著者
山田 忠史 繁田 健 今井 康治 谷口 栄一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.359-368, 2010 (Released:2010-08-20)
参考文献数
26

本研究は,行政側の物資流動発生メカニズムや物流施策効果の適切な把握,および,企業側の施策理解に資するための,在庫費用を考慮したサプライチェーンネットワーク均衡モデルを提案する.製造業者,卸売業者,小売業者,消費市場,物流業者の分権的な意思決定や行動の相互作用を考慮した既存モデルに,消費市場での商品需要の不確実性に伴い発生する在庫費用を組み込み,各主体の意思決定の定式化,サプライチェーンネットワーク全体の均衡条件,および,その解法を示す.このモデルを用いて簡単な数値計算を行い,消費需要のばらつきや需要情報の共有が,物資流動量(商品取引量,生産量,輸送量)やサプライチェーンネットワークの効率性に及ぼす影響について,基礎的な考察を行う.
著者
柳原 崇男 三星 昭宏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.285-298, 2008 (Released:2008-06-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

本研究は,全盲者および重度弱視者を対象として,視覚障害者の方向感覚を測定し,視覚障害者用移動支援システムの開発や評価などにおいて,被験者を分類し,評価を行うことを検討した.まず,方向感覚質問紙簡易版(SDQ-S)により,これまでの歩行実験などではなく,簡易な質問紙で方向感覚から歩行能力を測定できることを示した.そして,歩行者音声案内システム社会実験において,方向感覚から歩行能力の高い群と低い群に分類し,評価結果を示した.その結果,方向感覚から被験者を分類し,その評価の有効性を示すことができた.
著者
赤松 隆 佐藤 慎太郎 Nguyen Xuan Long
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.605-620, 2006 (Released:2006-12-20)
参考文献数
23
被引用文献数
26 27

混雑料金制は,理論的には,交通渋滞問題に対する優れた方策である.しかし,その制度の有効な実施に不可欠な(1)利用者情報(需要関数)の正確な推定や(2)渋滞メカニズム(ボトルネック混雑)を考慮した動的料金の設定は,実際には非常に難しい.そこで本稿では,混雑料金制度に代わるTDM施策として,“ボトルネック通行権取引制度”を提案する.そして,この制度の導入により,確実に渋滞が解消するのみならず,通行権取引市場で適切な通行権価格体系が実現し,社会的に最適な状態となることを示す.さらに,その証明を通じて,提案した通行権の設定・取引問題と住宅立地均衡問題の数理的同型性を明らかにする.
著者
林 倫子 神邊 和貴子 出村 嘉史 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.246-254, 2010 (Released:2010-05-20)
参考文献数
23

本研究は,明治・大正期に鴨川の河川空間が官有地となり京都府の管理下にあった時期を取り上げ,官有地利用に関する行政文書など当時の史料の読み取りを通じて,料理屋・貸座敷営業者による先斗町の鴨川河岸地と堤外地の土地利用の仕組みを解明した.その結果,[1]当時の先斗町の鴨川官有地は,営業者にとって付加価値の高い場所として認識されていたこと,[2]先斗町の営業者は,河岸地を宅地として隣接する民有地と一体的に利用しており,その地先に当たる堤外には高床構造や床几構造を設け,それぞれ別の契約によって官有地を借用していたこと,[3]営業に用いる河川構造物は営業者が私費を持って設置・修繕を行っており,京都府は一定の節度を持ってその可否決定をなすことで鴨川の河川環境を管理していたことが明らかになった.
著者
二井 昭佳 齋藤 潮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.182-189, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
20

本論文では,海図に記載の山アテにかかわる海上地名「~出シ」を対象として,「~出シ」とその周辺におけるアテ山の地景の変化に注目し,「~出シ」を特徴付けている地景,その地景が得られる場所と海底地形の対応関係について考察した.その結果,「~出シ」はアテ山の見かけの位置関係が変化するなかで,可視⇔不可視,相接⇔乖離に挟まれてオヤ山とシタ山が関係付けられる地景の持続領域に相当し,その領域が集魚効果の高い海底隆起部とおおむね対応することを示した.また,その領域が海底隆起部の大きさに依存せずおおむね350m以下になることから,数分の移動の間に認識されやすい地景の変化の存在が「~出シ」における山アテの特徴だと指摘した.加えて「~出シ」に対応する地景を12種類に分類した.
著者
片田 敏孝 木村 秀治 児玉 真
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.498-508, 2007 (Released:2007-12-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2 1

近年,ハード対策のみによる防災施策の限界が認識されるようになり,住民の自発的な対応行動による被害軽減のあり方が重要視されるなか,住民の意識啓発の重要なツールとしてハザードマップが位置づけられるようになった.しかし現状は,公表されたハザードマップが住民に認知され,かつそこに表示される災害リスク情報が適切に理解されているとはいえない状況にある.本稿では,洪水ハザードマップを事例に,現状における洪水ハザードマップの運用に係る課題を,住民,行政それぞれの観点から整理した.また,地域防災力の向上には行政と住民とのリスク · コミュニケーションが必要不可欠との認識から,洪水ハザードマップをそのコミュニケーションのためのツールとして活用することの重要性と効果的な運用のあり方について提示した.
著者
山口 敬太 出村 嘉史 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.14-26, 2010-01
被引用文献数
1

本研究は,近世の嵯峨野を対象として,紀行文中の風景記述の分析を通じて,1) 鑑賞対象,2) 風景鑑賞時に主体に想起されている過去の風景表現やイメージ,3) 主体の態度や行為,得た印象,を把握することで,嵯峨野における風景鑑賞のあり方を明らかにすることを目的としている.具体的には,眺望や神社仏閣のほか,歌枕・四季の名所の風景,物語・故事の風景,遊びなどの様々な風景記述ごとについて,イメージの追体験,視覚的風景の観賞などの風景鑑賞のあり方とその特徴を示した.その結果,近世の嵯峨野において,地形条件等による景観の多様性と,多様な風景のイメージに合致した景観の状態,さらには多様な風景鑑賞のあり方によって,様々な風景が重層的に生まれていたことを示した.
著者
谷口 守 芝池 綾
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.608-616, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
18

交通環境負荷低減のため,都市構造をコンパクト化することが期待されている.本研究では,その役割を最前線で担う地方自治体の都市計画行政担当者を広く対象とし,コンパクト化政策の意義と可能性を伝えるワンショット型レクチャー(OL)を通じて,1) 担当者の態度形成の現状,2) 担当者の態度変容,3) 態度形成の要因分析,4) 行動のための障害を明らかにした.分析の結果,1) 現状では低い態度水準がOLを通じて大きく向上すること,2) 態度形成にはOLの他に知識や経験が深く関与すること,3) 実際に取り組む者ほど現在の「制度」を障害とはせず,4) 実現のための様々な障害も多くはコミュニケーションと学習を通じて解消される可能性があることが示された.
著者
桑野 将司 藤原 章正 塚井 誠人 張 峻屹 岩本 真由子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.54-63, 2010 (Released:2010-03-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究では自動車の保有期間と年間走行距離の相互依存性を考慮した自動車保有・利用行動の同時決定モデルの開発を行った.具体的には,2変量間の非線形な相互依存性を取り扱うことができるコピュラ関数を用いた多変量生存時間モデルを構築し,保有期間と走行距離の間に異なる依存構造を表現する正規コピュラ,ガンベル・コピュラ,クレイトン・コピュラ,フランク・コピュラの適用を行った.2006年10月に中国地方の5県を対象に行われたアンケート調査のデータを用いた実証分析の結果,保有期間と年間走行距離の間にクレイトン・コピュラを適用したときモデル適合度が最も高く,利用行動と保有行動の間に負の相互依存性が存在することを明らかにした.開発したモデルの現況再現性は従来の分析手法よりも高く,その有効性が実証された.
著者
土井 健司 中西 仁美 杉山 郁夫 柴田 久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.288-303, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
29
被引用文献数
1

都市インフラ整備においては,適切なスコーピングの下で,様々な価値観に照らした総合的な公益性の判断が必要とされる.本研究では,多様な利害グループの共同利益の同時性という視点から,インフラ整備を評価する手法を開発している.これは個人・社会に跨る多元的な共同利益を表わすQoL概念に基づき,主体の価値観の違いに起因した整備効果の違いを可視化することにより,意思決定の透明性と当事者間の公平性の確保を支援するものである.本稿では,2004年に甚大な高潮被害を受けた高松港海岸の整備シナリオの評価に本手法を適用し,グループごとのQoL改善効果の違いを明らかにした上で,安心安全性,経済活動機会,生活文化機会,空間快適性および環境持続性という5つの要素に基づく総合的な公益性に関する分析を行っている.
著者
劉 建宏 大枝 良直 角 知憲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.513-524, 2008 (Released:2008-10-20)
参考文献数
21
被引用文献数
7 17

本論文は,パーソナルスペースという概念に基づいて歩行者が他の歩行者と干渉を避け,相互の間隔を保とうとする行動を記述するとともに,路上の障害物や車いす利用者と交錯・回避しつつ行動する歩行者の流動を表現する方法を提案するものである. 本論文で提案した方法は,従来から知られた歩行者流動の特性を良く再現するとともに,より複雑な状況における歩行者流動を推定可能である.
著者
大渕 憲一 川嶋 伸佳 青木 俊明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.325-339, 2008 (Released:2008-07-22)
参考文献数
23

1902名の市民に対する2度の社会調査によって社会資本整備に対する公共評価の構造を探り,意思決定領域で行政優先,住民優先,手続き的公正,結果領域で事業利益,住民弊害,広域弊害,分配的公正の計7次元を抽出した.現在の政策に対して回答者は全般的に批判的だが,行政優先と事業利益の2次元は満足度と正の関係を,手続き的公正と広域弊害の2次元は負の関係を示した.自民党支持者は事業利益と行政優先の2次元を重視し,弊害,公正さ,住民意思などの次元は軽視した.野党支持者や支持政党なしの回答者はこれと正反対だった.高所得者の評価は自民党支持者と類似していたが,行政に対する信頼は低かった.高学歴者は手続き的公正や弊害を重視する反面,事業利益に注目するなど多面的な評価を示した.
著者
加知 範康 加藤 博和 林 良嗣 森杉 雅史
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.558-573, 2006
被引用文献数
2

本研究では,生活環境質(QOL)が高い都市空間構造を実現するための居住地立地誘導の方向性を見いだす指標として,都市内各地区における居住から得られる生活環境質の評価指標を「余命」を尺度として定義する.定義した指標を用いて財政的持続性および社会的公平性制約下での都市全体の生活環境質最大化問題を定式化し,さらに,これを都市の居住地立地施策に適用するために,生活環境質を市街地維持費用で除した社会的費用効率(S値)を用いた撤退・再集結地区選定の枠組みに展開する.本手法を実際の地方都市に適用した結果,生活環境質自体は中心部より郊外部の方が高いものの,S値は市街地が拡大する前の既存集落部で高くなり,分散集中型への誘導が望ましいことが示される.
著者
出村 嘉史 大住 由布子 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.158-168, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本研究は,本居宣長という個人の目を借りて,門前町が形成されて京都の中でも有数の名所巡りの景域を形成しはじめる18世紀中葉の「清水祗園あたり」における,行楽の空間の構造を明らかにするものである.予め同時代の地図資料,絵図資料から領域の敷地及び経路の構成を把握した上で,本居宣長の『在京日記』(1752-1757)の全記述から「清水祗園あたり」における宣長の体験内容を読み解き,行楽の拠点となった場所と,宣長の足取りの特性を分析した.その結果,宣長によって経験された同景域における,細かなループ状の経路が幾つも重なりあい社寺境内と門前の両方を渡り歩く路傍に4種類の行楽の拠点が配置されている構造が見出され,それぞれの拠点における場づくりの性質が示された.
著者
石 磊 宮尾 泰助 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.414-430, 2010 (Released:2010-10-20)
参考文献数
23

本研究では,開発途上国における建設プロジェクト契約を不完備契約モデルとして定式化し,発注者・受注者双方が関与するダブルモラルハザードの発生メカニズムを分析する.その際,発注者・受注者の努力水準が第3者に対して立証不可能であり,プロジェクト費用リスクに対して互いに正の外部性(補完性)を有する場合に着目する.発注者が努力義務を怠り発生した超過費用を受注者へ移転しようとするモラルハザードが発生すれば,受注者によるモラルハザードが発生し,プロジェクトの効率性が低下するというダブルモラルハザードが発生する.本研究では,開発金融機関の立場から,現地政府と事業者の間で発生するダブルモラルハザードを抑制し,プロジェクトの効率性を担保できるような望ましい融資契約スキームに関して理論的なアプローチを試みる.
著者
李 鎮昊 全 炳徳
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.435-444, 2007

本研究は日本の陸地測量部が当時の朝鮮半島で行った測量の足跡である.特に,当時の朝鮮の政府官僚の対応および地方民の抵抗等について焦点を当てている.また,当時の朝鮮の近代測量の足跡と日本の測量足跡とを対比しながら,朝鮮と日本が取られた近代測量の認識を史料に基づいて考察した.これらの考察より,日本の陸地測量部の朝鮮半島での測量内容や活動,また,それに伴う当時の朝鮮国内の政府官僚および地方民の反応などを明らかにした.この結果から,近代測量において朝鮮の測量認識は日本に比べて非常に低く,これが日本より測量技術の遅れを招いた原因のひとつである分析した.<br> また,本研究では朝鮮半島で活動していた日本の測量技術者たちの測量内容を明らかにし,彼らが活動していた朝鮮と日本の近代測量交流史についても史料に基づいて考察した.
著者
大庭 哲治 柄谷 友香 中川 大 青山 吉隆
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.227-238, 2006-07-20
参考文献数
48
被引用文献数
6

本研究は,京都市都心部の京町家集積による近隣外部効果やその影響範囲の把握を目的に,通常回帰モデルと地理的加重回帰モデルを併用して,ヘドニック法により定量的に計測した.また,得られた計測結果については,GISを利用して空間的な広がりや分布の特徴を把握した.その結果,京町家集積による近隣外部効果の存在が土地の資産価値を高める傾向にあり,近隣外部効果の特に高い町丁目は,東西や南北にはしる通りに沿って連担,あるいは面を形成しているという空間的特徴を明らかにした.また,近隣外部効果の影響範囲は,京町家が隣接する町丁目やその町丁目にさらに隣接する町丁目程度であるのに対し,中高層建築物は学区レベルに相当し,京町家よりも影響範囲が広域であることを明らかにした.
著者
青木 俊明 星 光平 佐藤 崇
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.43-53, 2006

本研究では集団状況における協力意向の形成機構を検討した.私的利益,手続き的公正,同調圧力を操作した心理実験の結果,以下の知見および示唆を得た.1)集団状況では,私的利益感,同調圧力感が重要な態度形成要因であること.2)同調圧力を作用させた実験参加者の約1割が公的受容を伴う同調で態度を形成していた.3)私的受容による同調と合わせると,4割強の実験参加者が同調圧力の影響を受けて態度を形成していた.4)私的受容と公的受容の分岐要因は,同調圧力感,私的利益感,手続き的公正感と推察される.5)同調を示す場合,私的利益感と手続き的公正感が低く,同調圧力感が高い場合には公的受容が促され,私的利益感と手続き的公正感が高く,同調圧力感がさほど高くない場合には私的受容が促されることが示唆された.
著者
谷口 綾子 浅見 知秀 藤井 聡 石田 東生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.441-448, 2009 (Released:2009-11-20)
参考文献数
10

効率的な都市構造「コンパクトシティ」を実現するためには,土地利用規制とともに,人々の居住地を公共交通機関の近くに誘導する施策が不可欠である.本研究ではこうした認識の下,平成20年4月に転居予定の筑波大学の学生を対象に,居住地選択のための探索行動を行うであろう平成19年11月から平成20年3月の期間に,一般的な住宅情報とともにバス停位置の情報を提供するというコミュニケーションを実施し,これによりバス停近くの居住地選択を促すことが可能か否かを実証的に検証した.その結果,バス停位置を強調した情報を提供した群は,バス停を強調しない情報を提供した群よりも,バス停近くのアパートを選択する傾向が2倍程度高いという結果が示された.
著者
秋山 孝正 奥嶋 政嗣
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.145-157, 2007 (Released:2007-04-21)
参考文献数
16

本研究では機械学習における決定木を用いて,交通行動の意思決定構造の記述を試みる.具体的には,ID3,C4.5,ファジィID3,ファジィC4.5の4種類の決定木アルゴリズムを用いて交通機関選択モデルを構成する.大量のデータからの知識獲得を前提とするモデル化は従来の方法に比べて,多様な意思決定構造の表現と推計精度向上の点から有効性が示される.また事後的な枝刈を実行して,情報量を整理することによって,多様性を持つ高精度な判別が可能なファジィ決定木を構成できることが示された.最終的にデータの情報量利得を基本とする決定木の交通行動分析への適用可能性が示された.