著者
岡ノ谷 一夫
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.364-370, 1999-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
23

鳴禽類においては歌はオスがメスを性的に誘引するための行動である.また, この行動は幼鳥期に親から学習される行動である.一般に鳥の歌は複数の歌素を固定した順番に配列することでできている.しかし, ジュウシマツの歌は特異で, 複数の歌素を非決定的に配列してうたう.この配列規則は, 有限状態文法としてあらわすことができる.どうしてジュウシマツの歌はこのように複雑なのであろうか.まず, 解剖学的なレベルでの局所破壊実験により, 歌を制御する階層的構造が明らかになった.次に, 機能を知るためのメスの好みを測定する実験により, 複雑な歌はメスの性選択により進化したことが示唆された.さらに, ジュウシマツの祖先種であるコシジロキンパラのオスの歌はより単純であるが, メスは潜在的に複雑な歌に対する好みをもつことがわかった.以上の結果から, 複雑な行動の進化と脳の変化について考察し, ヒトの言語の起源に迫る手がかりとしたい.
著者
柳 有紀子 石川 幸伸 中村 一博 駒澤 大吾 渡邊 雄介
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.250-256, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
13
被引用文献数
4 7

女性から男性型の性同一性障害症例における,男性ホルモン投与前後の音声の経時的変化を追跡した.追跡は話声位,声域,声の使用感の聴取およびVHIにて投与前から143日間行った.投与前の話声位は187 Hzで,投与143日後に108 Hzとなった.声域は,投与48日後に一時的に拡大し,その後縮小した. 声の使用感の聴取では,投与48日後に会話時の翻転の訴えがあり,投与143日後に歌唱時の裏声の発声困難と会話時の緊張感も聞かれた.VHIは感情的側面で改善し,身体的側面で悪化した.本症例のホルモン療法の効果は話声位の低下であり,一時的に声域も拡大した.一方で翻転や裏声の発声困難,会話時の緊張感の訴えが聞かれ,声域も最終的に縮小した.本症例の各症状は,甲状披裂筋筋線維の肥大化による話声位の低下と,喉頭の器質的変化による喉頭筋群の調節障害であると推測された.これらの症状を予防するために,ホルモン投与の際には音声の変化を観察しながら投与量や投与期間の再考が必要である可能性が考えられた.
著者
上間 清司
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.237-244, 2018 (Released:2018-09-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

音韻処理の障害がある音韻失読1例の漢字非同音非語の音読障害の障害構造を検討した.漢字の文字頻度に加えて,文字から音韻への対応がどの程度一貫しているかを示す読みの一貫性に基づき,漢字非同音非語の音読成績を比較した.本例は,低頻度漢字で構成された非同音非語の音読において,読みの一貫性が低い非同音非語の音読成績が最も低かった.また,高頻度漢字で構成された非同音非語の音読では,非同音非語と形態的に類似する語彙化錯読が多く出現した.これらの結果から,本例の漢字非同音非語の音読障害の障害構造には,文字(列)から音韻(列)への変換障害が存在すると考えられた.さらに,本例では漢字の読みの一貫性や文字頻度が漢字非同音非語の音読成績に影響していることが示唆された.以上から,日本語話者の音韻失読例では,仮名のみならず文字属性を統制した漢字非同音非語の音読を用いた評価も必要であると考えられた.
著者
栗田 茂二朗
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.185-193, 1988-04-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
5
被引用文献数
3 3

剖検より得られた男63個, 女59個の喉頭を肉眼的, 組織学的に観測し以下の結果を得た.1) 声帯の長さ, 声帯膜様部の長さは, 新生児より年齢とともに増大し, 20歳頃に成人の長さに達する.2) 声帯粘膜の厚さは, 新生児でも0.75~0.95mmでかなり厚く, 年齢に伴う増大はわずかである.3) 新生児では声帯靱帯が形成されていない.靱帯の発達は, まず線維束が膜様部全長に連なり, 次に弾性線維, 膠原線維の層が分化し, さらに密度を増すという過程をとおって完成する.4) 粘膜固有層浅層は, 加齢とともに浮腫状となって厚くなる.中間層は弾性線維の萎縮のため薄くなり, 深層は膠原線維の増生によって厚くなる.これらの傾向は男の方で顕著であった.
著者
飯村 大智
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.410-415, 2016 (Released:2016-11-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1

吃音が就労にさまざまな影響を与えることが国外の研究で指摘されているが,本邦で吃音に関する就労調査はごくわずかである.本調査では吃音者55名を対象に就労に関する質問紙調査を実施したので報告する.結果,多くの回答者は吃音が職業選択に影響を与え,就労後には電話を始めとした場面で困難を抱えていることが示唆された.半数の回答者が吃音の理解を周囲から得られており,吃音のカミングアウト(周囲に表明)をしていない人よりもしている人のほうが,また事務職よりも専門・技術職の人のほうが,より吃音の理解を得られていることが示された.「吃音を理解する」「言葉が出るまで待つ」のような環境面での合理的配慮の必要性が示唆される.
著者
三盃 亜美 宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 狐塚 順子 後藤 多可志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.218-225, 2018 (Released:2018-09-15)
参考文献数
11

本研究では,発達性ディスレクシアのある児童生徒(ディスレクシア群)を対象に,漢字を刺激とした文字/非文字判別課題と語彙判断課題を行い,定型発達児童生徒(定型発達群)の成績と比較して,視覚的分析と文字入力辞書の発達を検討した.文字/非文字判別課題では,実在字刺激に対してディスレクシア群と定型発達群の正答率に有意差は見られなかったが,実在字と形態が類似する非実在字に対してディスレクシア群の正答率は定型発達群よりも有意に低かった.また語彙判断課題においては,実在語,同音擬似語,実在語と形態が類似する非同音非語に対して,ディスレクシア群の正答率は定型発達群よりも低かった.実在語と形態が類似していない非同音非語に対しては正答率に有意差はなかった.以上の結果から,本研究のディスレクシア群の視覚的分析と文字入力辞書は定型発達群ほど発達していないと考えられた.
著者
菊池 良和 梅崎 俊郎 山口 優実 佐藤 伸宏 安達 一雄 清原 英之 小宗 静男
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.35-39, 2013 (Released:2013-04-03)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

成人の吃音患者に,社交不安障害(social anxiety disorder,以下SAD)が40%以上もの高い確率で合併する(Blumgartら,2010).SADにおいては,人と接する場面で強い不安を覚えるばかりでなく,社会生活上に大きな支障を及ぼす可能性があり,精神科・心療内科で薬物療法を行われることが多い.しかし,吃音にSADが合併している場合は,吃音をよく知っている言語聴覚士とも協力したほうがSADから回復し,従来の生活に戻れる可能性が高まる.症例は16歳男性,授業で本読みをすることに恐怖を感じ,不登校となった.心療内科でSADと診断され薬物療法を受けるが,本読みのある授業は欠席していた.耳鼻咽喉科に紹介され,環境調整,言語療法,認知行動療法を併用した結果,3週間後に授業を欠席せず登校可能となり,通常の高校生活に戻ることができた.吃音症にSADが合併した症例は,医師による薬物療法だけではなく,耳鼻咽喉科医・言語聴覚士の積極的介入が有用であると考えられた.
著者
足立 千浪 吐師 道子 城本 修 土師 知行
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.195-200, 2014 (Released:2014-09-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1

カラオケ歌唱による声質変化の有無,声質変化と水分摂取の関係を解明するため1) 16曲のカラオケ歌唱はその後の音声のjitter・shimmer・harmonic-to-noise ratio(HNR)に変化をもたらすか,2)カラオケ歌唱中の水分摂取の有無はカラオケ後の音声のjitter・shimmer・HNRの変化程度に差をもたらすかを検討した.その結果,16曲のカラオケ歌唱はその後の低い声と出しやすい声の高さの発声に影響を及ぼすことが示された.しかしVEによる喉頭所見では炎症や血腫等の著明な変化は見られず,カラオケ後の音響特徴の変化が血腫等に起因するものではない可能性が示唆された.また,声の高さやパラメータを通じた水分摂取の効果は見られなかったが,高い声での発声が水分摂取の有無に敏感である可能性が示唆された.
著者
二村 吉継 文珠 敏郎 東川 雅彦 南部 由加里 平野 彩 中村 一博 片平 信行 駒澤 大吾 渡邊 雄介
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.34-43, 2017 (Released:2017-02-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Elite Vocal Performers(EVP)は職業歌手や舞台俳優など自身の声を芸術的に用いパフォーマンスを行う職業者である.EVPは声質改善にきわめて繊細な治療も希望する.そこで今回耳鼻咽喉科医,音声専門医に対してどのような意識をもって受診しどのような治療を希望しているのかを明らかにするため,EVPに対してアンケート調査を行った.選択形式の設問28問,自由記載式の設問3問の冊子を作成し,無記名の記入式アンケート調査を実施した.EVP 92名(男性41名,女性51名)から回答を得た.内容は「声の症状」「耳鼻咽喉科診察および歌唱指導について」「沈黙療法について」「ステロイド治療について」「声の悩みの解決方法」「診療に対する希望について」等である.沈黙療法を指示されたことがある者は64%であったが,適切な期間を指示することが重要であると思われた.ステロイド剤による治療を受けたことがある者は68%であり,投薬を緊急時にのみ望む者とできれば望まない者がほぼ半数ずつであった.
著者
太田 静佳 宇野 彰 猪俣 朋恵
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.9-15, 2018 (Released:2018-03-15)
参考文献数
5
被引用文献数
10 8

文字教育を行っていない幼稚園3園に在籍する年長児230名を対象に,国立国語研究所(1972)および島村,三神(1994)の調査と同様の方法で,ひらがな71文字についての音読課題,書字課題,拗音,促音,長音,拗長音,助詞「は」「へ」についての音読課題を実施し,現代の幼児のひらがな読み書き習得度について検討した.ひらがな71文字における平均読字数は64.9文字,平均書字数は43.0文字であり,島村,三神の調査結果と近似していた.また,本研究における71文字の音読,書字課題成績について,性別および月齢による違いを検討するため分散分析を行った結果,71文字の書字課題のみで性別の有意な主効果が認められ,男児に比べて女児の成績が高かった.月齢の影響はなかった.書字において女児の成績が男児の成績に比べて高かった点で,先行研究を支持していた.
著者
小林 武夫 熊田 政信 石毛 美代子 大森 蕗恵 望月 絢子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-34, 2014 (Released:2014-02-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

歌唱を職業とする者に,歌唱時においてのみ見られる痙攣性発声障害を「歌手の喉頭ジストニア(singer’s laryngeal dystonia)」と名づけた.痙攣性発声障害の一亜形である.通常の会話は問題がない.本症の発症前に過剰な発声訓練を行っていない.4例は第1例(女性31歳)ソプラノ,ポピュラー,第2例(女性28歳)ロック,第3例(男性40歳)バリトン,第4例(男性46歳)バリトンで,第4例のみが外転型痙攣性発声障害で,他の3例は内転型である.内転型は歌唱時に声がつまり,高音の発声障害,声域の短縮,ビブラートの生成が困難となる.外転型では,無声子音に続く母音発声が無声化する.治療は,内転型はボツリヌストキシンの少量頻回の声帯内注射が有効である.外転型では,後筋にボツリヌストキシンを注射する.
著者
内山 勉
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.329-335, 2011-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
3

聴覚活用による早期療育を受けた平均聴力レベル(聴力)が90dB以上の人工内耳装用の難聴児(CI群18名)を対象に,療育開始年齢と早期療育効果との関係について,6歳時点のWPPSI知能検査言語性IQ(VIQ)を基に検討した.療育開始0歳・CI手術2歳のCI群VIQ(平均116.0)は,療育開始2歳・CI手術3歳以降のCI群VIQ(平均92.1)より有意に高かった.また療育開始年齢と聴力が同じ補聴器装用児(HA群26名)とCI群を比較したところ,療育開始2歳CI群VIQ(平均92.1)は療育開始2歳HA群VIQ(平均70.3)より有意に高かった.また言語発達遅滞(VIQ80未満)の出現比率は,療育開始2歳HA群(70.0%)が療育開始2歳CI群(14.2%)に比べ有意に高かった.これらの結果から,聴力90dB以上の難聴児では0歳からの早期療育と2歳での人工内耳装用は明らかに言語習得に効果があり,療育開始年齢と人工内耳手術年齢は難聴児の言語習得を促進させる重要な要因であることが明らかになった.
著者
髙橋 三郎
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.233-238, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,なぜ吃音が母音で生じやすいと感じられるのかを明らかにするために,学齢期の吃音児の自由会話を分析し,子音と母音の違いが吃音の生起に与える影響を検討した.そのうえで,語頭モーラ頻度と吃音生起数の関係性を検討した.対象児は6歳9ヵ月から12歳1ヵ月までの吃音児20名であった.対象児と筆者との自由会話の様子を録画し,発話を分析した.二項ロジスティック回帰分析の結果,子音と母音の違いは吃音の生起に有意な影響を与えなかった.また,一部の母音(「い」「お」「あ」)は他の子音よりも語頭モーラ頻度が高く,吃音生起数も多かった.以上のことから,一部の母音で吃音が生じやすいと感じられるのは,語頭モーラ頻度の高さによって吃音生起数が多くなることが関与すると推測された.
著者
佐藤 公則 栗田 卓 佐藤 公宣 千年 俊一 梅野 博仁
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.301-309, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
55

1)ヒト声帯の黄斑は,声帯振動のために必須である声帯粘膜の細胞外マトリックスの代謝に関与し,ヒト固有の声帯粘膜の層構造を維持していることが示唆されている.2)ヒト声帯の黄斑は,ヒト声帯の成長・発達・老化に関与していることが示唆されている.3)ヒト声帯の黄斑には,声帯の線維芽細胞とは異なった間質細胞,すなわち細胞突起をもち,ビタミンAを貯蔵した脂肪滴を細胞質にもつ声帯星細胞が密に分布している.4)ヒト声帯黄斑は幹細胞ニッチであり,黄斑内の細胞は組織幹細胞であることが示唆されている.5)ヒト声帯の細胞と細胞外マトリックスの研究は,喉頭,特に声帯の生理学・病理学・病態生理学の基礎的研究になるばかりでなく,組織工学,再生医療の基礎的研究として臨床に寄与する.
著者
渡部 信一
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.217-226, 1987-10-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
30

1健忘失語例の語想起障害に対して, 認知心理学的観点から考察した結果, 以下の点が明らかになった.1) 本症例は再生に著しい障害を示したが, 再認は全く障害されていない.これは言語情報の検索過程に限局した障害であり, 検索過程と再認過程を独立した別の過程であるとする二重過程説を支持していると考えた.2) 語想起困難に陥った場合でもTOT現象が全く出現せず, 本症例の語想起困難時の検索は非常に低い検索レベルにとどまり, かつ部分的検索も行われていないことが明らかになった.3) 「しんかんせ」のヒントで「新幹線」が想起できないことから, 本症例はひとつの単語をひとつのパターンとして記憶していると考えられた.4) 手がかり効果がなかったことなどから, 本症例の語検索は自動的検索が主であり, 語想起困難に陥った場合の制御的検索は非常に困難であることが明らかになった.
著者
長西 秀樹 森 有子 木村 美和子 中川 秀樹 田村 悦代 新美 成二 福田 宏之
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.153-157, 2012 (Released:2012-06-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1

職業歌手にみられる急性炎症による音声障害へ対処する場合には,職業上の要請が強いため,通常の診察・治療に加えて,歌手特有の特殊性を考慮する必要がある.しかし,診療の進め方に特別なことがあるわけではなく問診に始まり声の評価,発声器官の所見に基づく治療を行う.声帯の状態を正確に把握することが重要であり,その評価のためには喉頭ストロボスコピーが有用である.当センターでは,薬物治療,外来でのネブライザー療法,音声治療を中心に治療方針を決定し,声帯の浮腫の状態に応じて,ステロイド投与の適応,その投与方法を決定している.東京ボイスセンターを2010年1年間に受診した急性炎症による音声障害症例は176名で,そのうち職業歌手は56名(31.8%)であった.職業歌手に対する急性期のステロイド投与方法としては,ステロイド吸入のみで対応した症例が最も多く,次いでステロイド点滴,ステロイド内服の順であった.