著者
片山 紀生 佐藤 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.703-717, 1997-08-25
被引用文献数
38

画像データに対する内容検索の実現法として, 特徴ベクトルを類似検索する方法が広く使われており, その高速化のためのインデックス構造が求められている. これまでにR^*-treeを用いる方法や, 新たに考案されたSS-treeを用いる方法が提案されているが, 本研究では, これらのインデックスよりも更に高速なインデックスとしてSR-tree (Sphere/Rectangle-Tree)を提案する. SR-treeの特徴は, 包囲球(bounding sphere)と包囲長方形(bounding rectangle)を併用する点にある. これまでにも, 包囲球はSS-treeで, 包囲長方形はR^*-treeで使われている. しかし, 本研究が行った実験によると, 次元が高くなった場合, 包囲長方形を用いる方法では1辺の長さと対角線の長さの差が大きくなるという問題があり, 包囲球を用いる方法では包囲長方形よりも体積が大きくなるという問題があることがわかった. そこで, SR-treeではこれらを同時に使用することによって, 高次元空間をR^*-treeやSS-treeよりもより効果的に分割することを可能にする. 評価実験を行った結果, CPU時間, ディスクアクセス回数, いずれの面についても, SR-treeがR^*-treeならびにSS-treeを上回ることが確認された.
著者
川口 真司 ガーグ パンカジ 松下 誠 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1217-1225, 2005-08-01
被引用文献数
6

近年, ネットワークの発達と分散ソフトウェア開発の普及に伴い, 大規模なソフトウェアリポジトリが一般的なものとなってきている. ソフトウェアリポジトリとはソースコードやドキュメント, バグレポート等の各プロジェクトの成果物を蓄積するためのデータベースである. 通常, ソフトウェアリポジトリは膨大な数のプロジェクトを保持しているため, 例えば, 開発者が現在開発中のものと似ているプロジェクトを捜したり, 管理者が会社内で走っている全プロジェクトを俯瞰するといったことに活用できる. しかし, 保持内容が膨大なためにプロジェクト同士の関連を判定して整理するには非常な労力を必要とする. そこで, 我々はソフトウェアを自動的に分類するMUDABlueシステムを作成した. MUDABlueの特長は以下の四つである. (1)分類にはソースコードのみを使用, (2)分類先となるカテゴリー集合も自動的に決定する, (3)ソフトウェアを二つ以上のカテゴリーに分類することを許す, (4)Webインタフェースで分類結果を表示する. 本論文では既存の分類手法との比較を通じてMUDABlueシステムの有効性を議論する.
著者
高濱 徹行 阪井 節子 磯道 義典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1297-1306, 2001-09-01
被引用文献数
2

本研究では, 変異遺伝子を積極的に利用した遺伝的アルゴリズムであるMGGAを提案する.変異遺伝子を有する個体では, その遺伝子に対応する形質の発現が不完全になったり, 発現しなくなるなどの現象が起きる.MGGAでは, 遺伝子型を表現型に変換する変換関数に変異遺伝子の影響を与えることにより, これらの現象を実現する.更に, 正常な遺伝子から変異遺伝子への不可逆的な変化を導入することにより有効性の低い遺伝子を削減する機能を実現する.この機能をもつMGGAを多項式モデル及び階層型ニューラルネットワークにおけるパラメータ構造決定に用いることにより, MGGAがパラメータ数を削減できる汎用的な方法であることを示す.
著者
北嶋 暁 森岡 澄夫 島谷 肇 東野 輝夫 谷口 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.1017-1029, 1996-12-25
参考文献数
15
被引用文献数
4

教育用CPU KUE-CHIP2を,各命令の意味を記述した要求仕様からRTレベルまで段階的に設計し,それをSFL記述に自動変換してハードウェア合成系パルテノンを用いて回路を得た.そして,その設計が正しいことを代数的手法に基づいた証明支援系を用いて完全に自動で証明した.自動で証明できた理由は,CPUでは,要求仕様も含め,各レベルの仕様が共通の基本関数(算術・論理演算,メモリの入出力)を用いて記述できる,CPUの正しさの証明では1命令ごとに正しく動作することを調べればよく,かつ1命令の実行では繰返しループを含まない,また,我々の開発した証明支援系では,項書換え,場合分け,整数上の論理式の恒真性判定などを一定の手順で自動実行する,扱う式の大きさが増大するのに対処した工夫をしている,などである.証明作業は,記述誤りに伴う再証明も含め2週間程度で行えた.CPUの命令数が増えても証明のための計算時間はそれに比例する程度ですむので,本実験の結果より,単一制御部をもつ非パイプラインCPUについては,本論文の手法により,その正しさの証明を,現実的な時間で自動で行うことが可能であると言える.
著者
小林 真也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.69-78, 1996-02-25
参考文献数
12
被引用文献数
9

マルチプロセッサシステムでは, 処理速度を最も速くするためにどのように各プロセッサにタスクを割り当てていくか, つまりタスクスケジューリングが重要な問題である. 実際のマルチプロセッサシステムのタスクスケジューリングではプロセッサ間の通信にも時間がかかり, 個々のタスクの処理時間のみならず, 通信時間も考慮しなければならない. 本論文ではこの問題に対する最適解への近似精度の高い一方法を提案する. 提案方式は, リストスケジューリングの一種であり, 各タスクの処理時間のみによって決定されるプレプライオリティと, タスクとプロセッサごとに求められる通信削減時間によりタスクプライオリティリストを決定する. 各タスクのプレプライオリティの値はそのタスクに依存する複数のタスク依存系列のうちの最長パスの長さである. また, 通信削減時間とは, 他のプロセッサで実行した場合に必要であるがプライオリティを求めようとするプロセッサで実行する場合には必要のない通信の時間である. 常微分方程式の数値解法の一つであるRunge-Kutta 法と, FFTの二つのプログラムを対象に, 完全網システムにおいて従来方式との比較を行い提案方式の優位性を示す. また, 不完全網システムに対しても提案方式が良好な割当てを行えることを示す. 更に, 乱数を用いて生成したタスク集合に対しても, 提案方式が優れていることを示す. また, 割当てに要する時間を実測し, 提案方式が問題の規模に対して多項式時間で解けることを示す.
著者
高橋 徹 武田 英明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1244-1255, 2001-08-01
参考文献数
9
被引用文献数
12

本論文では, 非同期型コミュニティシステムのインタフェースとしてアニメーションエージェント(avatar-likeエージェント)を用いることの効果を述べるとともに, 我々の実装したシステムTelMeAの説明と, そのテスト運用の結果を述べる. 心理実験の結果, エージェントは単に発話者を代弁するだけではなく, 複数の発話者の識別に対して効果をもつことがわかった. そのためエージェントを用いることでコミュニティ内の人間関係等の状況を会話内容から把握しやすくなり, 会話文脈へのアウェアネスが高まるものと考えられる. 更にエージェントはアニメーションや画面上の移動により, 表情, ジェスチャー, 接近, 指差しといった非言語表現を行うことができる. TelMeAは, Webページ上に表示させた各々のエージェントに, 前記のような表現のマルチモーダルな振舞いを記述するスクリプトを交換することで, 複数人数による非同期会話を行うためのシステムである. TelMeAを9日間試験運用した結果, 全発言の中には17%の非言語表現が見られ, アンケートの結果からは, TelMeAの機能が利用者に高く評価されたことがわかった.
著者
星合 隆成 ツイナニー パトリック 佐藤 規男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.1080-1092, 1999-08-25
参考文献数
17
被引用文献数
6

本論文は, ストリームデータの取扱いが可能なストリームインタフェースと, その実装方法を提案する. 更に, ストリームインタフェースを用いた広告配送システムを構築し, その性能評価モデルを示す. 性能評価モデルに基づいた性能実測により, ストリームインタフェースの性能を定量的に評価し, その結果から, 十分な処理能力を達成できることを示す.
著者
吉田 明正 前田 誠司 尾形 航 笠原 博徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.162-169, 1995-02-25
被引用文献数
3

マルチプロセッサシステム上での粗粒度並列処理手法としてマクロデータフロー処理が提案されている.従来のマクロデータフロー処理では,粗粒度タスクが実行時にプロセッサにスケジューリングされるため,粗粒度タスク間で共有されるデータを集中型共有メモリに配置し,粗粒度タスク間のデータ授受は集中型共有メモリを介して行われていた.本論文では,共有メモリを介したデータ転送オーバヘッドを軽減するため,Doallループとシーケンシャルループの間で,ローカルメモリを介したデータ授受を行うデータローカライゼーション手法を提案する.本手法では,コンパイラが,Doallループとシーケンシャルループを配列データの使用範囲が等しくなるように整合して部分ループに分割し,データ転送量の多い(データの結び付きの強い)部分ループ集合を実行時に同一プロセッサにスケジューリングしてローカルメモリを介したデータ授受を行えるような並列マシンコードを生成する.提案手法を用いたコンパイラは,マルチプロセッサシステムOSCAR上でインプリメントされており,OSCARシミュレータ上での性能評価から処理時間が20%程度短縮されることが確認された.
著者
渡辺 貴史 村島 定行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.114-122, 1996-03-25
被引用文献数
19

ボロノイ図は勢力範囲図とも言うべきもので情報処理のさまざまの分野で重要な役割を果たしている. ボロノイ図を描く方法は母点間の垂直二等分線を描くのが一般的である. この方法では母点数をNとしてO(N)の計算時間がかかる. ここでは計算機画面上で多数の点を配置し, それぞれの点のボロノイ領域を色分けするアルゴリズムを提案する. この方法は与えられた母点に互いに異なる色を割り当てた後, その母点から近い画素順にどの母点の勢力範囲であるかを示す色を置いていくことで実現する. 既に色が置いてある場合はパスする. すべての画素にどの母点の勢力範囲であるかを示す色を置き終わるとボロノイ図が出来上がる. このアルゴリズムは整数演算に基づいているので丸め誤差などは影響しない. またボロノイ図の作成時間は母点の数に依存しない. 母点数2から4000の範囲で調べた結果, ほぼ一定の30秒であった. 距離を計算して, 最近接の母点を決定するS.K.Parui等の方法と比較すると, 母点数が10を超えると, ここで提案の方法が速くなることがわかった.
著者
石丸 知之 植村 俊亮
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.349-357, 1995-03-25
被引用文献数
9

本論文では,オブジェクト指向データモデルを拡張した「多態オブジェクト」データモデルを提案する.多態オブジェクトモデルの目的は,マルチメディアデータを自然にデータベース内に表現することである.マルチメディアデータの一つの特徴は,実世界の実体の多用な表現である.多態オブジェクトモデルでは,実体をオブジェクトとして理解し,そのオブジェクトに複数の完結した表現を与えることのできるモデルを提案する.このようなオブジェクトを多態オブジェクトと呼ぶ.多態オブジェクトモデルでは,一つのオブジェクトが複数のインスタンスを表現としてもち得る.クラスはインスタンスの形式を定義する.同じオブジェクトの複数のインスタンスはクラス名で識別する.複数のインスタンスの属性が同一のスーパクラスで定義されているときには,その属性は同一の意味をもつとみなし,インスタンスの間で値を共有し一貫性を達成する.多態オブジェクトの実現例として,現在試作中のデータベース管理システム「沙羅」のアーキテクチャについて述べる.
著者
桑原 恒夫 玉城 幹介 山田 光一 中村 喜宏 満永 豊 小西 納子 天野 和哉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.1013-1024, 2000-09-25
被引用文献数
22

我々が提案しているCAIと教師がリアルタイムで協調しながら教育を行う個人進度別教育支援システム(MESIA)では, CAIと教師が行き詰まった生徒に対して様々な方法で支援を行っている.本論文では専門学校におけるMESIAを用いた教育実験において, これらの機能の有効性を生徒の主観評価, 利用率, テストの解答の正解化(誤答から正解への変化)への寄与で評価した結果を述べる.その結果, MESIAに実装した機能のうち, CAIから与えられた小テスト, 正解に近い誤答に対するヒント(以後, ヒントという), 解答の作成指針を与えるヒント(以後, HELP/MOREという), 教師から与えられるメッセージが特に有効であることを示す.また教師によるメッセージは同一テスト中に与えられる一連の支援の後半に利用率が高く, その正解化への寄与率が他の支援と比較して最も高いことと相まって, 行き詰まった生徒に対する切り札的な支援になっていることを示す.ただし正解化に寄与した支援数自体は, CAIによる支援数の合計がこの教師によるメッセージの支援数よりはるかに多く, CAIの支援機能によって教師の稼動が大幅に減少していることを述べる.
著者
山名 早人 安江 俊明 石井 吉彦 村岡 洋一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.343-353, 1994-05-25
被引用文献数
4

本論文では,並列処理システム上ではFORTRANプログラムを高速に実行する方式として,多段の条件分岐に渡る先行評価を用いたプログラムの並列化と実行方式を提案する.従来,条件分岐を含むプログラムを並列化する手法がいくつか提案されている.先行評価を用いない手法としては,(1)タスクの最早実行条件求出法があり,先行評価を用いる手法としては,(2)スーパスカラプロセッサやVLIW計算機を対象とした条件分岐1段に限った先行評価方式,および,(3)特定のループを対象とした多段の先行評価方式,が提案されている.しかし,(1)最早実行条件を求めるのみでは十分な並列性が得られない.(2)1段の条件分岐の先行評価で得られる速度向上はたかだか2倍である,(3)適用対象が特定ループに限られる,という問題をもつ.これらの問題に対して,本論文では,プログラムをマクロタスクに分割し,マクロタスク間の多段の先行評価方式を一般的な並列処理システム上で定義する.そして,各々のマクロタスクについと,実行開始条件・制御確定条件・実行停止条件を用いたマクロタスクの実行制御手法を提案する.
著者
當山 孝義 堀口 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.770-773, 1994-11-25

最大公約数(GCD)算出は数値計算,暗号や符号計算などの分野で用いられている基本的計算の一つであり,高速解法について盛んに研究されている.Chor-Goldreichアルゴリズムは最も速い並列アルゴリズムの一つであると考えられいるが,その動作は詳細に検討されていない.本論文では,LPRAMモデルの並列マシン上での並列GCDアルゴリズムの詳細な動作をエミュレータを用いて解析し,メモリアクセス遅延が大きな影響を与えることを確認した.
著者
岩下 志乃 鬼沢 武久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.891-900, 2000-08-25
被引用文献数
10

従来の似顔絵描写に関する研究では, 顔画像の処理を行い, 特徴点を抽出し似顔絵を描写するものが多かった.しかし, 顔から受ける個人的なイメージをもとにして似顔絵を描写するという観点から研究は少ない.そこで本論文では, 顔の印象や特徴を言葉で表現し, その言語表現をもとに似顔絵を描写するプロセスについて検討する.入力される印象として, 快活度, 優しさなど五つのグループに関して言葉を入力する.描かれた似顔絵は言葉を用いて修正することができる.また, 似顔絵を描く上で重要とされる誇張の概念を, パラメータ値と線種の修正という2種類の誇張法を用いて実現する.最後に, 何人かの被験者に似顔絵を作成してもらい, 本手法の評価を行う.
著者
木本 晴夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J74-D1, no.8, pp.556-566, 1991-08-25

言語処理・知識処理・統計処理を用いる新しいキーワード自動抽出法として語特徴評価法を提案する.また,語特徴評価法に基づくキーワード自動抽出システム(INDEXERシステム)を作成し,評価を行ったのでその結果を報告する.本論文でのキーワード抽出の対象は日本語で書かれた新聞記事である.従来のキーワード自動抽出はフリーターム方式か統制キーワード方式を用いて行われていた.これらの方法では必要キーワードと共に,その3~5倍もの不必要キーワードが抽出されていた.語特徴評価法は,これらの不必要キーワードを大幅に削除して精度の高いキーワード自動抽出を実現することを目的としている.本方法はシステムが抽出したキーワード候補語について,個々の語の,文章中やシソーラスにおける特徴を抽出して,その特徴によって,キーワード候補語が文献の内容をよく代表していて,文献を検索するためのキーワード(以下では必要キーワードと呼ぶ,またシステムが自動抽出したキーワードで必要キーワードでないものを不必要キーワードと呼ぶ)として必要か否かを評価する方法である.ここで,語の特徴として次に掲げるものを採用している.それらは,並立に表現された語,連体修飾語,強調表現された語,シソーラスにおける上位語,シソーラスにおいて上位・下位の関係にある語,語の文章中における出現位置,出現頻度等である.語特徴評価法を用いることにより,抽出される不必要キーワードの数を従来の方法と比較して1/4にできることを実験によって確認した.更に,処理対象とする文書の分野特性を利用することによって,よりいっそうの精度向上が可能なことを述べる.またシステムが自動抽出したキーワードの相対的重要度を語の特徴を利用して評価した結果,上位の10語の中に専門家が付与したキーワードの95%を入れることができた.
著者
荒川 文男 山田 哲也 岡田 崇 石川 誠 近藤 雄樹 小沢 基一 兒玉 征之 西井 修 服部 俊洋 亀井 達也 西本 順一 吉岡 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.125-133, 2005-02-01

近年, 携帯電話, ディジタルカメラ(DSC/DVC), カーナビ等のディジタル家電向けの組込みプロセッサ市場が急成長している.組込みプロセッサはコストと消費電力の厳しい制約の中で高い性能を達成しなければならない.また, 様々な機器の様々な要求にこたえる柔軟性をもたせることも重要である.本論文では, こうした背景のもとで開発したSuperHアーキテクチャの最新プロセッサコアSH-Xを紹介する.SH-Xは低電力版では360MIPS, 80mW, 4500MIPS/Wという高い電力性能比を達成し, 標準版では400MHz, 720MIPS, 2.8GFLOPS, 36Mポリゴン/秒を達成している.更に, 待機時リーク電流は, スタンバイ前の状態に3msで高速復帰できるリジュームスタンバイモードで100mA, リセットから再起動するUスタンバイモードで10mAと低く抑えている.
著者
久保田 秀和 黒橋 禎夫 西田 豊明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.600-607, 2003-08-01
被引用文献数
4

本論文では,知識カードを用いた分身エージェントの実現手法を提案し,EgoChatシステムとして実装した.分身エージェントとは作成者本人の代理として任意のユーザと会話可能なエージェントである.提案手法では分身エージェントの会話コンテンツを知識カードと呼ばれる意味的なまとまりをもつ文章断片を用いて構築し,分身エージェントの発話とユーザの発話とを同様の扱いが可能な知識カードとして扱う.知識カードを用いた会話生成は文章断片の組合せによって行われるため,分身エージェント作成者にとってエージェントとユーザとの間で行われる会話内容を予測することはたやすく,会話生成のためのコンテンツ作成作業が容易である.また,会話型エージェントが実社会で利用されるためには利用者からの反応や状況の変化に応じた会話コンテンツの継続的な改訂作業が必要となるが,提案手法では分身エージェントがユーザとの間に行った会話を会話ログとして記録し作成者本人ヘフィードバックすることによって,会話コンテンツの改訂作業を支援する.
著者
金子 孝夫 大室 仲 間野 一則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1196-1208, 2000-11-25

新聞や広報誌などの最新情報や地域情報を朗読した音声を, 音声符号化技術により情報圧縮してPCサーバのディスクに蓄積し, ISDN回線を使って視覚障害者の家庭の受信装置に配信する朗読配信システムを開発した.朗読音声の圧縮には, 低ビットレート音声符号化技術DualSpeechを開発して導入し, 朗読音声の品質をほとんど劣化させることなく, 情報量を約1/18に削減して高速に配信できるようにした.また, 受信装置に内蔵した1メガバイトのメモリに, 約90分間の朗読音声をコンパクトに蓄積でき, しかも蓄積した情報内容は, インデックス検索機能によって瞬時に検索できる.これらの特長によって, 配信に要する時間と通信料を削減するとともに, 視覚障害者の知りたい情報をいつでも繰り返し聴ける魅力ある朗読配信サービスを実現した.この朗読配信システムの性能を評価した結果, 朗読音声データは再生時間の約1/8の短時間で受信でき, 再生音声はパーソナルハンディホンシステム(PHS)と同等の高い品質が得られた.また, 約50名の視覚障害者を対象に, 音声圧縮による朗読配信システムを使ったサービス実験を行った.その結果, 視覚障害者が自ら選択できる身近な情報を充実すること, 情報内容の更新頻度を高くすること, 受信装置の操作性をいっそう向上することなどの課題が, アンケート結果から明らかとなった.
著者
児玉 充晴 梅崎 太造 佐藤 幸男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.278-286, 2004-02-01
被引用文献数
1

オープン系ネットワークの進展や労働人口の流動化など,企業をとりまく環境の変化とともに,近年「社内からの情報漏えい対策」の重要性がクローズアップされている.この中で,一般の企業において,既存の業務システムヘのコストパフォーマンスの良いセキュリティ機能の強化は大きな課題となっている.本論文では実際に発生した情報漏えい事件をモデルとして,司直の見解に基づきセキュリティ機能に必要な要件を整理している.また,実際に導入した指紋認証を用いたセキュリティシステムに対する検証を行った結果,実用的なセキュリティ対策が可能であることが判明したので報告する.更に,セキュリティシステムの一部をデータセンタに設置して,複数の企業で共同利用する形態への発展について提案する.
著者
八槙 博史 マイケル P. ウェルマン 石田 亨
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.540-547, 1998-05-25
被引用文献数
17

近年の分散マルチメディアシステムならびにネットワークに関する研究において, QoS(Quality of Service : サービス品質)の割当ては主要な課題の一つとなっている.本論文では, QoSの割当てを動的な市場機構によって行う分散化アプローチについて論ずる.このアプローチでは, 各エージェントは自己のもつ居所知識および利益に基づいて行動を決定し, 各資源の価格は各々の市場における需給が均衡する点として決定される.エージェントによる需要とネットワーク状況は動的に変化するため, 各エージェントの決定は断続的に繰り返し変更される.市場価格は系全体での価値を反映しており, これに従うことで, 各エージェントが生産あるいは消費する資源の量は適切に割り当てられる.本論文では, 実際のネットワーク会合システムFreeWalkにおける帯域割当てのための市場モデルについて述べる.実験の結果, マルチメディアネットワークアプリケーションに対するQoSの割当てにおける動的な状況変化に対して, 市場に基づくアプローチが適切に動作することを示した.