著者
大東 誠 田中 譲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.829-839, 2005-04-01

大規模なデータベースの全体の概観を把握しながら目的の情報にアクセスするためには, 様々に解析視点を変更して動的に情報を組織化しながら情報探索を行う必要がある.本研究では, このようなデータベース探索を実現するため, 任意の解析視点に基づいて動的にハイパリンクを構成する情報アクセス空間を実現する.筆者らは, まず, 新たな解析視点の概念と機構を提案し, これら解析視点の宣言的定義に基づき自動生成される複数の情報アクセス空間を, 個々のDBレコードに動的にリンクする仕組みを実現する.また, これらのリンクをたどる空間ナビゲーションや解析視点を編集するための三次元インタフェースを提供する.これらの操作は, 対象テーブルの絞込みや複数テーブルの結合といった検索質問処理に対応しており, ユーザは, 動的に解析視点を変更して空間移動を繰り返すことで, 焦点を次第に絞って目的の情報に到達することができる.本論文では, 三次元インタフェースの実装とそれを用いたデータベース探索の評価実験を行い, 本手法を用いて目的の情報に迅速にアクセス可能であることを示す.
著者
渡辺 哲也 渡辺 文治 藤沼 輝好 大杉 成喜 澤田 真弓 鎌田 一雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.891-899, 2005-04-01
被引用文献数
15

重度視覚障害者のコンピュータ利用を支援するスクリーンリーダには「詳細読み」という読み方が装備されている.これは, コンピュータで取り扱う文字を音声で一意に特定させるため, 各文字にそれぞれ異なる説明的な表現を割り当てたもので, 特に同音の漢字の区別に必須である.この詳細読みの一部にもとの漢字を想起しづらいものがあるという問題が提起されてきた.そこで, まず既存のスクリーンリーダ4種類から教育漢字1006字の詳細読みをテキストに書き起こし, その構成と語彙の観点から, もとの漢字の想起を困難にする要因を考察した.次に, スクリーンリーダを児童が利用した場合の問題を探るため, 詳細読みを聞いて想起した漢字を書き起こさせる実験を小学校で行った.その結果, 8割以上の詳細読みは50%以上の正答率を得た.他方で50%未満の正答率となった詳細読みを, 同じ漢字で正答率の高かった読みと比較・検討したところ, 児童の語彙範ちゅうにない説明語の使用が最も大きな要因であることが分かった.誤答の要因として次に多かったのは, 同音異字のある説明語の使用であった.
著者
井上 美智子 萩原 兼一 都倉 信樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.405-406, 1993-07-25

本論文では,非同期の超立方体状ネットワークでの最小重み生成木構成分散問題のメッセージ複雑度の下界がΩ(nlogn)であることを示す(最悪時評価,n:プロセッサ数).上界O(nlogn)は知られているので,この下界はオーダ的には最良である.
著者
矢谷 浩司 大沼 真弓 杉本 雅則 楠 房子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.773-782, 2003-10-01
被引用文献数
24

近年,ハンドヘルドデバイスが子供たちの学習において重要な役割を果たすことが期待されている.また,ハンドヘルドデバイスのようなモバイル性の高いデバイスを利用して協調学習をいかに支援するかは,CSCL(Computer Support for Collaborative Learning)の重要な研究テーマになりつつある.一方,日本においては,学習指導要領の改訂により始まる「総合学習」に対応した教育システムの構築が求められている.そこで,我々は「総合学習」の場として注目されている博物館において,2台のPDA (Personal Digital Assistant)を連携させ,展示物に関連するクイズを協力しながら解くことによって子供たちの学習を支援する,Musexと呼ばれるシステムを構築した.実際の博物館においてMusexの実験を行い,その効果について考察した.
著者
秦 淑彦 塚田 晶宇 尾崎 稔 坊 覚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.234-246, 1999-01-25
被引用文献数
11

本論文では, 分散型履歴映像サーバにおける効果的な検索・再生方式とその実装について述べる. 分散型履歴映像サーバとは, 映像監視やスポーツ中継等において, 複数のカメラで撮影された履歴映像をディジタル化してカメラごとに分散蓄積し, 操作者の要求やイベントを引き金として映像の読出し・伝送・表示を行うものである. まず, カメラ, 撮影時刻, イベント等のメタデータを自動生成して蓄積・管理し, このメタデータを用いて映像を検索する方式を提案する. これにより, 履歴映像の本質であるいつ, どこで, なぜ撮影されたかという視点からの検索が可能となる. 次に検索した映像を効果的に提示する新たな再生方式を提案する. 一つは映像のディジタル化による方式であり, 緊急時でも見落とさない, 詳細な状況分析ができる等の効果を発揮する. もう一つは建物や設備の3次元モデルを映像と連動させる方式であり, 多数のカメラが設置された場合どこを撮影しているのかわからない, 霧や煙等でよく見えないといった問題を解決する. 更に, これら再生方式を実現するための映像配信や撮影範囲データの蓄積・伝送方式を考案する. そして, 提案方式をプロトタイプにより評価する.
著者
北田 夕子 荒川 豊 竹森 敬祐 渡邊 晃 笹瀬 巌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1571-1583, 2005-10-01
被引用文献数
8

インターネットに接続点をもたない独立した無線アドホックネットワークでは信頼できる既存の認証局(CA : Certificate Authority)を利用できないため, 各ノードが独自に証明書を発行・管理する公開鍵証明書分散管理方式が提案されている. しかし, この方式は, 各ノードが全証明書を収集するため, メモリ消費量の増加や失効証明書リストの管理などの問題がある. そこで本論文では, 従来方式の課題を解決するために, 各ノードは自身に対して発行された証明書のみをもっておき, 認証要求が発生した時点で, 認証したいノードまでの証明書を収集して信頼の輪を構築するオンデマンド公開鍵証明書分散管理方式を提案する. 証明書の収集には, 被認証ノードにかかわるルーチングテーブル情報を付加してブロードキャストすることで, ブロードキャストが直接届かない被認証ノードも一括して探索することができるアドホック一括ノード探索プロトコル(ASNS : Adhoc Simultaneous Nodes Search)を提案する. 提案プロトコルにより, 提案方式は, 認証に必要な証明書のみを収集するため, ノードのメモリ消費量を削減でき, かつ失効証明書リストの確認処理が不要になる. 計算機シミュレーションにより, 信頼の輪の構築成功率, 信頼の輪を構築するために必要なノード数, 及び信頼の輪の構築に必要な通信量について評価を行い, ノード密度の低いアドホックネットワーク環境に有利であることを示す.
著者
磯本 征雄 宮原 一弘 中野 宇宙 伊藤 敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.599-609, 2000-06-25
被引用文献数
7

本論文では, ニュートン力学の学習を支援する宇宙旅行シミュレーション教材の構成と教授方略について議論する.ニュートン力学は, 物理学の中でも最も形式の整った理論の一つである.そして, 宇宙旅行は, 物理的概念の定義が明確であり, ストーリーが論理的な上に成功の是非も簡単に判断できる.こうした理由で, 宇宙旅行シミュレーションは, ニュートン力学演習のための個別学習用教材として適切である.本論文のシミュレーションは, 運動方程式, エネルギー保存則, 角運動量保存則など, ニュートン力学の基礎知識を学んだ学生のために, 更に発展した学習のための演習用教材として設計されている.学習者は, 的当てゲーム, 人工衛星の打ち上げ, 人工衛星のドッキング, 月旅行, 火星旅行といったシナリオの中で, ニュートン力学の応用場面を体験できる.この宇宙旅行シミュレーションを使って, 学習者は, 抽象的なニュートン力学と具体的な宇宙旅行の関係を学ぶことができる.
著者
岡本 龍明 太田 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.315-323, 1993-06-25
被引用文献数
12

本論文では,実際の現金や従来提案されている電子現金方式における問題点を解決する初めての理想的電子現金方式を提案する.ここで,理想的という意味は,利用者の匿名性(プライバシー)を保証した上で,不正使用を検出でき,更に支払い時の処理がオフラインでできると共に,1回発行された電子現金を額面の金額になるまで何回でも使うことができるといった特長をもつものである.本方式は,ICカード上において効率的な実現が可能である.例えば,額面金額に関係なく,1個の電子現金のデータサイズは,たかだか100バイトであり,Rabin暗号LSIの存在を仮定すれば,電子現金支払い時の処理時間は数秒程度である.本方式の安全性は,素因数分解の困難さに依存する.
著者
富田 悦次 今松 憲一 木幡 康弘 若月 光夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.1-8, 1996-01-25
被引用文献数
13

本論文では, 無向グラフ中の最大クリークを抽出するための単純で効率の良い分枝限定アルゴリズムを提唱する. ここで, いかにして分枝の制限を強力に働かせて解の探索領域を小さくするかが, アルゴリズムの効率化の重要な指標となる. しかし, その分校制限実現のために要する処理時間をできるだけ小さく抑える必要がある. そこで本論文では, その両者の兼合いを適切に達成した, 非常に単純で巧妙な逐次近似彩色-整列法を考案し, それにより探索の各段階において見出し得る最大クリークの上界を得て分技制限を効果的に実現し, 総実行時間も小さく抑えることに成功した. 本アルゴリズムは, 他のいくつかの代表的アルゴリズムと直接実験的比較, あるいは論文上の数値比較により, それらに対して600節点以内の広い範囲の多くのランダムグラフおよび1000節点のいくつかのランダムグラフについて, より高速であることを確認した.
著者
吉田 成志 吉井 健一 松本 英昭 大貫 淳 曽禰 元隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.11-20, 1997-01-25
被引用文献数
1

マルチDSPシステムは, 高速性と汎用性を備えた計算機として国際的に注目を浴びているが, マルチDSPシステムに演算処理を行わせる上での問題点として, DSP間のデータ通信によるシステム稼動率の低下が挙げられる. 稼動率の低下を防ぐためには, ハードウェア設計段階においてデータ通信時間を考慮したタスクスケジューリングをさまざまな相互結合網に対して行い, 演算処理に最適な相互結合網および並列アルゴリズムを十分に検討しなければならない. そこでデータ通信時間をあらかじめ正確に把握するためのシミュレーション方法が不可欠となる. 本論文では, マルチDSPシステムに演算処理を行わせた場合に生じるデータ通信の正確な時間を, アセンブラプログラムのインストラクションサイクル数から作成した数式を用いて求める方法について示す. 本手法を用いることにより, 使用するDSPの種類, プログラマ, DSP間の接続方式およびハードウェアシステムの仮装・実装にかかわらず正確な通信時間を理論的に求められる. 演算処理の例として行列積算と連立1次方程式の求解を取り上げた結果, 最適なトポロジーを選択することが数式によりシミュレーション上で容易に可能となることを示した.
著者
柴田 直樹 岡野 浩三 谷口 健一 シバタ ナオキ オカノ コウゾウ タニグチ ケンイチ Shibata Naoki Okano Kozo Taniguchi Kenichi
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J84-, no.7, pp.999-1008, 2001-07-01

加算をもつ有理数の理論(有理数変数,有理数定数,+,-,=,<∧, ∨, ∀, ∃からなる理論)の上の閉論理式(RP文)の真偽判定ルーチンは通信プロトコルのテスト,ハードウェアのタイミング検証などに利用できる.筆者らは以前,計算幾何学の手法を利用し,時間計算量を改善したRP文真偽判定アルゴリズムを提案した.本論文では,まずそのアルゴリズムに対する凹多面体併合を用いた高速化法について述べる.次に,その手法を実装した真偽判定ルーチンをMC68030バス上で非同期バスマスタ転送を行う時間オートマトンの適合性試験系列生成に適用し,評価した結果について述べる.高速化により,比較的簡単な時間制約をもつ時間オートマトンの実行可能性判定の例に対し,実際の検証で現れる変数の数が16個,不等式の数が20個程度のRP文をCPU時間数秒程度(Pentium III 600 MHz)で判定できるようになった.
著者
森 幹彦 山田 誠二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.487-494, 2000-05-25
被引用文献数
21

ブックマークエージェントは, ユーザが興味をもったURLを登録してあるブックマークファイルを参照し, ユーザ間で情報の共有を行うシステムである.このエージェントは, 既存の検索エンジンよりも効果的に情報の検索を行うことができる.ユーザがあるWebページをブラウジングによって探そうとしているとき, このエージェントはユーザの要求していると思われるWebページをブックマークの中から検索して, ユーザのブラウザにハイパリンクとしてのリストを提示することができる.更に, エージェントは他のユーザのエージェントと交信することにより, 他のユーザのブックマークの検索も行うことができる.小規模で興味の似たユーザからなるグループにおいてこのエージェントを用いることで, ブックマークというユーザによってあらかじめフィルタリングされている情報を利用できるため, ブックマークエージェントは既存の検索エンジンよりも適合率の高いWebページの提示が可能である.このことは, ブックマークエージェントの性能評価のため6人のユーザを使った実験により確認された.
著者
竹中 崇 岡野 浩三 東野 輝夫 谷口 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.462-470, 2004-04-01
参考文献数
10

整数変数をもつ有限状態機械(FSM/int)に対する記号モデル検査法を提案する.入力値を保持する変数の値は次に同一遷移で新たな値が読み込まれるまで変更されない,などの制約を満たす,与えられたFSM/intに対し,整数変数をもつCTL式を満たすか否かをこの記号検査アルゴリズムは判定する.この記号モデル検査アルゴリズムを実装し,ブラックジャックディーラ回路とバケット多重化プロトコルに適用した.そして,100状態,10整数変数程度の規模のシステムであれば数秒程度(最悪時で数分程度)で検証できることが確かめられた.
著者
高松 雄三 塩坂 知子 山田 輝彦 山崎 浩二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.872-879, 1998-06-25
被引用文献数
12

本論文では, CMOS回路の短絡故障に対する一つのモデルを提案し, そのテスト生成法を述べる.CMOS回路における短絡故障の振舞いは故障点の回路構造と信号値に依存するので, 短絡している信号線の信号の強さから, あるいはアナログシミュレーションで計算した値からテストを生成するという方法が提案されている.しかしながら, これらの方法は計算量が多く効率が良くない.CMOS回路における短絡故障の多くは論理値で表されることが知られている.そこで, 本論文では「正常回路で互いに異なる論理値を有する信号線間に短絡故障が生じたとき, いずれか一方の故障信号線が正常値とは異なる論理値となる」という短絡故障のモデル(以下, Uモデルと呼ぶ)を提案する.次にUモデルに対するテスト(以下, Uテストと言う)を定義し, Uテストの一生成法を述べる.最後に, 提案する生成法をベンチマーク回路に適用してUテストの生成実験を行い, その有効性を考察する.
著者
中山 実 實松 北斗 清水 康敬
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.225-233, 2000-01-25
参考文献数
14
被引用文献数
11

教育情報の検索や分類を行うために, 学習指導要領と指導書に出現する用語の頻度を分析し, 教科と用語との関係や用語間の関連を検討した.用語の教科に対する出現の有無から, 用語と教科の特徴ベクトルを特異値分解によって抽出した.これらの性質を調べたところ, これらの特徴ベクトルを用いることによって, 用語の分類や教科内容の推定に利用できることを示した.また, 自己組織化マップを用いて, 教科内容と用語の特徴を示すコードブックベクトルを求めた.これによって, 教科内容と用語を2次元空間内に配置し, それぞれの関係を図示する手法を検討した.更に, 教科内における学年内容と用語の関係を図示したり, 内容の推定に利用できることを示した.
著者
横田 雅也 築地 立家 藤井 愼二 伊藤 大雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J84-D1, no.1, pp.58-61, 2001-01-01

縦横 N ますに王将を除く各駒が O(N) 枚ずつ配置されている盤面が与えられたとき,詰み手順があるかどうかを判定する問題を一般化詰め将棋問題と呼ぶ.伊藤らはその計算複雑さがNP困難であることを証明した.本論文では盤面とともに手数の上限を単進数で与えたときの一般化詰め将棋問題がPSPACE完全であることを証明する.
著者
宮寺 庸造 田地 晶 及部 佳代子 横山 節雄 近谷 英昭 夜久 竹夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.398-415, 2004-03-01
被引用文献数
13

本研究は,ユーザ要求に適応的な学術論文視覚化システムの開発を目指し,領域的・時間的に安全な視覚化手法を提案する.視覚化においては,学術論文を頂点,論文間の関係を辺,関連の強さを辺の重みとするグラフを用いて論文関係を表現する.視覚化をシステマチックに扱うため,論文関係図と,視覚化のためのユーザ要求を制約条件として,定式化する.その制約条件の組合せによる視覚化条件とそれを満たす視覚化パターン,視覚化アルゴリズムを提案し,その計算量の考察を行う.これらのアルゴリズムはグラフ描画問題に基づいて考察され,領域的・時間的に安全な視覚化が理論的に保証される.更に,本研究で提案した視覚化手法のアプローチに基づいて開発された論文関係情報視覚化システムを紹介する.
著者
徳田 尚之 黄 亮 陳 亮 日下部 誠 永井 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.1089-1101, 2001-07-01
被引用文献数
8

本論文では, 文字列照合アルゴリズムを使うことにより, システムに全く素人な語学教師でもこれまでの教育経験を容易にシステムに組み込むことができ, しかもロバストで効率の良いテンプレートオートマトンによる対話式英作文(語学)学習支援システム(ILTS:Intelligent Language Tutoring System)を開発することに成功した。本システムの一番の特徴は, 学習者による入力英作文とテンプレートパス間で定義される相似度の最も高い最車共通文字列(Heaviest Common Sequence)探索により学習者の英作文の誤り診断を行い, それに沿って学習戦略を立てたことである。このシステムでは外国語教育では定評のあるFries教授法[1]とも共通する基本的英文熟語の繰返し学習法を採用することにより英語学習教育の効率を高めただけでなく, 自然言語に特有な文章パターン数の指数関数的爆発を避けることにも成功した。テンプレート構築の際に用いた200人程度のモニタ群と学習背景が全く違う100人程度のモニタ群で予備的なシステム性能評価試験を行い, 期待どおりの診断結果が得られたので報告する。
著者
林田 尚子 石田 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1459-1466, 2005-09-01
被引用文献数
18

従来の機械翻訳システムは, トランスペアレント(透明)であるべきだという考えに基づいて, 翻訳精度を尺度として技術開発が行われてきた. しかしながら, 翻訳誤りは今日に至っても無視できないほど大きく, 機械翻訳システムをトランスペアレントな伝送路とみなすことはできない. 本研究では, 機械翻訳システムをエージェントとして陽に意識し, インタラクティビティ(相互作用性)という新たな評価尺度を提案する. また, その第一歩として利用者のリペア(翻訳に適した文章への修正)支援機能を取り上げ, 実現された場合の性能予測を行った. 具体的には, 折返し翻訳, 強調表示, 修正教示機能を提案し, 各機能の効果の上限を調べるための実験を行い, 以下を明らかにした. (1)折返し翻訳結果と英語翻訳結果と同時に提示することが有効である. (2)強調表示機能は, ユーザが修正個所を特定するのに有効である. (3)修正教示は強調表示と同時に与えることで, リペアに大きな効果をもたらす. また, 現状の自然言語処理技術を適用し上記機能を実現するための方向性を示した.
著者
安永 守利 吉原 郁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.915-929, 2005-05-01
被引用文献数
17

VLSI実装基板において, 配線上を伝搬する超高速信号の信号品質を向上することが重要な課題となっている.特に, クロック信号はディジタル電子機器の基本同期信号であり, 高い信号品質が望まれる.本論文では, 信号品質を向上させるための新たな伝送線構造である「セグメント分割伝送線」を提案する.セグメント分割伝送線は, 独立した特性インピーダンスをもつ複数のセグメントからなる伝送線である.複数セグメントの特性インピーダンスの不整合により発生する反射ノイズを重畳することにより, 伝送線上の注目点における信号を整形し, 信号品質を向上することが特徴である.セグメント分割伝送線の設計では, 複数セグメントの特性インピーダンスの最適な組合せを求める必要がある.この設計のために, 遺伝的アルゴリズムを適用する.また, その効率的な進化を実現するための新たな交差方法である「部分空間交差法」を提案する.更に, この新たな交差法に基づく遺伝操作を用いたセグメント分割伝送線の設計支援システムを開発する.開発した設計支援システムを用いて実際の実装基板上のメモリモジュール配線を設計し, 従来手法との比較評価を行い, その有効性を示す.