著者
柳浦 睦憲 茨木 俊秀
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J83-D1, no.1, pp.3-25, 2000-01-25

組合せ最適化問題に対する効率的な近似解法の一般的枠組みとして,近年,遺伝アルゴリズム,アニーリング法,タブー探索法やそれらの変形版など,様々なアルゴリズムが提案されてきた.これらを総称してメタ戦略あるいはメタヒューリスティクスと呼んでいる.本論文では,これらメタ戦略に現れる様々なアイデアを,近似解法の基本戦略である局所探索法の一般化ととらえることで,体系的にまとめる.メタ戦略の一つの魅力は,その手軽さとロバスト性にある.この観点から,次に,メタ戦略の基本的なアイデアのみで構成したシンプルなアルゴリズムを,計算実験により比較した結果を述べる.これをもとに,手軽なツールとしてのメタ戦略の設計指針を与える.そのあと,より多くの手間をかけても,更に性能の高いアルゴリズムを構成したい場合に有効となる,やや複雑なアイデアについても簡単に紹介する.最後に,メタ戦略の理論的解析の話題にも言及する.
著者
谷口 博人 井上 美智子 増澤 利光 藤原 秀雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.127-135, 2001-02-01
参考文献数
6
被引用文献数
10

本論文では, 移動端末だけからなる分散移動システムであるアドホックネットワーク上でのクラスタ構成法を考察する.クラスタ構成法とは, ネットワーク上の全ノードをクラスタヘッドとそれと直接通信可能なノードであるクラスタメンバからなるクラスタに分割することである.移動端末は, 計算能力, 通信能力などの点でパフォーマンスが低いため, 移動端末にかかる負荷が小さい手法が望まれる.分散システムの問題として, 端末の移動や, トポロジーの変化に伴うオーバヘッドを考慮しなければならない.更に, 無線チャンネルの帯域幅の空間再利用の観点などから, クラスタ構成をすることによって, 階層構造を構築する利点がある.その際, ネットワークで交換する情報量を少なくするためクラスタヘッドを少なくすることや, 管理情報の受け渡しを少なくするためクラスタヘッドの変更数を少なくすることが望まれる.本論文では, アドホックネットワーク上にクラスタを構成するクラスタ構成法及び, 移動端末の移動などによりトポロジーが変化した場合に対応するクラスタ再構成法を提案する.提案するクラスタ構成法は, トポロジーグラフが密な場合を除き, 従来手法に比べてクラスタ数が少ないこと, また, 提案するクラスタ再構成法は, 従来手法に比べ, クラスタ数が少なく, またクラスタヘッドの変更数が少ないことをシミュレーション実験で示す.
著者
小林 良岳 佐藤 友隆 唐野 雅樹 結城 理憲 前川 守
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.605-616, 2001-06-01
被引用文献数
5

連続して使用しているシステムでは, その上で実行中のプログラムに変更を行うことは困難である.しかし, 性能の向上やバグの除去による信頼性の向上を考えたとき, ソフトウェアに対する変更は必要不可欠である.実行中のプログラムの一部を動的に差し替えたり拡張するには, 実行状態及び内部状態を監視する手段が必要であり, 更に, 変更時には新しいモジュールにその状態を反映してやる必要がある.そこで, 我々は状態再現を伴ったソフトウェア部品の変更が可能なOS「彩(Aya)」の実装を行っている.我々の手法では, 状態監視のためにプログラマがソースコードに変更を加える必要はなく, Portalと呼ばれる状況監視のためのコードをコンパイル時に自動生成し, それをOS側で管理する.これにより, プログラム作成時のミスを軽減することができると考えられる.また, 状態の監視は差替え要求時にのみ動的に行うため運用時のオーバヘッドを削減できる.本論文では, Ayaで実現されている動的再構成のための要素について述べる.また, 評価を行いPortal組込みによるオーバヘッドは, 実用に耐え得る範囲であることを示す.
著者
谷口 秀夫 伊藤 健一 牛島 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.492-499, 1995-05-25
被引用文献数
24

計算機を24時間無停止で継続動作させるため,サービスを実現しているプロセスの走行中に,そのプログラムの一部分を入れ替える方式を提案する.具体的には,プログラムの部分入替え可能な条件として,プログラムへの条件とプロセスへの条件を示す.プログラムへの条件としてはインタフェース/処理内容/外部変数アドレスについてであり,プロセスへの条件としてはプロセスの実行状態に関するものである.また,入替え可能な状態の判定と検出の方法として,プログラムの実行状態を把握するフラグの導入を提案する.更に,そのフラグを利用してプロセスの動作を制御し,プログラムの部分を入れ替える方法を述べる.実現時の課題として,オペレーティングシステムが提供する機能と内部の処理方式を示す.試作と評価により,入替えの処理がサービスに与える影響は小さく,入替えの処理はプログラムを入れ替えられるプロセスの実行環境で行う方法が良いことを示す.本方式により,計算機を動かした状態で,ソフトウェアの保守運用や機能向上が可能になる.
著者
塚本 祐一 石川 佳治 北川 博之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J87-D1, no.2, pp.202-215, 2004-02-01

近年,地図情報の電子化や位置計測技術の発展,携帯端末などの普及を受けて,携帯端末をもって移動する利用者やナビゲーション機器を備えた自動車などの移動オブジェクトに対し,移動状況に即した周辺情報の提供を行う手法の開発が求められている.一般に,移動オブジェクトに周辺情報を提供する場合,移動体の現在位置を中心として決められた範囲を検索をすることが考えられる.しかし,これまで通ってきた経路やこれから通る予定経路が明らかであれば,それらの情報を利用してより適切な情報が提供できる余地がある.そこで我々の研究グループでは,移動経路や移動速度などを考慮して移動オブジェクトに対して情報を提供するための空間データベース検索モデルの開発を行い,提案した検索モデルに基づく移動オブジェクトに対する周辺情報提供モデルを,商用のGISソフトウェア上で実装した.本論文はこのシステムの設計について述べ,実験をもとにその有用性について評価する.
著者
神田 崇行 石黒 浩 小野 哲雄 今井 倫太 前田 武志 中津 良平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.380-389, 2002-04-01
参考文献数
17
被引用文献数
46

日常生活の中で人間とかかわりながら活動する日常活動型のロボットにおいては,自然で円滑なコミュニケーションのために相互作用と関係性を重視してロボットを設計することが必要である.我々の開発したRobovieはこのために豊富なセンサ,擬人化しやすい外見,人間と同様のゼスチャ表現能力といったコミュニケーションに適したハードウェア機構をもつ.更に,相互作用機能を容易に実現するため考案したソフトウェアアーキテクチャに基づきプログラムを行う.このような特徴から,Robovieはロボットと人間とのコミュニケーションやロボットの身体性に関する研究といったヒューマノイドロボットを用いた研究のプラットホームとしての利用に適している.本論文では,Robovieのハードウェア及びソフトウェアアーキテクチャについて報告し,相互作用機能の実証実験について報告することで,Robovieの研究用プラットホームとしての有用性を示す.
著者
高橋 直也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.339-346, 1993-07-25

ジュークボックス型光ディスク装置を使用するクライアントサーバ型の光ディスクファイルシステムの性能向上策として,画像データ先読み方式を提案した.ジュークボックスでの光ディスクの入れ替えがシステム性能のあい路になっていることから,ワークステーションで表示,あるいは印刷する予定の画像データをファイルサーバからある程度まとめて先読みすることにより,システムの性能を向上するもので,実用規模のシステムに適用して,その効果を確認した.なお,一つのワークステーションに対応する光ディスク入替え待ち時間を,他のワークステーションに対するサービスに活用することにより,更に性能の向上が図れることも実測により確認した.
著者
藤岡 豊太 阿曽 弘具
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-1, 情報・システム 1-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.880-888, 1997-11
被引用文献数
2

コンピュータ技術の発達に伴い, 情報をいかに効率的に伝送, 蓄積するかが重要な課題となっている. そのためデータ圧縮技術が発達し, さまざまな分野で利用されている. しかし, 大量の情報を扱う場合の各種システムの速度的要求のもとでは, CPU内での圧縮処理では速度的要求を満足することが困難になってきている. そのため, VLSI/ULSI技術を用いた専用ハードウェアによる高速なデータ圧縮法が必要となっている. 本論文では, さまざまな情報に対して有効な符号化法の一つであるLZ77符号化法を高速に実行する並列処理アーキテクチャ-PAHL-Cを提案している. PAHL-Cでは, 符号化で最も計算量を要する最長一致記号系列探索での冗長な計算を削減し, スルーレートを大幅に向上するものである. また, 高位論理合成システムPARTHENONを用いてPAHL-Cの論理設計等を行い, 性能評価している. その結果約20〜25[MByte/s]というスルーレートが得られることがわかった. 更にLZ77復号化並列処理アーキテクチャ-PAHL-Dを提案し, 性能評価している. また, PAHL-C/PAHL-Dが効率的を統合できることを示す.
著者
角 康之 間瀬 健二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1231-1243, 2001-08-01
被引用文献数
25

本論文では, 博物館, 街角, 学校, オフィス, 学会イベントなど, 興味, 趣味, 状況を共有する人が集まる場所での対面している人の間の出会いや対話を促進することを目的とした, エージェントサロンと呼ばれるシステムを紹介する. エージェントサロンは, 複数のユーザが同時に利用できるような大きなディスプレイをもっており, そこに, 各ユーザに帰属したパーソナルエージェントがキャラクタアニメーションとして表示され, それらが自動的に会話を始める. パーソナルエージェントは, 普段はPalmGuideと呼ばれる携帯ガイドシステム上で動作しており, 各ユーザの個人的興味やそれまでの行動履歴を管理しながら個人ガイドサービスを提供している. 各ユーザがPalmGuideをエージェントサロンに赤外線接続することで, パーソナルエージェントはそれらの個人情報と一緒にエージェントサロンに乗り移り, エージェント同士で自動的におしゃべりを始める. おしゃべりの内容は, 各ユーザの興味やそれまでの行動履歴に関する内容であり, ユーザに成り変わって, 互いの経験に基づいた意見交換を行ったり推薦を行ったりする. そのおしゃべりを聞いているユーザたちは, いわば以心伝心のように共通の話題を得ることができ, エージェントたちのおしゃべりに引き込まれるように, より価値のある会話を始めることが可能になると考える. 本論文では, 実際の会議の参加者サービスとして実装したエージェントサロンの, 動作説明と評価を行う.
著者
田中 健二 近藤 喜美夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.581-588, 1999-04-25
被引用文献数
12

文部省が平成7年度第2次補正予算により構築を開始した大学間衛星ネットワーク(スペース・コラボレーション・システム:SCS)は, 全国の国立大学, 国立高等専門学校, 大学共同利用機関のうち36機関の延べ50箇所に設置したVSAT局(Very Small Aperture Terminal:超小型地球局)と本ネットワークの制御や監視を行うためにメディア教育開発センターに設置したHUB局(統括局:併せてVSAT局としての機能も有する)から構成される双方向性を有する全国規模の高等教育衛星ネットワークとして平成8年10月2日よりその運用を開始した. 本ネットワークでは, 任意のVSAT局が任意の局とグループを構成し, 1.5Mbit/sのディジタル回線を2回線用いたテレビ会議システムを構成することで, 授業・ゼミ・研究会・研修会など様々な教育・研究交流活動を共同・協調して行うことができる. 本論文では, SCSの方式選定の考え方とシステム構成について報告する.
著者
河辺 義信 真野 健 堀田 英一 小暮 潔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.249-261, 2002-03-01

プロセス代数π-計算は,プロセス間の通信リンクの動的接続を表現できる形式モデルである.本論文では,π-計算の実装に必要となる通信リンクの実装方法について述べる.π-計算では,通信リンクを「名前制限」と呼ばれる概念で形式化する.一方,実装では通信リンクは「名前生成」で扱うのが容易である.両者の同等性の形式的な証明は与えられていない.また,π-計算に対してデータタイプを加えた体系では,両者の同等性に関する反例が存在する.本論文では,データタイプ部を加えたπ-計算を扱い,名前制限と名前生成の同等性を論じる.
著者
石川 英彦 有澤 博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.291-299, 1997-03-25
参考文献数
10
被引用文献数
2

ほとんどのデータモデルは, 多量の情報を扱う必要性から, 特定の意味をもつ情報の集まりを一つのものとして扱う方法を提供しているが, この情報と集まりとの関係として, 数学における要素と集合との関係が最もよく用いられている. このとき, 「要素」がどのように「集合」に所属できるかという情報はデータの秩序を保つために重要であるにもかかわらず, それを十分に表現できる方法は数少ない. また, データベーススキーマを設計する立場からは, 表現力が高いだけでは不十分で, 直観的に設計を行えることが必要である. 本論文では, 要素が所属の際に守るべき集合の間の関係を直観的に表現できる表記法を提案し, その表記法が十分な表現力を有することを示す. また, 表記の集合が与えられたときに, それが矛盾を含むことを検出したり, 要素の所属を制限するための方法について考察し, 本手法がデータベーススキーマの設計手法として妥当であることを示す.
著者
守屋 宣 櫟 粛之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.301-317, 2003-05-01
参考文献数
10
被引用文献数
2

本論文では,莫大な数のエージェント動作し,それらのエージェントが頻繁に生成,消滅するようなインターネットエージェントシステムの耐故障アルゴリズムを考察する.本論文では,エージェントシステムへスナップショットアルゴリズムを適用することを考える.スナップショットアルゴリズムとは,分散システム全体の状況(スナップショット)を求めるアルゴリズムである.特に,Chandyらのスナップショットアルゴリズム[2]は,効率の良さ,手続きの単純さから代表的なスナップショットアルゴリズムになっている.しかし,Chandyらのスナップショットアルゴリズムを莫大な数のエージェントが動作する分散エージェントシステムへ適用することは実用的ではない.そこで,本論文では,Chandyらのアルゴリズムのアイデアを拡張し,メッセージ交換やエージェント生成などを通じて因果関係をもつエージェント間でスナップショットをとるサブスナップショットアルゴリズムを提案する.更に,サブスナップショットアルゴリズムによってとられたスナップショットを利用した効率的なロールバックアルゴリズムを提案する.スナップショットを利用した一般的なロールバックアルゴリズムでは一部のエージェントのみがロールバックすればよい.
著者
澤井 里枝 塚本 昌彦 寺田 努 LOH Yin-Huei 西尾 章治郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.939-950, 2002-10-01
被引用文献数
14

近年,衛星放送やデータ放送の普及により,放送されるコンテンツの種類や量が加速度的に増加している.大量のデータが受信される環境では,ユーザが必要とするデータを探し出すことは非常に困難であるため,自動的に必要なデータのみを抽出するフィルタリング技術に対する要求が高まっている.このような要求に対し,これまで多数のフィルタリング手法が提案されている.しかし,それらの手法を定性的に表現する数学的基盤がいまだ確立されていないため,各手法の定性的な評価や最適化,フィルタリングのための宣言的言語の設計などができなかった.そこで本論文では,フィルタリングを関数として定義し,様々なフィルタリング手法の性質を関数が満たす条件として表現することで,情報フィルタリングの数学的基盤を確立する.また,各性質を表現する制約条件の包含関係を示すことで,フィルタリングがもつ性質間の関係を明らかにする.本論文で論じる数学的基盤をもとに,実際のフィルタリングを分類し,性質に応じた処理方法を選択することで,より効率的なフィルタリングを実現できる.
著者
砂山 渡 井山 晃洋 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.1089-1097, 2004-12-01
被引用文献数
4

検索エンジンにおいて検索結果として表示される情報は,目的の情報を素早く獲得する上で重要なものである.特に,検索結果の各Webページの要約文は,各Webページの内容を知る上で重要であるとともに,ユーザが入力した検索語が各Webページ内でどのように使われているか,すなわち検索語と各Webページとのかかわりを知るために有効である.しかし,従来の検索エンジンにおける検索結果の要約文は,Webページの冒頭部分のテキストが抜き出されて検索語が含まれていなかったり,検索語を含んでいても文の途中で切れていて文として不完全で,文脈やWebページの内容を把握できないという問題点がある.そのため文を単位とした要約の出力が望まれるが,HTMLテキストにおいては,句点を含まない,文以外の記述が数多く含まれているため,そのまま文を単位とした重要文抽出システムによって要約文を提供することは困難である.そこで本論文では,各Webページのソースを文に相当する意味の切れ目において分割するHTMLテキスト分割システムを提案する.また,本システムにより生成されるテキストが,Webページの要約生成に有効に働くことを実験により検証した.
著者
柳浦 睦憲 茨木 俊秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.3-25, 2000-01-25
被引用文献数
35

組合せ最適化問題に対する効率的な近似解法の一般的枠組みとして, 近年, 遺伝アルゴリズム, アニーリング法, タブー探索法やそれらの変形版など, 様々なアルゴリズムが提案されてきた.これらを総称してメタ戦略あるいはメタヒューリスティクスと呼んでいる.本論文では, これらメタ戦略に現れる様々なアイデアを, 近似解法の基本戦略である局所探索法の一般化ととらえることで, 体系的にまとめる.メタ戦略の一つの魅力は, その手軽さとロバスト性にある.この観点から, 次に, メタ戦略の基本的なアイデアのみで構成したシンプルなアルゴリズムを, 計算実験により比較した結果を述べる.これをもとに, 手軽なツールとしてのメタ戦略の設計指針を与える.そのあと, より多くの手間をかけても, 更に性能の高いアルゴリズムを構成したい場合に有効となる, やや複雑なアイデアについても簡単に紹介する.最後に, メタ戦略の理論的解析の話題にも言及する.
著者
浅井 達哉 有村 博紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.79-96, 2004-02-01
被引用文献数
15

最近,ウェブページやXMLデータなどの半構造データに対するデークマイニングが注目を集めている.本論文では,半構造データマイニングにおける主要な技術の一つである,グラフ構造データからの部分構造パターン発見技法について,主に木パターンマイニングとグラフマイニングの観点から,近年の研究動向を紹介する.はじめに,半構造データマイニングの萌芽期の研究として,Subdue及び,GBI,Nestrovらのスキーマ発見,DehaspeらのWarmrを紹介する.次に,木パターンとグラフパターンのマイニングに関する現在の研究動向を概観する.木パターンの発見アルゴリズムとして,浅井らのFREQTとUNOT,ZakiのTreeMiner.安部らのOPTTなどを説明し,一般のグラフマイニングアルゴリズムとして,猪口らのAGMとYanらのgSpanなどを説明する.最後に,新しいデークマイニングの方向性を示すものとして,半構造データストリームからのマイニングアルゴリズムStreamTについて述べる.
著者
木村 将治 牧野 泰裕 小高 知宏 小倉 久和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. D-I (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.479-483, 2002-05-01
被引用文献数
1

本研究では,2人対戦ゲームの例として繰返しじゃんけんゲーム(RJG)を取り上げ,その戦略知識を遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて進化的に獲得することを目指す.GAで獲得する戦略知識の表現方法として,繰返し戦略表現を提案した.その表現を用いたGAの戦略と,あらかじめプログラムで用意したRJGの戦略とを対戦させ,有効な戦略知識を獲得できるか実験した.
著者
酒井 隆道 寺田 賢二 櫟 粛之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.958-968, 2005-05-01

近年, オンライン評判メカニズムが着目されている.既にそれは広く適用が進んでおり, その有効性も確認されつつある.しかし, その信頼性に関してはいまだ確固たる保証は得られていない.オンライン評判メカニズムは評価のエラーやノイズ, あるいは不正な嘘の評価申告という外乱に対して頑強である必要がある.更に, 人間が介在しないマルチエージェント環境においては悪意のあるエージェント, あるいはその集団による不正な評価申告による外乱(攻撃)の影響はより甚大なものとなり得る.既存のオンライン評判メカニズムは必ずしもそのような外乱を十分に考慮しているわけではない.そこで, 本論文では確率的近似法を用いた頑強なオンライン評判メカニズムを提案する.本メカニズムはエージェントの大域的な信用性を表す信用度を各エージェントごとに割り当て, その推定値をエージェント間の相互評価の申告に基づいて動的に更新する.シミュレーション実験により, 本メカニズムは外乱のある状況下においても良いエージェントと悪いエージェントを効果的に特定できること, 更に真の信用度の変化に対しても適応的に対応できることが確認できた.
著者
籠谷 裕人 南谷 崇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.548-556, 1994-08-25
被引用文献数
12

従来,認識されてきた非同期式回路の有用性が,近年の論理素子の高速化に伴い再び注目を集めている.本論文では,論理素子遅延や配線遅延の上限が予測できないという厳しい遅延仮定のもとに,非同期式回路を合成する基本的な手法を提案する.本手法は,レジスタ間の転送や演算といった基本的な操作の間に成り立つべき依存関係を仕様とし,それを信号遷移の因果関係に直接写像することによって非同期式回路を実現する.具体的にはまず基本操作間の依存関係からなるグラフを仕様として与える.この依存性グラフから正しく回路が合成できるための条件としてsafenessなどを定義する.次にこれをもとに,その機能ノードを対応した回路素片に置換し,これらを接続することで制御回路を合成する.この制御回路はハンドシェークによって2相方式でデータパス部の制御を行う.本手法は,並列性を仕様中に容易に記述でき,論理合成のコストが低いという特徴がある.