed time,with their computers.However,a problem is that e-mail receivers cannot easily sort out messages with these information from many incoming messages and build up a close connection with the receivers'PIMs.Therefore,our goal is extracting these information from the e-mail messages users receive.E-mail is open to any purpose and any format.So these information is not formalized,and message structure and language expression are not uniform.We reveal the characteristics of the structure and language used in e-mail messages and propose a way to identify the structure and extract information by using layout information and pattern matching and relate matched partial information with components of these information.Extraction evaluations demonstrate high recall and precision.Our proposal can be put to practical use,such as filtering messages and inputting the information to PIMs.
著者
小笹 晃太郎 竹中 洋 高木 伸夫 青池 晟
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.1361-1368, 1995
被引用文献数
9

一農山村の小学校児童全員(405人)を対象としてスギ花粉による感作およびスギ花粉症の頻度および危険要因を明らかにする目的で質問票と血清検査による横断的検討を1994年4月に行った. スギ花粉特異的IgE抗体(スギ抗体)陽性者はCAP-RASTスコア1以上が39%, 2以上が35%であった. スギ花粉症有病率はスギ抗体陽性者で確定的症状の者(3・4月に3週間以上症状の続く者)が8%, 疑い症状の者(持続期間は不問)が22%であった. 総IgE抗体価が基準値を越える(250U/ml以上)者は26%であった. スギ抗体価と総IgE抗体価には強い正の相関がみられた. 本人や家族のアレルギー疾患の病歴は, スギ抗体価よりも総IgE抗体価との関連が強く, また, スギ花粉症症状よりもスギ花粉症以外のアレルギー様症状との関連が強かった. 家族による間接喫煙と石油ストーブの使用は, スギ抗体高度陽性と負の関連がみられたが, 中等度陽性では関連がみられなかった. アレルギー素因と喫煙習慣が関連することによる交絡のほか, 鼻粘膜におけるアレルギー反応の特殊性を考慮する必要もあると考えられた.
著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013-10-10 (Released:2014-03-20)
参考文献数
17

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。
著者
高木 伸之 王 道洪
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

冬季雷雲下の風力発電設備において上向きに開始する落雷の前兆現象を3つ確認した。一つは落雷開始の数秒前から数アンペアの電流が流れる前兆電流である。二つ目は落雷前に発生する微弱な発光を伴う放電現象で風車先端から数メートル程度進展して停止する現象である。三つ目は落雷前に風力発電設備周辺での地上電界強度が正または負の極性に偏る現象である。前兆電流については2秒前には落雷の発生を予測できることを確認した。
著者
王 道洪 高木 伸之
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

落雷の最終雷撃過程の観測に特化した高時間分解能・広ダイナミックレンジ・高感度・超ワイドビューを有する超高速光学イメージングシステムを開発した。このシステムをフロリダロケット誘雷実験場に4年間設置し、100個を超す雷撃の最終雷撃過程の観測に成功した。これらの観測データを解析して、最終雷撃過程、とりわけ、帰還雷撃の開始過程を明らかにした。これらの結果に基づき、帰還雷撃のモデルの改良を行った。
著者
長谷川 隆明 高木 伸一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.1, pp.73-80, 1998-01-19
被引用文献数
15

一度に多数の人に情報を伝達できる電子メールは、送信する側にとって都合が良い。しかし受信する側では、人手を介さずに情報を抽出して再利用することができないという問題がある。本稿では、電子メールを介したコミュニケーションにおいて用いられる言語の特徴を分析し、それに基いて構成したパターンを用いたパターンマッチングによって、電子メールからイベントの開催日時や開催場所、期限付きの返信依頼等のスケジュール情報を抽出する方法を提案する。任意の電子メールを対象として、スケジュール情報の抽出を行った実験の結果、十分に実用に耐え得る程度の高い精度が得られたことを報告する。E-mail is convenient because senders can communicate information to many people at one time. A problem is that receivers cannot extract and process the information within the e-mail automatically. We analyze the characteristics of the language used in e-mails and propose a way to extract schedule information, such as event date, event location, and RSVP date, from the text of e-mails by using pattern matching. Experiments using actual e-mails confirm the accuracy of our proposal; schedule information can be extracted from any e-mail with practical levels of performance.
著者
河崎 善一郎 牛尾 知雄 森本 健志 高木 伸之 王 道洪 中島 映至 林 修吾 ARTHUR Jim MAY Peter CHRISTIAN Hugh WILLIAMS Earle HOELLER Hartmut
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、オーストラリア・ダーウィン地域において、雷嵐観測網を構築し観測を実施した。稠密と広域観測装置を併用した観測網を展開し、豪気象局とも連携して、雷放電開始位置とその領域に存在する降水粒子の分布が時々刻々得られ、正負両極性の電荷が蓄積される領域の境界付近に放電開始点が多く分布し、更に稠密観測からその放電路が境界を沿うように進展し、やがて落雷に至る様子が再現された。中和電荷量推定も行い、積乱雲が世界で他に例を見ないほど高くまで成長する巨大積乱雲ヘクターにおいて、ヘクターの成長と共に中和される電荷の位置も上昇する現象が確認された。
著者
王 道洪 高木 伸之 渡邉 貞司
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

雷の前兆現象の解明を目的に2005年と2006年の夏季にそれぞれチベット雷について総合観測実験を行った。それらの観測データを解析して、以下の知見が得られた。1.チベット雷雲は夕方から深夜にかけて発生することが殆どである。雷活動は雷雲によって随分異なる。雷が多い雷雲では一分間20回以上の雷放電が観測されており、少ない雷雲では全放電数が数回程度にとどまる。2.2005年度観測できた雷雲の殆どは地上で主たる正極性電界を示したが、2006年度観測できた雷雲の殆どが地上で主たる負極性の電界を示した。前者の場合、雷の9割以上が雲放電であり、落雷の数が極めて少ない。後者の場合、普通の夏季雷雲と同じ、落雷が2〜3割合を示す。普通の雷雲の下部に正極性のポケットチャージがあり、これが落雷を誘発するとされている。正極性電界を示すチベット雷雲の場合、このポケットチャージはむしろ主電荷領域であり、その下に落雷を誘発する逆極性のマイナスポケットチャージがない。これは正極性電界を示すチベット雷雲において落雷があまり発生しない原因と推測している。3.雷の開始場所は明らかに高度が高い層と低い層に分かれており、それぞれの場合、その後の雷放電リーダが異なる特性を示す。雷の開始に関して、負極性リーダが見かけ上最初に伸びるとの説が主流になっているが、今回の研究では始めて正極性リーダのものと負極性リーダのものと両方が存在することを突き止めた。4.雷雲の発達段階によっては落雷の割合が随分異なり、落雷しやすい電荷構造が明らかに存在すると考えられる。
著者
高木 伸之 王 道洪 ウ ティン
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では風力発電での落雷による被害を現状の数分の一に削減するための新たな安価な落雷の予知技術の開発を行った。この落雷による被害低減技術は風車先端からの放電に伴う電波を落雷の30秒前に検知して風車を停止させるという方法である。風車を停止させれば避雷回数を80%以上低減できる。風車先端からの放電に伴う電波を落雷発生の30秒以上前にほぼ100%検知できることを確認した。さらに開発した電波放射源3次元可視化システムを用いて多くの新たな知見を得ている。
著者
高橋 彰子 福原 一郎 高木 伸輔 井手 麻衣子 新田 收 根津 敦夫 松田 雅弘 花井 丈夫 山田 里美 入岡 直美 杉山 亮子 長谷川 大和 新井 麻衣子 加藤 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100455, 2013

【はじめに、目的】重症心身障害児者(以下;重身者)は,異常筋緊張など多様で重層した原因で症候性側弯が発症進行する.側弯の進行予防に対して理学療法が施行されるが,それ以外にも日常生活で使用する側弯装具が処方される場合も多い.今までは,ボストン型装具や硬性コルセットなどが広く使用されているが,大きく,通気性も悪く,服が着にくい,また痛みを訴えるなどのデメリットもあった.近年,3点固定を軸に側弯進行を予防し,装着感がよく,通気性なども改善された動的脊柱装具(DSB 通称プレイリーくん)が開発された.開発者の梶浦らは,多様な利点で,重身者の症候性側弯に有効であると述べている.しかし,親の子に対する装具装着の満足度や,理学療法士による効果判定などの関連性や,装具装着による変化に関しての報告は少ない.そこで,動的脊柱装具を処方された重身者の主たる介護者の親と担当理学療法士にアンケート形式で満足度と装具の効果について検討することを目的とした.【方法】対象は当院の外来患者で動的脊柱装具を作成した側弯のある児童または成人17名と,担当理学療法士6名とした.対象患者の平均年齢15.9歳(3~22歳),GMFCS平均4.7(3~5),Cobb角平均82.46(SD31.62)°の側弯を有していた.装具に対する満足度や効果の実感に関するアンケートを主たる介護者の親と担当理学療法士と分けて,アンケートを2通り作成した.親へのアンケートは,装具装着の見た目,着けやすさ,姿勢保持のしやすさ,皮膚トラブル,装着時間,総合的な満足度などの装具使用に関する項目に関して,20項目の質問を紙面上で答えさせた.理学療法士には姿勢変化,治療的効果などの評価の4項目に関して紙面上で記載させた.その他,装具装着前後でのCobb角を算出した.統計処理はSPSS ver20.0を用いて,質問紙に関しては満足度合を従属変数とし,その他の項目を独立変数として重回帰分析を実施し,関連性についてはpearsonの相関を用いた.理学療法士の効果判定に関係する因子の検討では理学療法士の評価を従属変数として,効果に対する要因,Cobb角を独立変数として多重ロジスティック解析を実施した.各質問紙項目内による検討に関してはカイ二乗検定を用いた.また,Cobb角の変化に関しては対応のあるt検定を用いた.危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】全対象者と全対象者の親に対して,事前に本研究の目的と方法を説明し,研究協力の同意を得た.【結果】Cobb角は動的脊柱装具作成装着前後で有意に改善した.動的脊柱装具に関する親の満足度と関連する項目はCobb角の変化ではなく,体に装具があっていると感じている,装具の着けやすさ,装具を装着したときの見た目と関連していた.満足度と装着時間とは正の相関をしており,満足度が高い人ほど装着時間も長かった.理学療法士の評価は満足感と関連していなく,姿勢保持のしやすさ,Cobb角と関連していた.【考察】今回GMFCSレベル4~5のADLで全介助を要し,側弯の進行の危険性が高い方を対象としており,親の関心や理学療法士の治療選択も側弯予防は重要な目標の1つである.重身者の親の満足度は主に子どもの装着に関係する項目と最も関連していた.理学療法士の効果検討としてはCobb角,姿勢保持と関連していた.動的脊柱装具装着の前後で側弯に改善がみられることは,梶浦らの報告とも同様で,この体幹装具が側弯に対して長期的な効果の可能性も示唆された.その装具に関する理学療法士の効果判定はCobb角と関連が強く姿勢の変化を捉えている傾向にあった.親の満足度は最も快適に使用できる項目であり,満足しているほど装着時間が延長することが考えられる.今回のアンケートより,装具に対する親への感想を聴取することで生活状況の確認となり,満足度を高めるように作成することが可能となると示唆された.【理学療法学研究としての意義】重身者にとって側弯は内臓・呼吸器疾患と直接的に結びつきやすく側弯の進行予防は生命予後に関しても重要である.側弯進行予防の理学療法を効果的にするためにも,使いやすい側弯装具は重要な日常生活器機である.新たに開発された動的脊柱装具の満足度と効果についてアンケート調査を行った.親が実際の装具使用を肯定的に感じているほど,装着時間も長く,親の満足度に関連する因子として,装着しての見た目や,子の過ごしやすさも重要な因子であることが今回示唆された.
著者
高木 伸夫
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.244-251, 2014-08-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
6

近年,化学産業のみならず化学産業以外においても非定常な運転や操作において重大事故が発生している.プロセスプラントにおける危険源を特定する手法としてHAZOP が広く知られており,連続プロセスの定常運転を対象として広く活用されている.しかし,プラントのスタートアップ/シャットダウン操作やバッチ反応プロセスは時間とともに運転状態が変化すること,また,連続プロセスと異なりオペレータによる現場での手動弁の開閉操作やポンプ起動,停止操作などがなされることが多い非定常な運転形態といえる.安全で安定な操作にあたっては運転操作にオペレータが大きく関与するという特性を考慮に入れて危険源を洗い出すことが必要であるが,これに対する危険性評価の方法に関する資料があまり見受けられない.そこで本稿では,スタートアップや加熱炉の点火操作,バッチ反応など非定常な運転や操作における危険源の洗い出しにあたっての非定常HAZOP の基本手順と進め方を紹介する.
著者
小野 俊朗 平松 竜一 久保田 尚浩 依田 征四 高木 伸友 島村 和夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.779-787, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
24
被引用文献数
7 5

ブドウ'ピオーネ'の無核果栽培において,同一園で毎年着色が良好な樹と不良な樹を用いて,着色に違いが生じる原因を新梢生長や果実発育の面から検討した.新梢伸長,新梢当たりの葉面積および葉のクロフィル含量には着色良好樹と不良樹の間に差はほとんど認められなかった.単位面積当たりの収量は着色不良樹よりも良好樹でわずかに多かった.果粒肥大にも両者に大きな差はなかったが,不良樹では果粒軟化日が良好樹よりも約5日遅かった.果皮色は,果粒軟化後から成熟時まで常に着色良好樹で優れ,とくに軟化後2~3週間以降の差が顕著で,成熟時のアントシアニン含量は着色良好樹が不良樹の約2倍であった.屈折計示度は,成熟期間をとおして着色良好樹で高く,とくに果粒軟化後約3週間以降に両者の差が大きく現れた,果肉の糖含量の変化もほぼ同様であったが,その組成比には良好樹,不良樹間に差がなかった.
著者
高木 伸哉 池田 裕美 川瀬 貴博 長澤 麻央 チョウドリ V.S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
Japanese Society of Pet Animal Nutrition
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.67-72, 2013

カテコールアミンの前駆体であるL-チロシンの長期投与は慢性ストレスがもたらす行動を緩和することが知られているが、急性ストレス時にL-ならびにD-チロシンの効果を比較した報告はない。本研究では、急性ストレスに対するL-チロシンとD-チロシンの経口投与がマウスの行動に及ぼす影響と脳内の両チロシン濃度に及ぼす影響を調査した。オープンフィールドにおける行動量にL-ならびにD-チロシンの効果は認められなかった。経口投与35分後にL-チロシン投与により血漿L-チロシン濃度は急激に上昇したが、D-チロシンの投与では血漿D-チロシンの緩やかな上昇が観察された。興味深いことに、対照区の各脳部位(大脳皮質、海馬、線条体、視床、視床下部、脳幹ならびに小脳)において、D-チロシンの濃度はL-チロシンの1.8-2.5倍高かった。すべての脳部位において、L-チロシンの投与によりL-チロシン含量は増加したが、D-チロシンの投与でD-チロシン濃度の上昇は認められなかった。上記より、急性投与したL-チロシンとD-チロシンは行動量に影響しないが、L-チロシンとD-チロシンの脳内移行の様相は異なると結論づけられた。
著者
高木 伸
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05272997)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.115-130, 1996-04-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
高木 伸元
出版者
密教研究会
雑誌
密教文化 (ISSN:02869837)
巻号頁・発行日
vol.1963, no.62, pp.L142-L130, 1963-02-25 (Released:2010-03-12)