著者
宮本 康嗣 黒岩 中 岡田 秀親 古川 達雄
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.25-30, 1987-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
23

強い咳と痰を伴った急性気管支炎の患者に対する清肺湯の投与により, 症状の改善が認められた。清肺湯の投与前には, 患者の末梢血白血球の活性酸素化学発光は異常亢進を示した。この活性酸素化学発光の異常亢進は, 5週間の清肺湯の内服により正常化した。さらに in vitro の実験系においても清肺湯は, その添加によりオプソニン化ザイモザン刺激時のヒト白血球における活性酸素化学発光, および抗原刺激時の感作モルモット肺組織からのSRS-A遊離を用量依存的に抑制した。これらの結果は, 清肺湯が一部ではSRS-ロイコトリエンのようなケミカルメディエーターの生成をコントロールすることにより気管支炎の症状の改善に寄与しうるものと考えられる。
著者
蛯子 慶三 高田 久実子 伊藤 隆 木村 容子 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.402-406, 2018 (Released:2019-08-01)
参考文献数
3

当研究所では寒証に対して面状電気温熱器を用いた置鍼治療を行っている。腰背部8ヵ所に置鍼後に面状電気温熱器を被せ,6段階に温度調節できるダイアルのうち2番目に熱い5チャンネルで20分間加温する本法を,寒証の治療および検査として用いている。加温途中で熱さを不快に感じたときには,治療目的で用いた場合は温度を下げて継続,検査目的で用いた場合はその時点で終了としている。2016年3月から10月までの8ヵ月間に実施した75例(224件)を対象に有害事象を調査したところ,皮膚表面のヒリヒリ・チリチリした感じが5件(2.2%),かゆみが3件(1.3%),体調不良が1件(0.4%)みられたが,いずれも一時的なものであり,重篤な有害事象は認めなかった。結果より,本法の安全性は高いと考えられた。漢方と鍼灸の臨床研究に繋げていくことが今後の課題である。
著者
古谷 陽一 渡辺 哲郎 永田 豊 小尾 龍右 引網 宏彰 嶋田 豊
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.609-614, 2011 (Released:2011-12-27)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

目的:冷え症の危険因子となる身体症状を明らかにする。研究デザイン:2008年7月7日から11月14日にかけて前向きコホート研究を行なった。対象と方法:観察開始時に冷えを認めない女子短期大学生70名(年齢中央値20歳)。冷えの苦痛の程度をNumerical Rating Scale(NRS)で7月および11月に5日間ずつ記録した。身体症状は気血水スコア(寺澤)で評価した。冷え症の判定基準は冷えNRSの平均値5以上とした。結果:11月に17名が冷え症と判定された。有意な関連を示した自覚症状は「体がむくむ」で,多変量オッズ比[95%信頼区間]11.6[1.9 to 97.5]であった。また,冷え症群は非冷え症群より低身長であった(身長差[95%信頼区間]-5.9cm[-8.6 to -3.1])。結語:「体がむくむ」と「低身長」は冷え症の危険因子である可能性が示された。
著者
関矢 信康 林 克美 檜山 幸孝 並木 隆雄 笠原 裕司 地野 充時 大野 賢二 喜多 敏明 平崎 能郎 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.723-728, 2007-07-20 (Released:2008-09-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1

漢方治療が奏効した蕁麻疹の4症例を経験した。内容はコリン性蕁麻疹2例, 慢性特発性蕁麻疹1例, 寒冷蕁麻疹1例であった。悪化要因として, 第1例は義父の介護と子宮摘出術のストレス, 第2例は家庭内の問題での精神的ストレス, 第3例はパニック障害樣のエピソード, 第4例は家族に対する心配・不安を指摘できた。皮膚症状を改善する上での有効方剤は, それぞれ桂枝茯苓丸, 半夏厚朴湯, 抑肝散加陳皮半夏, 加味逍遙散であった。これらの処方の選択を行う際に, 皮膚症状に関与する心理的背景を聞きだし得たことが大いに役立った。心理的背景について繰り返し丁寧に問診を行うことは, 蕁麻疹難治例の治療において有用であると考えられた。
著者
高山 真 岩崎 鋼 渡部 正司 神谷 哲治 平野 篤 松田 綾音 沼田 健裕 楠山 寛子 沖津 玲奈 菊地 章子 関 隆志 武田 卓 八重樫 伸生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.275-282, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

古くからヨーロッパでは自然療法を取り入れて健康を保つ方法が一般的に行なわれてきており,特にドイツでは統合医療に補完・代替医療が積極的に導入されている。ドイツでも有名な4つの施設,ミュンヘン大学麻酔科ペインクリニック,TCM Klinik Bad Ko¨tzting, Immamuel Krankenhaus, ZenHaus Klinik を視察し統合医療の現状を報告する。各施設では,慢性疼痛に対する4週間プログラム,中国伝統医学中心の治療,自然療法主体の治療,日本伝統医学にアロマテラピーを加えた治療など,各々の施設で特徴的な治療方法が行なわれていた。ドイツでは多くの病院,クリニックで補完・代替医療が盛んに行なわれているが,その広がりの一つにドイツにおける医療保険制度が挙げられる。公的保険では治療の一部,プライベート保険では広い範囲で補完・代替医療に対する保険償還が行なわれる。歴史的背景に加え,このような制度も統合医療の広がりに影響を与えていると考える。
著者
関口 由紀 畔越 陽子 河路 かおる 長崎 直美 永井 美江 金子 容子 吉田 実 窪田 吉信
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.268-272, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

間質性膀胱炎/慢性骨盤痛症候群の疼痛緩和と自律神経失調症状の治療に漢方薬を西洋薬に併用した症例を4例提示した。1例目は42歳女性で,膀胱部痛・陰部痛にたいして竜胆寫肝湯を投与し,自律神経失調症状の改善と慢性疼痛による血流障害の改善に加味逍遥酸を用いた。2例目は51歳女性で,内臓を温めて下腹部痛を改善する安中散を用いた。3例目は49歳女性で,全身の冷えに対して真武湯合人参湯を用いた。4例目は27歳女性で,下半身の冷えに対して当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いた。間質性膀胱炎/慢性骨盤痛症候群の自律神経症状改善をめざす漢方治療が結果的に患者の気血水のバランスを整えていた。
著者
春田 道雄 井上 文明 水嶋 丈雄
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.665-672, 2000-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
1

アカシジアに対して西洋薬の抗パーキンソン病薬を投与しても効果がなかった症例に, 三黄瀉心湯や桃核承気湯を投与した。非定型精神病1例, 精神分裂病3例, いずれも女性で身体的な証は全て実証であり, 4例とも便秘を認めた。三黄瀉心湯6g (EK-13) をベースに症例1と症例4にはさらに桃核承気湯7.5g (TJ-61) を併用した。4例とも「ムズムズする。いてもたってもいられない」というアカシジアを疑わせる訴えは共通しており,『大黄』を含む三黄瀉心湯を処方することにより数日で症状が消退した。精神科における薬物療法では,アカシジアなどの錐体外路症状への対処が大切であるが, 抗パーキンソン病薬などが奏効しない症例がみられる。このような場合に三黄瀉心湯などの漢方薬を使用することにより, 服薬履行が高まるものと期待された。さらに『大黄』には向精神作用や瀉下作用もあるため, 薬物総量を減量できると思われた。
著者
森 裕紀子 鈴木 邦彦 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.250-255, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1

白朮附子湯は『傷寒論』に「風湿相摶身體疼煩」1)と記載があるが報告は少ない。今回梅雨時に発症した四肢の痛みの再発例に対して白朮附子湯が著効した症例を経験した。症例は45歳女性。X-1年6月に,両手足の痛みとしびれが出現し暖まると痛みは改善し,疲れると痛みは増し筋肉痛のようなだるさがある。1年半前に同じ症状で主に駆瘀血薬を1年間服用し症状が消失していた。前回同様に瘀血所見が強く駆瘀血薬を処方したが症状は消失しなかった。以前の痛みの発症も梅雨時だったことに注目し,表湿に冷風が加わり生じた痛みと考え白朮附子湯に転方したところ2週で痛みは消失した。翌年6月も痛みが再発し白朮附子湯を処方し11日で治癒した。痛みの性質と発症時期から初診時の痛みも湿による痛みだったと推測する。梅雨時に発症する痛みは,冷房設備の整った環境で生活する現代において今後増える病態であり,白朮附子湯は考慮すべき処方の1つである。
著者
松橋 俊夫
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-41, 1989-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
24
著者
正山 勝 向井 誠 後山 尚久
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.61-66, 2016-01-20 (Released:2016-05-27)
参考文献数
24
被引用文献数
1

酸棗仁湯が睡眠時遊行症に有効であった一例を経験した。症例は55歳女性。小児期に睡眠時遊行を認め一時消失していたが,成人後の精神病症状の出現とともに時々,夜間の行動異常を認めるようになった。クローン病の合併,統合失調感情障害の残遺状態の診断で当院に長期入院中,55歳時に夜間の徘徊,異常行動が目立つようになった。 抑肝散エキス製剤2.5g/日で一時的に改善したかにみえたが再発し,酸棗仁湯エキス製剤7.5g/日への変更後,不眠が改善し,夜間の異常行動が消失した。睡眠時遊行症では,五臓論の心の病態が重要であると考えられた。
著者
伊藤 隆
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.29-46, 2003-01-20
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

呼吸器疾患の随証漢方治療について症例をふまえて報告した。適切な漢方方剤を検討するためには, 呼吸器症状の原因が, 咽喉, 鼻, 胸部, 呼吸機能低下のいずれにあるかを鑑別する必要がある。咽喉部の息苦しさが半夏厚朴湯により改善した症例を紹介した。目標として咽喉部の不安感が重要であった。この方剤は睡眠呼吸障害に対しても応用できた。慢性鼻炎の治療では水毒の脈候が診断上重要であり紹介した。胸部ではかぜ症候群, 慢性気管支炎, 気管支喘息, 間質性肺炎について述べた。慢性気管支炎に対する漢方方剤は, 咳嗽の乾湿と虚実により分類した。気管支喘息では小児例で小建中湯などの補剤適応例の増加が考えられた。間質性肺炎では茯苓杏仁甘草湯の有効例を提示し, 漢方治療報告例を紹介した。呼吸機能低下例に対しては八味地黄丸のピークフロー値改善作用を述べ, 適応病態の相違について麦味地黄丸料と比較検討した。
著者
三浦 於菟 河野 吉成 板倉 英俊 田中 耕一郎 植松 海雲 奈良 和彦 橋口 亮 吉田 和裕 桑名 一央 塚田 心平 土屋 喬 福島 厚 小菅 孝明 斉藤 輝夫
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.740-745, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

盗汗治療代表的方剤の当帰六黄湯(李東垣『蘭室秘蔵』)の成立過程を構成生薬と各時代の盗汗病態理論より検討した。黄耆の配合は主に陽虚で出現という漢隋代盗汗理論,補血滋陰薬の生地黄・熟地黄・当帰の配合は陰虚という宋代盗汗理論,清熱薬の黄連・黄芩・黄柏の配合は陰虚の熱により津液が押し出されるという宋代盗汗理論に基く。後者は特に劉完素『黄帝素問宣明論方』中の盗汗治療方剤大金花丸の影響が大きい。本剤は各時代の盗汗学説の集大成のために高い有用性を備えたのであろう。医書の諸説より,本剤の適応病態や問題点を検討した。弱い熱証(『丹渓心法』),強い気虚証(『張氏医通』『丹渓心法』),強い陰虚証(『医学心悟』)を呈する盗汗病態には不適当との説。脾胃を損傷しやすい(『医方切用』)との指摘。自汗への応用も可能との説(『医学正伝』『景岳全書』)などがある。これらより本剤の適応は陰虚証と熱証がほぼ同様程度,気虚証はより軽度な病態であり,このような病態では自汗にも使用可能といえる。
著者
大八木 敏弘 西川 順子 大沢 正秀
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.708-717, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1

線維筋痛症と診断された患者に対して,四診により証を明確にして鍼治療のみを行い,胸背部の疼痛,発熱,不眠症状の軽減とQOLの改善をもたらすことができた。症例は35歳女性。仕事上の精神的,肉体的ストレスが持続した後,胸背部の疼痛及び発熱が発症し入院するが,精密検査では異常はみられず経過観察となった。次第に痛みが激しくなり,大学病院で線維筋痛症と診断されたが,東洋医学的治療を希望し当院を受診した。肝鬱気滞,気滞血瘀,気鬱傷陰と弁証し神道穴及び照海穴の少数配穴による鍼治療を行った。痛みは37診以降には3割程度になり,発熱も消失し,91診時には痛みは気にならない程度になった。Fibromyalgia Impact Questionnaireは初診時の78から17カ月後の82診時には23に改善され,線維筋痛症に対して鍼治療のみで著効を得ることができた。
著者
伊藤 和憲 越智 秀樹 北小路 博司
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.331-336, 2004-05-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

慢性的に全身の広範囲に及ぶ疼痛や倦怠感を訴える患者に, 線維筋痛症候群 (FMS) の概念を取り入れた鍼灸治療を試みた。対象は3ヵ月以上広範囲に及ぶ疼痛や倦怠感, さらには不眠や便通症状などの不定愁訴を訴える4症例とし, 自覚的な全身の痛み (VAS) と疼痛生活障害評価尺度 (PDAS) を用いて評価した。その結果, 東洋医学的な病態把握に基づいた鍼灸治療では症状 (VAS・PDAS) に大きな変化は見られなかったが, FMSに効果的とされる鍼通電治療を行うと治療3回後には症状が大きく改善した。このことから, 全身の疼痛や倦怠感を主訴とするような線維筋痛症候群の患者には鍼通電治療が1つの選択肢となる可能性が示唆された。
著者
八木 宏 福間 裕二 宋 成浩 岡田 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.42-47, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
30

抗コリン剤やα1阻害剤に抵抗性を示す夜間頻尿で,和漢診療学的腎虚の徴候を認めた30例に牛車腎気丸を12週間投与,治療前後に国際前立腺症状スコア,キング健康調査票,夜間頻尿特異的 QOL 質問票,排尿日誌,尿流量測定,尿中8-OHdG,身体組成分析装置による体内水分分布を評価した。自覚的所見では国際前立腺症状スコアにおける畜尿症状と排尿 QOL,キング健康調査票と夜間頻尿特異的 QOL 質問票における睡眠・活力の項目が有意に改善した。他覚的所見では排尿日誌における夜間排尿回数,夜間多尿指数及び睡眠後第一覚醒までの時間が有意に改善,身体組成分析装置による体水分率は有意に減少した。本研究では抗コリン剤やα阻害剤に抵抗性を示す夜間頻尿患者のうち,腎虚徴候を認めれば牛車腎気丸が体内水分分布を正常な状態に戻すことにより夜間尿量を減少させ,夜間頻尿を改善する可能性がある事を示した。
著者
沢井 かおり 松浦 恵子 今津 嘉宏 西村 甲 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.920-923, 2010 (Released:2011-03-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

女性の外陰部痛は,炎症,外傷,腫瘍,加齢による萎縮乾燥などで生じるが,原因不明の場合はVulvodyniaと称され,しばしば難治性で,治療に難渋することがある。今回,牛車腎気丸で原因不明外陰部痛が軽快した症例を経験した。症例は92歳女性,2~3時間続く腟から尿道にかけての痛みが頻発し,夜間長時間眠れないため受診した。漢方医学的に,虚実中間証,寒証で,瘀血,腎虚の所見が認められた。高齢で,腎虚があり,尿路系の症状があることから,牛車腎気丸を処方したところ,夜間に痛みで起きる日が少なくなり,日中の外陰部痛も,著明に軽快した。また,時々起こしていた尿閉も起こさなくなった。難治性の原因不明外陰部痛では,補腎剤も治療の重要な選択肢のひとつと思われる。さらに排尿障害も改善し,複数の障害が一剤にて改善されるという,西洋薬にはない漢方治療の有用性が示された。
著者
関矢 信康 笠原 裕司 地野 充時 並木 隆雄 平崎 能郎 来村 昌紀 小川 恵子 橋本 すみれ 奥見 裕邦 木俣 有美子 島田 博文 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.465-469, 2009 (Released:2010-01-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1

桂枝加苓朮附湯は『方機』を出典とし,神経痛や関節痛を目標に使用されてきた。今回,我々はクローン病,子宮内膜症,直腸癌術後,急性胃腸炎,メニエル病に対して本方を投与し,奏効した諸例を経験した。本方を処方する際には『皇漢医学』に記載されているように桂枝加芍薬湯と真武湯あるいは苓桂朮甘湯の方意を持つことを念頭に置くことが重要であり,様々な疾患に対して応用が可能であると考えられた。