著者
川野 哲生 日下部 茂 谷口 倫一郎 雨宮 真人
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1700-1708, 1995-07-15
参考文献数
11
被引用文献数
1

超並列計算機の設計において、もっとも大きな問題の1つにプロセッサ間通信やメモリアクセスに伴うレイテンシ問題がある。マルチスレッド処理によるレイテンシ隠蔽は本問題に対する有効な解決手段である。効果的なマルチスレッド処理を行うためにはプロセッサに高速なコンテクストスイッチ能力が必要とされる。しかしながら従来のRISC型のプロセッサでは、スレッドの切り替えに伴うレジスタの退避と回復のためのメモリアクセスがオーバヘッドとなり、細粒度マルチスレッド処理を効率的に実行することは困難である。本論文では細粒度マルチスレッド処理向きプロセッサDatarol?IIを提案する。本プロセッサはデータ駆動方式を最適化したDataro1にスレッド実行を導入し一般的なRISCプロセッサと同様のパイプライン処理および高速レジスタの利用を可能とした。また、自動レジスタロードストア機構によりコンテクストスイッチに伴うメモリアクセスを明示的なロードストア命令を用いずかつ通常の処理と並行して行うことにより細粒度処理におけるオーバヘッドを隠蔽する。さらに階層的なメモリシステムと負荷制御機構を導入し価格性能比に優れたメモリシステムを実現する。シミュレーションによる評価により、自動レジスタロードストア機構によるメモリアクセスオーバヘッドの隠蔽効果、優れた耐レイテンシ性能、負荷制御による効果的な階層メモリシステムの実現、が確認され、本プロセッサは超並列計算機用要素プロセッサとして有望であることが分かった。
著者
林 政喜 隅田 康明 合志 和晃 松永 勝也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.459-469, 2014-01-15

自動車運行における衝突事故は,当該車両の停止距離よりも進行方向の障害物までの距離(進行方向空間距離,または車間距離)が短い場合に発生する.衝突事故防止のためには,それぞれの車両の運転者は停止距離よりも長い車間距離を保持して走行することが必要である.ところが,現実には多くの運転者が停止距離よりも短い車間距離で走行している.多くの運転者が短い車間距離で走行している要因の1つとして,運転者が無意識的あるいは意識的にできる限り早く目的地に到着するようにできるだけ高い速度走行しようとするような先急ぎ運転をしていることが考えられる.これは,運転者が先急ぎ運転による旅行時間の短縮という利益を優先し,不安全な先急ぎ運転を選択した結果とも考えられる.先急ぎ運転による事故防止のためには,運転者に先急ぎ運転による利益よりも不利益の方が大であることを理解させ,平素の運転において十分な車間距離を保持した運転を繰り返し訓練していくことが有効であると考えられる.そこで,運転時の移動効率(旅行時間)とその運転における安全度(危険度)を記録・分析できるシステムの開発を行った.また,公道上のコースを走行する実験を行い,運転行動の記録,評価,詳細分析を行った.その結果,先急ぎ運転で得られる時間的利益は平均6.6%であったが統計的に有意な差ではなかった.これに対して,先急ぎ運転による運転時の不安全度は平均37.1ポイント増加し,また,主観調査によって先急ぎ運転の方が大きな危険感,疲労感,緊張感を感じていたことを明らかにした.本システムによって,平素の運転の危険度を提示することで,日々の運転を通して自然に安全運転習慣の形成が可能であると考えられる.
著者
丸一 威雄 市川 正紀 所 真理雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.1768-1779, 1990-12-15
被引用文献数
6

魚の群れ スポーツのチームプレイ 会社組織など 主体的に活動する複数の個体が協調しながら問題解決を行うシステムを表現する組織計算モデルを提案する組織計算モデルは 個体の自律性を向上させるメッセージ・インタプリタ および不特定多数との通信を実現する環境の概念を導入した並行オブジェクト計算モデルであるこの計算モデルでは 各個体(自律的エージェントと呼ぶ)は自分の判断で主体的に仕事を処理し 個体間で生じた問題の解決は各個体の意志決定を中心に行うという特徴がある本論文では この組織計算モデルの分散協調問題解決への応用例と分散環境での実現方法についても述べる
著者
中西 英之 キャサリンイズビスタ 石田 亨 クリフォードナス
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1368-1376, 2001-06-15

本論文では,仮想空間内での人間同士のコミュニケーションを補助する社会的エージェントについて述べる.このエージェントはパーティーにおけるホスト役を模擬しており,会話が停滞している2人のミーティング参加者に共通の話題を与えようとする.我々は,このエージェントを異文化間コミュニケーションの支援に適用する実験を行った.実験用に,ミーティング参加者との質疑応答を通して,文化的に共通の安全な話題を提供するエージェントと,危険な話題を提供するエージェントを設計した.実験は,専用線でつながれた京都大学とスタンフォード大学のPCの上で,我々が開発した仮想空間FreeWalkを動作させて行った.この実験において,安全なエージェントはアメリカ人の学生に肯定的な影響を与えた.一方,日本人の学生には否定的な影響を与えると同時に,会話相手との類似性を強調した.危険なエージェントのいる環境では,両国の学生とも会話をより面白いと感じ,日本人学生がよりアメリカ人のように振る舞った.実験の結果,危険な話題は有用であり,エージェントは各参加者に適応できた方が良く,エージェントの存在が参加者の振舞いに影響を及ぼすことが分かった.
著者
平井 辰典 大矢隼士 森島 繁生
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1254-1262, 2013-04-15

本論文では,任意の入力楽曲を基に,既存の音楽動画コンテンツを再利用し,音楽と映像が同期した音楽動画を自動生成するシステムを提案する.本研究では,まずシステムの土台となる音楽と映像の同期手法を主観評価実験により検討した.その結果に基づき,音のエネルギーを表すRMSの変化に,映像のアクセント(明滅や動きなど)を対応させるような音楽動画自動生成システムを実装した.音楽動画の自動生成の手順は以下のとおりである.まずデータベースの構築として既存の音楽動画の各フレームにおける明滅,動きに関する映像特徴量の計算を行う.そして,動画生成として,入力楽曲のRMSを抽出し,その推移に最も近い推移を示す映像特徴量を持つ音楽動画の素片をデータベースから探索し,それらの映像を切り貼りすることで,音楽に最も同期した音楽動画の生成を行う.また,本システムによる生成動画の評価も行った.
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, 2018-04-15
著者
Toshiyuki Hagiya Toshiharu Horiuchi Tomonori Yazaki Tatsuya Kawahara
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, 2018-04-15

Many older adults are interested in smartphones. However, most of them encounter difficulties in self-instruction and need support. Text entry, which is essential for various applications, is one of the most difficult operations to master. In this paper, we propose Typing Tutor, an individualized tutoring system for text entry that detects input stumbles using a statistical approach and provides instructions. By conducting two user studies, we clarify the common difficulties that novice older adults experience and how skill level is related to input stumbles with a 12-key layout for Japanese. Based on the study, we develop Typing Tutor to support learning how to enter text on a smartphone. A two-week evaluation experiment with novice older adults (65+) showed that Typing Tutor was effective in improving their text entry proficiency, especially in the initial stage of use. In addition, we demonstrate the applicability of Typing Tutor to other keyboards and languages with the QWERTY layout for Japanese and English.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.26(2018) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.26.362------------------------------
著者
松廣 達也 橋本 哲也 北岡 見生代 ア デイビッド 落合 翼 渡辺 秀行 片桐 滋 大崎 美穂
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1295-1308, 2018-04-15

最近,識別学習法の1つ,最小分類誤り(MCE: Minimum Classification Error)学習法が,大幾何マージン最小分類誤り(LGM-MCE: Large Geometric Margin Minimum Classification Error)学習法に拡張された.LGM-MCE法は,利用可能な学習用標本上の分類誤り数損失の最小化と,標本空間における幾何マージンの最大化とを同時に行うものである.学習用標本に対する過学習を抑制することで,この新しいLGM-MCE法は,理想的な最小分類誤り確率状態に対応する分類器状態を近似する.その有効性は,プロトタイプ型分類器用に実装され,様々な固定次元ベクトルパターンの分類課題において実証されている.本稿は,可変長パターンに対しても過学習が抑制された望ましい分類が実現されることを目指し,状態遷移モデル型分類器を用いて可変長パターンのための幾何マージンを新たに導出し,それを用いたLGM-MCE学習法を構築し,その有効性を3種の音声認識課題において評価した結果を報告するものである.実験では,LGM-MCE学習法と,その基盤となったMCE学習法とを比較する.実験の結果,いずれの課題においても,LGM-MCE学習法が,過学習を抑制し,未知の試験用標本上で高い分類精度を達成することが示される.比較実験に用いるLGM-MCE学習法の実装は,適応型損失最小化手段である確率的降下法を用いている.本稿では追加的に,高速な並列処理に適したRPROP法に基づく実装も行い,その動作確認結果も報告する.
著者
Chuzo Iwamoto Tatsuaki Ibusuki
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, 2018-04-15

Dosun-Fuwari is one of Nikoli's pencil puzzles, which is played on a rectangular grid of cells. Some of the cells are colored black, and the remaining cells are divided into rooms. The purpose of the puzzle is to place balloons and iron balls according to the following rules: Place one balloon and one iron ball in each room. Balloons (resp. iron balls) are light and float (heavy and sink), so they must be placed in the top (bottom) row of the grid of cells, or in a cell right under (over) a black cell or right under other balloons (over other iron balls). It is shown that deciding whether a Dosun-Fuwari puzzle has a solution is NP-complete.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.26(2018) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.26.358------------------------------
著者
永森 誠矢 山下 遥 荻原 大陸 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1273-1285, 2018-04-15

近年,企業は就職ポータルサイトを用いて学生に採用情報を提供している.その際,就職ポータルサイトを活用しようとする企業は採用活動の被エントリ数への影響とその予測値に関心がある.そこで本研究では,就職ポータルサイトに蓄積されている履歴データを活用し,新規企業が獲得できる被エントリ数の予測と被エントリ数の影響要因分析のためのモデルを構築する方法について検討する.具体的には,精度の高い予測とともに,影響要因の効果を分析可能とするモデルとして,各企業が持つ潜在的要因を考慮した混合回帰モデルを提案する.提案したモデルを就職ポータルサイト上の実データに適用し,企業の採用活動と学生の被エントリ数の関係性を解析し,その有効性を示す.
著者
Ko Sakai Yutaka Sato
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, 2018-04-15

In this paper we propose a method for constructing a Gray map for a group. In an earlier paper, we suggested a new design principle of Gray maps for groups and tried to apply it to several concrete groups. Though the trial had some success, the method is not very constructive. In this paper we try to design a more constructive method based on the semidirect-product structure of the target group.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.26(2018) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.26.345------------------------------
著者
Keisuke Furumoto Masakatu Morii
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, 2018-04-15

In recent years, QR code is used in various situations such as in medical prescription and the boarding procedure at the airport in addition to conventional applications. With expanding application, there are some QR codes that cannot be read by the conventional method. In this paper, we refer to this kind of QR code as obfuscated QR code. Considering the situation that the QR code is more common, improving the encoding method is not realistic. Hence, in reading obfuscated QR code, improving only the decoding method is required. In general, Euclidean decoding is used in the decoding method of QR code. On the other hand, Generalized Minimum Distance (GMD) decoding has been proposed. GMD decoding is a method of approximately performing maximum likelihood decoding by using information of the likelihood of each symbol called reliability. However, a method for calculating the reliability information of each symbol of the two-dimensional code has not been proposed. In this paper, we propose a method of calculating reliability information using the graphical features of QR code. Then, we show the proposed method is more useful in recognition accuracy of an obfuscated QR code than the conventional method using Euclidean decoding.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.26(2018) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.26.350------------------------------
著者
松尾 裕幸 柗本 真佑 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1262-1272, 2018-04-15

近年,ソフトウェアの電力消費の削減のため,APIやアルゴリズムなどの実装手段の違いによる電力消費の比較研究がさかんに行われている.しかしながら,我々は,プログラムの実行時間とその総消費電力量との間には,強い相関があるのではないかという仮説をたてた.この仮説が正しければ,電力消費量の削減という問題は,実行時間をいかに短縮させるかという問題に帰着させることができる.本研究では,異なるソーティングアルゴリズム,およびJavaの異なるCollectionsクラスについて,その総消費電力量および実行時間の両方について調査する.実験の結果,両者の間には非常に強い正の相関が存在することが示された.また回帰分析の結果,プログラムの実行時間,単位時間あたりの消費電力量の順に,総消費電力量に与える影響が大きいことが分かった.これらの結果から,電力の計測基盤を用いずとも実行時間が短い実装手段を選ぶことが,プログラム全体の省電力化につながることが示唆された.
著者
近藤 将成 森 啓太 水野 修 崔 銀惠
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1250-1261, 2018-04-15

ソフトウェアの不具合予測は,ソフトウェアに潜む不具合を予測することで効率的なレビューやテストを可能にしようとするソフトウェア品質保証活動の1つである.従来の多くのソフトウェアの不具合予測では,ソースコード分析による不具合予測を行っているが,粒度が粗くまた不具合予測の結果のフィードバックが遅い.この問題を解決するために,ソフトウェアの変更がコミットされたときに,その変更によって不具合が起きるかどうかを予測する手法が提案され,近年注目を集めている.ソフトウェアの変更コミットの不具合予測に関する既存研究では,その変更に対するメトリクス(たとえば,修正されたファイル数,追加されたコード行数など)を計算した後に機械学習や深層学習を適用している.それに対して,本研究では,変更のソースコード片のみに対して深層学習を適用することで不具合を予測する手法,Word-Convolutional Neural Network(W-CNN)を提案する.我々は,評価実験によって,変更ソースコード片に対する深層学習を用いた不具合予測が可能であること,さらに,提案手法W-CNNは先行研究に比べて,学習の時間はかかるものの,不具合予測の精度が優れており,予測時間が短いことを示す.
著者
福田 貴三郎 村瀬 健太郎 中村 覚 稗方 和夫 笈田 佳彰 松本 滋 岡田 伊策
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1240-1249, 2018-04-15

パッケージソフトや既存システムの仕様変更において,改修・カスタマイズの対象となる機能の規模の見積りや,それにともなう作業全貌の把握には,システムの全体構成や個々の機能の詳細に関する知識が不可欠であり,豊富な経験と高度なスキルを有するベテランSEのノウハウが必要である.また設計情報に加え,作業プロセス間の依存関係に基づく影響波及範囲の推定も求められる.本研究では,設計情報と作業プロセス間の暗黙的な依存関係を可視化し,パッケージソフトや既存システムの改修・カスタマイズによる影響波及範囲の特定を支援するシステムの開発を行った.また,実際の情報システム開発プロジェクトにおける事例を用いた評価実験により,従来の手法に比べドキュメントベースでより網羅的に影響波及範囲を抽出できることを確認した.
著者
上村 恭平 森 彰 藤原 賢二 崔 恩瀞 飯田 元
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1225-1239, 2018-04-15

ハードウェア記述言語は,Field Programmable Gate Array(FPGA)開発などで回路の構造を定義するために用いられる言語である.近年のFPGAの利用拡大により,ハードウェア記述言語(HDL)を用いた回路開発の効率化が課題となっている.そこで,我々はソースコード中の重複あるいは類似したコード片であるコードクローンに着目した.ソフトウェアにおいて,コードクローンは開発効率を低下させる一因として研究されている.本論文では,代表的なHDLであるVerilog HDLを対象としたコードクローン検出手法を提案し,コードクローンの特徴について調査した結果について述べる.提案するコードクローン検出手法は,Verilog HDLのソースコードに簡単な変換を適用することで,既存のツールを用いてコードクローンを検出する.評価の結果,提案手法は90%以上の精度でコードクローンを検出できた.また,提案手法を用いてコードクローンの量と複雑さについて分析した結果,CやJavaと同様にコードクローンが存在し,支援を要することが確認された.ソフトウェアと同様に,Verilog HDLのコードクローンに対しても同時編集支援やドキュメント化などの管理は有用である.一方で,Verilog HDLにおけるコードクローンはリファクタリングによる集約を行う場合に回路性能とのトレードオフを考慮する必要がある.
著者
岸 知二 野田 夏子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1203-1214, 2018-04-15

フィーチャモデルからのフィーチャ構成導出は製品系列開発などで行われる重要な作業であるが,導出の計算量はNP完全であり,大きなモデルからの導出や導出の繰返しはコストが高い.フィーチャモデルの構造を解析することによって,たとえば導出の繰返しを効率化したり,より小さなサイズのフィーチャ構成を導出したりすることができるが,構造の解析もまた高コストである.本稿では,構造の解析を低計算量で近似的に行い,それに基づいてフィーチャ構成を導出する手法について提案する.シミュレーションによる評価で,本手法がフィーチャ構成導出の繰返しや,小さなサイズのフィーチャ構成導出に有効性を持つことを確認した.
著者
幸 佑亮 肥後 芳樹 楠本 真二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1192-1202, 2018-04-15

コードクローンはソフトウェアの保守性を低下させる原因の1つとされており,コードクローンがソフトウェア中にどの程度存在しているか,およびどこに存在しているかを理解することはソフトウェア保守の観点から重要である.そのため,これまでに多くのコードクローン検出手法が提案され,自動的にコードクローンを検出するツールが開発されている.既存のコードクローン検出手法は,ファイル単位やコード片単位など単一の粒度でコードクローンを検出する.一般的に,検出の粒度が粗いほど検出時間は短くなるが,検出可能なコードクローンは少なくなる.一方,検出対象の粒度が細かいほど検出可能なコードクローンは多くなるが,検出時間は長くなる.そこで本論文では,より多くのコードクローンをより短時間で検出することを目的として,粗粒度から細粒度へ段階的にコードクローンを検出する手法を提案する.段階的にコードクローンを検出する過程において,ある粒度でコードクローンとして検出されたコードをそれよりも細粒度なコードクローンの検出対象から除外することで,細粒度な検出手法と比較してより高速に検出できる.また,粗粒度な検出手法と比較してより多くのコードクローンを検出できる.提案手法をコードクローン検出ツールDecrescendoとして実装し,複数のオープンソースソフトウェアに適用した.そして,提案手法を粗粒度な検出手法および細粒度な検出手法と比較して評価を行った.実験の結果より,細粒度な(コード片単位の)検出手法と比較して,多粒度な検出手法が約10~20倍高速にコードクローンを検出できることを示した.また,粗粒度な(メソッド単位の)検出手法と比較して,多粒度な検出手法が約10~30倍のコードクローンを検出した.この検出数は細粒度な(コード片単位の)検出手法とほぼ同数であった.
著者
林 健吾 青山 幹雄 古畑 慶次
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1175-1191, 2018-04-15

本稿では,不確定要素の多いイノベーティブな新ソフトウェア製品開発において,プロトタイプに迅速にフィードバックを繰り返すことにより進化させるコンカレントフィードバック開発方法を提案する.著者らが従事している自動車ソフトウェア開発では,自動走行などに関わるまったく新たなシステムを,研究開発部門と共同で要素技術を開発しながら,かつ,短期間で高品質なシステム化を行うことが求められている.このため,実車両上にプロトタイプを構築する要求開発と,仕様を基にしたソフトウェア製品開発の2フェーズの開発方法を採用していた.しかし,この開発モデルでは,開発期間短縮と品質保証に問題があった.これに対して,要求開発におけるプロトタイプに迅速にフィードバックを繰り返して進化させる進化型プロトタイプの新たなモデルとして,コンカレントフィードバック開発方法を提案する.さらに,製品開発におけるコンカレントエンジニアリングの協調のアプローチを発展させ,協働してソフトウェア製品を進化させる3パターンのフィードバックループで構成するコンカレントフィードバックプロセスモデルを提案する.提案方法を,超音波センサを用いた自動車ソフトウェア開発に適用し,開発期間を短縮して外部品質を改善した結果から提案方法の有効性を示す.
著者
藤本 玲子 青山 幹雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1161-1174, 2018-04-15

データ駆動要求工学D2RE(Data-Driven Requirements Engineering)を実現するためにセマンティックグラフモデルに基づく情報モデルを提案し,それを用いて仮説設定,データ収集,分析,評価を繰り返す要求獲得プロセスモデルA*プロセスを提案する.D2REの具体化として,データ駆動ステークホルダ分析のためのA*プロセスの詳細を定義し,あわせて,その支援環境D2RA(D2RE Analyzer)のプロトタイプを開発した.提案方法とD2RAプロトタイプを実際の公共サービス開発会議における発話データへ適用し,ステークホルダの特定と構造化を行い,ステークホルダマトリクスの自動生成を行った.さらに,対象の公共サービス開発会議の参加者へアンケート調査を行い,D2REの分析結果と比較し,提案方法の妥当性,有効性を示した.