著者
片山 浩
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.115-121, 1998-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

現在行われている持続血液浄化法の3形態,持続血液濾過(CHF),持続血液透析(CHD),持続血液濾過透析(CHDF)の物質除去効率の違いを,血中尿素窒素(分子量60),ビタミンB12(分子量1,355),デキストラン(分子量4,400),チトクロームC(分子量12,400),ミオグロビン(分子量17,800)のクリアランスを計測することにより検討した。血液流量は100ml・min-1,浄化器はPAN(polyacrylonitrile)膜を使用した。CHFはいずれの分子量領域においても,濾過量にほぼ等しいクリアランスを示した。CHDは小分子量物質ではCHFと同等のクリアランスを示したが,分子量が増大するに従って,透析液流量を増加させてもクリアランスが増加しにくくなった。CHDFのクリアランスは常にCHDとCHFの間にあった。
著者
江尻 晴美
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.543-547, 2008-10-01 (Released:2009-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

せん妄は,身体的原因により短期間に発現して時間とともに変動する,注意力や意識レベルの障害と睡眠覚醒障害を伴った認知機能の変化である。今回,ICU滞在中にせん妄を発症した患者において,その後,せん妄に対する患者の思いを直接聞くことができたので報告する。症例は,60歳代前半の男性。修正大血管転位症のため左側房室弁置換術,心房細動根治術を受け,術後2日目よりせん妄を発症した。悲観的,抵抗・拒絶,見当識障害が認められたが,家族が介入すると現実認知が可能であった。術後8日目,「大変見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」と涙を流した。このときの患者の言動から,見当識障害,会話の障害など,せん妄患者によく認められる現象が患者にとって苦痛で辛いものであることがわかった。看護スタッフはその気持ちを理解して援助する必要性が示唆された。
著者
岡本 明久 小野瀬 亜樹 梅垣 岳志 浜野 宣行 山崎 悦子 阪本 幸世 西 憲一郎 新宮 興
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.34-37, 2013-01-01 (Released:2013-04-23)
参考文献数
9

妊娠を契機にして発症した血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP)の症例を経験した。妊娠23週の37歳の女性で意識障害,重度の貧血,血小板減少が見られ入院となった。A disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motif, member13(ADAMTS13)活性の低値,ADAMTS13インヒビター陽性を認めたため,血漿交換を6回施行した。ステロイドパルス療法,抗血小板薬の投与も行ったところ,速やかに血小板数増加とADAMTS13活性の改善を認め,インヒビターも陰性となった。その後定期的にADAMTS13活性を測定したが,低下は認められず,再発を疑わせる所見はなかった。ADAMTS13活性の定期測定がTTPの管理や血漿交換の適用の判断にも有用であった。
著者
原田 大 内野 滋彦 須田 奈美 北村 正樹 瀧浪 將典 川久保 孝
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.293-295, 2014

ICUでは診療科を問わず様々な疾患をもった患者が入室し,病状も刻々と変化するため,様々な理由により投与中の薬剤が廃棄されている。本研究では,薬剤の廃棄理由とその総額について調査を行った。2週間の調査より廃棄総件数382件,廃棄総額262,525円が確認された。診療科別廃棄件数・廃棄金額は心臓外科が最も多く,薬品別廃棄総額はカルペリチド,デクスメデトミジンが上位を占めていた。また,廃棄理由は「治療方針の変更」が最も多かった。本研究により,ICUにおける注射薬の廃棄原因や具体的な廃棄金額が明らかとなった。今後,日々の診療にICU薬剤師が積極的に関与することで,ICU患者の薬剤費を削減できる可能性が示唆された。
著者
小山 英彦 北 貴志 大江 理英
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.373-378, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

甲状腺手術の周術期死亡率は0.4%以下と低く,日帰り手術を行っている施設も少なくない。一般的な外科術後合併症の他に,危機的上気道閉塞,術後出血・血腫,反回神経麻痺などの合併症があり,これらの頻度は少ないものの,発生した場合の多くは集中治療管理を要することになる重要な合併症である。特に危機的上気道閉塞は,発生頻度は約1%と少ないが,死に至る可能性のある重要な合併症である。危機的上気道閉塞は術後出血・血腫による気管外からの圧迫,静脈およびリンパうっ滞による頸部腫脹および喉頭浮腫,さらに反回神経麻痺などが複合的な原因となって発生すると考えられているが,リスク因子など不明な点も多い。その発生を完全に予測することは困難であり,対応は早期発見・早期介入が原則である。医療チームは,危機的上気道閉塞の危険性や非常時の対応について理解を深めることが重要である。
著者
加藤 浩子 宮脇 郁子 山崎 和夫
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-45, 1999

総合集中治療部で治療を要した産科患者の頻度,原因,転帰を調査し,産科重症患者の内容を分析した。1985~1996年に当院集中治療部に入室した産科患者は40名で,頻度は同時期の全ICU入室患者数の0.17%であった。入室理由は産科的合併症によるものが75%,内科疾患合併が25%で,主たる産科合併症は妊娠中毒症,分娩後出血,胎盤早期剥離であった。入室経路で比較すると,転送患者は院内患者に比し入室時のAPACHE IIスコア,妊娠中毒症の重症度,濃厚治療を要した合併症率が有意に高く,ICU在室日数も有意に長かった。40症例中26症例(65%)が1日でICUを退室し,死亡は羊水塞栓の1症例のみであった。産科重症患者は迅速かつ適切な処置を行えば予後は良好であり,その意味で集中治療部の存在の意義は大きい。産前管理の重要性が再認識されたとともに,今後妊娠中毒症の解明により重症患者の頻度の軽減が期待される。
著者
丸川 征四郎 尾崎 孝平 藤田 啓起 山内 順子 池本 晶子 横田 好子
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.27-30, 1994-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12

pHがMRSA増殖に及ぼす影響について実験的検討を行なった。MRSAの増殖は酸性環境で抑制され,抑制の程度は酸性度に比例することが確認できた。すなわち,MRSAはpH4以下の培地ではほとんど増殖せず,特にpH2およびpH3の培地には殺菌的な効果が認められた。また,pH5の培地中でもMRSAの増殖はpH7に比べ著しく抑制され,pH6でも抑制される菌株が存在した。われわれはすでに,重症MRSA腸炎がpH2の希塩酸を消化管内に投与することで改善可能であると報告したが,今回の成績によってこの臨床治療経験の妥当性が証明された。pH2~3の希塩酸は表在性感染症に限定されるが,耐性菌の発生を回避する治療手段として,抗生物質と並用して活用すべき治療法と考えられる。
著者
江木 盛時 黒田 泰弘 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 小谷 穣治 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 志馬 伸朗 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 谷口 巧 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 鶴田 良介 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 土井 研人 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 土井 松幸 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 中田 孝明 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 中根 正樹 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 藤島 清太郎 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 小倉 裕司 細川 直登 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 升田 好樹 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 松嶋 麻子 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 矢田部 智昭 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 安宅 一晃 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井上 茂亮 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 射場 敏明 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 垣花 泰之 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 川崎 達也 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 久志本 成樹 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, 2020
被引用文献数
2

<p>日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。</p>

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著者
石川 欽司
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.92-94, 2005-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1
著者
小山 伸一 行岡 秀和 森本 修 新藤 光郎 西 信一 前田 均 藤森 貢 若杉 長英
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.235-239, 1996-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
11

自殺目的で燃料用アルコール(メタノール)を服用し,脳死に陥った症例を報告する。患者は42歳の男性で,腹痛と嘔吐で発症し高度代謝性アシドーシスが認められ,昏睡状態に陥ったため気管内挿管後に当院ICUに入室した。入室時,高浸透圧血症と浸透圧ギャップの増加が認められ,頭部コンピューター断層撮影(computed tomography; CT)上両側レンズ核部に低吸収域が認められた。持続血液透析により代謝性アシドーシスの改善が認められたが患者は脳浮腫を生じ,脳死になった。ICU入室7時間後の血中メタノール濃度は173mg・dl-1であった。脳死になった原因として,メタノールおよびその代謝産物の直接作用ならびに脳浮腫による可能性が考えられる。
著者
清水 浩 小川 雄之亮
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.193-201, 1998-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
54

肺サーファクタントの絶対的欠乏による新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome; RDS)に対する人工肺サーファクタント補充療法は,未熟児の救命率を飛躍的に向上させた。一方,肺サーファクタントが機能的に阻害された病態(胎便吸引症候群,肺炎,急性呼吸窮迫症候群,肺出血)に対しても,この補充療法が検討されている。また肺低形成では,RDS類似の肺の未熟性がみられ,出生後早期に人工肺サーファクタントを投与することによって,呼吸機能の改善が期待できる。最近,人工肺サーファクタント投与による免疫系細胞の機能抑制の問題が明らかにされており,また親水性肺サーファクタント蛋白質の肺局所免疫としての役割がクローズアップされて,次世代の人工肺サーファクタント開発にあたっての問題点を提起している。