- 著者
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高橋 誠
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.2, pp.105-126, 1993-12-31 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 26
わが国の農村における近年の社会変動は,混住化の進行によって,地域社会の再編成をもたらしてきた。現在の農村地域における社会変動のパターンとそれによって再編された地域社会の性格には,主として都市からの距離にしたがって,地域差がみられる。それゆえ,農村における人口構造の地域パターンと地域社会の再編過程とには,重要な関連性がみられるのである。筆者は,まずクラスター分析によって,新潟都市圏における人口構造の地域パターンを把握する。次に,地域組織のなかでもっとも重要な役割を果たしている住民自治組織を,その農家組合との空間的関係に着目しながら類型化し,それぞれの類型の地域的分布パターンと人口構造の地域パターンとの対応関係について検討する。最後に,新潟市西郊の黒埼町における地域住民組織の再編成についての精査を通して,以上の統計的分析を裏づける。 その結果,以下の諸点が明らかになった。第一に,新潟都市圏の農村地域は, 1960年代以降の地域変動の結果, 4地域から構成されるような地域分化を生じさせた。そのうち3地域は,都市通勤者が多くを占ある郊外住宅地から農業を主体とする集落にいたる都市一農村連続体上に配列されるが,住宅団地と農業集落とが混在するような地域がそれを乱す要素として出現している。第二に,市街地縁辺部と住宅団地には,新しいタイプの住民自治組織が, 1960年代以降,既存の住民自治組織の分裂,あるいは隣接する地域組織との関連をもたない新規結成を通して出現してくる。第三に,一部の地域では,新しく結成された住民自治組織は,それらの結成によって分割される以前の村落領域のなかで,連合して新しいタイプの地域組織を結成している。第四に,こういった再編成の形態は,地域人口の規模と行政の地域政策によって規定される。結果的に,現代の都市近郊農村における地域社会の再編成は,一元的な伝統的村落組織からさまざまな地域組織の多元的・重層的構造への変化によって特徴づけられている。