著者
森 岳志 中川 正樹 高橋 延匡 中森 眞理雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.8, pp.807-814, 1988-08-15
被引用文献数
1

本論文は 新しい浮動小数点表現法の比較・評価を行う環境を提供することを目的とし OS用言語CコンパイラCATに複数通りの浮動小数点表現法を実現したことについての報告である.本研究では (1)URR (2)IEEE表現法(3)MIL-STD-1750A表現法の3種類の表現法をサポートしている.さらに 表現法の選択を (ア)コンパイル時に行う方法 (イ)実行時に行う方法の両者を用いて実現した.後者の方法は 効率の良い評価環境を与えることを目的として考案された方式で 評価の際のコンパイルとリンクの手間を軽減し 新たに表現法を追加したとしても浮動小数点演算ライブラリの再編成だけを行えばよく プログラムの再コンパイルを必要としないことなどの特徴を有している.定数の扱いに問題が生じたが 現時点では実行時に内部表現に変換することによって解決している.
著者
富松 剛 金田 康正
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.511-518, 1998-03-15

浜田の提案したURR (Universal Representation of Real numbers)表現は絶対値が1から離れるに従って,急速に精度が悪化するという欠点がある.この欠点を改善するために一般化した二重指数分割に基づく数値表現法を提案する.URR表現は二重指数±2±2mで実数を大まかに近似するが,本論文ではこれを±p±qmと一般化した.この一般化した表現ではpとqを大きくすることで,大きな実数に対してURR表現よりも少ないビット数で近似できるようになる.特にp=4,q=16と選ぶことによって,URR表現に比べ広範囲で精度の良い二重指数分割に基づく数値表現法となる.この一般化した数値表現は数々のURR表現の長所を有し,急速な精度の悪化も抑えている.この数値表現で実際に簡単な数値計算を行い,URR表現に比べ精度が良い本数値表現の有効性を検証した.
著者
春日 遥 坂本 大介 棟方 渚 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.1520-1531, 2018-08-15

ペット動物は人類の最も古い友人である.人々は彼らと生活を営み,今日では家庭において家族としてのペットと人の関係が研究されてきた.近年になってコミュニケーション・ロボットの登場により,家庭における人とペット動物に加え社会的ロボットを考慮した3者関係に注目した研究分野が生まれつつある.本研究では,社会的ロボットが家庭における人とペット動物の関係に対してどのような影響を与えるのかを調査するために実験的なフィールド調査を行った.調査には10家庭22人と12頭のペット動物(犬が4頭,猫が8頭)が参加した.調査においては社会的ロボットとして小型人型ロボットNAOを使用し,各家庭において小型人型ロボットと人,ペット動物が対話する様子の観察を行った.対話ではペット動物に対してポジティブに話しかける正条件と,相対的にネガティブに話しかける負条件の2つのシナリオで調査を実施した.両条件では約2分間の対話シナリオのうち,約30秒間のロボットからペット動物への発話内容が異なった.結果として,ロボットのペット動物に対する発話内容と態度の違いが,参加者からロボットへの印象に影響を与えていた.
著者
後藤 真孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1737-2747, 2003-11-15
参考文献数
26
被引用文献数
10

本論文では,試聴のための新たな音楽再生インタフェースSmartMusicKIOSKを提案する.CD販売店の店頭で音楽を短時間試聴する際には,通常の音楽鑑賞における受動的な聴き方と異なり,試聴者は早送りを何度も繰り返しながらサビを探すことが多い.しかし,こうした聴き方に対する支援は従来なかった.本研究では,サビの区間や楽曲中で繰り返される区間の先頭へジャンプする機能と,それらの区間の楽曲中での配置を視覚化する機能を提供する.これにより,試聴者が手探りでサビを見つける煩わしい作業を不要にし,試聴者が能動的に聴きたい場所を探す作業を容易にする.このような,インタラクティブに楽曲中の再生位置を変更しながら所望の箇所を見つけられるインタフェースは,試聴に限らず,音楽を選んで利用する一般的な目的で有用である.上記の機能を実現するために自動サビ区間検出手法を提案し,試聴機として実装・運用した結果,検出手法と試聴機の両者の有効性を確認した.従来の音楽再生インタフェースでは,楽曲単位でしか興味のない音楽を飛ばせなかったのに対し,SmartMusicKIOSKによって初めて,楽曲内部の興味のない箇所も容易に飛ばすことが可能になったといえる.This paper describes SmartMusicKIOSK,a new music-playback interface for trial listening.In stores that sell music compact discs,short periods of trial listening of the CD music usually do not represent a passive appreciation of music --- customers often search out the chorus or ``hook'' of a song by repeatedly pressing the fast-forward button.Listening of this type, however,has not been traditionally supported.Through our research,we have developed a function for jumping to the chorus section and other key parts of a song,plus a function for visualizing the song structure.These functions eliminate the hassle of searching for the chorus and make it easier for a listener to find desired parts of a song,thereby facilitating an active listening experience.This interface,which enables a listener to look for a section of interest by interactively changing the playback position,is useful not only for trial listening but also for more general purposes in selecting and using music.The proposed functions are achieved through an automatic chorus-section detection method,and the results of implementing these functions in a listening station have demonstrated their usefulness.While entire songs of no interest to the listener can be skipped on conventional music-playback interfaces,SmartMusicKIOSK is the first interface that allows the user to easily skip sections of no interest even within a song.
著者
沼田宗敏 輿水 大和 秦野 やす世 神谷 和秀 野村 俊 二宮 市三
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.4051-4058, 2007-12-15

従来,直線,円,楕円などの幾何学図形の生成法が多数報告され,傾斜楕円についても若干の研究業績がある.本論文では,1 点あたり2 回の乗算で傾斜楕円を生成する画期的な三項漸化算法を提案する.三角関数の間に成り立つ一対の漸化式が同型であることが,その秘訣である.初期設定や楕円弧描画は従来法と比較して簡単であり,それを従来の高速生成法と同等以上の計算速度で実現する.また,実験によって新算法の有効性を検証する.
著者
吉田 年雄 二宮 市三
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.238-245, 1980-05-15

Xが小さい場合について 第2種変形ベッセル関数瓦K_ν(x)の新しい数値計算法を提案している.K_ν(x)の定義式K_ν(x)=(π/2)・(I_<-ν>(x)-I_ν(x))/sinνπに 第1種変形ベッセル関数I_ν(x)およびムI_ν(x)のベキ級数展開を代入し 適当に項をまとめ 桁落ちを生ずる部分を所要の精度を有する最良近似式にて計算することにより K_ν(x)を精度良く しかも能率的に計算している.例えば (0 0.5)では ν=0を中心とする展開として得られるK_ν(x)=(π/(2sinνπ))・㊥^^∞__<k=0>{A_k(ν x)+B_k(ν x)}により計算を行う.ただし A_k(ν x)の式中には 関数(1/Γ(k+1-ν)-1/Γ(k+1+v))/(k!)を含むが そのまま式どおりに計算を行うと桁落ちを生ずる.そこで これに対する最良近似式を新たに作成し それによりその関数値を計算する.また A_k(ν x)には Φ_1(ν x)=(x/2)^<ν-1>-1およびΦ_2(ν x)=1-(x/2)^νを含むが そのまま計算すると桁落ちを生ずるときには f(t)=e^t-1なる関数の最良近似式によりΦ_1(ν x)=f(-νln(x/2)) Φ_2(ν x)=-f(νln(x/2))として計算を行う.このようにして 桁落ちが無く しかも能率的にK_ν(x)の値を計算する方法を述べている.
著者
吉田 年雄 二宮 市三
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.238-245, 1980-05-15

Xが小さい場合について 第2種変形ベッセル関数瓦K_ν(x)の新しい数値計算法を提案している.K_ν(x)の定義式K_ν(x)=(π/2)・(I_<-ν>(x)-I_ν(x))/sinνπに 第1種変形ベッセル関数I_ν(x)およびムI_ν(x)のベキ級数展開を代入し 適当に項をまとめ 桁落ちを生ずる部分を所要の精度を有する最良近似式にて計算することにより K_ν(x)を精度良く しかも能率的に計算している.例えば (0 0.5)では ν=0を中心とする展開として得られるK_ν(x)=(π/(2sinνπ))・㊥^^∞__<k=0>{A_k(ν x)+B_k(ν x)}により計算を行う.ただし A_k(ν x)の式中には 関数(1/Γ(k+1-ν)-1/Γ(k+1+v))/(k!)を含むが そのまま式どおりに計算を行うと桁落ちを生ずる.そこで これに対する最良近似式を新たに作成し それによりその関数値を計算する.また A_k(ν x)には Φ_1(ν x)=(x/2)^<ν-1>-1およびΦ_2(ν x)=1-(x/2)^νを含むが そのまま計算すると桁落ちを生ずるときには f(t)=e^t-1なる関数の最良近似式によりΦ_1(ν x)=f(-νln(x/2)) Φ_2(ν x)=-f(νln(x/2))として計算を行う.このようにして 桁落ちが無く しかも能率的にK_ν(x)の値を計算する方法を述べている.
著者
藤井 実 浅井清
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.442-453, 1980-11-15
被引用文献数
10

磁気ディスク 大容量記憶装置(MSS) 磁気テープの3種の記憶媒体を用いた 簡素で効率的なファイル管理システムとその設計に必要な一連の手法を提案する.本論文で筆者らは ユーザ・ファイルについて (1)ファイル連続参照特性 ファイル分布が人間の記憶モデルにおける記憶保存関数で非常に良く近似できることを示し 記憶保存分布密度関数を新しく定義した.これを(3)で利用した.(2)磁気ディスク MSS 磁気テープの損益分岐ラインの一計算方式を示した.(3)ファイル需要を損益分岐ラインによって各記憶媒体に振分けるなど ファイル管理システムにおける最適装置構成を決定する一手法を示した.(4)ファイル管理の階層化 在庫管理を応用した空き領域管理方式 損益分岐ラインを使ったファイル移動制御などを採用した 簡素で実用的 効率的なファイル自動管理の一方式を提案した.
著者
由井薗 隆也 宗森 純 長澤 庸二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.424-437, 1998-02-15
参考文献数
21
被引用文献数
5

計算機を介してしかコミュニケーションをとることができない分散環境下で,マルチメディア(画像+音声+テキスト)を用いてコミュニケーションをとることができる発想支援グループウェア郡元を用い,分散協調型KJ法学生実験を18回行った.過去に行ってきた評価は結果から得られる定量的なパラメータだけによるものだったが,今回は作業過程を考慮した評価を行った。作業過程を考慮するたるに操作を時刻とともに記録したログデータを利用した.コミュニケーションをとるために音声が主として用いられた実験とコミュニケーションをとるためにテキストが主として用いられた実験に分けて実験結果を比較した.その結果,コミュニケーションをとるためにテキストが主として用いられた実験では,操作権を3人で協同してとりながら行う実験が多いこと,そして,KJ法の実験結果にかかわる島の数,まとめ文字数が多くなることが分かった.GUNGEN,a groupware for a new idea generation support system,equipped with multimedia communication functions(movie,voice,and text based chat),was implemented on a network consisting of three personal computers which are set in distributed environment (i.e.in different rooms on different floors).We tried experiments involving students as subjects on a distributed and cooperative KJ method 18 times.We have used the quantitative parameters in order to estimate the results of experiments.We also used time sequence of operations in order to estimate the results of experiments,in this time.The time sequence data consisted of operation data and voice data.We distinguished the results of experiments,mainly using voice based communication from the results of experiments,mainly using text based communication.The results of experiments suggested as follows:When subjects mainly used text based communication,they cooperated with one another very much in the most of experiments and the nubmer of islands and the number of characters of a conclusion were increased.
著者
栗原 一貴
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.919-931, 2017-04-15

本論文では,ゲーミフィケーションの周辺概念であるToolification of Gamesを提案する.「非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること」などと定義されるゲーミフィケーションでは,ゲームの知見を「後づけ」するために適切なゲームバランスと楽しさの実現が難しい点が問題であった.そこで,通常のゲーミフィケーションと比較したときにゲームと非ゲームの大小関係,主従関係が逆であるようなケースとして,「すでに完成されているゲームの余剰自由度の中で非ゲーム的目的を達成すること」をToolification of Gamesと定義する.Toolification of Gamesにはブランド性,既習性,逃避可能性,自己表現性,物語性などの特徴があり,従来のゲーミフィケーションの問題を改善しうる可能性がある.我々はToolification of Gamesと位置づけられる過去の事例を分析するとともに,三次元テトリスをプレイするだけで3Dプリンタ用の三次元モデルをデザインできるTetris 3D Modeler,およびスーパーマリオブラザーズをプレイすることが募金活動につながるCoins for Twoの開発事例および過去の事例分析を通じて,Toolification of Gamesの位置づけと性質,可能性を論ずる.
著者
栗原 一貴
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.919-931, 2017-04-15

本論文では,ゲーミフィケーションの周辺概念であるToolification of Gamesを提案する.「非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること」などと定義されるゲーミフィケーションでは,ゲームの知見を「後づけ」するために適切なゲームバランスと楽しさの実現が難しい点が問題であった.そこで,通常のゲーミフィケーションと比較したときにゲームと非ゲームの大小関係,主従関係が逆であるようなケースとして,「すでに完成されているゲームの余剰自由度の中で非ゲーム的目的を達成すること」をToolification of Gamesと定義する.Toolification of Gamesにはブランド性,既習性,逃避可能性,自己表現性,物語性などの特徴があり,従来のゲーミフィケーションの問題を改善しうる可能性がある.我々はToolification of Gamesと位置づけられる過去の事例を分析するとともに,三次元テトリスをプレイするだけで3Dプリンタ用の三次元モデルをデザインできるTetris 3D Modeler,およびスーパーマリオブラザーズをプレイすることが募金活動につながるCoins for Twoの開発事例および過去の事例分析を通じて,Toolification of Gamesの位置づけと性質,可能性を論ずる.Gamification is the use of game elements and game design techniques in non-game contexts. A major criticism of gamification, however, is that it is difficult to realize an appropriate game balance and fun experience because knowledge of the game is applied a posteriori. Here we propose the concept of Toolification of Games (ToG), which is a peripheral concept of gamification, and is defined as "achieving non-game purposes in the redundant spaces of existing games." ToG includes branded, hot-start, avoidable, performable, and contextualisable features, which allow us to avoid the aforementioned problem of gamification. We discuss the characteristics and the potential of ToG with existing and self-produced examples including Tetris 3D Modeler, with which the user can design 3D models simply by playing 3D Tetris, as well as Coins for Two, which allows the user to raise money for charity simply by playing Super Mario Bros.
著者
吉澤 純一 武藤昭一 田中 秀雄 植田 孝夫 西田正吾 坂口 敏明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.638-646, 1988-07-15
被引用文献数
2

各種設備を高信頼度で維持・運用するためには 機器そのものの高信頼化を図ると共に 運転・保守に携わる要員の教育・訓練が重要である一方 今日のCAIは多種メディア機器の発達 認知科学の発展 そして新しいプログラミング・パラダイムの出現を背景に 従来にない新しい教育・訓練環境を提供できるようになってきている.このような背景の下に 筆者らは電力設備に携わる保守員の教育支援を題材に メディアテクノロジー 知識工学 認知科学の成果を取り入れた保守教育支援システムADVISOR(ADvanced VideoInStructOR)を開発した.ADVISORでは インタフェース中心主義の立場から教育支援することを試みている.すなわち 学習対象の理解を支援するために各学習ステップの概念的意味や具体的内容 各学習ステップの全体に対する重要性 学習空間における現在位置等が逐次把握できる教育的インタフェースを ビデオディスクやピットマップ・ディスプレイを利用して実現している.また 他の対象に対しても学習空間が容易に構築できる 構築ツールを用意している.本論では まず ADVISORの設計思想について述べる.次に 実現されている教育的インタフェースの機能とその実現方法について説明する.
著者
岡田 光弘 佐藤 拓杜 稲田 圭介 谷田部 祐介 伊藤 浩朗 小味 弘典
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.1425-1434, 2018-07-15

人間の視野における解像度は視野中心で最も高く,周辺部ほど低下する.この視覚特性に基づき,視野周辺の映像の解像度を削減するFoveated Imaging処理(FI処理)と呼ばれる画像処理技術がある.本論文では,フルHD映像を対象に主観的な解像感を維持したまま伝送ビットレートを削減するために,エンコード前の映像にFI処理を適用した映像圧縮伝送システムを構築する.さらに,このシステムの有効性を評価するために,Degradation Category Rating(DCR)法と呼ばれる主観画質の評価手法を用いて,基準映像に対するFI処理を適用した映像の画質劣化を5段階で評価した.その結果,Degradation Mean Opinion Score(DMOS)の平均値が4.25と画質劣化が気にならないレベルの画質を維持しつつ,9.2~44.7%の伝送ビットレートの削減効果を確認できた.
著者
泉 宏志 武田 有志 森 久直 坂巻 佳壽美 栗原 朋之 宇賀神 孝 村越 英樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.2409-2417, 2003-09-15
参考文献数
14
被引用文献数
4

WBT(Web-Based Training)と呼ばれる教育システムが多数提案され,開発されているが,実験を扱うWBTシステムは少ない.そこで本論文では,ディジタル回路実験のためのWBTシステムを提案する.ここで提案するWBTシステムはサーバ/クライアントシステムであり, 学習者は,クライアントが持つ実験用ボードで実験を行う.実験用ボードには,FPGA(Field Programmable Gate Array)が搭載してあり,サーバから実験用回路データを書き込むことができる.また,指導者は,実験用ボードの状態をJTAG(Joint Test Action Group)テストを応用したモニタリング機能によって把握できるため,学習者への適切な指導が可能である.本システムを用いてディジタル回路実験を行い,実験室で行われているディジタル回路実験と同様な実験ができることを確認した.A lot of WBT (Web-Based Training) systems have been proposed and developed. However, there are few WBT systems treating experiments.Then, this paper proposes a new WBT system for digital circuit experiments. This system is a server/client system,and the exercises and experiments are performed with the FPGA (Field Programmable Gate Array) based training board on the client.The instructor can know the state of the circuits by the monitoring function adapting JTAG (Joint Test Action Group), and can teach to the student suitably.As the result that actually exercised with created educational contents,we confirmed that the same study as digital circuit experiments in current educational institutions could be performed.
著者
渡辺 美紀 小川 浩平 石黒 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1251-1261, 2016-04-15

ロボットが多様な役割を担い共存する社会が到来しつつある.人間に酷似した身体的特徴を持つアンドロイドは,これまで想定されていなかった状況において役割を担える可能性があると考えられる.本研究では,アンドロイドを販売員として用いることを提案し,百貨店において顧客との対話を通じて商品を販売できるか検証するフィールド実験を実施した.実験の結果,アンドロイドは商品を43万円程度売り上げ,販売員として社会的な役割を担える可能性が示された.フィールド実験の結果より,アンドロイドによる主観的・感情的なメッセージが顧客の購買行動に影響を与えた可能性があると考察し,アンドロイドがそれらのメッセージを効果的に伝達可能な特性を一般的な状況においても持つかどうか検証する実験室実験を実施した.その結果,統制された環境においても,アンドロイドによる主観的・感情的なメッセージは人間に違和感なく受け入れられることが示された.さらに,これらのメッセージの効果的な伝達においてはアンドロイドの存在が必要であることが検証された.本研究成果は,販売という状況だけでなく,人とインタラクションするロボットの社会実装において有用な知見になりうると考える.
著者
宮崎 邦彦 岩村 充 松本 勉 佐々木 良一 吉浦 裕 松木 武 秦野 康生 手塚 悟 今井 秀樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.1871-1879, 2005-08-15

電子署名技術の利用にあたっては,署名者は秘密鍵を安全に管理する必要がある.一般には,秘密鍵を安全に管理することは署名者自身にとって利益となると考えられているが,署名者の状況によっては,安全に管理することが利益とならないケースも生じうる.本稿では,署名者が債務超過に近い状態にある債務者である場合を例にあげて,署名鍵の自己暴露が債権者に対する攻撃となることを指摘する.さらに債務者が鍵自己暴露の可能性を持つことが,債権者?債務者間の債務縮減交渉に与える影響について分析を行い,この問題への対策の方針と例を示す.
著者
本木 実 冨浦洋一 高橋 直人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.2779-2791, 2006-08-15

本論文では,記号列を入力し記号列を出力する階層型ニューラルネットの学習法を提案する.本論文で考察するモデルは,結合荷重だけでなく,各記号に対応する記号表現ベクトルも学習パラメータとする.この方式により,学習データの性質を反映した記号表現ベクトル(類似の使われ方をする記号の記号表現ベクトルが互いに近いベクトル)を学習することができ,予測能力の向上が期待できる.しかし,目的関数を平均二乗誤差とする通常のモデルでは,目的関数の値を最小にするタスクにとって無意味な解が存在し,出力ベクトルから記号の同定を行うと正解率がきわめて低いという問題がある.そこで本論文では,記号の同定を考慮した目的関数による学習法を提案する.実験により,提案モデルは,学習データの性質を反映した記号表現ベクトルの学習が可能であり,かつ高い正解率を持つことを示す.
著者
山田 茂
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.964-969, 1992-07-15

従来より日本では ソフトウェア開発のテスト工程における代表的な品質評価法の一つとして テスト実施時間と発見・除去されたソフトウェアエラー数の関係を ゴンペルツ曲線に代表されるS字形成長曲線により記述し ソフトウェア内の潜在エラー数の推定やテスト項目数の消化率をはじめとするテスト進捗度の確認が行われてきた本論文では この決定論的モデルとしてのゴンペルツ曲線モデルを テストにより発見される総エラー数に対して確率則を導入することにより再構築し ソフトウェア信頼度成長モデルとしての汎用性を高めるここで 導入される確率則は ソフトウェア信頼性モデルによく採用され 有望視されている非同次ポアソン過程(NHPP)である従来のゴンペルツ曲線に修正を加えた上でNHPPの平均値関数 すなわち任意のテスト時刻までに発見される総エラー数の平均値に適用し 新たに期待残存エラー数 ソフトウェア頼度 MTBF (平均ソフトウェア故障時間間隔)などの信頼性評価尺度を導出するこれらの定量的尺度は 従来のゴンペルツ曲線モデルでは導出でき通かつたものであるさらに ゴンペルツ曲線に基づくNHPPモデルの信頼性評価例も示す
著者
滝澤 修 松本 勉 中川 裕志 村瀬 一郎 牧野 京子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.1977-1979, 2004-08-15
参考文献数
1
被引用文献数
1

プライバシ保護などに利用できるステガノグラフィ(秘匿通信)は,情報の埋め込み媒体が持つ情報の冗長性を利用するため,画像や音響信号など冗長度の高い媒体について多く提案されてきた.本論文では,ディジタルドキュメントを埋め込み媒体とし,文書内に挿入された改行コードの位置を秘匿情報とするテキストステガノグラフィを提案する.提案手法はドキュメントのレイアウト情報を利用しないため,電子メールのようなプレーンテキストに対しても秘匿情報の埋め込みが可能で,文字通信においてプライバシを保つ手段として利用できる.In the usual steganography applied to digital documents, secret messages are embedded in the layout information (e.g., the space between lines or characters) because character codes have no redundancy. This paper proposes a new method for hiding information in plain text without using any layout information. It enables a secret message to be embedded as binary digits that are related to the number of characters in each line of the cover text.
著者
福田 宏 清水 道夫 植松 正吾 勝矢 光昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.1194-1197, 2001-05-15
参考文献数
10

符号付きポリオミノをジェネレータとして用いることによって,映進対称性を持つフラクタル・テクスチャパターンを生成する新しいアルゴリズムを提案する.そして,ジェネレータの条件を考察し,具体的な生成方法と生成図形を示す.We propose the generating method of new regular fractal texture patterns with the glide symmetry by using the signed polyominoes.We consider the generating conditions of the patterns and describe the generating algorithm.Some generated patterns are illustrated.