著者
三部 良太 田中 匡史 小林 伸悟 小林 隆志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1150-1160, 2018-04-15

昨今の業務システム開発では,既存システムが存在し,その既存システムの仕様の一部踏襲を求められることが多い.しかし,既存システムには最新の仕様書が残っていることが少なく,踏襲すべき仕様の特定が困難になっている.この課題に対して,ログなどを用いて操作の流れのフローを復元する取り組みはあるが,ユーザと仕様の議論をするには粒度が細かすぎて,上記の用途には適さない.本稿では,既存システムからの業務フロー仕様の復元を目的として,システムの操作ログから詳細な業務フローを復元する手法および操作したユーザの組織情報を用いて業務フローの粒度を抽象化する手法を提案する.操作ログの一連の操作をクラスタリングし,代表となる操作を抽出することで,業務の全体像の俯瞰に適した抽象化を実現する.提案手法を実際のシステムで適用した結果に基づき手法の有効性を議論する.
著者
西村 雄一 紙名 哲生 丸山 勝久
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1120-1136, 2018-04-15

ソフトウェアの並行開発において,異なる開発者が同一のソースコードを独立に変更した場合,それらの変更のマージが競合を引き起こすことがある.このような競合を解決するためには,版管理システムに残された過去の変更を細かく調査し,競合の原因やその解決策を見つけ出す必要があるが,これは面倒で時間のかかる作業である.本論文では,開発者がどのようにJavaソースコードを編集してきたかという情報を表現した細粒度の編集操作の履歴を用いて,競合解決を支援するツールを提案する.このツールは,競合するクラスメンバに関係する編集操作だけを抽出し,それらを再演することで,競合がどのように発生したのかの理解を助ける.また,過去の編集において競合を発生させずにマージ可能な時点を検出し,自動的にマージを適用した結果を開発者に提示する.簡単な被験者実験を通して,提案ツールが開発者の競合原因の把握や競合解決作業の支援に有用であることを確認した.
著者
佐藤 拓弥 片山 徹郎 喜多 義弘 山場 久昭 油田 健太郎 岡崎 直宣
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1137-1149, 2018-04-15

ソフトウェア開発におけるデバッグは,手間のかかる工程である.プログラムの欠陥を効率良く特定するためには,プログラム実行時の挙動を把握することが重要である.しかし,プログラム実行時の挙動は一般的に不可視であり,その挙動がどこまで正しかったのかを把握することは困難である.そこで,本研究では,Javaプログラムのデバッグの効率化を目的として,プログラムの欠陥特定を支援するデータ遷移可視化ツールTFVIS(Transitions and Flow VISualization)を開発した.TFVISは,プログラム実行時のデータ遷移と実行フローの可視化を行う.評価実験では,TFVISを活用することで欠陥特定に要する時間を約35%削減できることを確認した.このことから,TFVISによる可視化がデバッグ効率の向上に効果的であるといえる.
著者
高田 眞吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1119-1119, 2018-04-15
著者
掘 敦史 手塚 宏史 石川 裕
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.2072-2083, 1999-05-15
参考文献数
36
被引用文献数
2

本稿の貢献は2つある. 1つはギャングスケジューリングの高速化技法の提案である. もう1つはギャングスケジューリングの実践的なアプリケーションによる評価である. 提案された高速化技法により クラスタ並列計算機上でギャングスケジューリングによる時分割スケジューリングが実用になりうることを示すことが本稿の目的である. ネットワークプリエンプションによるギャングスケジューリングの実現は ユーザレベル通信による高性能な通信と 時分割スケジューリングによるマルチプログラミング環境を同時に実現する. 本稿では ネットワークプリエンプション方式におけるスケジューリングオーバヘッドの大半が ネットワークコンテキストのメモリへの退避およびメモリからの復帰にあることを示すと同時に 複数のネットワークコンテキストを単に切り替えることでネットワークコンテキストの切替え時間を短縮する方式を提案する. この高速化技法の効果は NAS並列ベンチマークプログラムを用いて評価され その結果 高速化技法によりスケジューリングオーバヘッドが半減され 同時に2次キャッシュのヒット率も向上することが確認された. 評価の結果では 64ノード 100 msecの時分割間隔において スケジューリングオーバヘッドは4%以下であった.There are two contributions in this paper. One is to propose an efficient gang scheduling implementation technique, and the other is to evaluate gang scheduling overhead using some practical application programs. The purpose of this paper is to demonstrate that the overhead of gang scheduling on a cluster using commodity computers can be low enough for its practical use. Network preemption technique for implementing gang scheduling realizes high-performance communication and multi-programming environment with time-sharing scheduling. In this paper, it is shown that the most of the scheduling overhead comes from saving and restoring network contexts when preempting network. And then, it is proposed to switch network contexts to avoid high-cost saving and restoring network contexts. This proposed technique is evaluated using NAS parallel benchmarks. The results show that the scheduling overhead is almost halved and secondary cache miss ratios are decreased. The evaluated gang scheduling overhead is less than 4% on 64 nodes with a 100 msec time slice.
著者
堀 敦史 手塚 宏史 石川 裕
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.9, pp.2705-2717, 1998-09-15
参考文献数
25

我々はシステムコールのオーバヘッドを削除したユーザレベル通信と,並列処理に有効とされるギャングスケジューリングに着目し,時分割多重並列プログラミング環境を構築した.本稿では,そのような並列プログラミング環境を構築する際の問題点を明らかにし,ユーザレベル通信とギャングスケジューリングという両者の利点を最大限に活かす手法として,「ネットワークプリエンプション」を提案する.ネットワークプリエンプションとは,並列プロセス切替え時に,プロセスのコンテキストのみならずネットワークのコンテキストをも退避/復帰しようとするものである.PCクラスタ上の評価結果では,500msecの時分割間隔において約2%のスケジューリングオーバヘッドであることが判明した.本稿で提案されたネットワークプリエンプションは,ギャングスケジューリングだけでなく,分散プロセスの大域状態検出などへの応用が考えられる.The goal of this research is the implementation of high-performance and easy-to-use parallel programming environment. We focus on the user-level communication technique and gang scheduling.In this paper,first we clarify some problems when implementing the user-level communication and gang scheduling,and then we propose network preemption that can extract the both benefits of the user-level communication and gang-scheduling.The network preemption is to save and restore network context when switching parallel processes.The proposed scheme is implemented on our PC cluster.On our evaluation on the PC cluster,gang-scheduling overhead is about 2% when the time slice interval is 500 msec.The proposed network preemption can be applied for not only gang scheduling,but also global state detection.
著者
寺島 芳樹 安本 慶一 東野 輝夫 安倍 広多 松浦 敏雄 谷口 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.116-125, 2001-02-15
参考文献数
13

本論文では,種々の機能拡張に柔軟に対応できるQoS制御機構の実装法を提案し,SMILへの適用例を示す.提案手法では,仕様記述言語E-LOTOSのサブクラス(時間拡張LOTOSと呼ぶ)を中間言語として用いる.QoS制御機能は,システムを動画,音声の再生動作などを記述した主プロセスと,メディアスケーリング,メディア同期など追加したい機能のみを記述した制約プロセスとで構成し,それらを並列に同期実行させるという,制約指向スタイルを利用して実現する.またSMILに動的メディアスケーリング,メディア同期の精度指定の機構を追加したQOS-SMILを定義し,実装方法の適用例として示す.QOS-SMIL記述は対応する時間拡張LOTOS仕様に変換され,我々が開発している時間拡張LOTOSコンパイラを用いて実行される.いくつかの実験結果から,提案手法はQoS制御機能の開発コストに優れ,実行効率の点でも十分な性能を持っていることを確かめた.In this paper, we propose a flexible implementation technique forQoS control mechanisms and apply it to SMIL language.In the proposed technique, we use a subclass of E-LOTOS (calledreal-time LOTOS).We implement QoS control mechanisms using the constraint orientedstyle where a system is composed of a main process(e.g., video/audio playback) and several constraint processes (e.g.,media scaling, inter-media synchronization and so on). Usingthe multi-way synchronization mechanism of real-timeLOTOS, those processes run in parallel satisfying the specifiedconstraints.We define QOS-SMIL as an example extension of SMILwhere it has dynamic media scalingand explicit inter-media synchronization amongobjects, and show the applicability of our implementation technique.QOS-SMIL documents are converted to executable programs with ourreal-time LOTOS compiler. Through some experiments, we have confirmedthat the proposed technique has some advantages w.r.t. developmentcost for QoS control mechanisms and the derived programs haverelatively good performance for practical use.
著者
尺長健
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.2308-2319, 1994-11-15
参考文献数
15
被引用文献数
8

3次元物体の幾何モデルが与えられたときに、単眼視画像から物体の姿勢を推定する間題について、位相幾何レベルでの解析結果を述べる。一般に姿勢推定問題は回転推定と並進権定に分離できるが、本稿では、より本質的である回転推定に議諭を限定する。取り扱う物体は、剛体を抽象化した概念であるベクトル剛体と、回転自由度1の関節を抽象化した概念である関節ベクトルから構成される任意の物体とする。ベクトル剛体は1組のベクトル集合で定義され、また、関節ベクトルは回転軸に対応するベクトルで定義される。各ベクトル剛体内では接続する関節ベクトルを含めて、角度関係がすべて既知であるものとする。このモデル記述により、物体はベクトル剛体と関節ベクトルで構成されるベクトル拘束グラフと呼ぷグラフで表現でき、従って、1枚の画像から各ベクトル剛体の姿勢を推定する問題も同様の記法で表現できることを述べる。次に、ベクトル拘束グラフで表された姿勢推定問題が可解であるか否かの判定法と、極小かつ可解な問題(基本問題と呼ぷ)を同定する方法を示す。さらに、具体的な基本問題を幾つかの例について示すとともに、基本問題相互の関係を一般的に論じる。特に、実用面から重要なサブクラスである(既知ベクトルを含まない)木構造問題について、すべての墓本問題が1つの置換定理によって関連付けられることを示す。また、既知ベクトルを含む基本問題、木構造以外の基本問題についても同様の議論を行う。
著者
石先広海 舟澤慎太郎 帆足啓一郎 小野 智弘 甲藤二郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1263-1274, 2013-04-15

本研究ではユーザが入力した楽曲に対して,楽曲の歌詞に基づいて検索したWeb画像と楽曲を同期させて再生するスライドショー生成システムについて提案する.楽曲歌詞の内容に適した画像を楽曲と同期させて再生することで,楽曲の情景表現を向上させ,より印象深い音楽体験の実現を目指す.具体的には,歌詞中の単語と,歌詞から推定した全体印象語から最適な画像検索クエリを抽出し,表示候補となる画像をWeb上から取得する.取得した画像に付与されているソーシャルタグと全体印象語の適合度を用いることで,歌詞の各行と連動して表示させる画像を選定する.さらに,歌詞の各行を表示する時間の最頻値を利用してスライドショー再生時の画像切替えを自動化する.最終的に,被験者評価実験により本システムの有効性を示す.
著者
石先広海 舟澤慎太郎 帆足啓一郎 小野 智弘 甲藤二郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1263-1274, 2013-04-15

本研究ではユーザが入力した楽曲に対して,楽曲の歌詞に基づいて検索したWeb画像と楽曲を同期させて再生するスライドショー生成システムについて提案する.楽曲歌詞の内容に適した画像を楽曲と同期させて再生することで,楽曲の情景表現を向上させ,より印象深い音楽体験の実現を目指す.具体的には,歌詞中の単語と,歌詞から推定した全体印象語から最適な画像検索クエリを抽出し,表示候補となる画像をWeb上から取得する.取得した画像に付与されているソーシャルタグと全体印象語の適合度を用いることで,歌詞の各行と連動して表示させる画像を選定する.さらに,歌詞の各行を表示する時間の最頻値を利用してスライドショー再生時の画像切替えを自動化する.最終的に,被験者評価実験により本システムの有効性を示す.In this paper, we propose a system to generate slide shows for music which users selected, by utilizing Web images retrieved by queries constructed from song lyrics. The proposed system aims to provide new and impressive user experiences by using synchronized Web images with lyrics line. First, we propose a method to select images to compose the slideshow from the result of Web image retrieval based on queries extracted from lyrics. The system selects matched images with the whole impression of lyrics and removes images which have many social tags not related to the image content. Furthermore, we propose a method to adjust presentation periods of the images in the slides. Finally, subjective experiments are conducted to evaluate effectiveness of our system.
著者
義久 智樹 金澤 正憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3296-3307, 2006-12-15
参考文献数
13
被引用文献数
8

近年のデジタル放送の普及にともない,音声や映像といった連続メディアデータの放送型配信において,ユーザがコンテンツを選択して視聴する選択型コンテンツに対する注目が高まっている.たとえば,2 択クイズ番組で,ユーザが回答を選択し,その回答に対する映像を視聴するといったことが考えられる.サーバは,ユーザの嗜好に応じた番組を提供できるが,選択肢となるいくつかのコンテンツを同時に放送するため,途切れのない再生に必要な帯域幅が大きくなる.しかし,コンテンツの視聴順序を考慮して効率的にスケジューリングして放送することで,必要な帯域幅を削減できる.本稿では,選択型コンテンツの放送配信において,帯域幅削減のためのスケジューリング手法を提案する.提案手法では,選択型コンテンツの状態遷移グラフから放送スケジュールを作成することで,途切れのない再生に必要な帯域幅を削減する.Due to the recent popularization of digital broadcasting systems, selective contents, i.e., users watch their selected contents, have attracted great attention. For example, in a quiz program, a user selects his answer and watch the video content againt the answer. Although the server can deliver programs according to users' preference, the necessary bandwidth to play contents without any interruption gets larger because the server has to broadcast several selective contents concurrently. However, by scheduling them effectively considering the order of contents and broadcasting them, the necessary bandwidth can be reduced. In this paper, we propose a scheduling method for broadcasting selective contents. In our proposed method, by producing a broadcast schedule from a state transition graph, the necessary bandwidth is reduced.
著者
横谷 晟人 吉廣 卓哉
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.473-485, 2018-02-15

バッテリ駆動の小型センサ端末を設置し,無線マルチホップ通信により測定データを集める無線センサネットワークにおいて,従来手法と比較して大幅にネットワーク寿命を延ばすMACおよび経路制御プロトコルを提案する.受信ノード主導型MACプロトコルは,消費電力を抑えセンサノードの寿命を延ばすMACプロトコルとして知られている.本論文では,これを拡張し,データ配送木における葉ノードでビーコン送信を省き,経路制御プロトコルと連携させることにより,さらに消費電力を削減する.葉ノードでビーコン送信を省くことで,トポロジ変化時に葉ノードへ制御メッセージが送信できず,配送木の修復効率が悪化するという問題が起こる.これに対しては,葉ノードとの連絡経路を維持する仕組みを導入し,トポロジ変化時にも効率的に配送木を修復する.また,電力残量が低下したノードを避けるように定期的に配送木を再構築する仕組みにより,ネットワークが機能する時間を延ばす.最新のセンサ端末の性能を考慮したシミュレーション評価により,センサネットワークの寿命が大幅に増大できることを示す.
著者
田丸 恵理子 竹内 孝行 中村 新一 廣瀬 吉嗣
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.409-420, 2009-01-15

人間の知的活動を支援するためには,思考の邪魔をしないインタフェースが必要である.これに対して,紙のように自然な「読み書き」を支援する新しいメディアの研究を,電子ペーパからのアプローチで進めている.ここで最大の技術的課題は,電子ペーパの技術的な特質からくる「表示の遅延時間」をどのように扱うかである.そこで,遅延時間がユーザに与える影響を理解するための評価実験を行った.その結果,対象に対して下線を引いたり円で囲んだりするマーキング行為と手書きで文字を書く行為とでは,それぞれ遅延時間に対する感度が異なり,受容性の度合いに差異が見られた.また,対象への注意の向け方,視線や身体の動きなどに関して,各々に特徴的な行動特性が抽出された.この差異を効果的に利用して遅延時間をマネジメントすることで,技術的制約を乗り越え,紙の良さを保持した新しいメディア・インタラクションを提供することが可能であることが示唆された.
著者
瀧 和男 金田 悠紀夫 前川 禎男
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.481-486, 1979-11-15

本論文は試作したLISPマシンについてアーキテクチャに重点を置いて論じている.システムはミニコンピュータを入出力処理とバックアップに用いた計算機複合体であり LISPプログラムの高速処理を行うLISPプロセッサモジュール 主記憶装置であるメモリモジュールがミニコンピュータのパスラインを介して接続されている.ミニコンピュータはシステム初期化 入出力処理の一部 システムのモニタリングを担当している.LISPプログラムの実行はミニコンピュータが行う入出力処理の部分を除きすべてLISPプロセッサモジュールにより行われる.LISPプロセッサモジュールは4個のビットスライス形マイクロプロセッサを結合した演算部と マイクロプログラム制御を行うシーヶンサおよびマイクロプログラムメモリから構成されるCCUを中核としており 外付けの高速ハードウェアスタック マッピングメモリ フィールド/ピット処理回路が付加されている.インタプリータはミニコンピュータ側の処理プログラムを除きすべてマイクロコード化されており 約1 400ステップとなっている.性能測定のため 当学会記号処理研究会が行った第2回LISPコンテストの課題プログラムを実行し測定を行った結果 インタプリータによる実行時間ではコンテストに参加したいずれのLISP処理系よりも高速であるという結果が得られた.
著者
大出訓史 今井 篤 安藤 彰男 谷口 高士
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1111-1121, 2009-03-15

音楽や音響システムの評価に人の嗜好や感性を加えることを目的として,心に何らかの良さを強く感じたときに用いられる"感動"という観点から音を評価することを検討している.著者らは,これまでに心理実験によって感動を表現する言葉(以下,感動語)を分類し,"感動"に含まれる心理状態が一意ではないことを示した.本稿では,分類した感動語を感動評価尺度として,音楽聴取における"感動"を評価させた.その結果,楽曲によって感動評価尺度の評価の傾向は異なり,音楽によって喚起される感動にも種類があることが分かった.また,同じ楽曲を評価した場合に,「感動」を高く評価した実験参加者と低く評価した実験参加者では,音楽の持つ感情価測定尺度の評価値よりも感動評価尺度の評価値にグループ間で大きな差異がみられた.「感動」の評価値は,感動評価尺度の評価値の重み付き線形和で近似できた.
著者
澤田 隼 竹川 佳成 平田 圭二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.941-950, 2018-03-15

本稿では,Generative Theory of Tonal Music(GTTM)を音楽のスペクトログラムに直接適用して階層的クラスタリングによってタイムスパン・セグメンテーションを生成する新しい方法を提案する.まず初めに,スペクトログラムを時間軸方向に分割し,周波数方向に縦長の矩形(bin)をピッチイベントとして,スペクトログラムを一連のbinの集合として考える.binのテクスチャの特徴は,グレーレベル同時生起行列(Gray level co-occurrence matrix: GLCM)を使用して抽出され,テクスチャ特徴量の時系列データを生成する.テクスチャ特徴量による隣接bin間の類似度によってフレーズの近接度および変化量が計算される.並列性および反復性などの大域的な構造は,一連のbinの自己相似性行列(Self-similarity matrix: SSM)によって検出される.隣接するbin間の境界の強さを表す時系列データが与えられ,隣接するbinをボトムアップに反復的に併合していくことで,最終的にタイムスパン・セグメンテーションに対応する系統樹を生成するアルゴリズムを開発する.MozartのK.331とK.550を入力して実験を行った結果,音高や調和などの音楽知識をほとんど考慮していないにもかかわらず,有望な結果が得られた.
著者
田中 勝 村川 猛彦 宇都宮 啓吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.288-298, 2018-02-15

現在,古写経を中心とした文書の電子化が進められている.しかしながら漢文に送り仮名やヲコト点が付与された,訓点資料においては,文書の翻刻(テキスト化)やそれを管理するシステムの提供が十分ではなかった.本研究では,訓点資料における解読支援環境の確立を目指し,訓点資料を対象とした翻刻支援システムの構築を行ってきた.システム構築にあたり,訓点資料が手書き文書であることや,訓点資料に含まれる多様な記述情報に対応することを考慮して,訓点資料の記述情報を文字領域や点座標としてデータベースに格納し,情報間の関連付けを行うことで解決を図った.また,HTML5 Canvasを用いた画像ベースのインタフェースにより,直感的な操作で資料画像上に入力する仕組みを実現し,行・列番号や読みの自動推定機能をサーバ側で実装することで,ユーザによる入力の手間を省く試みを行った.評価実験により,システムの操作性に問題がないこと,1件ごとの平均入力時間は約3秒で十分に実用的であること,および自動取得したデータの誤り数は少なく手動修正が可能な範囲であることを確認した.Recently ancient sutras have been computerized. However the support for written materials with reading marks such as "okototen" is not sufficient with regard to the transcription of documents and the system for dealing with the contents. This paper aims to establish a transcription support environment for written materials with reading marks. Taking into consideration the fact that the target documents were handwritten and hold a variety of descriptive information, we developed the system so that the descriptive information of reading marks can be stored as coordinates of a rectangular area or a point in the database and the data can be mutually related. Furthermore we attempt to ease the burden of input, by developing an image-based interface using HTML5 Canvas for specifing Chinese characters and reading marks on the document image intuitively, and by implementing automatic acquisition features for character position and reading of marks. Evaluation experiments made sure that there was no problem found in the operation of the system, the average input time was around three seconds, which means the practicability of this system, and the mistakes made in the automatic acquisition were so few that we could correct them manually.
著者
石井 亮登 森田 ひろみ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1784-1793, 2013-06-15

スクロール表示は,狭い領域に多量の情報を提示するために用いられる.本論文では,横書きの文章が下から上へと流れる縦スクロール表示について,その基本的な読み特性を調べることにより,携帯端末などのデザインに資することを目的とする.実験1ではスクロール表示の読みの基本的評価指標の1つとされる快適速度(読み手が快適に読めると感じる速度)と,移動単位(スクロールする際に1度に移動する距離,ここでは1ピクセルまたは1行)や表示枠サイズ(表示行数および1行内の表示文字数)の関係を調べた.その結果,移動単位が1ピクセルの条件の方が快適速度が速いこと,また表示行数および表示文字数の増加にともない快適速度が速くなること,表示枠内の広さが同じであれば,行数を犠牲にして行内の文字数を多くとる方が快適速度が速くなることが示された.実験2では,読み最中の眼球運動を測定した結果,移動単位により読み方が異なることが分かった.ピクセル単位のスクロール表示を読む場合は,1行を読み終えたら速やかに次の行の行頭に視線移動するのに対し,行単位のスクロール表示を読む場合,1行を読み終えてもそのまま行末で行送りを待つ読み方をする.また,移動単位によらず読み手は表示枠内の最下行に視線を向けて読むことが多いことが分かった.結果から,移動単位により異なる縦スクロール表示の読みモデルを提案する.Scrolling text is a useful way for presenting a large volume of materials within a limited display area. To investigate the basic characteristics of vertical text scrolling in terms of readability, we measured the rate of scrolling when one reads comfortably (Experiment 1), and eye movements during reading (Experiment 2). The comfortable reading rate was higher when text was scrolled by pixel (per-pixel scrolling) rather than by line (per-line scrolling), and increased as more lines or more characters per line were presented in the window. It was also found that if the display area is limited, increasing the number of characters per line rather and decreasing the number of lines is effective for improving comfortable scrolling rate. Eye movement data indicated that the lower comfortable scrolling rate for per-line scrolling was mainly due to longer fixation duration at the end of the bottom line. This is probably because readers tend to waits for the next line to appear from the bottom of the window, whereas in the per-pixel scrolling case, they immediately move their eyes to the beginning of a new line.
著者
来間啓伸 本位田真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.1593-1602, 2004-06-15
参考文献数
10

Webサービスを仲介するシステムをクローズドな仲介システムの緩やかな連合によって実装する際には,次の3点が課題となる.(1)連合によって個々の要素が受ける影響の局所化,(2)連合関係の変化への柔軟な適応,(3)連合によって不具合が起こらないことの検証.本稿では仲介システムを介して結ばれる要素の集まりをコミュニティと考え,要素間の静的なアクセス関係をポリシとして,コミュニティの連合を規定するためのポリシの枠組みを導入した.この枠組みに基づいて,連合によって組み合わされたポリシを実現するためのコミュニティ・モデルを示した.コミュニティ・モデル上では,コミュニティ間の協調のためのインタラクションとコミュニティ内のインタラクションを階層的に表現することで(1)と(2)が,ポリシとインタラクションが形式的に対応することで(3)が解決される.一方,コミュニティ・モデル記述にメタ階層に基づく言語を用いているため,実装との対応は明確ではない.ポリシとして表現する対象の拡大と,コミュニティ・モデルから実装への過程の明確化が,今後の課題である.The service mediation system on the Web could be constructed as a federation of service communities, in which each community provides and mediates limited number of services. In implementing the federation, (1) scalability of each community, (2) flexibility to the change of federation relation, and (3) verifiability of policy compliance should be considered. In this paper, we introduce a notion of policy of community based on access control among players and show a community model that is aimed at representing communications between players compliant with policy. The community model represents communications for the cooperation of communities separately from the communications for service request, mediation, and provision. As the result, it (1) represents communications between players in a modular way, (2) encapsulates the dependencies on partner communities, and (3) provides a basis for verification of policy compliance. The future work is to extend our notion of policy and to establish the implementation method based on the community model.
著者
山下 倫央 副田 俊介 大西 正輝 依田 育士 野田 五十樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1732-1744, 2012-07-15

近年,オフィスビルや商業施設の大型化,高層化が進んでいるが,このような施設で大規模な避難を行う際には,避難対象者は数千人となることもあり,的確な避難誘導が必要とされる.しかし,大規模な避難行動は多くの要素が複雑に関連し,容易に扱うことができないため,避難誘導計画の立案・検証には高速計算が可能な避難シミュレータによる支援が必要とされている.本論文では,歩行者同士の干渉や障害物回避の計算を簡約化し,移動状況の再現精度を落とすことなく,避難過程を高速に計算するために一次元歩行者モデルを提案する.さらに,一次元歩行者モデルを用いた高速避難シミュレータNetMASの開発を行い,実際の避難訓練を実測した結果と比較することで一次元歩行者モデルの有効性を検証する.NetMASの応用として,大規模な複合商業施設における避難を扱い,避難効率に影響を与える要因を検証する.多数の避難条件を想定したシミュレーションを行い,その結果に統計的手法を適用することでNetMASの有効性を確認する.