著者
高原 智夫 柳澤 俊行 渡辺 俊典
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.2090-2103, 1994-10-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

情報通信ネットワークは巨大かつ複雑であり、状態や構造の変動にさらされる、このため、系の特性の精密なモデル化は困難であり、対象のモデルを用いる適応制御には限界があり人知に頼らざるを得ない。また、制御の評価法も確立されているとは言えない。これらの問題を解決すべく知的通信網制御が模索されてきたが、制御規則の人手による記述が必要であるなどの問題を残している。そこで、呼の受け付け規則およびルーティング制御問題に関して、管理者が評価関数という形でネットワーク・オペレーシヨン方針を与えるのみで、これを反映した制御を自律的に実現することを意図して、事例学習機械TAMPOPOを応用した自律化ネットワーク・オペレータANATAの構想を別の諭文で報告中である。本論文ではこのANATAのシミュレーショでモデルを計築機上に実現し、様々な条件のもとで挙動を調べた緒果を報告する。ANATAは、評価関数を与えるのみで、呼を受理し課金収入を増す、長距離呼を迂回路にまわして全体の課金収入を増加させる、短距離呼を規制して長距離呼を受理して全体の利益を上げる、呼の接続率の下限を保証しつつ課金収入を最大化させる、などの能力を自律的こ獲得した。これは従来、望妻れながら実現できなかった機能であり、ANATAが大規模通信ネットワーク制御に薪たな可能性を与え得ることを示している。
著者
長谷川 聡 山住 富也 小池 慎一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.1180-1183, 1998-04-15

初心者に対してプログラミング教育を行う際に,制御構造の理解が十分でないためにプログラミング全体の理解が困難な学習者の存在に気付く場合がある.そこで,我々は,プログラミングの実行時の動作を正しくイメージできるかどうかが,制御構造の理解度に関係していると考え,プログラミングの学習者を対象に,制御構造のイメージと理解度について調査を行った.その結果,制御構造のイメージと理解度の間に回帰関係が認められた.また,調査に用いたイメージテストはプログラミングの潜在的能力の指標になるものであるとの結論を得た.
著者
松原 正樹 狩野 直哉 寺澤 洋子 平賀 瑠美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1331-1340, 2016-05-15

日常生活のなかで,音楽を長時間積極的に楽しむ聴覚障害者は多い.彼らの音楽スキルが向上することで,より自信を持って音楽を深く楽しめるようになり,ひいては社会生活の改善につながる.また,音楽を通じて,複雑に重畳された音の選択的な聴取のスキルが向上し,環境音や日常生活の混合音の選択的な音聴取能力が向上することも期待される.本研究では,聴覚障害者の音聴取能力向上トレーニングを目的としたタッピングゲームの開発を行い,音楽聴取時に視覚手がかりの有無によってリズム認知能力の短期的学習効果があることを検証した.実験では,聴力レベル76dB以上の聴覚障害者6名を対象に視覚手がかりの有無やボーカルの有無,難易度を条件としたタッピング課題を行い,タッピング課題の成績をもとにリズム認知能力の短期的学習効果を確かめた.その結果,視覚手がかりがある条件のみ短期的学習効果が統計的に有意に現われた.また,実験参加者へのアンケートやインタビューでは視覚手がかりのあるトレーニングが有益であるという評価を得た.客観的評価および主観的評価の両方で,このシステムが音楽聴取能力の向上に寄与することが示唆された.
著者
八木 勲 水田 孝信 和泉 潔
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2388-2398, 2012-11-15
被引用文献数
1

企業不祥事や自然災害の影響でファンダメンタルズが急激に悪化し,その企業の株価が暴落することがある.その直後,株価が反発することも経験的に知られている(リバーサル現象).これまでの実証研究では,リバーサル現象の発生要因はオーバリアクション仮説が有力視されているものの,定量的な評価は行われておらず,はっきりとした結論は出ていない.本研究では,価格決定方式の1つである板寄せ方式を採用した人工市場を用いて,理論株価急落を原因とする株式市場の暴落に対して,オーバリアクション仮説を考慮せずにリバーサル現象が発生することを確認した.そして,リバーサル現象発生時の取引価格決定メカニズムを分析し,エージェントの予想株価のばらつきと注文の需給関係の偏りによってリバーサル現象が引き起こされることを突きとめた.一方,ザラ場方式を採用した人工市場を用いると,リバーサル現象が必ずしも起こるとは限らないことが判明した.その結果,板寄せ方式を採用した市場の方が,ザラ場方式を採用した市場よりもリバーサル現象が発生する可能性が高いと考えられる.Fundamentals deterioration of firms due to their scandals or disasters causes the decline in their stock prices. We know empirically that stock prices rebound after they fall largely. In this paper, this trend is called the reversal phenomenon. There are some preceding researches on the issue, however, little has been explained about the market mechanism such as a market pricing mechanism in the reversal of large stock price declines. We reproduced the reversal phenomenon in the artificial market with the degree of variation of expected prices and Itayose system which is one of the stock pricing mechanisms and a kind of double auction, not with the overreaction hypothesis. On the other hand, the reversal phenomenon does not always occur in the artificial market with Zaraba system which is a kind of continuous double auction.
著者
笠間 貴弘 織井達憲 吉岡 克成 松本 勉
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.2761-2774, 2011-09-15

近年,任意のユーザから実行ファイルなどの検体の提出を受け付け,解析環境(サンドボックス)内で実行し,その挙動を解析して結果をユーザに提供する「公開型マルウェア動的解析システム」が人気を集めている.我々はこれまで,特別に設計された検体(デコイ)をシステムに提出することで,サンドボックスの情報を暴露させ,その情報を基にサンドボックスの検知を行う攻撃手法として「デコイ挿入攻撃」を提案し,実証実験により,サンドボックスのIPアドレスを用いた検知が実運用中の15個のシステムに対して有効であることを示している.しかし,IPアドレス以外の情報を用いた検知については未検証だった.当該脆弱性を正確に把握し適切な対策を導出するため,本稿では,まず,IPアドレスを含む16種類のサンドボックス情報に着目し,これらの情報が,取得安定性や個別性といった,サンドボックス検知に有効な性質を有しているかを実証実験により評価する.実験の結果,Windowsプロダクトキー,MACアドレス,OSインストール日時といったサンドボックス情報は,検知対策を行っていると思われる特定の例外を除いて,検知に利用できることが分かった.さらに,ネットワークを介さずに解析レポート経由でサンドボックス情報を暴露する方法も有効であり,我々のこれまでの検討では攻撃対象となりえなかった,隔離型サンドボックスも攻撃対象となりうることが確認された.このことから,公開型マルウェア動的解析システムにおいては,IPアドレス以外のサンドボックス情報による検知への対策や,解析レポート経由による暴露への対策などを含めた,総合的なデコイ挿入攻撃への対策が必要であることが分かった.Recently, the use of public Malware Sandbox Analysis Systems (public MSASs) which receive online submissions of possibly malicious files or URLs from an arbitrary user, analyze their behavior by executing or visiting them by a testing environment (i.e., a sandbox), and send analysis reports back to the user, has increased in popularity. In previous study, we have pointed out a vulnerability of public MSASs against decoy injection attack, in which an attacker detects the sandbox based on its IP address which can be obtained by submitting a decoy sample designed for this purpose. However, we did not further investigate the possibility of detection using sandbox information other than its IP address. In this paper, in order to better understand the vulnerability and develop an effective countermeasure, we evaluate 16 different kinds of characteristics in the sandbox in terms of their accessibility and uniqueness for sandbox detection. As a result of experiments with real public MSASs in operation, we found that characteristic information such as Windows' product key, MAC address, and system install time can be utilized for sandbox detection, except for particular systems which appeared to have deployed a countermeasure. Moreover, besides network-based disclosure, we show that such characteristic information of the sandbox can be disclosed via an analysis report provided to the user, which means that the decoy injection attack can be performed against the sandbox isolated from the real Internet. Thus, our study confirmed the broad applicability of the decoy injection attack and also necessity of comprehensive countermeasures.
著者
池田 和史 柳原 正 服部 元 松本 一則 小野 智弘 滝嶋 康弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.2474-2483, 2011-08-15
被引用文献数
2

本稿では高速かつ高精度に有害サイトを検出するため, Webサイトの背景色やリンク先, ブラウザに特定の動作をさせるスクリプトなど, 有害サイトに特徴的に見られる傾向をHTML要素から検出する手法を提案する. 提案手法では有害サイトのHTMLに偏って出現するような文字列を自動的に抽出し, SVM(Support Vector Machine)を用いてこれらの特徴を組み合わせて有害サイトの検出を行う. 提案手法はWebサイトの本文の情報を利用しないため, 既存のキーワードベース方式によって検出が困難なサイトも検出が可能である. このため, 既存のキーワードベース方式と組み合わせて利用することで検出精度を向上させることも可能である. 大規模なWebサイトデータを用いた性能評価実験を行い, 既存のキーワードベース方式と比較して, 適合率を9.3ポイント向上するなどの性能向上を確認した.In this paper, we propose high-speed and accurate algorithms for detecting malicious Web pages. Our algorithms detect the features of malicious Web pages from their HTML elements such as the background colors of Web pages, the server names related to malicious Web pages, or the name of javascript functions that makes browsers perform unusual actions in response to malicious Web pages. Strings that appear especially in HTML elements of malicious Web pages are automatically chosen. SVMs (Support Vector Machines) combine these strings and detect malicious Web pages. Since our algorithms do not rely on the text parts of Web pages, they can detect Web pages that existing text-based algorithms have difficulty in detecting. By conducting a large-scale performance evaluation with real malicious Web pages, we showed that the hybrid algorithms of our algorithms and existing text-based algorithms increase the precision of existing text-based algorithms alone by 9.3 points.
著者
中嶋 誠 坂本 大介 五十嵐 健夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1317-1327, 2015-04-15

本論文では,アナログ画材によりオフライン彩色された画像素材を,デジタルなFlashスタイルアニメーション制作に取り入れる統合的なワークフローを提案する.デジタルなオーサリング手法には,下描き段階での編集のしやすさ等の利点があり,アナログ画材による彩色は,有機的な質感を演出するのに有効である.しかし両者の連携には手間がかかるため,効率的な連携ワークフローを提案する.まずユーザは,デジタルソフトウェアでキャラクタのスケッチと,動きの設計を行う.次にシステムが,ユーザの描いたレイヤ画像をまとめて紙に印刷し,ユーザは任意のアナログ画材を用いて彩色する.最後に,彩色済み用紙をスキャンし,システムが自動でアニメーションに再構成する.提案ワークフローの実装例を示し,ユーザの作例と得られたコメントを通して,提案システムの利点と将来課題について考察する.We present an animation creation workflow for integrating offline physical, painted media into the digital authoring of Flash-style animations. Digital authoring methods are full of useful nonlinear editing features. Physically painted media can provide organic atmosphere to animation. To incorporate both in a labor-saving manner, we present a workflow that integrates the offline painting and digital animation creation processes. First, a user makes a rough sketch of the visual elements and defines their movements using our digital authoring software with a sketch interface. Then these images are exported to printed pages, and users can paint using offline physical media. Finally, the work is scanned and imported back into the digital content, forming a composite animation that combines digital and physical media. We present an implementation of this system to demonstrate its workflow. We also discuss the advantages of using physical media in digital animations through design evaluations.
著者
南波 幸雄 飯島 淳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.662-670, 2005-03-15

ビジネス環境の拡大にともない,企業内ばかりでなく,企業間・地域間をまたいだ情報システムの連携が求められている.それに応じて企業情報システム(EIS)を支える情報インフラに対しても,統合・連携のためのフレームワークが求められている.本論文では,統合情報インフラを構成する,統合・連携のための機能連携要因について,EIS都市計画アプローチの視点から整理する.そして,それらの機能連携要因を形成する適用技術が,実際にどのように実装されているかを3つの事例に基づいて例示する.そのうえで,EISアーキテクチャの「ビューポイント」の概念を適用して,フレームワークの有用性について考察する.
著者
酒井 保良 吉田 正勝 難波 大二 佐藤雅明 森 隆彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.711-718, 1983-09-15

コンピュータハードウェアの信頼度の向上 障害診断時に必要となる保守知識の増大と多様化等に伴い 保守戦力の集中化と広域保守の必要性が高まってきている.本論文では 保守上の問題点を解決するためのハードウェア遠隔保守方式に関し 遠隔保守システム構成法 リモートアクセス機構 障害現象から過去の障害事例を検索する障害情報集中化機構について提案する.また 試作した遠隔保守システムを用いた実験結果から 障害の95%に対して不良個所を部品取替え単位のレベルで遠隔から指摘可能であることを示している.
著者
山本 雄平 田中 成典 姜 文渊 中村 健二 田中 ちひろ 清尾 直輝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.1334-1350, 2018-05-15

我が国では,2020年の東京オリンピックに向けて,スポーツに関わる政策が積極的に推し進められている.その施策の1つである「スポーツ × ICT」では,スポーツ分野における計測機器の開発やデータ計測と可視化手法の高度化,そして新サービスの提案など,最新ICTの効果的な利活用が進められている.しかし,スポーツ分野にICTを適用する試みは始まったばかりの黎明期であり,教育現場や地域クラブの指導者のみならず,高度な専門知識を保有したスタッフにおいても,自在に操ることは難しい.そこで,本研究では,「スポーツ × ICT」に関わる既存研究を調査し,現状把握と効果的な活用方法を模索するとともに,アメリカンフットボールのプレーデータの可視化システムを開発する.そして,選手にセンシング機器を適用し,統計的手法と組み合わせてプレー分析を行い,カレッジフットボールの監督・コーチなどの指導者に新たな気づきを提供できるかの観点に基づき,実用の可能性を検証する.In our country, policies regarding sports are actively advanced towards the Tokyo 2020 Olympic Games. One of those policies, "Sports × ICT" considers effective methods of utilizing ICT (Information and Communication Technology), such as development of measurement instruments, measurement and visualization of data, and proposals for new services in the field of sports. However, since attempts to apply ICT to sports have just started these days, it is difficult not only for the leaders in schools and local sports clubs but also for the staff who possess advanced expert knowledge about sports to make full use of ICT as desired. In this research, an investigation is made into the trend of studies related to "Sports × ICT" with a focus on field sports, and a visualization system for a positional play analysis is developed to grasp the present state of team and to grope the methods of practical use. Then, its practicality is verified through motion analysis of American football players using the measuring terminal device to be combined the statistical methods, based on whether it is capable allowing the college football leaders such as managers and coaches to perceive something new.
著者
渡辺 恭人 竹内 奏吾 寺岡 文男 植原 啓介 村井 純
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.234-242, 2001-02-15
被引用文献数
10

プライバシ保護を実現した地理位置情報システム(GLIシステム)を提案する.我々が提案しているGLIシステムは,インターネットに接続している移動体の地理位置情報を地球規模で管理するものである.位置登録者は自分の位置をサーバに登録し,検索者は移動体の識別子を鍵とした位置検索,および地理的領域を鍵とした移動体検索が可能である.GLIシステムは地球規模での動作を可能とするため,サーバの階層化による分散管理を導入している.本論文で扱うプライバシ保護とは,第三者による移動体の特定防止,位置特定防止,追跡防止,なりすまし防止およびインターネットにおける盗聴防止,データ改竄防止である.さらにサーバが管理するデータベースの盗難も考慮する.移動体の識別子としてHID(hashed ID)を導入することにより,信頼関係のある検索者のみに移動体の特定,位置特定,追跡を可能とし,信頼関係のない検索者には統計情報のみの利用を可能とする.なりすまし防止のため位置登録サーバを導入し,移動体の認証を行う.インターネットにおける盗聴防止および改竄防止にはIPsecを利用する.本論文では,プライバシ保護を実現したGLIシステムの性能も見積もる.We propose the Geographical Location Information (GLI)System with Privacy Proection.The GLI System we propose provides a way to manage geographicallocation information of mobile entities in the worldwide scale.Mobile entities regiter their location information withservers. Searching clients are able to look up location of mobileentities using specified identifier as a search key and look upidentifiers of mobile entities using speified geographical region as a search key. The GLI System has a distributed management method inorder to be scaled to the world.In this paper, we introduce HID (Hashed ID) to the GLI System forprivacy preservation. The privacy preservation means that a mobileentity must not be identified by unknown persons, the location ofa mobile entity must not be realized, and it is impossible to track amobile entity. We designed the new architecture of GLI System andestimate performance.
著者
辻野 雄大 山西 良典 西原 陽子 福本 淳一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1953-1964, 2018-11-15

ダンスゲームは,幅広いユーザから親しまれている代表的な音楽ゲームの1つである.幅広いユーザがダンスゲームを楽しめる環境を用意するためには,初級者でも容易に遊ぶことができる低難易度の譜面を充実させることが必要である.しかし,低難易度の譜面を作成するためには,楽曲の特徴をとらえつつ容易なリズムに調整するという,高難易度譜面の作成にはない課題が存在する.本稿では,ダンスゲームには同じ曲に対して難易度が異なる複数の譜面が存在することに着目し,難易度が高い譜面から得られる音楽的特徴を入力,難易度が低い譜面を出力とする時系列深層学習モデルを構築した.学習させた提案モデルに高難易度のダンス譜面を入力し,低難易度の譜面において指示符を配置すべき発音タイミングを推定させることで,難易度の自動調整を実現した.性能評価の結果,時刻決定タスクにおいて提案手法は0.693のF値が確認され,既存手法のF値をおおよそ1.8倍上回った.向き選択タスクについて指示符の2-gram出現頻度を集計したところ,提案手法の生成譜面とデータセット内の低難易度譜面との相関係数が0.972となり,人手で作成された低難易度のダンス譜面の特性をとらえた譜面を自動生成可能であることが確認された.
著者
小川 真彩高 本田 晋也 高田 広章
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.507-520, 2017-02-15

車載制御システムのソフトウェアにおいて,エンジン等のパワートレインを制御するパワトレアプリは高機能化が著しく,マルチコアの導入が必要とされている.すでにパワトレアプリ用に複数のマルチコアのマイコンが存在するが,それぞれコア数やメモリ構成が異なり,車種ごとに適したマイコンを使用する.一方,パワトレアプリは開発コストが高いため,単一のソフトウェアをベースに少ない変更でこれらのマイコンをサポートしたいという要望がある.そこで本研究では,パワトレアプリをモデル化し,そのモデルからランタイムを自動生成することにより,コア数や処理の配置の変更を可能とするフレームワークを開発した.実際のパワトレアプリの一部に本フレームワークを適用し,同一のソフトウェアモデルから,マッピング記述やハードウェアモデルの変更のみでコア数や処理の配置の変更が実現できることを確認した.Engineers have considered that it is necessary to use multi-core applications to apply high functionality in powertrains which control the likes of engines. However, as differing car models have different hardware architectures, it is expected to be difficult to apply this to all car models. In this study, we have developed a framework that enables changes in architectures by modeling powertrain applications and then automatically making runtimes from these models. We have confirmed that it is possible to create runtimes for the 2 processor architecture and 4 processor architecture by applying this framework to the same model that was made from a part of the actual powertrain application.
著者
渡邊 淳司 安藤英由樹 朝原 佳昭 杉本 麻樹 前田 太郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1354-1362, 2005-05-15

本論文では,歩行移動の快適性,利便性を向上させるための靴型歩行周期誘導インタフェースを提案し,歩行周期の誘導を効率的に実現するための刺激入力手法について論ずる.靴型インタフェースは,靴底にある圧力センサによって歩行状態を計測し,それに合わせて足の甲に振動刺激を行うことで,人間の感覚入力に対する運動の半無意識的な同期現象(引き込み)を利用して歩行周期の誘導を行うものである.本実験を通して,振動刺激は踵が接地するタイミングに行うと効果的に誘導が可能であり,歩行周期に対する刺激周期の変化が-100 msから+150 msの範囲ならば,装着者に心理的負荷をかけずに誘導可能であることが分かった.
著者
長 健太 大須賀 昭彦 本位田真一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3165-3178, 2006-12-15

多数の小型センサから構成されるワイヤレスセンサネットワーク(WSN)を用いたビルオートメーションシステム,環境モニタリングシステム,サプライチェーンモニタリングシステムなどが実現されつつある.WSN 内の大量のセンサ群は環境に広範に分散配置され,かつそれらに搭載されているバッテリはきわめて限られているため,WSN アプリケーションにおいては電力消費量を抑えることが重要になる.WSN アプリケーションを実現するためのフレームワークは,消費電力と応答性能の間で発生するトレードオフを正しく扱える必要がある.我々は,複数の知的移動エージェントを用いてマルチパーパスなWSN アプリケーションを構築するというアプローチをとった.我々のフレームワークはエージェント群の動作方式を変化させることで,アプリケーションごとに異なる応答性能の要求に適応することができる.また,ビルディングオートメーションにおける移動エージェント群の動作をシミュレートすることで,消費電力と応答性能に関する評価を行った.
著者
久保 勇貴 志築 文太郎 田中 二郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1061-1072, 2017-05-15

本論文において,我々は超小型端末向けの新しいタッチジェスチャとして,ベゼルからベゼルへのスワイプジェスチャBezel to Bezel-Swipe(以降,B2B-Swipe)を示す.ユーザは指の触覚から各ベゼルを見ることなく区別できるため,B2B-Swipeをアイズフリーで行える.また,矩形の超小型端末の場合,B2B-Swipeは16通り存在する.さらに,B2B-Swipeは1本指による1回のスワイプであるため,超小型端末が備えるタッチパネルのみを用いて実装可能である.これらにより,B2B-Swipeは端末にセンサを追加することなく,かつ既存のタッチジェスチャと共存しつつ超小型端末の入力語彙を増やすことができる.本論文では,B2B-SwipeがBezel Swipeおよびフリックと共存できること,およびアイズフリー入力可能であることを検証するために行った性能評価実験の結果も示す.B2B-Swipe is a single-finger swipe gesture for a rectangular smartwatch which starts at a bezel and ends at a bezel. B2B-Swipe enriches input vocabulary by utilizing a bezel. There are 16 possible B2B-Swipes because a rectangular smartwatch has four bezels. Moreover, B2B-Swipe can be implemented with a single-touch screen with no additional hardware because B2B-Swipe only uses one finger and one swipe. Our study shows that B2B-Swipe can co-exist with Bezel Swipe and Flick and can be performed in eyes-free.
著者
月本 洋
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.783-791, 1990-06-15

最近 非単調論理 様相論理 ファジー論理等の非古典論理が 人工知能その他の情報処理の分野で盛んに研究されている.本論文では それらの非古典命題論理を統一的に扱えるような幾何的なモデルを提案する.その幾何的なモデルは 自然言語が有する 命題間の距離や命題の情報量を自然な形で反映している.その構成方法は以下のとおりである.(1)実係数多項式関数のある種の計算が 古典命題論理のモデルになる.(2)巾等律を部分的に除くことによってこのモデルを拡張する.(3)この拡張モデルは関数空間であるが ある内積を導入することによりユークリッド空間になる.(4)命題に情報量を導入することによりこの空間の部分集合が 非古典命題論理の命題と対応している.以上の手法で構成されたモデルが 非古典命題論理に有効であることを ファジー論理 様相論理 非単調論理で確認する.
著者
赤木 康宏 佐波晶 北嶋 克寛
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.1797-1809, 2005-07-15
参考文献数
23
被引用文献数
3

本研究は,景観シミュレーションなどで用いられる樹木のCGモデルを用い,樹形や葉の大きさの違いによる気流の変化を考慮した風に揺れる樹木のアニメーションを生成するための手法を提案している.複雑な形状を持つ樹木周辺の風のシミュレーションを行うためには,枝や葉などの風を遮る物体が風に及ぼす影響を考慮する必要がある.風の物理シミュレーションモデルにおいて非圧縮性流体におけるNavier-Stokesの方程式を用いると,一般に次のような問題が生じる.樹木形状の詳細な形状までを考慮すると,計算量が増大しリアルタイムのアニメーション生成が困難になる,という問題である.そこで,本論文では,枝や葉のように類似した形状を持ちかつ樹木全体に数多く存在するパーツを風速を減少させる単純な抵抗体としてモデル化し,抵抗体の空間分布を表す境界条件マップを樹木モデルから自動生成することにより,計算量を減らしリアルタイム性のあるアニメーション生成を可能にする新たな手法を提案している.また,本手法は,空間全体の風の動きに階層的な計算手法を適用することにより,樹木周囲の自然な風の流れや樹木どうしの影響などについても高速に計算することができるという特長を持つ.これらの特長に関する各種実験結果を示し,複雑なパーツ形状からなる樹木が風に揺れる様子のアニメーションを力学的な根拠に基づきかつ高速に自動生成できことを実証した.This paper presents a series of techniques for generating animations of trees swaying in the wind, in consideration of the influences that the tree shapes and leaf sizes give to the air current. To do the simulation of the wind around a tree having a complicated shape, it is necessary to consider the influence that some objects obstructing the wind such as leaves or branches give. Generally, the following problem occurs when we use the incompressible Navier-Stokes equations in a physical simulation model of the wind. Computational complexity increases because of considering the details of tree shapes, so it is difficult to generate the animations in real-time. Therefore, this paper proposes a novel method that reduces the computational complexity and realizes an animation in real-time, by means of a boundary condition map expressing space distribution of resistances from tree models automatically. In this case, we make a model as simple resistances decreasing the wind velocity from the parts that have similar shapes like leaves and branches. And also, it has another advantage that the influences between a tree and others can be rapidly calculated by using a hierarchical calculation method. Finally, through many experiments using these methods, it is shown that real-time animations of swaying trees in the wind can be realized.
著者
井垣 宏 齊藤 俊 井上 亮文 中村 亮太 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.330-339, 2013-01-15

我々は受講生のプログラミング演習時におけるコーディング過程を記録し,可視化して講師に提示するシステムC3PVを提案する.本システムは,ウェブ上で動作するオンラインエディタとコーディング過程ビューから構成されている.オンラインエディタは受講生のコーディングプロセスにおける,文字入力,コンパイル,実行,提出といったすべての行動を記録する.コーディング過程ビューは課題の進み具合いや受講者の相対的な進捗遅れを可視化して講師に提示する.講師はあるエラーに関して長時間悩んでいる受講生や全体の進捗と比較して遅れている受講生をC3PVによって確認し,個別指導といった支援につなげることができる.本研究では実際にC3PVを学部1年生が受講するJavaプログラミング演習に適用し,C3PVによって可視化されたコーディング過程を利用した受講生対応を行った.その結果,コーディング過程ビューに基づいて対応した45件中38件(約84%)において,実際に受講生がサポートを必要としていたことが確認できた.
著者
吉田 和幸 牛島 和夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.789-795, 1983-11-15
被引用文献数
1

ソフトウェア開発の初期の段階においてプロトタイプを組み立てて実際に動かしてみて問題点を認識する作業は有用である.開発中のソフトウェアが文字列データの処理を中心とする場合などにはSNOBOL4を使うと容易にそのプロトタイプの構築ができる.一方 プログラム中の各文の実行回数を知ることはプログラムの開発や改善に役立つ.SNOBOL4によるプロトタイプ作成を助けるために 既存のSNOBOL4処理系に実行回数計数機能を追加した.原著者の許可を得て入手したこの処理系は SIL(SNOBOL4 Implementation Language)という抽象言語で書かれたもの(OS 360 用)である.これをFACOM OS IV/F4のもとに移し換える際に各文の実行回数を計数してソーステキストと並ぺて表示する機能を追加した.さらにこの処理系をIBM VM/370 CMS とHITAC VOS 3のもとに移し縦えた.本論文では 簡単なプロトタイプ作成の実例をとおして実行回数計数機能の評価を行う.さらに実行回数計数機能の実現の概要について述べ 機能追加作業が比較的容易に行えた理由をSIL設計の観点から考察する.最後に実行回数計数機能追加版SNOBOL4の移し換えについて述べる.