著者
勝田 優 小阪 直史 村田 龍宣 舩越 真理 井上 敬之 山下 美智子 杉田 直哉 勝井 靖 澤田 真嗣 大野 聖子 清水 恒広 藤田 直久
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.354-361, 2015 (Released:2015-12-05)
参考文献数
22

病棟での輸液調製では,調製時の汚染防止により注意を払う必要がある.病棟での輸液調製の現状把握のため,空気清浄度,調製環境,輸液メニューについて血液内科と外科病棟を対象に多施設間調査を実施した.空気清浄度調査は,5施設9部署にて実施し,パーティクルカウンターとエアーサンプラーを用いて浮遊粒子数と浮遊菌の同定・コロニー数を測定した.環境と輸液メニューの調査は,9施設13部署を対象に,調製現場の確認と10日間の注射処方箋(7,201処方)を集計した.空気清浄度は,0.5 μm以上の粒子数が,最も多い部署で3,091×103,少ない部署で393×103個/m3であった.浮遊菌は,黄色ブドウ球菌は3部署のみの検出であったが,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Micrococcus属,Corynebacterium属やBacillus属は全部署より検出された.調製台は,9部署で空調吹き出し口の直下にあり,10部署でスタッフの動線上に設置されていた.混合のあった4,903処方のうち,3時間以上の点滴が31%を占めた.病棟での輸液調製マニュアルを整備していたのは,9施設中3施設のみであった.調査から,輸液調製台エリアの空気清浄度は低く,3時間を超える点滴が3割以上を占めるなど,細菌汚染が生じるリスクが高い可能性が示唆された.輸液汚染リスク軽減のため,日本版の病棟での輸液調製ガイドラインの策定が望まれる.
著者
上木 礼子 米澤 弘恵 長谷川 智子 荒木 真壽美
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.181-186, 2008 (Released:2009-02-16)
参考文献数
15

本研究では,血液曝露の危険性のある看護場面において,手袋着用行動への,看護師の意図とその影響要因を明確にすることを目的とした.   α県内の総合病院に勤務する看護師1,128名を対象に,4つの血液曝露場面(真空採血管採血場面など)を設定し,手袋着用の行動意図を調査した.さらに,手袋着用の行動意図に影響する要因として,上司/同僚のサポートを含む組織的要因,手袋着用の教育経験を含む個人的要因,リスク認知を含む心理的要因について調査した.影響要因は,手袋着用行動意図の高い高意図群(以下高群)と行動意図の低い低意図群(以下低群)の2群に分け比較した.   その結果,組織要因では,行動意図高群は低群に比べ有意(p<0.01)に手袋の使いやすさ,上司/同僚のサポート,施設の方針を認識していた.個人的要因では,高群は低群より有意(p<0.01)に手袋着用の教育を受けたと認識していた.心理的要因では,リスク認知と行動への態度,行動コントロール感が有意な正の相関を示した.   これらの結果より,組織環境が手袋着用をサポートする傾向にあるとき,および個人に教育経験のあるときには,手袋着用への行動意図が高くなることが示された.
著者
丹羽 隆 外海 友規 鈴木 景子 渡邉 珠代 土屋 麻由美 太田 浩敏 村上 啓雄
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.333-339, 2014 (Released:2014-12-05)
参考文献数
17
被引用文献数
3 or 0

Defined daily dose (DDD)を用いた抗菌薬使用量の集計はWHOが推奨する方法である.しかしながら,DDDによる集計は総使用量の集計であるため,使用動向の解釈には限界がある.我々は,欧米にて評価が高まりつつあるdays of therapy (DOT)によって当院の2005年1月から2013年6月の注射用抗菌薬の使用量を集計した.セフタジジムはDDD法,DOT法による集計値ともに年々有意に減少したが,DDD/DOT比は変化なかったことから,使用日数もしくは使用人数の減少によって総使用量が減少したと判定できた.メロペネムはDDD法による集計値,およびDDD/DOT比は有意に増加したがDOT法による集計値は有意に変化しなかったことから,1日用量の増加によって総使用量が増加したと判定できた.一方,テイコプラニンはDDD法による集計値は変化なく,DOT法による集計値の有意な減少,DDD/DOT比の有意な増加が見られたことから,1日用量が増加したが使用日数または使用人数の減少により総使用量は変化していないと判定された.以上の結果から,DDD法とDOT法を使用することにより,抗菌薬使用動向をより詳細に分析でき,今後の抗菌薬適正使用の一助となると考えられた.
著者
小林 龍 谷口 亮央 古泉 景子 土屋 総之 多田 知弘 佐藤 雄樹 柴波 明男 妻木 良二
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.280-284, 2008-09-25
被引用文献数
2 or 0

今回,手荒れの予防効果が高いと言われているアルコールゲル擦式消毒剤(ゲル剤)を用い,皮膚に対する影響について,当院看護師82名を対象として2週間使用後の手掌と手背,指先の肌水分量を測定した.<br>   各薬剤とも調査前後の手指消毒回数に変化はなかった.種類による差はあるものの,3種類のゲル剤全てにおいて,手掌と指先の肌水分量が増加した.<br>   今回の結果より,ゲル剤の保湿効果が擦式消毒用アルコール製剤に比べ高いことが示された.この成績は,ゲル剤使用により手荒れ防止および手指消毒回数の減少防止に繋がり,医療関連感染の低下にも有効であると考えられる.<br>
著者
木村 聡 相澤 寿子 増山 智子 仲間 恵美子
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.21-26, 2009-01-23
参考文献数
8

トイレの出入り口は不特定多数の者が接触し,病原体を媒介する可能性を有している.とりわけ最近普及した手指温風乾燥機(ハンドドライヤと略)では,水滴の飛散による周囲の汚染が指摘されており,底に溜まった水に触れる危険も考えられる.そこで我々は,ハンドドライヤの汚染状況を調査し,トイレ扉の取手等との比較を行った.あらかじめ手技を統一した男女各1名の検者が,病院の職員および患者用トイレ扉の取手と,ハンドドライヤの水滴受け部分など合計36箇所に,滅菌生理食塩水を含ませたシードスワブで拭き取り試験を行ない,生菌数の計測と菌種同定を行った.その結果,トイレ入り口扉からはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)をはじめとする皮膚常在菌が数10~数100個検出されたのに対し,ハンドドライヤの検出菌は1000個を超え,使用頻度が高いトイレでは10万個に達していた.男子トイレのハンドドライヤでは,黄色ブドウ球菌やCNSなど皮膚常在菌が主体を占めたのに対し,女子トイレではモルガネラ属,クレブシエラ属,エンテロバクター属などの腸内常在細菌が多く,皮膚常在菌の生菌数は有意に少なかった.以上よりハンドドライヤに貯留する水は,他の接触部位より汚染されている可能性が推定された.手洗い後はハンドドライヤの受け皿に触れぬよう注意が必要であり,水滴の飛散には何らかの対策が必要な可能性がある.<br>
著者
大久保 耕嗣 阿部 政典 小林 謙一 長井 一彦 長井 知子 樋口 多恵子 継田 雅美
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.290-294, 2008 (Released:2009-02-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1 or 0

著者等は,新潟県内の医療施設に1988年,1994年および2007年にアンケートを取り,手指衛生の変遷について調査した.1988年に主流であったベイスン法は,現在では行われていない.1994年は,速乾性擦式アルコール製剤のラビング法と消毒薬を用いたスクラブ法が多く,2007年は,流水と石鹸,抗菌性石鹸および消毒薬を用いたスクラブ法が多かった.一方,日本環境感染学会において1992年から2007年までの手指衛生に関する全ての発表と論文を分析した.手指衛生についての発表および論文タイトルが,全体に占める割合は10%であった.学会発表は,2002年にCenters for Disease Control and Prevention (CDC)手指衛生のためのガイドラインが発表された翌年に,8.7%から15.3%と高くなった.このガイドラインは,水場のない場所での手指衛生を踏まえてアルコール含有のラビング法を推奨しているが,日常手洗いでは石鹸と抗菌性石鹸を用いたスクラブ法を推奨している.2007年の調査では,アルコール含有ラビング法が減少していた.各病院において基本である流水下で行う手洗いが実施されていることが示唆された.日常手洗いと衛生的手洗いが区別されて行われているのではないかと考えられた.
著者
野口 周作 望月 徹 吉田 奈央 上野 ひろむ
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.79-85, 2013 (Released:2013-06-05)
参考文献数
9

病院の感染制御において,薬剤耐性菌対策は重要な問題である.当院では2004年8月にInfection Control Team (ICT)が発足して以来,段階的に抗菌薬適正使用強化策を行った.その取り組みと効果について検討し,若干の知見を得た.2007年にオーダリングシステムと連動した特定抗菌薬使用届出制導入をはじめ,2010年より積極的に症例に関わる方法としてICT抗菌薬ラウンド導入に至るまで段階的に強化策を行った.その効果判定の指標として,カルバペネム系抗菌薬の使用量,投与日数,緑膿菌の感性率及び多剤耐性緑膿菌(MDRP)の年間検出件数を調査した.カルバペネム系抗菌薬の使用量は,1277バイアル(V)(2004年11月)から327V(2010年6月)に,平均投与日数は8.40日(2006年)から5.97日(2010年)に減少し,緑膿菌のmeropenemに対する感性率は72%(2008年)から90%(2011年)に回復した.MDRPの年間検出件数は28件(2008年)から1件(2011年)に減少した.段階的強化策を講じたことで,大きな問題なく医療従事者の抗菌薬適正使用に対する意識を高めることができ,緑膿菌の薬剤感受性の回復とMDRP検出件数の顕著な減少効果が表れたと考える.本結果を踏まえ,今後はより高い水準の抗菌薬適正使用と感染症治療支援に携わっていきたい.
著者
西村 秀一
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.131-134, 2017-05-25 (Released:2017-07-05)
参考文献数
9

ウイルスの不活化や殺菌効果を標榜する,据え置き芳香剤型の剤型で二酸化塩素ガスを放散させる製品の,環境表面上の病原体に対する同効果の有無を検証した.本邦の冬の生活空間を想定した室温20℃,相対湿度25%の密閉空間を,製品から放出されたガス濃度が0.03 ppmになるよう調整した.その中に,スライドグラスの上に一定量のA型インフルエンザウイルス溶液あるいはStaphylococcus aureus菌液を滴下し短時間で自然乾燥したものを置き,2時間後に回収し一定量のメディウムで洗い流し,活性ウイルス量や生菌数を測定した.その結果,当該条件下でガスの曝露を受けた検体での活性ウイルス/生菌量は,曝露のない対照のそれと変わらなかった.
著者
松元 一明 黒田 裕子 寺島 朝子 前澤 佳代子 木津 純子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.29-32, 2015 (Released:2015-04-05)
参考文献数
5

先発医薬品と後発医薬品では添加物が異なるため,溶解性が異なる可能性が考えられる.そこで本研究ではコールター原理に基づいた自動細胞計数装置を用いて,バンコマイシン塩酸塩点滴静注用5製剤をそれぞれ生理食塩液に溶解し振とうした際の不溶性微粒子数を測定し,各製剤の溶解性を比較検討した.各振とう時間において5製剤の不溶性微粒子数には有意差が認められ,1製剤は先発医薬品よりいずれの時間においても有意に低値を示した.他の4製剤は振とう時間を長くすることで,有意に不溶性微粒子数は低値を示した.したがって,製剤毎の溶解性には差があり,溶解時間が異なることが確認された.バンコマイシン塩酸塩点滴静注用を適正に使用するには,溶解性の差を理解し,適切な溶解時間を現場の医療スタッフに周知徹底する必要がある.
著者
遠藤 史郎 徳田 浩一 八田 益充 國島 広之 猪俣 真也 石橋 令臣 新井 和明 具 芳明 青柳 哲史 山田 充啓 矢野 寿一 北川 美穂 平潟 洋一 賀来 満夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.50-56, 2012 (Released:2012-03-23)
参考文献数
16

2011年3月11日の東日本大震災に伴う宮城県名取市館腰避難所においてインフルエンザアウトブレイクが発生した.同避難所では200名の避難者が共同生活を営んでおり,40%が65歳以上の高齢者であった.初発例発生から5日目の4月8日当避難所の巡回診療を行っていた名取市医師会会長よりインフルエンザアウトブレイクに対する介入要請があり,対応策構築のために同避難所へ介入した.介入時既に,non-pharmaceutical interventions: NPIとして,発症者全員の隔離が行われていたが,隔離以外の手指衛生をはじめとするNPIは十分には行われていなかった.一方で,計22名への予防投与が行われていた.したがって,NPIを中心とした基本的対策の強化(ⅰ:マスク着用率の向上,ⅱ:手指衛生の適切な実施の啓発,ⅲ:換気の実施,ⅳ:有症状者の探知および発症者家族のモニタリング強化,ⅴ:発症者の隔離)を現場スタッフと確認し,一方,現場医師と予防投与は基本的対策を徹底したうえで,なお,感染が拡大した場合のみ考慮すべき対策であること,また,その範囲・適応などに関して協議した.4月13日,2度目の介入を行い新規発症者は18日の1人を最後に終息した.避難所におけるインフルエンザアウトブレイクは過去にも報告が少なく,初めての経験であった.予防投与はあくまで補助的な方策であり,アウトブレイクの規模や感染リスクを考慮し,さらにNPIの強化徹底を行った上で行うことが必要であると考えられた.
著者
小泉 祐一 木村 健 畑中 重克 門谷 美里 高橋 陽一
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.175-180, 2008 (Released:2009-02-16)
参考文献数
13
被引用文献数
1 or 0

近年,抗菌薬関連下痢症(AAD : antibiotic-associated diarrhea)によって死に至る症例が報告されている.そのようなAADの発生要因を調査するため,過去4年間の抗菌薬の使用実態調査とともに,院内で発生したAADの症例数ならびにその原因として推察される抗菌薬の調査を行い,その関連性について検討した.調査期間は2003年度から2006年度の4年間とし注射用抗菌薬の使用量を調査し,さらに同様の期間においてAADの発症患者数を調査した.またAAD発症と抗菌薬の使用との関連性を解析するため,AAD発症患者に使用された抗菌薬を各系統別にし使用率やオッズ比を算出した.   抗菌薬使用量とAAD発症患者数との相関については,2006年度は抗菌薬使用量が減少したにも関わらず発症患者数は増加していた.2005年度と2006年度の抗菌薬使用の系統別差異を分析するとセフェム系第3世代および,セフェム系第4世代の使用量は増加していた.よって,これらの抗菌薬群の使用がAAD発症に大きな影響を与えているものと推察される.コントロール群とAAD発症患者群との使用抗菌薬の系統については,AAD発症患者群においてセフェム系第3世代,セフェム系第4世代,カルバペネム系の使用率やオッズ比が高いことから,広域な抗菌スペクトルをもつ抗菌薬がAADを発症しやすいことが示唆される.
著者
白石 正
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.224-229, 2016 (Released:2016-10-05)
参考文献数
24

消毒薬はいつ頃から使用され,どのような経緯で現在の感染防止に役立っているか,その変遷を歴史から考察した.1840年代にクロール石灰による手指衛生を始めとし,その後,石炭酸,昇汞の使用へと変わっていった.1870年後半に感染症は微生物が原因であることが判明して以来,消毒薬の重要性が広く認識されるようになる.1900年代には合成技術の進歩から多くの消毒薬が合成され,現在でも使用されている消毒薬が登場する.消毒薬は異なっても接触感染防止を唱えたSemmelweis IPやLister Jの意思は現在でも引き継がれている.本稿においては,手指衛生,環境消毒および器具消毒の方法についてその変遷を記述する.
著者
小林 謙一郎
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.348-353, 2015 (Released:2015-12-05)
参考文献数
13

歯科診療所における針刺し・切創の実態や,B型肝炎ワクチンの接種状況は明らかではない針刺し・切創を原因とする血液・体液媒介性感染症の予防を目的とし,実態を把握するためアンケート調査を行った.東京都墨田区内の歯科診療所に勤務する医療従事者(歯科医,歯科衛生士,歯科助手)を対象とした.墨田区内130施設中69施設よりアンケート調査票を回収し,計97名(歯科医師74名,歯科衛生士13名,歯科助手10名)の回答を得た.歯科医師の70.3%,歯科衛生士と歯科助手を合計した中の77.2%が針刺し・切創を経験していた.歯科医師は,診療中の麻酔用注射針による針刺しが多く,歯科衛生士や歯科助手では,針刺し・切創の原因器材や状況は様々であった.歯科診療所に勤務する医療従事者のB型肝炎ワクチン接種率は59.4%であった.歯科衛生士,歯科助手,50歳以上の歯科医師において特にB型肝炎ワクチンの接種率が低かった.また,針刺し・切創発生時に適切な対応(流水による創部の洗浄と病院の受診)を行ったものはわずか9%であった.歯科診療所では,多くの医療従事者が針刺し・切創を経験しているが,B型肝炎ワクチンの接種率や針刺し・切創発生時の対応は十分ではない.
著者
矢野 知美 橋本 好司 田代 尚崇 棚町 千代子 堀田 吏乃 糸山 貴子 石井 一成 佐川 公矯
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.303-311, 2009-09-25
参考文献数
29

我々は,2008年10月に多剤耐性緑膿菌(MDRP)によるアウトブレイクを経験した.感染の拡大防止・確認のため,環境付着菌検査および患者の鼻腔・尿・便検体の細菌培養検査を行ったが,<i>Pseudomonas aeruginosa, Acinetobacter</i>属,<i>Bacillus</i>属等の菌は検出されたが,MDRPは検出されなかった.<br>   そこで,MDRPを含め環境由来菌による医療関連感染の予防対策として,医療環境水の微生物生息状況を把握するため,無菌室および浴室・シャワー室・洗面台・作業スペースにある給水・給湯水について水道法,日本薬局方および新版レジオネラ症防止指針に記載されている濾過濃縮法に準じ,微生物汚染度調査を行った.その結果,MDRPの検出はなかったが,日和見感染や医療関連感染を惹起する従属栄養細菌と臨床上問題となる<i>Bacillus cereus, Legionella pneumophila</i>等の細菌が検出された.<br>   今回の調査によって,医療環境水には様々な細菌の汚染が考えられるため,給水設備の定期的な維持管理が重要であるということが確認された.<br>
著者
盛次 浩司 齋藤 信也
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.34-41, 2017

<p>非急性期ケアにおける尿道留置カテーテルの取り扱いの現状を把握するとともに,そこでのカテーテル関連尿路感染症(Catheter-associated Urinary Tract Infections:CAUTI)予防のあり方を探るためアンケート調査をおこなった.A県下の訪問看護ステーション(訪看)106施設,特別養護老人ホーム(特養)146施設,介護老人保健施設(老健)77施設,療養型病床(療養病床)130施設を対象とし,カテーテル取り扱いの現状,CDCの「カテーテル関連尿路感染の予防のためのガイドライン2009」にみられる各インディケーターの遵守状況について調査した.有効回答数は175(38.1%)であり,カテーテルの使用率は訪看10.5%,特養3.5%,老健3.8%,療養病床24.6%であった.カテーテル使用理由については,訪看では,医学的理由以外の「介護者の負担軽減」,「尿失禁ケア」の理由も多くみられた.療養病床では,「褥創治療」,「尿閉・神経因性膀胱」,「終末期ケア」の順であった.ガイドラインの遵守状況は施設類型間に差はみられなかったが,閉鎖式セットといった感染対策に役立つとされる材料の選択では,その必要性と使用比率との間に乖離がみられた.今後は,非急性期ケアの実情に適したカテーテルの材質やセット内容の改善,また,感染予防教育などを含んだ総合的な対策が必要と考えられた.</p>
著者
多湖 ゆかり 森兼 啓太
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.174-179, 2015 (Released:2015-08-05)
参考文献数
4
被引用文献数
1 or 0

透析患者の予後に大きく影響する透析関連感染の実態を明らかにし,感染率を低減させるために,実施したサーベイランスと並行して実施した介入を評価した.サーベイランス開始当初9ヶ月における短期留置カテーテル感染率は1000透析日あたり48.61であり,研究会の感染率(同14.55)に比較して有意に高いことがわかった.そこで,カテーテル挿入時のマキシマルバリアプリコーションの実施率の向上,教育など多面的なアプローチを行い,さらに長期留置カテーテルを導入した.長期留置カテーテル導入前(2010年7月~2012年6月)と導入後(2012年7月~2013年6月)の感染率を比較すると,33.40から9.20に低減し(p=0.05),研究会の同時期の感染率8.21と比較しても遜色ない値となった.また,短期留置カテーテルの平均留置日数も若干短縮した.これらの効果の検証に際しサーベイランスは有効であり,そのデータに基づき実施した介入は効果的であったと考える.
著者
津曲 恭一 長田 智子 新城 日出郎 田村 謙二 河口 朝子
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.227-232, 2009-07-24

ハンセン病療養所である当園の入院病棟において,2008年7月,B型インフルエンザ陽性患者が1名発生した.終息宣言までの14日間の間に,合計8名の発熱,咽頭発赤,咳嗽,下痢等を訴えた患者が確認された.このうちインフルエンザウイルスキットに対し陽性反応の見られた患者は1名のみで,他の7名は陰性であった.<br>   医療関連感染症対策委員会が緊急に開催され対応策が検討された.感染源と経路の特定,感染経路の遮断による二次感染阻止,早期終息を目的とし,内科医師,看護課,検査科,医療関連感染症対策室を中心に活動した.<br>   園内の感染状況の把握,園内放送による入所者と職員への注意喚起はほぼ連日行われた.さらに,1) 手洗いの励行,2) 防護具やマスク配布,3) 集団活動(機能訓練室と食堂の使用)の制限,4) 面会の制限,が実施された.発症患者8名の平均年齢は92歳で,インフルエンザによる重症化のリスクが高く,また前年に接種したインフルエンザワクチンの効果は望めないと考えられたため,インフルエンザウイルスキットで陰性の患者全員にもリン酸オセルタミビルが予防投与された.<br>   感染経路は,外部からの持ち込み(ヒト-ヒト感染)が疑われたが,確証を得られなかった.最初の患者発症から,5日目以降は新たな発熱患者は発生せず,流行は速やかに終息した.<br>   迅速な組織的対応とリン酸オセルタミビルの予防投与が奏功したと考えられた.<br>
著者
岡崎 真由美 粟井 一哉 森 規子 吉田 雅春 本田 淳一 森 由弘
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.52-57, 2008-03-25
被引用文献数
1 or 0

近年,栄養状態が疾患の治療効果に大きな影響を及ぼすことが分かり,栄養療法の重要性が再認識されてきた.一方感染対策においても,抗菌薬の耐性化や本邦における急速な高齢化の影響もあって,宿主の免疫力とも大きな相関のある栄養療法の重要性は年々高まっている.<br>   当院は,病床数179床の市中急性期病院であるが,2001年1月に栄養サポートチーム(NST)が,そして翌月に院内感染対策チーム(ICT)が相次いで発足した.NSTは栄養療法の適正化を進め,従来の中心静脈栄養(TPN)主体の栄養療法から,経腸・経口栄養を基本とした栄養療法へと劇的な変化をもたらした.またICTは環境感染対策,各種サーベイランスの開始や抗菌薬の適正使用などに精力を注いできた.<br>   両チーム発足後の推移を追ったところ,TPNは2000年度とその後の6年間を比較し7,917本から平均3,874本と46.1%の大幅な減少を認め,対照的に経腸栄養患者数は大きく増加していた.抗菌薬使用量についてはPK/PD理論に基づき一人当たりに使用するバイアル量は増加傾向であるにもかかわらず,2000年度とその後の6年間を比べると29,177本から平均25,718本と11.8%の減少を認めた.<br>   NSTとICTのコラボレーションは,抗菌薬の使用量の減少効果および医療費の抑制効果を生みだし,耐性菌の抑制などの感染対策としても有益である可能性が示唆された.<br>
著者
山下 ひろ子 小山田 玲子 奥 直子 西村 正治 石黒 信久
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.210-214, 2011 (Released:2011-10-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1 or 0

当院職員を対象に,麻疹,風疹の感染防御に十分な抗体価を有していない者(麻疹PA抗体価128倍未満,風疹HI抗体価16倍未満)に麻疹,風疹ワクチン接種を行った.麻疹ワクチン接種後に128倍以上の抗体価を獲得したのは123名中92名(74.8%)で,256倍以上の抗体価を獲得したのは123名中70名(56.9%)であった.風疹ワクチン接種後に16倍以上の抗体価を獲得したのは130名中118名(90.8%)で,32倍以上の抗体価を獲得したのは130名中101名(77.7%)であった.幼児に麻疹,風疹ワクチンを接種した場合の抗体陽転率は95%以上とされているが,医療従事者に麻疹,風疹ワクチンを接種して(単に抗体陽転ではなく)感染防御に有効とされるレベルの抗体獲得を期待する場合,接種後の抗体獲得率は95%よりも低いことに留意するべきである.