著者
三羽 邦久 神原 啓文 河合 忠一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.15, no.8, pp.928-932, 1983

症例は53歳,男,夜間安静時または早朝ランニング時の胸痛発作を主訴とする.入院後,胸痛発作は起こらなくなっていたが,冠動脈造影時のエルゴノビン試験で,右冠動脈近位部の冠攣縮が証明され,発作時,II,III,aV<SUB>F</SUB>に加え,I誘導でもSTが上昇し,Mobitz II型の房室ブロックとなった.V<SUB>2</SUB>,aV<SUB>R</SUB>,aV<SUB>L</SUB>ではST低下を認めた.このとき,左室圧は55/end25と低下し,ノルエピネフリンの少量動注により回復した.前日のエルゴノビン誘発発作時には,II,III,aV<SUB>F</SUB>でSTが上昇したが,IではST低下を認め,血圧の低下も少なかった.右冠動脈攣縮異型狭心症でI誘導でもST上昇の見られる例は報告されておらず,まれな症例である.右冠動脈攣縮による血流途絶に加え,左回旋枝末梢部の冠攣縮あるいは血圧の低下などにより,心尖部に近い下側壁部にも貫壁性虚血が拡大し,I誘導にST上昇をきたした可能性が考えられる.
著者
香川 英介 井上 一郎 河越 卓司 石原 正治 嶋谷 祐二 栗栖 智 中間 泰晴 丸橋 達也 臺 和興 松下 純一 池永 寛樹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_155-S3_158, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
6

背景 : 心肺停止患者に対し低体温療法を行うことで社会復帰率が上昇することが報告されている.  目的 : 良好な社会復帰 (FR) 可能な心停止時間について検討した.  方法 : 2003年から2008年に低体温療法を行った80人 (HT-group) と, 2007年4月から2008年5月までの院外心肺停止患者で, 自己心拍は再開したが低体温療法は行われなかった174人 (NT-group) を対象とした. 心停止時間は心肺停止から自己心拍の再開もしくは体外循環の開始までの時間と定義した.  結果 : FRはHT-groupで30人, NT-groupで20人であった. FRにおいてはHT-goupの方がより若年であった. FRに関して心停止から心拍再開もしくは体外循環の開始までの時間は独立した予後因子であった (OR 1.07, 95%CI 1.02-1.13, p<0.01). FRにおける心停止時間は低体温療法を行ったもので有意に短かった (26±15 vs 12± 5分, p<0.01).  結語 : 低体温療法により良好な社会復帰に許容される心停止時間は延長する.
著者
関 年雅 矢崎 善一 堀込 充章 池田 宇一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.259-265, 2013 (Released:2014-09-13)
参考文献数
10

2011年1~3月の間に当院に入院した非代償性心不全患者で, これまでに3回以上の心不全入院歴があるか, または強心薬依存状態でフロセミド40mg/日相当以上, あるいは複数の利尿薬を内服していた65歳以上の高齢者心不全増悪症例計18例 (平均81歳) に対するバソプレシンV2受容体, トルバプタンの有用性を検討した. トルバプタンの経口投与開始24時間後には, 尿量が有意に増加した. 心エコーから求めた心内圧や脳性ナトリウム利尿ペプチド (brain natriuretic peptide ; BNP) 値は有意に低下した. 一方, 血圧に関しては有意な変化は認めなかった. 血清クレアチニン値に有意な変化はなかったが, 血清ナトリウム濃度は3例で145mEq/Lを超えたため, トルバプタンを中止した. 入退院を繰り返す非代償性心不全において, トルバプタンの追加投与は, 少量の内服でも有効な尿量増加が期待できる.

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著者
小川 久雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.779, 2015 (Released:2016-07-15)
著者
星野 真介 谷口 由紀 津田 悦子 北野 正尚 山田 修 古川 央樹 宗村 純平 中川 雅生 西島 節子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.584-590, 2015 (Released:2016-05-16)
参考文献数
11

二次孔心房中隔欠損 (atrial septal defect ; ASD) に合併した僧帽弁逆流 (MR) が急激に進行し, 心不全をきたした症例を経験した. 症例は10歳女児. 5歳時に心雑音を指摘され, 近医を受診してASD, 軽度のMRと診断された. ASDに対してカテーテル治療を希望し, 至適体重まで待機中に, 経済的理由により病院を受診しなかった. 10歳で, 全身倦怠感, 起坐呼吸が出現し, 胸部X線写真では, 心胸郭比が80%と心拡大を認め, 心臓カテーテル検査では, 肺体血流比は5.1で, 重度のMRと肺高血圧を認めた. 外科的にASD閉鎖術および僧帽弁人工弁置換術を施行した. ASD症例で稀ながらMRが進行する場合があり注意が必要である.
著者
永田 義毅 中村 由紀夫 木田 寛 佐野 譲
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.121-125, 2001-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
12

症例は平成5年より多系統萎縮症に罹患した54歳,女性.平成9年1月頃より食事性低血圧を認めるようになった.一日の血圧最高値,血圧最低値はそれぞれ232/146mmHg,72/46mmHgであった.本例において食事が自律神経に及ぼす影響をホルター心電図を用いた心拍変動解析にて検討した.副交感神経機能,交感神経機能の指標としてHF,LF/HFを用いた.健常者では食事によりLF/HFは上昇し,交感神経活動の賦活化がみられた.本例では血圧が188/119mmHgから105/40mmHgへと低下したが,LF/HF,血漿ノルアドレナリン値は不変であった.食事性低血圧の機序の一つとして,食事による腹部内臓血流増加に対する交感神経系を介した血流再分布障害の関与が推測されている.本例の心拍変動解析の結果も,それを示唆するものと思われた.
著者
吉田 奈々絵 山田 容子 平原 大志 和田 浩 菅原 養厚 阿古 潤哉 百村 伸一
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.927-933, 2014

症例は18歳女性. 主訴は失神. 家族歴は兄が18歳で突然死. 現病歴は朝通学中の電車内で立位時に失神し, 次の駅で意識回復し当科に救急搬送となった. 来院時は意識清明. 心電図上, QT間隔は正常だが連結期の短い同形の心室性期外収縮より開始する非持続性多形性心室頻拍の頻発を認めた. 心臓超音波では軽度左室拡大のみで器質的心疾患は認めなかった. 発作時も含めQT延長はなく運動負荷によるQT延長, 多形性心室頻拍も認めなかった. カテコラミン負荷で増悪なく, カテコラミン誘発性多形性心室頻拍およびQT延長症候群は否定的と考えた.  ピルジカイニド負荷で4連の多形性心室頻拍を認めたがベラパミル投与で抑制された. 遺伝子解析ではQT延長症候群, カテコラミン誘発性多形性心室頻拍, Brugada症候群に関連する遺伝子変異は陰性であった. short-coupled variant of torsade de pointesを最も疑い, 家族歴も考慮しICD植え込みを施行後ベラパミルの内服を開始し退院となった. その後は, ICDが作動することなく経過している.
著者
川人 充知 石川 恵理 露木 義章 蔦野 陽一 石田 仁志 金森 範夫 松岡 良太 谷尾 仁志 服部 隆一 寺本 祐記 橘 充弘 青山 武
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.1314-1322, 2016-11-15 (Released:2017-11-15)
参考文献数
14

症例は86歳男性,労作時息切れと前胸部痛が出現し来院.心電図で四肢誘導に低電位を認めた.心エコーで左室全周性の心肥大および,アデノシン三リン酸負荷による冠血流予備能の低下を認めた.99mTc-ピロリン酸心筋シンチグラムで心筋への高集積,心臓MRIでは右室,両心房および左室全周性に心内膜下優位の遅延造影を認めた.左室心筋生検組織でコンゴレッド染色および,トランスサイレチン(TTR)免疫組織化学染色陽性であることからATTRアミロイドーシスと診断した.初診から2年後に完全房室ブロックをきたし,DDD型恒久ペースメーカ植込み術を施行したが,労作時息切れや全身倦怠感が持続した.その後心不全増悪による入院を繰り返し,5年後に死亡した.剖検で両心房,右室,左室心内膜側から中間層の広範囲にTTR免疫染色陽性のアミロイド沈着を認めた.MRIの遅延造影所見と同様に心外膜側は比較的沈着が軽度であった.肝,膵,脾,腎,副腎,膀胱,肺など全身の臓器にも血管壁を主体とした広範囲のアミロイド沈着がみられた.遺伝子解析ではTTR遺伝子に変異を認めず,野生型ATTRと診断した.5年の経過を追えた野生型ATTRアミロイドーシスの1剖検例において,画像所見と病理組織学的所見を対比検討した.
著者
孟 真
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.275-280, 2016 (Released:2017-03-15)
参考文献数
12
著者
寺柿 政和 河野 仁美 井上 圭右 崔 吉永 稲荷場 ひろみ 川村 千佳 岡村 幹夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.40-45, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
17

アルコールは心臓や肝臓を含むさまざまな臓器に影響を及ぼす.アルコール性心筋症(alcoholic cardiomyopathy;ACM)は特発性心筋症に類似して左室壁運動低下や左室拡大を示すが,大酒歴があることで区別される.断酒で心機能は改善し,再飲酒で悪化するといわれるが,量を減らして飲み続けた場合の長期予後は明らかではない.また,肝障害との合併についても一定の見解はない.今回われわれは,時期を違えて顕性のACMとアルコール性肝硬変を認めた症例を経験した.患者は,51歳時にACMと診断され,断酒により心機能は改善した.その後,以前の約半量のアルコールを再び飲み始めて15年以上を経て肝硬変をきたしたが,この間にはACMは再燃しなかった.飲酒量が臨床的にACMか肝硬変かを規定する一因になったと推測され,興味深い症例と考えられた.
著者
近江 三喜男 澤村 佳宏 清水 雅行 中目 貴彦 高橋 通規
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.107-111, 2004

動脈管動脈瘤はまれな疾患であるが,近年の大動脈外科の発展に伴い報告が増加している.しかし,一般的には本疾患は十分には理解されていない.<BR>症例は70歳の男性で,高血圧と狭心症の既往がある.平成14年7月29日,胃癌に対し胃切除術を受けた.術後,嘔気,嘔吐が持続し,8月20日以降は絶食のもとに高カロリー輸液を受けていた.9月26日,精査目的で当院に転院となった.10月2日,持続する胸痛を訴え,胸部X線像で心縦隔陰影の拡大と左胸水を認め当科紹介となった.胸部CT像で"triplestarsign"を認め,最大瘤径は60mmであった.DSA所見ではaortic windowに突出する嚢状瘤を認めた.以上の所見より,成人型動脈管動脈瘤の切迫破裂の診断のもとに緊急手術を行った.手術は胸骨正中切開で行い,選択的脳灌流を用いた脳分離体外循環下に,完全弓部大動脈置換および弓部分枝再建術を行った.術後は呼吸不全が遷延し,出血性残胃潰瘍などで長期間の入院を要したが,12月26日に元気に退院した.<BR>本症の症状は嗄声,呼吸困難,咳嗽,胸痛,嚥下障害など,瘤の拡大による圧迫症状が主である.破裂などの重篤な合併症も高率に発生することから,瘤径3cm以上が手術適応とされる.今回は胃切除術後の通過障害で発症したが,上部消化管症状の鑑別診断上重要な疾患の一つであることを認識すべきである.
著者
櫃本 竜郎 井上 勝次 飯尾 千春子 藤本 香織 河野 珠美 藤井 昭 上谷 晃由 永井 啓行 西村 和久 鈴木 純 大蔵 隆文 檜垣 實男 大木元 明義
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.57-63, 2015 (Released:2016-01-14)
参考文献数
7

症例は72歳, 女性. 当院膠原病内科で全身性エリテマトーデスに合併した血球貪食症候群に対して化学療法 (CHOP療法) を施行後に心不全を発症しアドリアマイシン心筋症と診断された. また, 心エコー上中等度の大動脈弁狭窄症を指摘された. 以後心不全標準治療を継続したが, 約10年の経過で徐々に心機能低下と大動脈弁狭窄症の重症度が進行し, 心不全の増悪による入退院を繰り返した. 内科的治療の限界と判断し, 外科的大動脈弁置換術や経カテーテル的大動脈弁植込み術 (Transcatheter Aortic Valve Implantation ; TAVI) の適応を診断するため, 低用量ドブタミン負荷心エコー検査を行った. 本症例は偽性重症大動脈弁狭窄症の可能性があるため, Blaisらが提唱した予測有効大動脈弁口面積 (projected effective orifice area ; EOAproj) 測定したところ, EOAproj 1.18cm2で境界所見であった. 胸部CT検査から求めた大動脈弁石灰指数 (Agatston's score) は659であり, 強い石灰化は指摘できなかった. カテコラミンを含む心不全治療を行ったが, 心不全の改善を認めず死亡した. 剖検を行った結果, 大動脈弁は弁腹の石灰化を認めたが, 弁尖の変性は軽度であった. 今回われわれは低左心機能を伴う大動脈弁狭窄症例におけるドブタミン負荷心エコー検査の有用性, 限界について検討したので報告する.
著者
丸山 征郎
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.204-210, 2009 (Released:2013-05-09)
参考文献数
17