著者
片田 敏孝 児玉 真 桑沢 敬行 越村 俊一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.789, pp.789_93-789_104, 2005 (Released:2006-04-07)
参考文献数
17
被引用文献数
15 17

2003年5月の宮城県沖の地震では, 三陸沿岸各地で震度4~6弱が観測され, 津波襲来が直ちに懸念された. しかし, 地震後に著者らが宮城県気仙沼市の住民を対象に実施した調査によると, 津波を意識して避難した住民は, 全体のわずか1.7%であった. このように避難率が低調となった要因を把握するため, 住民の避難行動とその意識的背景を分析した結果, 避難の意思決定を避難情報や津波警報に過度に依存する姿勢や, 正常化の偏見による危険性の楽観視, 過去の津波経験による津波イメージの固定化といった住民意識の問題点が明らかとなった. 本稿では, これらの問題点を解決するための津波防災教育として, 固定化された津波災害のイメージを打破すること, また, 情報に対する過度な依存心を改善することの必要性など, 今後の津波防災のあり方を提言した.
著者
光永 臣秀 平石 哲也 宇都宮 好博 三原 正裕 大川 郁夫 中川 浩二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.726, pp.131-143, 2003
被引用文献数
3

1999年の台風18号は, 山口県の周防灘沿岸に甚大な被害を及ぼした. 本研究では, Myers の傾度風モデルおよびマスコンモデルにより風域場を再現し, 被害発生に至るまでのこの台風による高潮と波浪のシミュレーションを行い, 山口県周防灘沿岸代表11地点の被災時における各施設への波力等の外力を推定した. これにより, 現行の設計方法を用いて護岸や防波堤の被災メカニズムについての検討考察を行った結果, 防災基準の設定時の想定を越えた異常潮位や波浪の発生により, 護岸においては基準を超えた越波による裏埋土砂の洗掘と, 想定を越えた引き波による負圧発生, 防波堤においては浮力の増大により堤体が不安定化が生じ被災に至ったものとの結論を得た.
著者
松永 信博 櫨田 操 鵜崎 賢一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.635, pp.113-126, 1999-11-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
46
被引用文献数
1 2

風洞付き二次元造波水槽を用いて強風下の沖合い海域で発生する飛沫量の実験を行った. 白波砕波上の飛沫の粒径分布から飛沫濃度を定量的に評価し, 水表面に作用する風応力との関係を明らかにした. 飛沫量は水面上の摩擦速度と飛沫の沈降速度に強く依存する. また, 画像解析結果から, 飛沫粒径および飛沫の沈降速度は高さの-1乗に比例して減少することが示された. 以上の検討結果に基づき, 高さ10mの平均風速と卓越波の波速と波高から, 白波砕波を伴う実海域における任意の高さでの飛湯濃度を評価できる半経験手法を提案している.
著者
奥山 一典 藤原 身江子 越智 洋秀 井上 真理子
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.638, pp.11-27, 1999-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
27
被引用文献数
1

砂の最大・最小密度試験 (JGS T 161-1990) では, 最大粒径が2mmを超える砂は適用範囲外である. しかし, 実務においては, 最大粒径が2mmを超える砂を取り扱うことが多く, 最大粒径制限値の拡大が望まれている. そこで, 本研究では, 最大粒径制限値の拡大に関する2, 3の基礎的問題点を解決した上で, (1) モールドの大容量化, (2) 粒度分布を考慮した最大粒径の制限法の適用という二つの方法で最大粒径制限値の拡大を図り, 最大粒径が2mmを超える砂礫に適用できる最大・最小密度試験法を提案した. そして, 提案法の検証実験を行い, 提案法が十分実用に供することを示した.
著者
鍋島 益弘 山田 優
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.725, pp.157-169, 2003-02-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

高齢化社会が進行する中で, 歩道舗装の設計において, 高齢者や障害者が安心して戸外に出かけられる環境を第一に考え, 早急に歩道環境の改善を図る必要がある. 本研究では, 高齢者による車いすの走行において, 車いすのハンドリムにかかる推力を測定し, 「歩道の横断勾配」「歩道の縦断勾配」および「車道と歩道との段差」が車いすの走行に及ぼす影響を検討するとともに, それらの結果と車いすを利用する高齢者による評価結果とを合わせて, 勾配や段差の適正な範囲, および高齢者が通行するために必要な歩道環境に適合した歩道の構造について考察した.
著者
林 良嗣 土井 健司 杉山 郁夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.751, pp.55-70, 2004-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
24
被引用文献数
11 3

近年, 社会資本整備に際しては費用便益分析法などの評価手法が定着しつつあるが, 一方で市民が持つ多様な価値観を反映できる総合的な評価指標が必要とされている. 費用や便益の最終帰着先である市民生活の状態を測るための指標である Quality Of Life (QOL) は, 広範囲な分野をカバーする性質上, 要素毎の評価を総合する段階で相互の重み付けを避けて通れない性質を持つ. 本論文ではQOLを5つの評価要素から説明し, これを市民の充足度に基づき計測する方法を提案している. その際, 要素の重みと代替弾力性の推定により充足度の総合化を可能とし, 加えて充足度の変化に伴う重みの補正機能を内包させている点に特徴がある, 本研究ではこの方法を広域交通社会資本の評価に適用し, QOLの with/without 比較に基づく整備効果の計測を試みている.
著者
半谷 裕彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.501, pp.11-20, 1994-10-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2
著者
中山 義久 西田 一彦 西形 達明 井上 啓司
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.638, pp.207-215, 1999-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
2

非常に幅広い物理・強度特性を有するまさ土の液状化特性を総合的に把握することを目的として, 関西地区で産する複数のまさ土を対象として繰返し三軸試験機で液状化試験を実施した. 液状化強度に及ぼすまさ土の物性値として粒度特性 (細粒分含有率, 50%通過粒径, 均等係数), 風化度 (強熱減量), コンシステンシー特性 (流動限界) を選び, それぞれの物性値と液状化強度との関連を調べた. その結果, まさ土の液状化特性はその採取場所によって大きく異なるが, コンシステンシー特性 (流動限界) と圧密後の間隙比を用いて簡易的に液状化強度を推定できることが明らかになった.
著者
古河 幸雄 藤田 龍之 坂田 正純 村田 吉晴 渡辺 英彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.750, pp.159-170, 2003-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
19

阿武隈高地のまさ土を対象にして, コンクリート用細骨材への利用について検討した. 細骨材としての品質を評価すると, 規定値をすべて満足するのは絶乾密度, 粘土塊量, 有機不純物量, 吸水率および塩化物に対する安定性は強熱減量Li≦2.5%の場合, 洗い試験はすべてのまさ土で満足しないことがわかった. まさ土を骨材としたときの圧縮強度はセメントの物理試験による強さ試験で行い, 粒度分布を自然粒度と細骨材として規定されている粒度範囲の中央粒度の2種類, 水セメント比は3種類で行つた. その結果, 圧縮強度は粒度分布より水セメント比の影響を強く受けることが明らかになつた. また, 配合設計により強度試験を実施した結果, 設定した圧縮強度の60~110%程度の強度発現が得られ, 圧縮強度はLiに強い影響を受けることがわかった.
著者
淺野 雅則 鎌田 敏郎 国枝 稔 六郷 恵哲
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.760, pp.213-222, 2004-05-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

本研究では, 打撃により生じるコンクリート部材の共振現象と, 打撃音として計測される波動現象の関係について検討を行った. 検討に際しては, 曲げ試験用供試体 (棒部材) と実構造物レベルのスラブ供試体 (板部材) を用いて, たわみ共振現象と縦波共振現象に着目した実験を行った. 打撃音とともに, 供試体表面の振動も同時に計測し, 打撃音と表面振動の関係を周波数特性を用いて詳細に検討した. これらの結果より, 棒部材では, 打撃音によってたわみ・縦波の両共振現象が評価できるが, 板部材ではたわみ共振現象が卓越して評価できることが示された. この違いは, 共振特性に関係しており, たわみ共振現象が縦波共振現象に比べて十分大きな振幅となるためであることがわかった.
著者
吉田 朗 原田 昇
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.542, pp.19-31, 1996-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
17
被引用文献数
6 3

本研究では, 都市圏における自動車と公共交通機関の複合的利用施策を評価するために, 鉄道に結節する交通行動を考慮した, より広範囲な交通手段の選択モデルを提案する. 多次元に及ぶ選択構造を単純化するため、鉄道の路線, 乗車駅, 降車駅, 駅アクセス交通手段, 駅イグレス交通手段がすべて選択可能な状況で, 一般性の高い「鉄道経路」選択肢の生成とラベリングの方法を考案するとともに, 駅アクセス交通手段と駅イグレス交通手段の選択構造の共通性に配慮している. 実証分析の結果, 様々な交通目的のトリップに対して, 代表交通手段から, 鉄道経路, 駅アクセス・イグレス交通手段に至る Nested Logit モデルの有意性が認められた.
著者
見波 潔 嶋津 晃臣
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.395, pp.65-74, 1988-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Although enormous volume of soil is excavated and discharged from construction works, disposal sites for the surplus soil decrease in urban area year by year. With this point as background, it is desirable to establish soil recycling system, that is effective utilization of soil between construction sites where surplus soil is discharged and other sites where soil is used as material for embankment, landfill, etc. In this study, three models for soil allocation are proposed corresponding to certainty of input data. (1) Model I is based on presupposition that all the relevant data are known deterministically. (2) Model II determines proper soil allocation in consideration of adjustment of working time on condition that input data for start time of each construction work has uncertainty. (3) Model III determines proper matches of construction works from the viewpoint of effective utilization of surplus soil.
著者
八十島 義之助
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.371, pp.31-43, 1986-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1
著者
藤原 宣夫 田畑 正敏 井本 郁子 三瀬 章裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.601, pp.85-92, 1998-08-22 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14

柳枝工施工部におけるヤナギ林の発達過程を推定することを目的とし, 矢作川において施工後の経過年数の異なる8箇所の柳枝工を対象に, 植物社会学的手法による植生調査を実施した. その結果, 3~5年経過では挿し木により導入されたカワヤナギが優占する高さ5m程度の低木林, 10年経過では高さ7mのカワヤナギが優占する低木林が認められた. 10数年経過ではアカメヤナギとジャヤナギが優占する高さ10m程度の高木林が認められ, この高木林は自然のヤナギ林と同様な構造を有していた. 高木林はカワヤナギ低木林が立地の乾燥化に伴い次第に変化したものと考えられ, この変化には河川水位の低下が関与したものと考えられた.
著者
金子 貴之 河野 達仁 森杉 壽芳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.695, pp.59-65, 2002

本研究では道路混雑等の外部不経済対策である容積率規制と道路投資について考察する. 2地域2変数の一般均衡モデルを構築し, 容積率規制及び道路投資に対する評価法を作成する. 更に, 所与の道路容量に対する適正な容積率規制条件, 所与の容積率に対する適正な道路投資条件を導く. また, 容積率規制と道路投資の組合せ政策を考察し, 評価法を提案する. これにより, 容積率規制が行われている次善の経済においても, 常に適正な容積率規制が達成されている状況では, 道路市場のみで道路投資の便益を計測できることを述べる.
著者
石原 孟 山口 敦 藤野 陽三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.731, pp.195-211, 2003-04-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

本研究では複雑地形における局所風況を数値的に予測するために必要な計算領域の大きさを明らかにするとともに, 新しい境界処理手法と数値解法を提案し, 大型風洞実験によりその妥当性を検証した. まず計算領域の大きさに関して, 計算領域の高さ, 幅, 上流境界の位置が流れ場に与える影響を明らかにした. また境界処理方法として, 地形の体積が一定となるような緩衝領域を境界付近に設置するとともに, 対象領域と同じ程度の大きさの付加領域を上流に設置する手法を提案した. さらに大規模線形連立方程式の数値解法について詳細な比較検討を行い, 高速かつ安定な数値解法を提案した. 最後に実地形模型を用いた大型風洞実験を行い, 本研究で開発した数値予測手法が従来の手法より複雑地形上の局所風況を精度よく予測できることを実証した.
著者
石橋 忠良 古谷 時春 浜崎 直行 鈴木 博人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.711, pp.125-134, 2002-08-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
6
被引用文献数
3 8

昨今, コンクリート構造物からのコンクリート片の剥落が社会問題となっている.本文では, コンクリート片の剥落が生じた鉄道高架橋, 架道橋, およびこ線橋 (以下, 高架橋等とする) のかぶり, コンクリートの中性化深さ, 鉄筋腐食度などを調査し, 高架橋等からのコンクリート片の剥落要因を検討した. その結果, かぶり, 中性化残り, および雨水, 漏水の影響が, コンクリート片の剥落および鉄筋腐食と関係の深いことがわかった.
著者
姫野 賢治 渡辺 隆 丸山 暉彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.378, pp.269-278, 1987-02-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
38
被引用文献数
1 7

A new framework for the prediction of fatigue failure life of asphalt pavements was presented. The new fatigue failure criterion based on energy dissipation theory, which was verified to be valid for wide range of mix stiffness modulus, was combined with the theoretical temperature estimation method. Traffic and environmental effects were incorporated into the new prediction system as probabilistic variables. In this system, the fatigue failure is assumed to take place at both top and bottom surfaces of the mix slab. With the method, an attempt was made to predict the fatigue failure lives for some routes of national highways in Japan, showing reasonable agreement between the predictions and the observations.