著者
横田 雅也 築地 立家 藤井 愼二 伊藤 大雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.58-61, 2001-01-01
被引用文献数
1

縦横Nますに王将を除く各駒がO(N)枚ずつ配置されている盤面が与えられたとき, 詰み手順があるかどうかを判定する問題を一般化つめ将棋問題と呼ぶ.伊藤らはその計算複雑さがNP困難であることを証明した.本論文では盤面とともに手数の上限を単進数で与えたときの一般化詰め将棋問題がPSPACE完全であることを証明する.
著者
吉瀬 謙二 片桐 孝洋 本多 弘樹 弓場 敏嗣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.143-154, 2005-02-01
参考文献数
16
被引用文献数
9

本論文では, 機能レベルのプロセッサシミュレータであるSimCore/Alpha Functional Simulator Version 2.0 (SimCore Version 2.0)の設計と実装について述べる.SimCore Version 2.0の主な特徴は次のとおり.(1)機能レベルシミュレータとして豊富な機能を提供する.(2)C++で記述して, 2, 800行というコンパクトな実装により実現する.(3)プログラムローダの機能を分離する.(4)グローバル変数を排除して可読性と機能の向上を図る.(5)動作検証機能を提供する.(6)多くのプラットホームに対応する.(7)同様の機能を提供するSimpleScalarツールセットのsim-fastと比較して19%の高速化を達成する.
著者
横森 励士 近藤 和弘 大畑 文明 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.150-158, 2003-03-01

影響波及解析とは,プログラム変更の影響を受ける部分を識別する手法で,回帰テストでのテストケース選択に利用されてきた.我々はプログラム理解,保守といったより広い範囲でも影響波及解析が利用できると考えているが,既存の手法は被影響部分の探索ルールがテストケース選択用に特化されているため,利用目的に応じて探索ルールを定義できる仕組みが必要となっている.また近年のソフトウェア開発環境では,オブジェクト指向言語が多く利用されており,それらに対応した解析手法及びその実装が求められている.本論文では,ユーザの利用目的に応じて様々な影響波及ルールが定義できる影響波及解析手法を提案する,提案手法では,オブジェクト指向言語JAVAを対象に,クラスメンバ間の関係を表す二つのグラフに基づき解析を行う.また,提案手法をJAVA影響波及解析システムとして実装し,その有効性を検証する.
著者
中津 楢男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.279-287, 1993-06-25
被引用文献数
3

本論文ではデータベースの並行制御に関する直列化可能性理論を扱っている.一般に与えられた実行履歴が直列化可能かどうかの判定はNP完全であることが知られており,直列化可能な実行履歴の部分集合で多項式時間で判定できるクラスがいくつか知られている.こうしたクラスは実際のスケージューラの構成に利用できるほか,任意のスケジューラの能力の上界を与える点から注目されている.本論文では直列化可能性判定のための新しい概念を与える.この概念によれば,直列化可能性判定が明解になるばかりでなく,これまで知られている主な結果を含んだより一般的な定理を証明できる.次にこの定理に基づいて,多項式時間で認識できる,従来知られているより広いクラスをいくつか提案する.最後に多項式時間で動作する先読みスケジューラが存在するかどうかの判定にもこの概念が適用できることを示し,そのような先読みスケジューラが存在するより広いクラスを与える.
著者
渡邊 洋 梅村 浩之 吉田 千里 松岡 克典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.491-500, 2001-05-01
被引用文献数
4

没入型VR装置(CAVE)を用いて広域視野(前面、床面、両側面)に、エンドレスループ状のトンネル内部を進行するヴェクションを生じさせるオプティカルフローを模擬した視覚環境下で、中心視野における奥行順序判断の感度としきい値を調べた。実験の結果広域視野にオプティカルフローが与えられた場合、奥行判断の感度が高くなり回転方向に依存してしきい値がシステマティックに変化することが示された。この結果を説明するものとして被験者のimplicitな基準面の参照と周辺視野情報からの体性感覚の変化が考えられた。
著者
伊藤 孝行 横尾 真 松原 繁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.920-930, 2004-10-01
被引用文献数
2

インターネット上のオークションでは,不特定多数の人間が商品(財)を販売しており,商品の質を正確に見極めるのは困難である.例えば,骨董品が売られていたとしても,その骨董品が本物であるか偽物であるかを見極めることは難しい.商品の質が正確に見極められないことによって,商品の質に関する素人が,商品の質に見合わない価格で商品を購入してしまうという問題がある.そこで筆者らは過去に,買い手が財の質(例えば本物か偽物か)について正確に判断ができない場合に,条件付きの入札が可能なオークションプロトコルを提案した.ここでは,専門家に,自然の選択に関する情報を正しく申告させることによって,合理的なプレイヤが損害を被らないようなオークションプロトコルの設計した.本論文では,上記のような状況において,複数財の組合せに対して入札が可能なオークションを設計する.ここで,専門家が単一の財に関して専門知識をもつ場合と複数の財に専門知識をもつ場合が考えられる.前者の場合でも複雑な問題であるが,後者はより複雑な問題になっている.そこで,本論文では,まず単一の財に関して,専門知識と興味をもつ専門家に商品の質に関する情報を正しく申告させ,素人にとって,真の申告をすることが最適反応戦略になるプロトコルを設計する.本オークションプロトコルの特長は,以下の四つである.(1)専門家にとって,真の申告をすることが支配戦略である.(2)素人にとって,他の素人がどのような申告をするかにかかわらず,専門家が支配戦略をとると仮定した上で真の申告をすることが最良の戦略となる.(3)パレート効率的な割当を実現する.(4)非合理的なプレイヤが存在したとしても,その数が1人ならば,合理的なプレイヤの効用が負になることはない.
著者
鈴木 偉元 西村 一敏 阪本 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.300-308, 1997-03-25
被引用文献数
13

本論文では, 高速応答性, 大容量性および経済性に優れたビデオサーバの構築をねらいとして, 磁気ディスク装置とMSS(Mass Storage System)を用いた階層化蓄積ビデオサーバの性能解析を行う. 本解析は, ビデオファイルをアクセス頻度の高いものから順に磁気ディスク装置へ配置する場合に, ビデオストリームの平均頭出し遅延に関するシミュレーション評価結果が目標値以下となるようにハードウェア構成とビデオファイル配置の最適値を明らかにする. 数値例を用いた解析では, ビデオファイルの先頭部を磁気ディスク装置, その後続部をMSSへ分割して蓄積するファイルを設けた場合, ビデオファイル配置にはビデオストリームの平均頭出し遅延を最小にする最適値が存在することが明らかにされた. また, 磁気ディスク装置のみで構成された蓄積装置と比較して, 階層化蓄積が経済性に優れるための磁気ディスク装置とMSSの蓄積単価比が定量的に示された.
著者
高濱 徹行 阪井 節子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.198-207, 2003-04-01
被引用文献数
1

与えられた制約のもとで目的関数を最小にするような解を求める制約付き最適化問題は,実問題に頻繁に出現する重要な最適化問題である.近年,遺伝的アルゴリズム(GA)を利用した制約付き最適化に関する研究も盛んに行われるようになってきており,既存の方法と比較しても遜(そん)色のない結果が得られるようになってきている.本研究では,α制約法をGAと組み合わせたα制約遺伝的アルゴリズム(αGA)を提案する.α制約法は,制約を満足する度合を表現する制約満足度を導入し,通常の大小関係の代わりに制約満足度を優先した大小関係であるαレベル比較を定義し,通常の比較の代わりにαレベル比較を用いて探索することにより,制約付きの問題を制約のない問題に変換する方法である.α制約法を適用したαGAでは,制約を満足しない個体は制約を満足するように,制約を満足した個体は目的関数値を最適化するように自然に進化する.本論文では,線形計画問題,非線形計画問題,非凸非線形制約など様々な種類のテスト問題について,GAによる制約付き最適化手法の中で有効性がよく知られているGENOCOP5.0などと比較することにより,αGAの有効性を示す.
著者
泉 裕 中井 智也 山口 英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.1463-1473, 2001-10-01
被引用文献数
1

コンピュータネットワークの急速な普及で, ネットワーク通信基盤の主流となったインターネットに, ネットワーク管理の重要性が高まっている.現在ネットワーク管理は, SNMP(Simple Network Management Protocol)による手法が一般的で, 管理者がネットワーク機器を監視するために用いられている.しかし, SNMPによるネットワーク管理は, 管理対象へのポーリング(問合せ)主導型が主流であり, 管理者へのトラップ(通知)主導型の管理に関しては, 制限された機能しか提供できない.このため, 障害発見の遅延や, ネットワークアプリケーションの管理が困難なことなど, 様々な問題点が存在し、拡大するネットワークの規模に対応できなくなっている.本研究では, ネットワーク管理者の代理として, ネットワーク機器やアプリケーションなどの管理対象の監視・制御を行うための管理者支援システムを設計し, 実装を行うことで本システムを評価する.本システムは, 管理者によって設定された, 管理対象の管理スケジュール, 及び管理対象に発生する障害の発見や対応を含む例外処理を, 自動的に制御管理するエージェントシステムとして実現している.更に, 管理対象がアプリケーションの場合, アプリケーションにSNMP等の管理機構を組み込むことは困難であった.しかし, 本システムはアプリケーションへのアクセスを中継する.すなわちアプリケーションを包み込む形態をもつために, アプリケーションへの組込みが容易である.したがってアプリケーションサーバ等が提供するサービス管理に本システムの機構を組み込むことで, サービス管理を容易に実現している.本論文では, トラップ主導型のネットワーク管理モデルの提案と, アプリケーションサーバの提供するサービス管理への適用として, ファイアウォールとWWW(World Wide Web)へのアクセス制御に用いるサービス管理システム(SMS:Service Management System)及びそのアプリケーションの管理情報となるMIB(Management Information Base)の実装評価を行う。
著者
梶原 誠司 樹下 行三 ポメランツ イリス レディ スダーカ M.
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-1, 情報・システム 1-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.888-895, 1999-07

製造した回路のタイミングに関するテストの重要性が高まっている. その一方で, ロバスト依存パスや機能的活性化不能パスのように, 遅延故障のテスト不要なパスが多く存在することがわかってきた. パス遅延故障のテスト生成において, テスト不要なパスを前もって指摘することは, テスト生成の効率化に重要な役割を果たす. 本論文は, 高速にロバスト依存パスと機能的活性化不能パス等のテスト不要なパスを識別する手法を提案する. パス数の多い回路に対するテスト不要パスの識別には従来多大な処理時間を要していたが, 提案手法は回路の局所的な解析に基づくため高速に処理可能である. 実験では, 本手法は従来手法と比較して短時間で計算でき, テスト不要なパスの判定能力はほぼ同等であることを示す. また, 従来手法ではパス数が10^<20>以上あるc6288を現実的には扱うことができなかったが, 本手法により99%以上のパスはテスト不要であることを示す.
著者
高玉 圭樹 中須賀 真一 寺野 隆雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.514-522, 1998-05-25
被引用文献数
13

本論文では, 個々のエージェントが各々の判断基準(局所評価関数)を変更しながら行動する組織学習指向型分類子システム, および, そのシステムのための新たなマルチエージェント強化学習法を提案し, これらをCADの分野におけるプリント基板配置問題に適用した結果を報告する.以前からプリント基板配置問題では, 設計期間や生産コストを下げるために大域的に最適化を行う方法が数多く提案されているが, これらの方法は与えられた部品を専門家よりも効果的に配置できず, 最終的に残った本質的な部分を専門家にゆだねなければならない場合が多い.そこで, 本システムは大域的な視点で部品配置を決定する方法ではなく, エージェント(部品)間の局所的なインタラクションにより, エージェント自らが自分の部品位置を決定する方法を取り入れる.本システムを実規模のプリント基板に応用した結果, 次の知見が得られた.1)我々のシステムは専門家と同等の実行可能解を見出した.2)従来の強化学習よりも我々のシステムの方が, 試行回数と総配線長の観点において, ともに優れている.
著者
渡邊 晃 井手口 哲夫 笹瀬 巌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.269-284, 2001-03-01
被引用文献数
11

イントラネットにおいては, 部門単位あるいは個人単位の機密保護を実現するため, 様々な形態の閉域通信グループを実現したいという要求がある.システムの運用が容易であるとともに, ユーザが一時的に場所を移動しても同様のネットワーク環境を常に提供できることが望まれる.この要求を満たすには, 閉域通信グループを実現する暗号処理機能が, 通信パケットの処理を記述した閉域通信グループ処理情報を, 常に矛盾なく保持している必要がある.従来, このような情報は管理装置が一括して生成し, 暗号処理機能にダウンロードしていた.しかしこの方法では, システム構成が変化して暗号処理機能と通信端末の位置関係が変わると, そのつど情報の再生成と再設定が必要となる.そこで, 本論文では閉域通信グループ処理情報の生成機能を管理装置から分離し, 論理的なネットワーク構成を与える閉域通信グループ構成定義情報をもとに, 暗号処理機能が通信端末との位置関係を検出しながら動的に処理情報を生成する動的処理解決プロトコルを提案する.この方式によれば, システムの物理的構成に変化があっても, 暗号処理機能の保持する閉域通信グループ処理情報が動的に再生成されるため管理装置での作業負荷が発生しない.このため, 提案する機能を実行する暗号処理機能を保持するユーザは, イントラネット内を自由に移動することが可能になり, 閉域通信グループにおけるユーザの物理的位置透過性を実現することができる.
著者
木下 俊之 高橋 幸雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.701-710, 1999-06-25
被引用文献数
6

計算機システムでは, ジョブは排他使用資源へのアクセス時に衝突が起こる. その典型的な例に, 更新可能なファイル群へのアクセスがある. あるジョブがこのファイル資源を使用している間は, ファイルデータの一致性を保つために他のジョブはこれへのアクセスを禁止され, 資源が解放されるまで待たされる. この資源へのアクセスの衝突は, システムの性能に大きな影響を及ぼす. そしてこの衝突によってシステムの性能が著しく低下するときは, 資源をいくつかに分割してこの性能低下を防止する方法がとられることが多い. 本論文では, この資源へのアクセスの衝突がシステム性能にどう影響するかを解析するための, 一つの待ち行列網モデルを導入する. そしてこのモデルを用いて, 資源がシステム性能に及ぼす影響や, 資源を分割することによるシステム性能の改善効果を解析する一つの評価法を提案する. この待ち行列網モデルは, 通常のセントラルサーバモデルに資源と資源待ち行列を付け加えることによって構成され, その性能指標をマルコフ連鎖の平衡方程式を解くことにより数値的に計算する.
著者
関 良明 爰川 知宏 清水 明宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1202-1209, 1999-09-25
被引用文献数
6

組織における知的生産性の向上と知的触発の拡大を図るため,コンピュータと通信ネットワークを利用した情報共有システムの研究開発を進めている.その一環として,個人が保有している断片的な情報をグループ内で共有するノウハウ蓄積システムFISH及び,その分散環境対応版であるGoldFISH,更にWebブラウザからの操作が可能なKINGFISHERを開発し,実験と分析を重ねてきた.その結果,実際の導入では障壁となる細かなユーザ登録や複雑なバッチ処理の設定などの改良すべき機能や,設計当初想定していなかったカスタマイズの要求などが明らかになった.これらの課題に対して本論文では,実運用システムとしての設計の基本方針を設定して,新たな情報連携モジュールFly-fishingを開発した結果を論述する.Fly-fishingは,情報間のリンクをあらかじめ生成するのではなく,情報参照時に動的なリンクを自動生成している.この方式の採用により,モジュール独立性が高まり,導入容易性とカスタマイズ容易性を確保している.本論文では更に,Fly-fishingの検索/表示/登録時間を用いて性能測定した結果を分析する.
著者
渡辺 陽介 北川 博之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.873-886, 2004-10-01
被引用文献数
15

今日,情報配信の形態としてデータ放送やプッシュ型情報サービスなどのデータストリームが注目されており,その数と種類が増加している.そのため,ストリーム型情報源の高度利用の重要性が高まっている.データストリームから必要なデータを抽出したり加工するための手段として,連続的問合せがある.多数のストリーム型情報源に対する多数の連続的問合せが与えられた際,その効率的実行が要求される.本論文では,そのためのアプローチとして,連続的問合せに対する複数問合せ最適化方式を提案する.本研究が想定する複数のデータストリームの処理環境では,連続的問合せ中の演算においてウィンドウなどの時間条件を用い,かつ利用者がその情報を必要とするタイミングで提供することが必要である.このような連続的問合せは,同一の演算であっても実行タイミングによって全く異なる結果を生成し得るため,従来のバッチ処理などを想定した複数問合せ最適化手法をそのまま適用することは困難である.本提案手法は,実行タイミングの違いによる問合せの参照範囲の違いを考慮し,参照範囲が近い同士の問合せをグループ化することにより効率的な実行処理プランを導出する.
著者
上田 芳弘 成田 仁志 加藤 直孝 林 克明 南保 英孝 木村 春彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.887-898, 2004-10-01
被引用文献数
3

電子メールやWebを利用した問合せメールを,適切な担当者に自動分配するシステムを構築した.提案手法は,まず各担当者が作成した文書ファイルを収集して,この中の出現単語のtf・idf値とidf/conf値を算出し,この2種類の辞書を担当者ごとに作成する.更に,従来の帰納的学習に代えてProfit Sharingを応用し,これらのウェイトを強化学習することが特徴である.システムは,問合せメールとこれらの辞書を照合して,単語のウェイトと一致率から担当者ごとにスコアを算出し,このスコアが高い担当者を回答者として推定する.提案方法の有効性を評価するために実際の問合せメールを用いて評価実験を行い,以下のような考察をした.(1)問合せメールを分配している専門家の分配精度から実用上必要な精度を明らかにした.(2)tf・idf値とidf/conf値を用いただけの分配では,実用的な分配精度が得られなかった.(3)(2)の単語のウェイトを強化学習することにより分配の専門家と同等な精度で実用的な分配ができた.最後に(3)の実用的な精度を得るための文書ファイル数とノイズに関する評価を行い,更に従来のテキスト分類手法との精度比較を行った.
著者
林田 尚子 八槇 博史 喜田 弘司 山口 智治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.575-582, 2003-08-01

本研究で想定する街中における情報共有環境では,情報そのものが断片的でかつ有効期限も短いため,その瞬間に欲しい情報が見つけにくい.生成した情報をグローバルネットワークからアクセス可能としておきさえすれば,いつかだれかが見てくれるという環境とは異なり,より積極的に情報を配信し,また発信を促すような,情報の流通を促進する枠組みを考える必要がある.この枠組みを実現するために,情報流通を支援するエージェントを考える.本研究では特に,情報提供の促進に視点をとらえた.情報保持者の不安が情報提供にマイナスの影響を与えるものと考え,これらの影響をリスク要因と呼び,街中からの情報提供行動に対するリスク要因の影響をフィールド実験を行い検証した.本実験により,金銭的報酬の導入や入力コストの削減などの手法とは別に,リスク要因を減じるサポートを与えることで情報提供行動を促進できることが明らかとなった.また,単独では有効なサポートであっても組み合わせたときには,むしろ,単独のサポートよりも情報提供を促進する効果が低い現象も見られた.本論文では,実験における被験者の行動・アンケート結果をもとに,情報提供促進のためのエージェントの機能を考察する.
著者
蜷川 繁 広瀬 貞樹 長谷 博行 米田 政明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.856-865, 1997-11-25
被引用文献数
3

Wolframはセルオートマトンを四つのクラスに分類することを提案したが, 特にクラス3とクラス4の分類が困難な問題となっている. 本論文ではパワースペクトルを用いたスペクトル解析による1次元セルオートマトンのクラス3とクラス4の分類方法を提案する. クラス3およびクラス4に分類されるすべての1次元2状態3近傍セルオートマトン(単純セルオートマトン)についてスペクトル解析を行ったところ, クラス3のセルオートマトンは白色雑音型の不規則な変化をするかあるいは不規則な変化をしている中で周期2の周期的な変化をする確率が高いのに対して, クラス4のセルオートマトンはセルオートマトン固有の周期で周期的な変化をする確率が高いことがわかった. 更に, より複雑な1次元3状態3近傍セルオートマトンおよび1次元2状態5近傍セルオートマトンから無作為に選んだセルオートマトンのうちクラス3またはクラス4と推測されるセルオートマトンについてスペクトル解析を行ったところ, 単純セルオートマトンの場合と同様の特徴をもったパワースペクトルが得られた. これらのことから, スペクトル解析は1次元セルオートマトンのクラス3とクラス4の分類に有効であると考えられる.
著者
馬 〓 飯田 一弘 謝 孟春 西野 順二 小高 知宏 小倉 久和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.21-30, 2002-01-01

多数本のケーブルを最適に配線する最適配線経路選定問題に対する遺伝的アルゴリズム(GA)の構成法を提案する.配線経路に制約のない場合は, 個々のケーブルの最適経路を有限離散グラフにおけるダイクストラ法により得ればよい.しかし配線経路に容量の制約をもつ場合はダイクストラ法では最適化できない.提案するGAは, 2階層からなる染色体コーディングを採用した2階層GAである.各ケーブルの経路とケーブル経路の組合せとをそれぞれの階層とし, それぞれの階層における遺伝的操作によって全体として配線経路選定の最適化を図る.前者の階層における遺伝的操作として, ブロック交叉とブロック突然変異を導入した.また, 後者の階層で生成される制約条件を満たさない致死遺伝子を利用する手法も工夫した.コンピュータシミュレーションにより, これらの遺伝的操作をもつ2階層GAが, 経路探索問題に対して有効に働くことを確認した.
著者
竹内 郁雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.513-522, 2001-06-01

記号処理言語Lispの本質を現代の視点で見直し, コンピュータシステムに携わる人々が今後どのような技術課題に取り組むべきかについてLispにからめた形で論ずる.プログラミング言語の取捨選択は未来永劫(ごう)固定的なものではない.これまで長い間雌伏してきたLispに今大きな跳躍の機会がきていることを, やや楽観的な技術的観点で主張する.