著者
梶川 隆 村上 敬子 小橋 真司 寺田 洋明 長田 好規 横山 宏道 竹本 俊二 友田 純
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.45-50, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
14

症例は50歳代, 男性. 2010年2月ごろから出現した早朝の胸部圧迫感を主訴に来院した. 断層心エコー図検査と運動負荷心電図検査は正常であった. 冠攣縮性狭心症を疑いニトログリセリンを処方し, 胸痛時の舌下投与にて軽快を認めていたが, 数日後の夕方, 自宅で胸部圧迫感を訴えた直後に倒れて, 痙攣し, 心肺停止状態となった.妻が目撃し, ただちに胸骨圧迫を行い, 近所の住人に救急隊通報を依頼した. 約4分後に救急隊が到着し, その2分後と4分後に自動体外式除細動器(automated external defibrillator; AED)による電気的除細動が施行された. 自己心拍は再開し, 約30分後に搬送された. 来院時の意識状態は, JCSIII-300で, 自発呼吸は微弱であったため, 気管挿管と人工呼吸とを開始した. 12誘導心電図ではIII, aVFでST上昇と, QT延長とを認め, V5~6でST低下を認めた. 入院後, クレアチンキナーゼ(creatine kinase; CK)は正常域を推移した. 第3病日に人工呼吸器から離脱し, 意識は清明となった. 第10病日に行った冠動脈造影では左冠動脈seg.7に軽度の狭窄を認めたが, 左室造影では局所壁運動は正常に保たれていた. カルシウム拮抗薬を処方後, 胸痛の再発はなく, 第12病日に退院した. 神経学的後障害を残さず職場復帰した.福山地区では, 2008年度からの2年間で救急搬送人員数は35,784人で, このうち心肺停止状態が, 777人であった. 一般住民による心肺蘇生処置(cardiopulmonary resuscitation; CPR)は346人(44%)に行われ, 1カ月生存は5.2%であったが, CPR未施行における生存率は3.2%であった. 今後, 地域住民に対する心肺蘇生法とAEDの啓蒙普及活動が必要と考えられた.
著者
山本 勝広 大江 透 相原 直彦 鎌倉 史郎 松久 茂久雄 下村 克朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.679-685, 1988-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

迷走神経刺激は心室頻拍には影響を与えないと言われているが,迷走神経の緊張を高める手技や自律神経作働薬にて心室頻拍の停止する例がわずかながら報告されている.我々は,心室頻拍の停止に副交感神経刺激が有効であった3例について検討した.2例は非持続型の心室頻拍,1例は持続型の心室頻拍である.種々の副交感神経刺激手技や副交惑神経刺激薬剤にて心室頻拍は停止した.しかし副交感神経刺激の有効性の機序は迷走神経緊張作用によるものか,交感神経抑制作用によるものか,あるいはこれらの相乗作用によるものか明らかではなかった.また,その心室頻拍の特徴や機序についても検討した.
著者
山里 有男 伴 敏彦 安永 敏美 坂田 隆造 西脇 登 広瀬 瑞夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.12, no.12, pp.1434-1439, 1980

大動脈-左室トンネルの診断を受けていた5800g,10カ月の男児が,左無気肺,心不全をきたし緊急入院し,超低体温循環遮断下に開心術を施行した.術中所見は大動脈交連部で大動脈壁より離開した特殊な形の大動脈閉鎖不全症であり,膜性部中隔瘤も認められた.弁交連をフェルト付針糸で大動脈壁に縫着し中隔瘤を切除した.術後消失した大動脈逆流音が再び聴取されるようになり,1週間後再手術を行った.縫着した大動脈弁は完全に離開してあり,大動脈弁輪が14mmと小さく弁置換は行えなかったので,大動脈弁口をパッチで閉鎖したのち14mmのハンコック弁付人工血管による左室心尖-大動脈間の左室流出路形成を行ったが低心拍出症で失なった.<BR>左室心尖-大動脈バイパス手術はその手技も容易であり,先天性大動脈狭窄症や弁輪にまで強度の石灰化をきたした大動脈狭窄症などにも本手術法は有用であると考える.
著者
久岡白 陽花 橋村 一彦 北風 政史 大原 貴裕 中谷 敏 住田 善之 神崎 秀明 金 智隆 中内 祥文 林 孝浩 宮崎 俊一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.772-775, 2009

症例は50歳, 男性. 主訴は呼吸困難. 既往歴として34歳より高血圧あり. 就寝時の息苦しさを主訴に入院. 心エコーで僧帽弁後尖middle scallopの逸脱による僧帽弁閉鎖不全, 心拡大を認め, 左室造影で重症の僧帽弁閉鎖不全と全周性の壁運動低下(左室駆出率30%)を認めた. 僧帽弁置換術の適応と考え精査を施行. 経胸壁心エコー, 経食道心エコーで左房内に隔壁様構造物を認めた. 経胸壁3D心エコーでは, 隔壁様構造物は左肺静脈壁より左房自由壁側に連続するが, 中隔側では欠損し三日月様構造を呈しており, 特徴的な形態より三心房心と診断した. 欠損孔は大きく(3.88cm<sup>2</sup>), 流入障害は認められなかった. 重症僧帽弁閉鎖不全症に対し僧帽弁形成術を施行し, 同時に左房内異常隔壁切除を施行した. 僧帽弁閉鎖不全の術前精査の際に偶然診断された三心房心を経験し, 3Dエコーで観察し得たので報告する.
著者
川島 理 青野 豪 阿部 秀樹 上村 直 密岡 幹夫 柳沼 厳弥 神部 裕美
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.182-189, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
27

症例は, 58歳, 男性. 2010年7月中旬に胸痛が持続するため, 当院紹介受診となる. 緊急冠動脈造影を施行したところ左前下行枝(#7)90%狭窄を認めたため, そのまま冠動脈インターベンションを施行した. ステント留置(Xience VTM)後より造影遅延となり, ステントストラットからのプラークの逸脱を認めた. ニコランジルの冠動脈内投与後, 大動脈内バルーン·パンピング(intra aortic balloon pumping; IABP)を挿入して終了した. 翌朝, 胸痛が増強したため, 再度冠動脈造影を施行したところ, ステント内プラーク逸脱の増量を認めた. バルーンにて再三圧排するも拡張不十分のため, Xience VTMよりもストラットが密なCypherTMを追加留置. 良好な拡張を得て終了した. 第3病日にIABPを離脱し, 順調に経過していたが第9病日朝, 冷汗を伴う胸痛があり緊急造影施行. 左前下行枝ステント内で血栓性閉塞を認めた. 血栓を吸引後, バルーンで高圧拡張しDriverTMを留置した. IABPを挿入後, 持続静脈内投与をヘパリンナトリウムからアルガトロバンに変更し, 内服薬はアスピリン, クロピドグレルにシロスタゾールを追加した. 第11病日にIABPから離脱した. 第18病日午前に再度胸痛を認めたため, 緊急造影したところステント内亜急性再閉塞を認めた. バルーンでステント内を高圧拡張しIABPを挿入した. その直後にも胸痛を認め再造影したところ再度血栓性閉塞となっており, 再バルーンニング施行. 提携病院に転院のうえ, 第20病日に準緊急1枝バイパス手術(左前下行枝—左内胸動脈)を施行した.
著者
松添 弘樹 七星 雅一 角谷 誠 大西 祥男 清水 宏紀 畑澤 圭子 中村 浩彰 熊谷 寛之 辻 隆之 井上 通彦 則定 加津子 高見 薫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.54-60, 2014

症例1 : 30歳代, 女性. アルコール依存症, 神経性食思不振症にて精神科外来加療中であったが1 年前より通院を中断していた. 2012年5 月下旬の夕食後, 突然の痙攣様発作で救急要請. 救急隊到着時, 心室細動波形で心肺蘇生を開始, 合計3 回の電気的除細動が施行され当院搬入となった. び漫性左室壁運動低下を認め, 血清カリウム2.2mEq/L, 血清リン1.1mg/dLと電解質異常を認めていた. 入院後電解質補正を行い不整脈は消失したが, 低酸素脳症のため意識レベルの改善なく経過した. 症例2 : 40歳代, 男性. 2012年5 月下旬より下肢筋力低下, 起立困難から脳梗塞を疑われ近医で頭部精査入院となったが, 明らかな脳神経疾患は認めなかった. 前医第2 病日の朝食後, 突然心室細動が出現し心肺蘇生が施行されるも, 難治性心室頻拍となり某院救急センターへ搬送. 冠動脈造影にて有意狭窄はなかったが, 薬剤的, 電気的にもコントロール困難で経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS) 挿入下に当院に紹介搬送となった. 当院では多形性心室頻拍 (torsades de pointes ; TdP) を認め, び漫性に左室壁運動が低下しており, 血清カリウム : 1.6mEq/L, 血清リン : 1.6mg/dLと電解質異常を認めた. 入院後電解質補正によりTdPは消失, PCPS抜去にいたるも低酸素脳症から意識障害が遷延し第10病日に死亡退院となった. 両症例ともアルコール依存症を背景に持ち, カロリー摂取後の致死的不整脈出現からrefeeding症候群の関与が疑われた. 慢性低栄養患者に発症した若年性心肺停止患者ではrefeeding症候群の可能性を常に考慮する必要があると考えられた.
著者
川本 健治 片山 祐介 櫻木 悟 西原 大裕 辻 真弘 市川 啓之 横濱 ふみ 谷本 匡史 大塚 寛昭 山本 和彦 田中屋 真智子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.S2_152-S2_157, 2016

<p></p><p>症例は74歳,女性.前医のホルター心電図にて50%を超える心室期外収縮や非持続性心室頻拍を認めた.心室期外収縮は,下壁誘導でのpeak deflection indexが0.66と0.6を超えており,心外膜側起源が疑われた.さらに心室期外収縮は,単形性で,右脚ブロック型+下行軸,Ⅰ誘導でrS,V5-6でS波を認め,下壁誘導にてノッチは認めなかった.大心静脈(以下,GCV)遠位部にて,局所電位はQRS起始部に30ms先行し,perfect pace mapが得られた.さらに,GCV遠位部近傍の左室心内膜側にてactivation mappingを行い,QRS起始部に12ms先行し,good pace mappingが得られた.GCV遠位部での通電も考慮したが,まず左室心内膜側の最早期興奮部位からの焼灼を行うこととし,焼灼開始25秒で心室期外収縮は消失し,その周囲に追加通電を行い,その後,再発を認めない.</p>
著者
高宮 智正 横山 泰廣 山下 周 白井 康大 鈴木 雅仁 前田 真吾 田中 泰章 佐々木 毅 笹野 哲郎 川端 美穂子 平尾 見三
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.S3_12-S3_16, 2013

症例は33歳, 女性. ほぼ終日持続する心房頻拍 (atrial tachycardia ; AT) に対してカテーテルアブレーションを施行した. 12誘導心電図のP波の形状から心房頻拍は右心耳または三尖弁輪起源と推定された. EnSite Multi-Electrode Array (MEA) カテーテルが三尖弁輪を跨ぐように右室心尖部に向けて留置してAT中に三尖弁輪部のNCMを行い, 自由壁側10時方向に心房頻拍の起源を同定してカテーテルアブレーションに成功した. ATの機序としては心臓電気生理学的検査 (electrophysiological study ; EPS) 所見より異常自動能と考えられた. 三尖弁輪部は中隔側, 自由壁側ともconventional mappingに苦労することがあり, non-contact mapping (NCM) が有用と考えられた.
著者
岡崎 怜子 宮内 靖史 小林 義典 丸山 光紀 岩崎 雄樹 平澤 泰宏 阿部 純子 谷口 宏史 堀江 格 舘岡 克彦 上野 亮 小鹿野 道雄 篠田 暁与 小原 俊彦 平山 悦之 加藤 貴雄 高野 照夫 新田 隆 大森 裕也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.115-122, 2005

症例は74歳,女性.70歳時に僧帽弁置換術および慢性心房細動に対しradial手術施行.手術2カ月後より周期220msの心房頻拍(AT)が持続.AT中,冠静脈洞(CS)の興奮順序は遠位から近位であり,CS内広範囲でpost-pacing interval(PPI)が頻拍周期にほぼ一致するconcealed entrainment(CE)を認めたことから僧帽弁輪を旋回するATと考えた.左房後壁切開線が接合する僧帽弁輪部直下のCS内部にて波高の高い電位が記録され,PPIが頻拍周期に一致するCEを認めた.同部位における高周波通電開始4秒後に頻拍は停止し,以後誘発不能となった.通電部位より2mm近位部でのペーシングで1cm遠位部への伝導時間が200msとなったことからこの通電で左房後壁切開のブロックが完成したと考えた.術中完全に凍結し得なかったCS筋層を介する伝導が頻拍発生の原因と考えられたradial術後ATを経験したので報告する.
著者
高 英成 中島 昌道 三隅 寛恭 早崎 和也 釘宮 博志 今井 康晴 黒沢 博身 沢渡 和男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.46-50, 1988

症例は13歳,男子.チアノーゼ,易疲労感を主訴とし,当科に入院.精査の結果,complete levotransposition,VSD,PS,1-PA atresia,PDA,PFOと診断し,左肺動脈パッチ拡大術,Rastelli手術を施行し,良好な結果を得た.心外導管には牛心膜をロール状にしたものを作成し,ブタ心膜の三弁を内蔵させ,使用した.大動脈が肺動脈の左前方に位置するcomplete levotranspositionではVSDはsubarterial VSDであることがほとんどであり,PSを合併した場合,Rastlli手術の最も良い適応になる.
著者
賀来 文治 油尾 亨 藤田 主税 吉田 太治 下島 正也 勝田 省嗣 田口 富雄 新田 裕 平岩 善雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.1145-1152, 2013-09-15 (Released:2014-09-17)
参考文献数
18

症例は92歳の女性.86歳時に他院にて洞不全症候群および発作性心房細動の診断でAAIペースメーカーの植え込みがなされ,植え込み後も発作性心房細動に対して抗不整脈薬(ピルジカイニド75mg/日,ベラパミル120mg/日,メチルジゴキシン0.05mg/日)の投与が継続されていた.ペースメーカー植え込み後,毎年施行されていたペースメーカーチェックでは,心房のペーシング閾値は0.5V(パルス幅0.4msec)で,ペースメーカーの出力は2.5Vに設定されていた.以後,施設に入所中であったが,意識低下,低酸素血症,徐脈,ショック状態にて当院救急外来へ緊急搬送された.搬送時の心電図では心房のペーシング不全と高度の徐脈を認めた.まず,ペースメーカーの出力を10V(パルス幅1.0msec)にしたが心房は捕捉されなかった.次に体外式ペースメーカーを挿入し,右房の数か所で10V(パルス幅0.75msec)の出力でペーシングを試みたが,やはり心房は捕捉されなかった.引き続き右室でのペーシングを行ったところ,心室は容易に捕捉可能であり心室のペーシング閾値は1.0V(パルス幅0.75msec)であった.その後ピルジカイニドの血中濃度が2.3μg/mLと中毒域にあったことが判明した.抗不整脈薬の中止とともにペーシング不全は改善,全身状態も改善し救命可能となった.本例では血中ピルジカイニド濃度の上昇がペーシング不全の主因であった可能性が高いが,心房と心室のペーシング閾値に大きな差を認めた.日常臨床の場では,ペースメーカー植え込み後に抗不整脈薬を継続投与することも多く,ペースメーカー機種の選択も含めて一考を要する症例と考えられたため,ここに報告した.
著者
斉藤 博則 野本 淳 田野 入高史 岡村 哲夫 青木 和弘 鈴木 清文 福元 耕 茂木 純一 川井 三恵 横打 邦男 阿部 邦彦 吉沢 直
出版者
心臓
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.92-96, 1995

症例は47歳,男性.平成5年1O月28日事務仕事中,突然意識消失,呼吸微弱となり,心肺蘇生術を受けながら,近医に転送された.来院時意識レベル200~300,瞳孔散大,血圧測定不能,モニターでは心室細動であった.挿管し呼吸管理とするとともに,200~300JのDC計4回施行し洞調律に復した.この間リドカイン,メキシレチン,ベラバミル,ボスミン,メイロン等の静注を受けた.その後順調に回復し,精査加療目的で当院紹介入院となった.入院後心カテ施行.冠動脈造影正常,左室造影上全体的な収縮力低下を認め駆出率は25%であった.また,心筋生検も施行し,さらに電気生理学的検査を施行した.右室2カ所,左室1カ所計3カ所からの3連発刺激,それに加えて,イソプロテレノール負荷後の2連発刺激でも心室頻拍・心室細動は誘発されなかった.治療はアミオダロン200mg/日,カプトプリル,利尿剤,ワーファリンを投与した.現在経過観察中であり,今後ICD植え込みも検討中である.
著者
河野 律子 安部 治彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1349-1354, 2013 (Released:2014-11-21)
参考文献数
11
著者
淀川 顕司 森田 典成 小林 義典 小原 俊彦 村田 広茂 高山 英男 清野 精彦 加藤 貴雄 水野 杏一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.1, pp.S1_19, 2012 (Released:2013-08-23)

[背景・目的] Brugada症候群と不整脈源性右室心筋症(ARVD)はともに加算平均心電図における心室遅延電位(LP)が高率に検出されるが,そのLPの形態に着目すると,ARVDでは高周波成分で形成されるのに対し,Brugada症候群では比較的低周波成分で形成されることが多い.そこで,われわれは,QRS波の周波数解析を行うことにより両者の周波数特性を検討した.[対象と方法] 特発性右室流出路起源心室頻拍(RVOT-VT)20例,Brugada症候群10例,ARVD 10例.全例で心電図Z誘導QRS波をガボール関数を用いてウェーブレット変換し,各周波数帯でのピークのパワー値,および総パワー値を比較.[結果] Brugada症候群では80Hzを中心に,ARVDでは150Hzを中心にQRS内部に高周波成分が発達していた.高周波帯の中で最大パワーを有する周波数はBrugada症候群に比し,ARVDで有意に高かった(81.7± 19.9Hz vs 145.4± 27.9 Hz,p[結論] 心電図QRS波の周波数解析において,周波数特性は,Brugada症候群とARVDで明らかに異なる.