著者
関澤 春仁 山下 慎司 丹治 克男 吉岡 邦雄
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.718-722, 2013
被引用文献数
4

2012年に福島県内で収穫された果実を加工し,放射性セシウムの加工係数を算出した.各加工係数は以下のとおり.<BR>梅塩漬け0.77~0.98,梅塩水漬け0.52~0.55,梅干し0.72~1.11,梅酒0.21~0.32,梅シロップ0.48,梅ジャム0.61,0.88,梅ジュース1.00,いちじく甘露煮1.35,いちじくシロップ漬け0.51,干しぶどう3.52,ぶどうジュース0.97,蒸し栗1.01,ゆで栗0.90,栗渋皮煮0.56,マロングラッセ0.20,ゆずマーマレード0.18,ゆず酒0.19.<BR>加工品の放射性セシウム濃度は原料の濃縮や希釈によって増減したが,シロップ等の液体で加工する場合には放射性セシウムが原料から液体へ移行し,加工後の果実の放射性セシウムは低減された.
著者
大塚 愛 森高 初恵 福場 博保 木村 修一 石原 三妃
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.759-767, 2001-10-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

コーンフラワーを原料としたトルティーヤ調製において,炭酸カルシウムを添加すると,デンプン粒子の膨潤・崩壊,分子の膨潤・水和が促進されたが,変化の程度は小さかった,炭酸カルシウム添加では,加熱により空洞が組織中に観察され,吸水率が増加した.このため,炭酸カルシウム添加トルティーヤでは水分の多い具材を巻いて食べる際には,水分を良く吸収し食べ易さが向上すると考えられた.一方,水酸化カルシウムを添加した場合には,デンプン粒子の膨潤・崩壊,分子の膨潤・水和は炭酸カルシムを添加した場合よりも促進され,組織は緻密となった.従って,水酸化カルシウム添加では,調理操作上あるいは具材を包んで食べる際には破れにくくなり,これらの点で利便性は向上すると考えられたが,添加により強いアルカリ味が生じ,赤味の強い色調になるために,利用に際しては添加量に注意を払う必要があると考えられた.
著者
中村 善行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.305-314, 2020-09-15 (Released:2020-09-25)
参考文献数
105

サツマイモの甘さに関わる遊離糖類はグルコース,フルクトース,スクロースおよびマルトースで,それらは主にデンプンから生成される.糊化デンプンの β-アミラーゼによる加水分解で生じるマルトースは酵素活性の上昇に伴ってその生成量が増加するが,活性が0.2mmol maltose/min/mg proteinを超えると増加が抑制された.β-アミラーゼ活性がこのように高い正常な塊根ではマルトース生成量はデンプン糊化開始温度と相関が高かった.また,冷涼な環境で栽培すると,アミロペクチンの分子構造変化に伴ってデンプン糊化開始温度が低下し,マルトース生成量が増加した.これらの結果から,マルトース生成にはデンプン糊化が重要な役割を果たすと考えられる.マルトースに次いで含量の多いスクロースはその強い甘味から甘さに対する寄与はマルトースとほぼ同等である.スクロースは貯蔵中のデンプン分解に伴って塊根に蓄積するが,貯蔵温度が低下すると,スクロース代謝関連酵素の活性が変化して蓄積量が増加する.甘さの官能評価に影響を及ぼす塊根のテクスチャは加熱に伴うマルトース生成後に塊根に残存するデンプン含量と密接な関係が認められた.
著者
菊地 政則 中島 幸一 浅野 行蔵 高尾 彰一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.176-180, 1996-02-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

北海道の伝統的漬物,ーシン漬の発酵品質に及ぼす食塩濃度および発酵温度の影響について検討し,以下のような結果を得た.発酵の初期段階では,野菜由来のグラム陰性細菌が多かったが,乳酸菌の増殖に伴なう乳酸の生成によって,発酵が進行するに連れてグラム陰性菌は減少した.野菜由来の乳酸菌は乳酸球菌が主流で,106/gであるのに対し,乳酸桿菌LactobaciLLiは103/g以下であった.食塩3.5%添加では,2.0%に比べ乳酸菌の増殖は緩慢で,そのたあ,グラム陰性細菌の増殖が若干認められた.漬物の発酵は5℃より10℃の方が速く進んだ.これは乳酸菌の増殖が,5℃より10℃で速やかに行なわれたためである.しかしながら,10℃発酵では,後半にPichia属の増殖が認められ,品質が不安定となった.したがって,ニシン漬の発酵温度は比較的低温の5℃のものが長期間の品質維持には有効と思われる.
著者
田村 豊
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.375-379, 2013-07-15

食卵は,高い栄養価を有し,比較的安価な動物性タンパク食品である。日本では鶏卵とうずら卵が主なものであるが,外国ではアヒルや七面鳥の卵も食する習慣がある。鶏卵は,生卵として喫食する他,卵加工品および食品の原料としても広範囲に利用されている。生卵を食するというわが国独自の食習慣は,一方で食中毒などの食品衛生上の問題点も指摘されている。一般に食中毒といえば,微生物のみならず化学物質や自然毒を原因とするものも含まれる。その内,微生物を原因とするものは,食品媒介感染症と呼んでいる。しかし,本文では慣用的に用いられる食中毒という表現を用いることにする。食卵に起因する人の健康障害因子としては,病原微生物をはじめ,食物アレルギーのアレルゲン,動脈硬化との関連が指摘されるコレステロールなどが知られている。その内,最も重要なのが病原微生物で,中でも鶏卵のサルモネラ汚染がしばしば深刻な問題を提起している。事実,1990年9月に広島市を中心に1府9県に及んだ大規模なサルモネラ食中毒の発生は記憶に新しい。この事例では,大手の菓子メーカーでティラミスケーキの原料として使われた液卵にSalmonella Enteritidis(以下SE)が混入していた。ケーキの製造過程で室温に長時間放置したためSEが増殖することにより,それを食した若い女性を中心に食中毒が発生した。大手の菓子メーカーが介在したため広域に食中毒が発生し,患者数458名という記録に残る大規模な食中毒となった。このように食卵の衛生で最も注意すべき課題は,いかにSE食中毒を防ぐかである。そこで本解説では,内閣府食品安全委員会が公表したリスクプロファイルを基にサルモネラ食中毒の発生状況,SEの性状と食中毒の特徴,食卵の汚染要因,および対策について概説したい。
著者
杉浦 実
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.373-381, 2014
被引用文献数
8

β-クリプトキサンチンは日本のウンシュウミカン(以下,ミカン)に特徴的に多く含まれているカロテノイド色素の一種である。われわれはこれまでの研究から,ミカンを食べる習慣を有する日本人の血中β-クリプトキサンチン値は欧米人と比べて顕著に高いことを見出してきた。現在,国内主要ミカン産地である静岡県三ヶ日町の住民を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)を継続的に行っているが,これまでに血中β-クリプトキサンチンレベルと動脈硬化や肝疾患,メタボリックシンドローム等の様々な生活習慣病リスクとに有意な負の関連があることを見出してきた。本稿では,β-クリプトキサンチンに関する最近の疫学研究の知見について紹介する。
著者
熊谷(佐瀬) 日登美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-6, 2018-01-15 (Released:2018-01-26)
参考文献数
27

The author has been conducting research into improving the sensory and processing properties as well as the health-promoting functions of foods, and evaluating the physiological functions of food components with agreeable sensory properties, with colleagues and students in my laboratory. Among the sensory and processing properties, expansive properties of protein-fortified breads and foaming, emulsifying and gelling properties of food proteins were improved. Among the health-promoting functions, improvement of nutritional value, inhibition of platelet aggregation, reduction in allergenicity, prevention of hepatic injury, suppression of hyperglycemia, and enhancement of calcium absorption were achieved.
著者
平澤 マキ 志村 晃一 清水 章子 村 清司 徳江 千代子 荒井 綜一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.95-101, 2008-03-15
被引用文献数
8

アボカドの食物繊維やポリフェノールの機能性を明らかにするために,その構成成分と特性を解析した.使用したアボカドは水溶性食物繊維5.23±0.53g,不溶性食物繊維11.3±0.71g(可食部100g当たり/無水物)を含んでいた.不溶性食物繊維はペクチン画分 : ヘミセルロース画分 : セルロース画分はそれぞれ20.6% : 43% : 36.4%であり,不溶性食物繊維は膨潤性が大きく,色素吸着能はローズベンガルにおいて高い値を示した.水溶性食物繊維は鉄吸着能も高く,WSPは優れた鉄保持能力をもつことが示唆された.<BR>また,アボカドの抗酸化性は果皮が最も強く,次いで種子,果肉の順であった.果皮にはポリフェノールが多く存在し,種子,果肉は少ないことが認められた.ポリフェノールの組成をGC-MSで測定したところ,カテキン,エピカテキン,クロロゲン酸類が同定され,これらが抗酸化性に寄与していると考えられる.果皮は未利用資源として新たな食品機能性素材に利用されることが期待される.
著者
鷲家 勇紀 西川 友章 藤野 槌美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.37-44, 2018-02-15 (Released:2018-02-27)
参考文献数
22

市販のコーヒー焙煎豆には,通常エージング処理が施されており,この処理によって,コーヒー抽出液中の多くの香気成分が減少するだけでなく,機能性にも影響することが明らかになってきている.そこで本研究ではマウスにエージング処理時間の異なる焙煎豆の抽出液を投与し,血中尿酸上昇抑制効果を検証した.その結果,エージング処理していないコーヒー焙煎豆抽出液に血中尿酸上昇抑制効果が認められ,処理時間が48時間以内であれば効果が認められることが分かった.また,この血中尿酸上昇抑制効果には,pyrazine類1成分,および硫黄化合物2成分がそれぞれ関与し,何れもエージング処理時間の経過と共に減少する成分であった.さらに作用のメカニズムとして,キサンチンオキシダーゼ活性への影響を検証した.その結果,エージング処理が48時間以内のコーヒー,および有効成分として特定した,エージング処理によって減少する香気成分3成分に,キサンチンオキシダーゼ活性の阻害作用が認められた.以上の結果から,エージング処理をしていないコーヒー焙煎豆抽出液は,血中尿酸値の上昇抑制効果を有し,エージング処理時間の経過と共にその効果は弱まることが分かった.
著者
有山 愛 森 由佳 稲野 美穂 灘本 知憲
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.628-638, 2009-12-15
参考文献数
30
被引用文献数
2

ココア摂取がヒト体表温を上昇させる影響を検討した.被験者は健康な女子学生(18-24歳)とし,体表温と抹消部の血流量を測定指標とした.測定は22℃&plusmn;0.5℃,湿度50%&plusmn;5%の恒温恒湿環境下,4通りの異なった条件で行った.結果は次の通りである.<BR>(1) 実験1では,60℃に加温されたピュアココア飲料による影響を,栄養組成を揃えた飲料,水と比較した.ピュアココアは手首,足首,足指先に,体表温上昇傾向を示した.<BR>(2) 実験2では,37℃に維持したピュアココア飲料と栄養組成を揃えた飲料を比較した.その結果,ピュアココアは手首に体表温維持傾向を示した.<BR>(3) 実験3では,60℃脱脂ココア飲料と栄養組成を揃えた飲料を比較した.脱脂ココアは額における体表温上昇作用(<I>p</I><0.05)と手指における体表温維持作用(<I>p</I><0.05)を示した.また,同様の傾向は,腹と腰にも示された.<BR>(4) 実験4では,実験3と同じ飲料を用いて就寝前状況を想定した実験を行った.脱脂ココアは栄養組成を揃えた飲料と比較し,腰・足首・足指先で体表温上昇作用(<I>p</I><0.05)を示した.<BR>以上の結果より,ココア摂取はヒト体表温上昇作用または維持作用があることが示された.また,その効果は脱脂ココアで特に顕著に観察された.
著者
加藤 みゆき 大森 正司 加藤 芳伸
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.421-427, 2011-09-15 (Released:2011-10-12)
参考文献数
26
被引用文献数
2

緑茶を対象としてretroposon-like sequence DNA (RLS-DNA)塩基配列の比較解析により品種の判別を試みた.実験には,やぶきた品種のチャ葉より製造した緑茶と,市販されている中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶,そして日本の緑茶用40品種の生茶葉を用いて実験した.RLS-DNAの塩基配列を比較解析することにより,おくみどり,べにふうき等の品種の判別が生茶葉と緑茶葉を用いた場合,共に可能であることが認められた.また,中国,ベトナム,ミャンマー,台湾の緑茶についてもRLS-DNAの多型解析により我が国の緑茶と識別可能であることが認められた.今回の実験から,RLS-DNAを指標とした塩基配列の多型解析は,おくみどり,べにふうき品種等の品種を判別するための手法に適用できるものと考える.
著者
山中 克人
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.603-609, 1996-05-15

手延素麺「揖保乃糸」の貯蔵における油脂の酸化程度は,油脂量,乾燥法及び微生物について,その影響を試験した結果から,次のことが明らかになった.<BR>(1) AVは手延素麺製造直後から増加し続けたが,POVは複雑な挙動が観察されたが,貯蔵期間の長期化とともに減少した.<BR>(2) 製造時,使用する綿実油量はPOVの生成に対して影響を与えなかったが,乾燥法では外干法の方が内干法よりもPOVの生成が抑制された.AVは,塗布油量の多少および乾燥法の影響を受けた.油量を増加して内干法を使用した時,AVは低価であった.<BR>(3) POVの低い手延素麺は,貯蔵中の水分を調節して,15%に保持すれば良い.<BR>(4) POVは手延素麺に生息している微生物の影響を受ける.<I>Eurotium sp</I>.を加えて製造した手延素麺のPOVは製造後2ケ月以上の貯蔵により安定化した.<I>Eurotium, sp</I>.の水溶性代謝物もPOVを抑制した.<BR>(5) 手延素麺ではAVおよびPOV,脂肪酸組成の間には相関は認められなかった.
著者
柴田 克亮 小野 誠 平野 進
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.692-699, 2000-09-15
被引用文献数
1 2

市販のビターチョコレートを用い,融解した及び冷却固化したチョコレートの近赤外拡散反射スペクトルのPLS回帰分析によるテンパリング状態の判定について検討を行い,以下の結果が得られた.<br>(1) 融解したチョコレートのテンパリング状態を判定する検量線の精度は,R=0.85,SEC=0.88及びSEP=1.11であった.一方,冷却固化したチョコレートの場合,R=0.97,SEC=0.34及びSEP=0.57であり,高い精度が得られ,融解したチョコレーと比べ精度が向上した.<br>(2) 検量線を構成するファクターには脂肪及び砂糖に関連するものが含まれていることが明らかとなった.<br>以上のことから,近赤外分光法によりチョコレートのテンパリング状態が判定できることが示唆され,品質管理に応用できるものと考えられた.
著者
中村 善行 増田 亮一 藏之内 利和 片山 健二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.433-438, 2016-10-15 (Released:2016-11-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

糊化開始温度の異なるデンプンを含むサツマイモ3品種(「ベニアズマ」,「ほしキラリ」,「クイックスイート」)の塊根を蒸した後に残存する総アスコルビン酸の含量をデンプン糊化度およびマルトース含有率と併せて測定した.糊化開始温度が約75℃の「ベニアズマ」,約65℃の「ほしキラリ」,約55℃の「クイックスイート」の総アスコルビン酸残存率はそれぞれ約57%,約71%,約80%で,糊化開始温度の低い品種ほど残存率が高かった.一方,細胞内デンプンの糊化およびマルトース生成が認められる塊根加熱温度は糊化開始温度が低い品種ほど低く,マルトース含有率が高いほどアスコルビン酸残存率が高くなった.これは加熱塊根におけるマルトースの存在がアスコルビン酸の分解抑制に関与することを示していると考えられた.さらに,加熱してもマルトースが生成しないサツマイモ「オキコガネ」やジャガイモの総アスコルビン酸残存率は約50%と上記3品種より低かった.以上の結果から,蒸したサツマイモではマルトース生成が総アスコルビン酸の含量低下を抑制すること,およびデンプン糊化温度の低いサツマイモ品種はアスコルビン酸含量の維持に有効であることが示唆された.
著者
新本 洋士 門分 彰子 八代 朋美 長縄 康範
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.156-158, 2015-03-15 (Released:2015-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

ステンレストレー上に風乾した牛乳を加熱することによって乳糖と乳タンパク質のメイラード反応による乳タンパク質のグリケーションが生じる.風乾した牛乳を140°C以上で1時間加熱するとSDS-PAGEによって検出されるタンパク質は消失した.120°C加熱による牛乳タンパク質のグリケーションは高濃度のクロロゲン酸およびエピカテキンで抑制することができたが,アスコルビン酸は逆にグリケーションを促進した.
著者
三上 正幸 Trang Nguyen Hien 島田 謙一郎 関川 三男 福島 道弘 小野 伴忠
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.152-159, 2007-04-15
被引用文献数
1 5

本研究は豚挽肉から発酵調味料である肉醤を製造し,その性質について検討した.豚挽肉に食塩,麹,胡椒,水およびプロテアーゼとしてAlcalase 2.4Lを加えて,3種の異なった食塩濃度(15,20および25%)のもろみを調製し,30℃,6ケ月間発酵させた.この間,1ケ月後にFlavourzyme 500Lを添加したものも調製した.発酵期間中に細菌数は減少し,6ケ月後に,一般生菌数は3.9~7.0×10<SUP>2</SUP>cfu/g, 乳酸菌数は300以下および大腸菌群は検出されなかった.発酵は1ケ月後から急激に進み,その後緩やかに進んだ.6ケ月後において,もろみからの肉醤の収率は67.0~78.5%,pHは4.76~5.01,タンパク質の回収率は71.9~79.8%,全窒素量は1.7~2.0g/100ml, ペプチド量は3.5~6.3g/100ml, 総遊離アミノ酸量は4.8~7.8g/100mlであった.Flavourzyme 500Lを添加したものは総遊離アミノ酸量が多くなった(<I>p</I><0.05).肉醤の食塩濃度は,15%の食塩でもろみを調製したものは,20.5~20.8%,20%および25%の食塩で調製したものは,22.8~23.5%であった.官能評価の結果は,総合評価で20%の食塩で調製したものが,さらにFlavourzyme 500Lを添加したものが良い評価であった.
著者
石崎 太一 黒田 素央 久野 真奈見 北面 美穂 早渕 仁美
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.343-346, 2007-07-15
参考文献数
14
被引用文献数
4 7

鰹節だしの継続摂取が単純作業負荷によって生じる精神疲労やストレス,および作業効率に対する影響について,健常な成人女性を対象として調査を行った.1週間の非摂取期間の後,被験者に鰹だしを1週間摂取させた.非摂取期間後および鰹節だし摂取期間後に評価を実施した.単純作業負荷として内田-クレペリンテスト(UKP)を行い,UKPの前後にProfile of Mood States(POMS)による気分&middot;感情状態の調査,フリッカー値の測定ならびに唾液コルチゾールの測定を行った.非摂取期間後には,UKP負荷後のフリッカー値は負荷前に比べて有意に低値を示したが,鰹節だし摂取期間後には負荷前後で有意な変化は見られなかった.負荷前の唾液コルチゾール値は非摂取期間後に比べて鰹節だし摂取期間後に有意に低下した.さらに,鰹節だし摂取期間後のUKPの誤答率は,非摂取期間後の誤答率と比較して,有意に低値を示した.これらの結果から,鰹節だしの継続摂取により,単純作業負荷時に精神的疲労が少なくなる傾向,ストレス応答が低下する傾向ならびに計算作業効率の低下が抑制される可能性が示唆された.
著者
山本 (前田) 万里 永井 寛 江間 かおり 神田 えみ 岡田 典久 安江 正明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.584-593, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
31
被引用文献数
8 9

A double-blind clinical study was carried out on subjects with Japanese cedar pollinosis for the evaluation of the effects and safety of ‘Benifuuki’ green tea, which contains epigallocatechin-3-O-(3-O-methyl)-gallate (O-methylated catechin), and a combination of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract, with ‘Yabukita’ green tea as a placebo. First, the effect of the combination of ‘Benifuuki’ green tea and various vegetable extracts on cytokine production inhibition was investigated using mast cells ; the simultaneous use of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract was found to suppress cytokine (TNF-α or MIPI-α) production to a remarkable extent. Subjects were given 1.5 g of ‘Benifuuki’ green tea, ‘Benifuuki’ green tea containing 30 mg of ginger extract, or ‘Yabukita’ green tea with water twice every day for 13 weeks. As cedar pollen scattering increased, the severity of pollinosis symptoms among the groups was observed to increase in the following order : placebo group>’Benifuuki’ group>’Benifuuki’ and ginger group. Eleven weeks after the beginning of treatment, during the most severe cedar pollen scattering period, symptoms of runny nose and itchy eyes were significantly relieved among the ‘Benifuuki’ group compared with the placebo group (p<0.05). In the ‘Benifuuki’ and ginger group, runny nose, itchy eyes and nose symptom scores were significantly reduced at the eleventh week, and nasal congestion, sore throat and nose symptom medication scores were significantly reduced at the thirteenth week compared with the placebo group. Among all test groups, hematological examination, general biochemical examination, determination of total IgG, CMV antibody titer, and serum iron content, and interviews throughout the intake period found no changes related to clinical problems. These results suggest that intake of ‘Benifuuki’ green tea over one month is useful in reducing some of the symptoms of Japanese cedar pollinosis, and did not affect normal immune response in subjects with Japanese cedar-pollinosis. It was also found that the addition of ginger extract enhanced the effect of ‘Benifuuki’ green tea.
著者
熊沢 賢二 増田 秀樹 西村 修 平石 真也
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.108-113, 1998-02-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
15
被引用文献数
5 9

コーヒー飲料の加熱処理による香気変化について検討し,以下の結果を得た.1) ガスクロマトグラムでは,furfuryl acetate以外に顕著な差は認められず,コーヒー飲料の加熱処理による香気変化に大きく関与する成分は見いだせなかった.2) FD-クロマトグラムで,加熱処理により減少する2-furfurylthiol, methional, 3-mercapto-3-methyl-butyl formate,β-damascenoneおよびskatoleの5成分を見いだした.これらの香調および閾値を考え合わせた結果,コーヒー飲料の加熱処理による香気変化に,これら5つの香気寄与成分の減少が大きく関与していると推定した.3) 上記香気寄与成分を含むモデル実験から,コーヒー飲料中の香気寄与成分は加熱処理により一般に,酸化,熱分解,あるいは加水分解反応が起こった結果,減少すると考えられる.