著者
鈴木 哲 木村 愛子 田中 亮
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.583-588, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
31

〔目的〕介護職員におけるpresenteeismの発生頻度を調べ,かつ腰痛の程度および心理的因子がpresenteeismに与える影響を解析することとした.〔対象〕介護職員139名とした.〔方法〕presenteeismと腰痛の程度,心理的因子を対象者ごとに評価した.測定項目間の関係をモデル化し,パス解析にて,その適合度と測定項目間の関連性を検討した.〔結果〕対象者の66.9%にpresenteeismがみられた.修正モデルの適合性は十分に高かった.〔結語〕介護職員にとってpresenteeismは業務上の一般的な問題であること,心理的因子がこれに影響する因子として重要であることが確認された.

1 0 0 0 OA 痛みの生理学

著者
黒澤 美枝子
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.73-79, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
5
被引用文献数
1

痛みは組織を損傷するような侵害性の刺激によって起こり,身体を脅かす危険な信号を知らせるという重要な役割を果たしている。侵害性の刺激によって興奮する侵害受容器は特殊な受容器構造を有しておらず,AδやC線維の一次求心性神経自由終末であると考えられている。一次求心性線維は,脊髄後角でグルタミン酸やサブスタンスPなどの伝達物質を分泌して侵害受容二次ニューロンに興奮を伝える。侵害性情報はさらに脊髄内を上行し,視床の特殊核或いは非特殊核に投射した後,大脳皮質感覚野,大脳辺縁系に投射して,痛みの感覚や情動反応,自律反応,防御反応を引き起こす。生体内にはまた,痛みに対する抑制機構(鎮痛機構)も存在する。
著者
相澤 高治 松田 雅弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.889-892, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

〔目的〕股関節屈伸筋力とジャンプ能力との関係について検討すること。〔対象〕整形外科的疾患のない健常成人男女16名を対象とした。〔方法〕等速性筋力測定器を用いて測定された角速度60,180,および300 deg/secでの股関節屈伸筋力のピークトルク体重比と,片脚での「垂直ジャンプ」,「前方ジャンプ」,「三段跳び」,および「6 m間跳躍時間」との関係をPearsonの相関係数により検討した。〔結果〕股関節屈曲筋力では角速度180,300 deg/secと4種目の片脚ジャンプすべてとの間に相関を認めた。角速度60 deg/secの股関節屈曲筋力と「垂直跳び」との間に相関を認めた。股関節伸展筋力では4種目の片脚ジャンプとの相関を認めなかった。〔結語〕股関節屈曲筋力が関与する姿勢制御能力や着地動作能力および出力方向制御とジャンプ能力が関係したと考えられる。
著者
川原 由紀奈 園田 茂 奥山 夕子 登立 奈美 谷野 元一 渡邉 誠 坂本 利恵 寺西 利生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.297-302, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

〔目的〕2006年以降より回復期リハビリテーション病棟での訓練時間は1日上限6単位から9単位に増加した.このことから訓練量増加の効果をADLとの関係で検討した.〔対象〕回復期リハビリ病棟に入退棟した脳卒中患者で,2005年度の5~6単位の群122名と2008年4月から9月の7~9単位の群41名とした.〔方法〕2群間の入退棟時FIM運動項目合計点(FIM-M),FIM-M利得(入院時-退院時FIM-M),FIM効率(FIM-M利得/在棟日数)と自宅復帰率の関係を比較した.〔結果〕7~9単位の群は5~6単位の群に比べFIM-M利得,FIM効率,自宅復帰率が有意に高かった.〔結語〕訓練増加がADL改善に効果的であると考えられる.
著者
松井 剛 加藤 宗規 山﨑 裕司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.103-106, 2019 (Released:2019-02-26)
参考文献数
9

〔目的〕立位保持が困難な重症片麻痺者における立位保持時間を平行棒把持条件と垂直棒把持条件において比較した.〔対象と方法〕対象は,平行棒内立位保持が困難な脳卒中片麻痺患者9症例とした.平行棒片手把持での立位条件(条件A)と,垂直棒片手把持での立位条件(条件B)における立位保持時間を5日間にわたって計測し,比較した.〔結果〕5日間とも条件Aに比較して条件Bにおいて立位保持時間は有意に長かった(p<0.05).6例は,5日目の条件Bにおいて60秒の立位保持が可能となったが,条件Aでは不可能であった.〔結語〕平行棒での立位保持が困難な重症片麻痺者に対しては,垂直棒の利用を検討すべきである.
著者
金 信敬 黒澤 和生
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.275-279, 2006 (Released:2006-09-22)
参考文献数
15
被引用文献数
6 6

本研究は,地域の女性高齢者を対象に5ヶ月間太極拳運動を実施し,太極拳運動による身体機能の改善及び転倒予防の可能性を検討することである。対象は,太極拳群30名(平均年齢72.2±3.5歳),対照群30名(平均年齢71.6±4.5歳)であった。両群に対して,研究実施前後の身体機能測定,転倒の有無に関する質問,及び太極拳群のみへの自主練習実施状況,太極拳運動への感想,今後の継続意志について質問法での調査を実施した。その結果,太極拳群の片足立ち時間,握力,Functional Reach (FR),歩行速度,立位体前屈,片足立ち振りの全ての項目の測定値において有意に向上したが,対照群では全ての項目の測定値において有意な変化は見られなかった。また,太極拳群では,研究実施前の一年間で転倒を経験した人数に比べ,5ヶ月間の研究期間と研究終了後の半年間で転倒を経験した人数に有意な減少を示した。
著者
肥田 直人 石井 慎一郎 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.815-818, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
9

〔目的〕本研究では,ランニングにおける前足部接地と後足部接地の推進特性の違いを調べた.〔対象と方法〕対象は健常成人18名.三次元動作解析装置を用いて前足部から接地したランニングと,後足部から接地したランニングを計測した.〔結果〕後足部接地では立脚期に重心前方移動が大きく,前足部接地では遊脚期に大きかった.後足部接地では立脚前半における床反力鉛直成分が大きく,前足部接地では立脚後半における床反力鉛直・前方成分が大きかった.後足部接地では,立脚前半に大きな後方への回転力が生じた.〔結語〕後足部接地では衝撃を減らすことで前に進み,前足部接地では地面を強く蹴ることで前に進むという特性がみられた.
著者
仲保 徹 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.697-701, 2009 (Released:2009-11-25)
参考文献数
18
被引用文献数
13 12

〔目的〕脊柱後彎が胸郭運動に与える影響を明らかにするため,前かがみ座位による脊柱後彎位で,3次元動作解析装置を用いて吸気に伴う胸郭の運動を測定した。〔対象〕対象は健常成人14名とした。〔方法〕深呼吸時の胸郭運動を体表に貼付したマーカーの変位量にて測定し,直立座位と前かがみ座位の2姿勢の比較を行った。〔結果〕その結果,腹側の上位胸郭の運動が直立座位に比べ前かがみ座位で有意に少なかった。〔結語〕脊柱後彎位では,上位胸郭の吸気に伴う前上方への運動が制限されることが明らかになり,換気障害の1要因になりえることが示唆された。
著者
石本 泰星 泊 麻美 赤澤 直紀
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.135-141, 2019 (Released:2019-02-26)
参考文献数
43

〔目的〕本研究の目的は回復期リハ病棟に入院する脳卒中患者の大腿四頭筋における筋内脂肪量の縦断的変化を調査することである.〔対象と方法〕対象は回復期リハ病棟に入院された脳卒中患者2例とした.入院時と3ヵ月後において,非麻痺側と麻痺側の大腿四頭筋の筋内脂肪量を超音波画像診断装置にて測定した.〔結果〕両症例ともに入院時と比較し,3ヵ月後に筋内脂肪量は減少を示した〔症例A(麻痺側:-2%,非麻痺側:-12.1%),症例B(麻痺側:-30.7%,非麻痺側:-25.1%)〕.またFIM,FMA下肢スコアは両症例ともに入院時と比較し,3ヵ月後に高値を示した.〔結語〕回復期リハ病棟入院脳卒中患者の大腿四頭筋における筋内脂肪量は,3ヵ月間のリハビリプログラムと下肢機能の改善に伴い,減少する可能性が示された.
著者
井上 宜充 隆島 研吾 高木 峰子 島津 尚子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.61-68, 2019 (Released:2019-02-26)
参考文献数
13

〔目的〕初回心不全で入院中の患者と担当理学療法士が必要と考える退院支援の特性と差異を調査すること.〔対象と方法〕対象は65歳以上の心不全初回入院患者16名とその担当理学療法士7名とした.本研究ではQ分類法を使用し心不全患者が必要とする退院支援に関する価値観を調査した.〔結果〕両群ともに必要性が高いとした退院支援は「再発時の対応」であった.両群で差異を認めたのは「運動の効果目的」と,「運動のリスク説明」で患者群の必要性は理学療法士群に比べ低かった.〔結語〕本研究の結果から両群ともに再発予防のために塩分・水分・体重の管理が効果的であることを意識していた.理学療法士群に比べ患者群では「運動」に関する必要性が低く,今後運動に関連した指導への課題があることが示唆された.
著者
吉田 大記 髙嶋 幸男 森田 正治 奥田 憲一 岩田 欧介 岩田 幸子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.737-740, 2015
被引用文献数
1

〔目的〕出生までの在胎期間に関係のある脳病理所見の分析から,特徴を明らかにする.〔対象〕早期産および,正期産で出生した乳幼児剖検例,それぞれ62および29例を対象とした.〔方法〕脳病理所見と診断内容から,在胎週数別の脳病変の特異性を抽出し,積率相関分散分析を行った.〔結果〕大脳白質障害のうち,脳室周囲白質軟化のびまん型と海綿状型は,在胎26週以下の超早期産で多く,広汎型は在胎27週から29週で多く,中間部白質軟化は在胎36週から38週に多く,皮質下白質軟化は39週から41週に多かった.基底核壊死は,在胎24週から26週と在胎39週から41週に分かれて多かった.〔結語〕大脳白質の軟化巣や他の病巣の好発部位が,出生時の在胎期間に応じて特異的である.所見はリハビリテーション早期介入に重要である. <br>
著者
島田 裕之 内山 靖
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.61-67, 1999 (Released:2007-03-29)
参考文献数
25

本研究は運動機能障害を有する患者に対して心拍数の測定による歩行耐久性の評価を行い,短距離歩行と長距離歩行時の生理応答の違いを明らかにした。さらに,長距離にわたって荷物を持つことが生体に及ぼす影響を明確にし,歩行障害度との関係を比較・検討した。その結果,健常者,患者ともに歩行開始直後の短距離(50m)の歩行速度と長距離(1km)での歩行速度とは相関しなかった。患者が長距離歩いたときの心拍応答は直線あるいは対数関数的に上昇を示し,特に機能障害の重度な患者では歩行距離が伸びると歩行効率は低下し,身体にかかる負荷が増大する結果となった。また,荷物を持つことにより健常者,患者ともにPCI,%HRRは有意に上昇し,歩行速度は低下し,機能障害の重度な患者ほど応答的課題に対する生理応答の変化は大きかった。以上の結果から,理学療法の臨床では実際の長距離歩行を詳細に検討することが重要であると考えられた。
著者
松田 憲亮 池田 翔 鶴 大輔 永井 良治 中原 雅美 池田 拓郎 光武 翼
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.159-163, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
33
被引用文献数
1

〔目的〕女性前期高齢者のプレフレイルに影響する要因を分析することを目的とした.〔対象と方法〕前期高齢女性78名を対象とした.フレイル判定基準により,フレイルであったもの3名を除き,プレフレイル群と健常群に分け,各評価項目値の2群間比較を行った.また,多重ロジスティック回帰分析によりプレフレイルに影響する要因を検討した.〔結果〕プレフレイルへ関連する要因としてBody Mass Index,転倒自己効力感,健康意識,歩行速度が有意な独立変数として選択された.〔結語〕女性前期高齢者ではBody Mass Indexの増加や移動能力低下以外に精神的・心理的側面の低下がプレフレイルに関連することが示唆された.
著者
甲田 宗嗣 新小田 幸一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.125-131, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
31
被引用文献数
2 4

椅子座位から立ち上がり,歩行に至る一連の動作(起立-歩行動作)について,三次元動作解析装置および床反力計を用いてバイオメカニクス特性を分析し,膝筋力,バランス指標および転倒経験の有無との関連について検討した。対象は健常高齢男性18名(平均年齢73.9±5.3歳)であり,対象にはできるだけ速く起立し,3 m歩行するよう教示した。バランス指標はTUGテスト,Functional Reachテスト,左右最大一歩幅とした。結果として,起立-歩行動作のバイオメカニクス特性と膝筋力およびバランス指標との間に幾つかの相関が認められた。また,転倒群ではTUGテストの所要時間が長く,起立-歩行動作において直立位近くまで立ち上がってから歩き始めるという特徴を示した。
著者
菅沼 一男 平林 茂 金子 千香 高田 治実 江口 英範
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.163-167, 2016 (Released:2016-03-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3

〔目的〕理学療法学科1学年女子学生における精神的健康度と大学生活不安との関連を調査すること.〔対象〕平成27年2月に1学年に在籍する4年制大学の理学療法学科女子学生44名であった.〔方法〕コーネル・メディカル・インデックスによる精神的健康度と大学生活不安尺度を調査した.〔結果〕CMIにて32%の学生が神経症またはその可能性ありと分類され,これらの学生は,CLASの日常生活不安,評価不安,大学不適応感,総合点のすべてにおいて正常群と比べて有意に高値であった.〔結語〕神経症傾向の学生は,対人関係,学業成績,大学への適合感,就職について不安感を持つ学生が多い.このため,早期に良好な対人関係を作られる援助,職業意識を高める指導など不安を軽減させるための対策が必要である.
著者
二階堂 泰隆 佐藤 久友 高山 竜二 大野 博司 佐浦 隆一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.549-553, 2011 (Released:2011-09-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2

〔目的〕パーキンソン病(Parkinson’s Disease: PD)の症状のひとつである前屈姿勢は動作の自由度を制限し転倒リスクを増加させる.近年,後進歩行運動によるPD患者の姿勢や前進歩行能力の改善が報告されているが,その効果の詳細は不明である.本研究の目的はPD患者に対する後進歩行運動後の即時的な姿勢及び姿勢制御の変化を明らかにすることである.〔対象〕前屈姿勢を呈するPD患者1名(Hoehn & Yahr重症度分類III)とした.〔方法〕課題は静止立位とFunctional Reach Test (FR),Cross Test (CT)とし,5分間の後進歩行運動前後に三次元動作解析装置と床反力計を用いて課題中の姿勢と重心の変化を測定した.〔結果〕後進歩行運動後の静止立位では身体重心,足圧中心の後方移動を認め,即時的に前屈姿勢が軽減した.また,FRでは足関節戦略による姿勢制御の割合が増加し,CTでは前後方向,特に前への身体重心,足圧中心移動距離の増加を認めた.〔結語〕後進歩行運動は前屈姿勢の軽減と足関節を主とした姿勢制御能力を向上させ,安定性限界の範囲を拡大させる可能性がある.
著者
加藤 丈博 平松 佑一 種本 翔 服部 暁穂 澳 昂佑 松木 明好 木村 大輔
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.145-150, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
34

〔目的〕椎体骨折後の安静臥床により身体機能やADLの獲得が遅延した症例の経過について報告する.〔対象と方法〕第2腰椎椎体骨折を受傷した70代後半の男性1名.約3週間の安静期間を経て離床が許可されたものの,廃用性の筋持久力および全身持久力の低下により歩行自立が困難となったため,運動耐用能の改善を意図した反復立ち上がり練習,下肢エルゴメーター,トレーニングマシンによる運動療法を実施した.〔結果〕筋持久力および全身持久力が改善し,歩行自立が可能となり,退院時には受傷前ADLを獲得した.〔結語〕安静臥床により生じる廃用性症候群は,椎体骨折後のADL改善に寄与する重要な予後不良因子となることが示された.今後は安静臥床期間における筋持久力および全身持久力に対する治療介入の有効性を検討する必要がある.
著者
平山 哲郎 本間 友貴 茂原 亜由美 柿崎 藤泰 泉﨑 雅彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.513-518, 2018 (Released:2018-07-06)
参考文献数
26
被引用文献数
3

〔目的〕水平面上の胸郭形状を3次元画像解析装置で測定し,胸郭形状の左右非対称性の程度が胸郭可動性,呼吸機能に与える影響について検討した.〔対象と方法〕対象は健常成人男性20名とした.安静呼気位における胸郭水平断面図を作成し,断面積比を左右で比較検討した.また,胸郭断面積左右比と胸郭可動性,呼吸機能の関係について検討した.〔結果〕胸郭断面積比の左右比較では上部胸郭で左側が,下部胸郭で右側が増大する左右非対称性がみられた.また,胸郭断面積左右比,胸郭拡張率,呼吸機能には相関関係が認められた.〔結語〕安静呼気位の胸郭形状には上部胸郭で左側が,下部胸郭で右側が増大する左右非対称性が存在していた.この胸郭形状の左右非対称性の程度は,呼吸運動における胸郭可動性や呼吸機能に反映したものと考える.
著者
永井 良治 中原 雅美 森田 正治 下田 武良 岡 真一郎 鈴木 あかり 濱地 望 池田 拓郎 金子 秀雄 高野 吉朗 江口 雅彦 柗田 憲亮
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.713-719, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
11
被引用文献数
2

〔目的〕臨床実習指導者を対象に,クリニカルクラークシップ(CCS)の取り組みに対する意見をまとめ,今後のCCS型臨床教育の捉え方を検討するための資料とすること.〔対象と方法〕4年目以上の理学療法士60名を対象に,自己記入式質問紙を用いたアンケート調査を実施した.〔結果〕実習形態については,診療に参加させながら学生の成長を促すことができるとの回答が多かった.しかし学生は受身的な取り組み姿勢で,チェックリストを埋めることに意識が向きやすいことが示された.学生の理解度の把握については理学療法全体に関する理解の指導方法が課題になっていることが示された.〔結語〕現在のCCSの取り組みが明らかになった.学生の取り組み姿勢や指導方法については,臨床実習指導者と連携して検討していきたい.
著者
上田 泰之 浦辺 幸夫 山中 悠紀 宮里 幸 野村 真嗣
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.323-328, 2009 (Released:2009-07-24)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

〔目的〕本研究は,上肢挙上運動時にさまざまな負荷を与えた際の肩甲骨および体幹の運動を分析することにより,どの程度の負荷量が肩甲骨上方回旋,後傾運動および体幹伸展運動を増大させるかを明らかにすることを目的とした。〔対象〕対象は肩関節に疼痛の訴えがない健常成人男性15名とした。〔方法〕無負荷,2 kg,4 kg,6 kgを上肢に負荷した状態での上肢挙上動作を,デジタルビデオカメラにて撮影し,肩甲骨上方回旋角度,肩甲骨後傾角度,胸椎伸展角度,腰椎伸展角度,骨盤前傾角度を算出した。〔結果〕肩甲骨上方回旋角度は上肢挙上角度150°以降で6 kgの負荷が無負荷より有意に大きかった。胸椎伸展角度は上肢挙上角度60°,90°で4 kg,6 kgの負荷が無負荷より有意に大きく,上肢挙上角度120°以降では2 kg,4 kg,6 kgの負荷が無負荷より有意に大きかった。〔結語〕負荷を与えた上肢挙上動作では,肩甲骨上方回旋に加え,胸椎伸展運動も大きくなっていた。