著者
永田 雅靖
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.96-99, 2013-02-15 (Released:2013-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3

HPLCによるアスコルビン酸およびデヒドロアスコルビン酸の同時定量法を検討した.Yasuiら(1991)の方法をもとに,原報の樹脂カラムとは異なる分離モードのODSカラムの中から最適な分離を示すカラムを選択した.カラムに Imtakt Unison UK-C18(3 μm,4.6 mm × 150 mm)を用い,Yasui らと同じ溶離液:2 mM HClO4 1.0 mL/min,ポストカラム反応液:100 mM NaOH,100 mM NaBH4 0.5 ml/min,検出:UV 300 nm の条件で,従来の方法よりもピークの分離が大きく改善し,分析時間も短くなった.
著者
茂木 弘之 宇佐見 衛 勝崎 裕隆 今井 邦雄 樋廻 博重 小宮 孝志
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.688-691, 2002-10-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
14
被引用文献数
5

15種の香辛料粉末の80%エタノール抽出物についてヒト白血病細胞の増殖抑制率を調べた。(1) タイム,ナツメグ,スターアニス,クローブ,トウガラシ,ターメリック,ジンジャー,ガーリック,シナモン,ブラックペーパー,オールスパイス,ローズマリー,セージ,ローレルの抽出物のうち200μg/mlの濃度で80%以上の細胞増殖抑制率を示したものはタイム,ナツメグ,クローブ,ターメリック,ジンジャー,シナモン,ブラックペーパー,ローズマリー,クミン,ローレルであった。これらの香辛料抽出物の50μg/ml濃度で細胞増殖抑制率が70%以上のものはナツメグ,ターメリック,シナモン,ブラックペーパー.ローズマリー,セージ,ローレルであった。香辛料抽出物の10μg/ml濃度でターメリックは100%,ローレルは95%の高い細胞増殖抑制率を示したのに対して,他のものはいずれも50%以下であった。(2) 細胞増殖抑制率の高かったターメリックとローレルの抽出物の作用機構としてDNA断片化が観察され,アポトーシス誘導によるものと推定した。
著者
宮﨑 義之 倉田 有希江 古賀 裕章 山口 智 立花 宏文 山田 耕路
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.63-69, 2016-02-15 (Released:2016-03-29)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

本研究では,食酢の体調調節機能の解明を目的として,各種果実酢のヒスタミン放出抑制活性について検討した.まず,山ブドウ,ハスカップ,ブルーベリー,ザクロを原料とする4種類の果実酢がラット好塩基球様白血病細胞株RBL-2H3のヒスタミン放出に及ぼす影響を検討したところ,各果実酢がヒスタミン放出抑制活性を有することが明らかとなり,特にザクロ酢で極めて強い活性が認められた.そこで,Diaion HP20を用いてザクロ酢中の生理活性成分のクロマト分離を試みた結果,50% EtOH溶出画分に強いヒスタミン放出抑制活性が認められた.さらに,本50% EtOH溶出画分を液-液抽出によって分画し,ザクロ酢には水溶性の異なる複数のヒスタミン放出抑制成分が存在することを明らかにした.また,各画分のヒスタミン放出抑制活性がPVPPで処理することによってほぼ完全に消失したことから,ポリフェノール化合物が主要な活性成分であることが示唆された.これらの結果から,ザクロ酢にはヒスタミン放出抑制に寄与する複数のポリフェノール成分が存在し,他の食酢と比較して強い抗アレルギー作用を発揮する可能性があることが示唆された.
著者
岩崎 裕子 大越 ひろ 石原 清香 船見 孝博
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.84-95, 2012-02-15 (Released:2012-03-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

コンニャク入りゼリーの破断特性に及ぼす測定条件および調製条件の影響を検討した.コンニャク入りゼリーは比較として用いた寒天ゼリーに比べて測定条件の影響を受けやすいことがわかり,この結果をもとに測定の再現性,普遍性および実用性という観点から力学測定条件を決定した.さらに,コンニャク入りゼリーは,膨潤時間のような調製条件によっても破断特性値が変化することが明らかになった.コンニャク入りゼリーの力学試験方法を標準化する際に,これらの知見は有益である.
著者
中川 禎人 奥田 弘枝
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.917-922, 1996-08-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
6
被引用文献数
2

有機酸溶液にCa-Algを浸漬加熱した場合のアルギン酸の分子量の変化についてゲル浸透クロマトグラフィーで検討した.1. 浸漬温度が50℃までは,有機酸(酢酸,乳酸,リンゴ酸およびクエン酸)の種類に関係なく1.0Mの高濃度でも分子量低下はわずかであったが,70℃以上になると,浸漬後60分までに分子量が急速に低下した.0.2~2.0Mの範囲では,有機酸の種類に関係なく分子量低下に及ぼす影響は濃度によってほとんど差がなく,70℃では,始発分子量(1.1×106)の10分の1に,90℃では,25分の1になった.2. 分子量低下に及ぼす有機酸の影響は,クエン酸>リンゴ酸>乳酸>酢酸であった.浸漬時間が長くなるにしたがってこの影響は小さくなった.3. 分子量分布は,分子量の低下にともなって狭くなった.いずれの有機酸も70℃では,始発分子量分布(Mw/Mnで表示)3.7が1.7に,90℃では,1.5前後に収束した.
著者
猪谷 富雄 建本 秀樹 岡本 実剛 藤井 一範 武藤 徳男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.540-543, 2002-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
10 23

有色米および白米6品種の抗酸化活性を,スーパーオキシドアニオン消去およびDPPHラジカル消去の評価系を用いて測定し,それらに含まれるポリフェノール色素の局在性や化学的性状を解析した.(1) 赤米(「ベニロマン」,「総社赤米」),紫黒米(「朝紫」,「中国黒米」)および白米(「コシヒカリ」,「中生新千本」)の計6品種のうち,玄米の有する抗酸化活性はいずれの方法においても赤米,紫黒米が白米に比べて著しく高かった.(2) 全品種とも果・種皮,つまり糠層からの抽出物が最も高い抗酸化活性を示し,精白米部からの抽出物には殆ど活性は検出されなかった.このことより活性成分は果・種皮に局在することが示唆された.(3) 両評価法で求めた抗酸化活性の間には高い相関性(r=0.908)が確認された.この活性は総ポリフェノール含量をよく反映しており,活性本体はポリフェノールであると考えられた.分光学的解析から,赤米はタンニン系色素を,また紫黒米はアントシアニン系色素を主要なポリフェノールとして含有することが明らかになった.
著者
末松 伸一 久延 義弘 西郷 英昭 松田 良子 小松 美博
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.419-424, 1995-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
12
被引用文献数
14 25

茶葉中のカフェイン,カテキン類の組成を安定的に正確に把握する方法として,常温での溶剤抽出法を検討した.また,本方法により緑茶中のカフェイン,カテキン類の正確な原濃度を求め,標準的な抽出条件におけるこれらの成分の緑茶からの抽出率に及ぼす抽出溶液のpHの影響についても調べた.80℃の熱水抽出では抽出操作中に浸出液中の天然型カテキン類が減少した.アセトニトリルと水との等量混合液により20℃で40分間撹拌抽出することにより,茶葉中のカテキン類を異性化させず,ほぼ全量抽出することができた.カフェインについても本法による抽出率は熱水抽出とほぼ同等であり,カフェイン,カテキン類共に茶葉中の原濃度を安定的に正確に知ることができた.抽出溶液のpHを4-8に調整し,60℃, 3分間の抽出条件におけるカフェイン,カテキン類の溶出挙動を調べた結果,抽出溶液のpHが高いほどカフェインの溶出濃度は高くなるのに対し,カテキン類はpHが低いほど溶出率は高くなった.また,抽出溶液のpHが6を超えると抽出操作中における天然型カテキン類の異性体の増加に伴って浸出液の褐変が急速に進行した.
著者
森口 奈津美 中村 卓
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.471-479, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

本研究では相分離の連続相構造に注目し,卵白連続相(C/P) ·両連続相(C||P) ·寒天連続相(P/C)の異なる3種類の連続相構造にさらに油を添加した相分離構造(o/w (C/P),o/w (C||P),o/w (P/C))とその破断特性の関係を明らかにすることを目的とした.全てのゲルにおいて,油相-水相界面には卵白の凝集ネットワークが存在していた.また,油は分散相中には存在せず,油滴として連続相中に分散相(o/w)として存在した.卵白連続相構造(o/w (C/P))では,油滴は卵白リッチ相に存在し,アクティブフィラーとして働いたため,ゲルの力学的強度が増加した.一方で,寒天連続相構造(o/w (P/C))では,油滴がインアクティブフィラーとして寒天リッチ相に存在していた.しかし,同じくインアクティブフィラーである卵白分散相も多数存在したため,破断特性において油添加による変化がなかった.また,両連続相構造(o/w (C||P))では油添加により,寒天リッチ相内に油滴を覆う卵白と寒天間のインアクティブな界面が新たに分散相として形成されたため,より脆弱なゲルになった.この様に,連続相と油滴界面の相互作用が油添加による破断特性の変化に影響することが明らかとなった.
著者
田中 福代 岡崎 圭毅 樫村 友子 大脇 良成 立木 美保 澤田 歩 伊藤 伝 宮澤 利男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.101-116, 2016
被引用文献数
12

リンゴみつ入り果と非みつ果の香味特性および香味成分のプロファイリングを実施し,嗜好性と香味成分との関連を検討した.みつ入り果の揮発性成分はメチルエステル類,エチルエステル類が特徴的に増加した一方,酢酸エステル類や炭素数3以上のアルコール由来のエステル類は減少した.可溶性成分ではソルビトール,スクロース,L-アラニン,ピログルタミン酸,デヒドロアスコルビン酸が増加し,グルコースが低下した.試算した甘味度積算値はみつ入り果がわずかに大きかった.官能評価の結果,'ふじ' のみつ入り果は全体的な香り,フルーティ,フローラル,スィートが顕著に強く,嗜好性も高かった.みつ入り果で特徴的に検出されたエチルエステル類等(特に2-メチル酪酸エチル,ヘキサン酸エチル,チグリン酸エチル,2-メチル酪酸メチル)は嗅覚による閾値が小さく,スィート·フローラルな,リンゴ·パイナップル様の香調を呈する.以上から,みつ入り果の嗜好性の高さは糖類よりもメチル·エチルエステル類を中心とした香気成分が強く寄与したものと示唆された.また,これらの成分はみつ部分における低酸素·高炭酸条件下の代謝により集積したものと推定した.
著者
阿賀 美穂 宮田 学 牛尾 知恵 吉實 知代 有安 利夫 新井 成之 太田 恒孝 福田 恵温
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.374-378, 2007-08-15
参考文献数
17
被引用文献数
1

トレハロースが口腔内細胞を酸やタバコなどの傷害物質から保護するかについて検討した.培養ヒト細胞粘膜モデルに酸またはタバコ煙成分と同時にトレハロースを添加し,傷害の程度を形態的または定量的に評価した.その結果,トレハロースには,酸またはタバコ煙成分による傷害から細胞を保護する作用があることが示された.これらのことより,のど飴等へのトレハロースの配合添加の有用性が示唆された.
著者
山形 純子 伊與田 浩志 西村 伸也
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.491-502, 2012-10-15 (Released:2012-11-30)
参考文献数
35

水蒸気を利用したオーブン加熱における被加熱物への伝熱形態別の伝熱量の時間変化を把握するために,気流の温度,湿度,流速が一定条件のもとで,湿らせたガーゼ球を試料として,加熱実験を行い,試料表面における熱収支に基づき,伝熱機構解析をおこなった.また,実機としてスチームコンベクションオーブンの伝熱機構解析を行った.その結果,以下のことが示された.(1) 気流温度,ガーゼ球表面温度および加熱前後のガーゼ球重量を測定することで,対流熱伝達係数を概算し,試料へ加えられた熱流束を形態別(対流,ふく射,伝導伝熱および凝縮伝熱)に分離し,各熱流束の時間変化を図示した.(2) 試料への伝熱形態別熱流束の時間変化を計算することで,試料水分変化量を推算し,推算結果と実測値がほぼ一致することを示した.(3) 実機であるスチコンの伝熱機構を,伝熱形態別熱流束の時間変化を図示することで示した.これにより,試料に加えられる総受熱量や凝縮熱量(凝縮水量),蒸発速度の大小を設定条件(気流温度,湿度,風速)により比較することが可能となった.
著者
豊島 尊 土屋 欣也 佐藤 史明 橘 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.388-394, 2004-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
5 4

フライ調理食品やスナック菓子等の多孔性食品はそれぞれに独特のテクスチャーを持ち,そのテクスチャーが食品のおいしさを決定する重要な因子ともなっている.客観的なテクスチャー評価方法の確立を目的として,音響解析技術及び咀嚼圧力測定技術を用いた評価法の検討を行い,次の結果を得た.(1) フライ調理食品の破砕音及び咀嚼骨導音の測定方法を開発し,咀嚼圧力の測定方法を検証した.(2) 代表的なフライ調理食品のコロッケに関して,サクサク感における音刺激の重要性を示し,破砕音,咀嚼骨導音の音響解析データから,サクサク感と相関の高い数値指標を導出した.(3) コロッケの冷凍保存日数によるテクスチャーの違いやフライ油脂の種類によるテクスチャー劣化の差異を音響解析指標及び咀嚼圧力で説明した.以上,フライ調理食品のテクスチャーが「音」と「咀嚼圧力」により評価可能である事が示された.

2 0 0 0 OA カルニチン

著者
常石 英作
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.361-361, 2006-06-15 (Released:2007-06-15)
参考文献数
2

カルニチンは必須アミノ酸であるリジンとメチオニンから主に肝臓と腎臓で生合成され,その大部分(98%)が骨格筋と心筋に存在している.脂肪燃焼(β酸化)は細胞内のミトコンドリアで行われるが,長鎖脂肪酸がミトコンドリア内膜を通過するためには,カルニチンとの結合でアシルカルニチンの状態になることが不可欠である.したがって,カルニチン濃度が脂肪酸燃焼の律速要素となっている.カルニチンの体脂肪抑制効果に関する報告によると,運動条件下のラットに対してカルニチンを投与した場合,無投与よりも多く飼料摂取したにもかかわらず,蓄積脂肪量は少なかった.適度な運動とカルニチンの摂取が体脂肪を抑制するものと思われる.カルニチンは2002年の食薬区分の変更により,食品としての利用が可能となり,サプリメントとして注目を集めている.カルニチンの食品中含有量調査によると,植物にはほとんど含まれておらず,畜肉類に多い.特に牛,山羊,羊,鹿,馬,ダチョウなどの肉に多く,カルニチンが多い畜肉の第1条件は草食動物由来である.図1に各種畜肉中のカルニチン含量を示したが,牛肉については月齢による違いが見られ,8歳(95カ月齢)の経産肥育牛で高い値を示した.図2に示すとおり,カルニチン含量は加齢による増加が認められ,カルニチンの第2条件は「幼畜よりも成畜」からの肉と考えられる.ヒトにおいて老化に伴う体内カルニチン含量の減少が知られている.牛のカルニチン含量については,10歳(120カ月齢)程度がピークのようである.カルニチン含量は基礎体力を反映しているのであろう.通常「国産牛肉」と表示される乳雄牛と「和牛肉」となる黒毛和牛,それぞれの一般的な出荷月齢は,20カ月と27カ月程度である.牛の永久歯は18-24カ月齢で生え始め,42-48カ月齢で揃うことから,乳雄牛や和牛は体重が700kg以上あるものの,生理学的に若齢であり成牛とは言えない.近年の羊肉ジンギスカンブームは,草食動物である羊の肉にカルニチンが多く含まれることがきっかけであった.特に成畜由来の羊肉「マトン」で含有量が高く,消費者にアピールし易かったものと考えられる.牛肉中カルニチン含量も成牛由来であればマトンと同様に極めて高い値を示すものの,若齢牛肉と区別が出来なかった.牛肉中のカルニチンを評価するためには,成牛肉という意味でマチュアビーフ(mature beef)などの名称が必要であろう.
著者
宮原 晃義 結城 昌夫 四元 康博 森地 敏樹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.368-373, 1996-04-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1

熱伝導率の測定法には定常法と非定常法がある,挽肉(牛肉,豚肉,鶏肉)に脂肪を配合して平行熱源法と線熱源法を用いて5~60℃の温度域における熱伝導率を測定した.その結果,平行熱源法では温度上昇に伴って熱伝導率がわずかに上昇する傾向が観察されるのに対し,線熱源法では温度上昇による影響が少ないことが認められた.また,水分含量と熱伝導率との間には正の指数比例関係,脂肪含量と熱伝導率との間には負の指数比例関係があり,この2成分因子から熱伝導率を求める推定式は牛肉では次のとおりであった.ただし,λp, λhはそれぞれ平行熱源法及び線熱源法による熱伝導率(W/(m・K)),x1…水分(%),x2…粗脂肪(%).
著者
吉田 充
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.478-483, 2012-09-15 (Released:2012-10-31)
参考文献数
16
被引用文献数
2

Water is a principle factor determining the texture and quality of food. Water distribution in spaghetti during cooking and standing, and in rice grains during water soaking, were investigated using MRI. Formation of a moisture gradient was observed in a cross-section of boiled spaghetti strands, as a result of water diffusion from the surface to the core with starch gelatinization. Homogenization of water distribution was observed during standing of the boiled spaghetti. Water distribution in five types of cooked spaghetti was compared using MR images and water distribution profiles, enabling quantitative analysis of water diffusion. As for milled rice grains, water first penetrated the embryo attachment site and the surface of the ventral side of the endosperm, then migrated along the central line and transverse cracks, and finally diffused to all parts of the endosperm. The central part of the endosperm allowed more water to penetrate. In milled rice grains of the cultivar Yamadanishiki, which has a white core, water quickly infiltrated into the cracks or chalky parts on the dorsiventral line and then diffused to the lateral side of the grain. The route, pattern and speed of water penetration are determined by the morphological structure, crack formation and hardness distribution associated with the filling of starch granules in the grains.
著者
高橋 京子 西銘 杏 柿沼 美玲 小板橋 淑恵 菅谷 明日香 谷藤 福子 宮本 朋子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.129-136, 2008-04-15 (Released:2008-05-31)
参考文献数
40
被引用文献数
3 2

沖縄県特産の調味料で泡盛とシマトウガラシ(Capsicum frutescens)から作られるコーレーグースについて,辛味と香気の特徴を知るため,市販のコーレーグース,シマトウガラシ,およびシマトウガラシを浸漬したエタノール水溶液の分析を行ない,以下の結果を得た.(1)辛味成分に関しては,HPLCを用いてcapsaicinとdihydrocapsaicinを定量したところ,市販コーレーグース9種類のうち8種では,capsaicinは0.037~0.058mg/ml, dihydrocapsaicinは0.011~0.026mg/mlで,組成比dihydrocapsaicin/capsaicin(DC/C)は0.23~0.57であった.原料のシマトウガラシでは,それぞれ,4.17mg/g dry weight, 2.22mg/g dry weight, 0.53であった.シマトウガラシを浸漬したエタノール水溶液の定量結果から,コーレーグース製品中のエタノール濃度が高いほど,capsaicinとdihydrocapsaicin濃度は高く,組成比(DC/C)が大きいことが示唆された.(2)コーレーグースの香気成分に関しては,固相マイクロ抽出(SPME)を用いたヘッドスペース分析により,泡盛の主要成分であるエタノール以外に,24成分が同定された.GC-Olfactometryにより分析したところ,寄与が高い成分は,2-isobutyl-3-methoxypyrazineと3-methyl-1-butanol,各種エステルであった.原料であるシマトウガラシと泡盛の両方ともに,香気に大きく関与していた.
著者
渡邉 章子 中根 一恵 今井 克彦 大羽 和子
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.179-183, 2013-04-15 (Released:2013-06-04)
参考文献数
26

(1)ダイコンのNO3-は,上部に比べて顕著に下部に局在し,VCはNO3-含量の少ない上部に多く存在した.(2)全施肥窒素量を多く施用されたダイコンほどNO3-含量が多かった.また,施肥窒素量は同量であっても基肥窒素量を控えめにした場合に,NO3-含量が少なく,VC含量が多い傾向がみられたことから,基肥を控えた追肥主体の栽培方法により,NO3-含量の少ないダイコンが生産できる可能性が示唆された.
著者
佐藤 恵美子 三木 英三 合谷 祥一 山野 善正
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.737-747, 1995-10-15
参考文献数
29
被引用文献数
5 6

「煮つめ法」,「滴下法」を用いて調製した胡麻豆腐の調製時における攪拌速度と加熱時間の影響について,テクスチャー測定,クリープ測定,走査型電子顕微鏡による構造観察を行って検討したところ,次のような結果が得られた.<BR>(1) 「煮つめ法」により調製した胡麻豆腐のクリープ曲線は四要素モデル(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>, η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)として解析可能であった.硬さおよび瞬間弾性率,フォークト体弾性率(E<SUB>0</SUB>, E<SUB>1</SUB>)は,どの攪拌速度においても加熱25分(谷の部分)で最も軟らかくなり,その後加熱時間の増加とともに硬くなった.また,その加熱25分の調製条件が構造的にも均一な蜂の巣状構造を形成した.<BR>「滴下法」によるテクスチャーと加熱時間における一次式の傾きは,加熱45分までの時間依存性を示すもので,攪拌速度が高くなる程,大きくなり,付着性には攪拌速度による依存性が認められた.ニュートン体粘性率,フォークト体粘性率(η<SUB>N</SUB>, η<SUB>1</SUB>)は加熱時間にともなう変化がテクスチャーの付着性と類似していた.<BR>(2) 走査型顕微鏡観察の結果,加熱15分では不均一な部分があり,加熱25分で均一な空胞が形成され蜂の巣状を示した.さらに加熱攪拌を続けると蜂の巣状構造は崩壊し始めた,250rpm 25minの試料が空胞の形成がよく,最も均一な蜂の巣状の空胞の集合体が観察された.<BR>(3) 胡麻豆腐は葛澱粉を主体とするゲルであり,胡麻の蛋白質と脂質が関与している相分離モデルであると推察される.
著者
宮井 輝幸 秋山 正行 中川 稔 矢野 陽一郎 池田 三知男 市橋 信夫
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.591-594, 2012-11 (Released:2013-10-08)

コーヒー,紅茶および緑茶の各種試料に,Bacillus属細菌(B. cereus,B. subtilis,B. coagulans)芽胞を接種し,85℃30分間(食品衛生法におけるpH4.6以上の清涼飲料水の殺菌基準)加熱処理した後,その試料の保存中における生育挙動を調べた。コーヒー,紅茶試料では,牛乳を添加した場合,B. cereusとB. subtilisの菌数の増加がみられたが,牛乳を添加していないコーヒー,紅茶および緑茶の各種試料(pH調整の有無;コーヒーの焙煎度;紅茶の抽出温度;コーヒー,紅茶への砂糖添加)では,Bacillus属3菌種の菌数の減少がみられた。これらのことより,85℃30分間の加熱殺菌条件で製造した牛乳無添加の各種飲料中にBacillus属3菌種が生残していたとしても,コーヒー,紅茶および緑茶の抗菌性により商業的な無菌性が保証される可能性が示唆された。
著者
森 直子 浅野 智絵美 永田 忠博 伊藤 輝子
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.144-149, 2014
被引用文献数
1

干しいもの摂取が排便に及ぼす影響について平均年齢20±1歳の女子学生84名を対象とし,非摂取期2週間および摂取期2週間(干しいも100g/日)の単一群試験を実施した.被験者は,排便状況を毎日記録し1週間ごとに提出した.その際,食事調査と身体測定を受けた.また,週3日以上排便がない者を便秘群(15名),週4日以上排便のある者を非便秘群(69名)とし,群別に解析を行った.その結果,非摂取期と比較し摂取期では,被験者全体として排便日数,排便回数,排便量および放屁回数が有意に増加した.また便秘群では,排便日数および放屁回数が有意に増加したが,非便秘群では,放屁回数が有意に増加した以外に,他の項目での有意差は見られなかった.干しいもの摂取による排便促進効果を介入試験により示し,便秘の改善を確認したが,将来はプラセボ対照群を設定し,食事や長期摂取による影響を調べ,本試験結果を検証したい.