著者
則末 泰博 竹内 宗之 川村 篤 京極 都 宮庄 拓 片岡 惇 伊東 幸恵 藤谷 茂樹
出版者
公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

COVID-19による呼吸不全患者など、死腔増加や肺組織の炎症により吸気努力が強い場合、人工呼吸器からの送気が2回連続でトリガーされてしまう「二段呼吸」が頻回に発生してしまう傾向がある。「従圧式」は設定された圧を吸気中に保つモード、「従量式」は設定された換気量を吸気中に肺に送る呼吸器モードであり、欧米では従量式が頻用されている。本研究では、「強い吸気努力により二段呼吸が一定の頻度で発生する条件下では、従圧式に比べて従量式による呼吸管理の方が一回換気量と経肺圧、さらに呼吸仕事が大きく、従って肺傷害と横隔膜傷害の度合いが強い」という仮説を動物実験で証明することを目的とする
著者
佐藤 豪 武田 憲昭
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、振動覚を用いた感覚代行技術により、視覚依存性と体性感覚依存性の重み付けを変化させることにより、安定した姿勢制御を獲得できる新しい前庭リハビリテーションを開発することである。本研究により、頭部の傾斜情報を下顎の振動覚としてフィードバックできるウェアラブルデバイスを開発し、失われた前庭情報を振動覚として感覚代行することが可能となった。健常人に対しては、装用により視覚依存性と体性感覚依存性の低下し、一側前庭障害患者に対しては、視覚依存性と体性感覚依存性が変化することで歩行機能が改善し、めまいのQOLも改善した。両側前庭障害患者に対しては、歩行に対する装用効果を認めた。
著者
齊藤 康典
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

クロイソカイメンの自己・非自己認識機能を調べた結果、同所的に生息するダイダイイソカイメンの個体と接触すると、非自己と認識して拒絶することが明らかとなった。一方、同種個体間の認識においては、約10m四方の狭い範囲に生息する成熟個体間の接触で、ほとんどの組み合わせで拒絶反応を示し、癒合する組み合わせはほとんど無かった。一方、同一母親から生まれた幼生を固着変態させた幼体間での自己・非自己認識を調べると、固着変態直後から認識能を示し、さらに、拒絶反応の様式が成熟個体とは若干異なることが明らかとなった。拒絶反応の様式の詳しい記載や、個体間で拒絶が出現する頻度などから遺伝的な支配についてについて考察した。
著者
結束 貴臣
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の増悪の原因の一つとして,腸管バリア機能が正常であれば腸管内に留まる腸内細菌由来のエンドトキシン(ET)の血液中への流出が考えられる.我々は,ヒト糞便サンプルから抽出した腸内細菌の1つFaecalibacterium(FB)の占拠率低下が, 血中ET値の増加および腸管バリア機能の低下と有意に相関していることを見出した.そして,NASHマウスモデルにFBを投与すると腸管バリアの改善によって, NASH病態が改善することを明らかにした. 本研究では, FBの腸管バリア機能改善の分子機序を解明および肝外合併症である動脈硬化や大腸がんに対する影響を検討する.
著者
秋濱 一弘 岩田 和也
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

火花点火ガソリンエンジンの希薄燃焼限界を向上させる新しい広域点火法を提案した。レーザーブレイクダウンと高電圧印加を組み合わせた長距離放電点火LBALDI (Laser Breakdown Assisted Long-distance Discharge Ignition) の基礎特性明確化と有効性実証を目的としている。レーザーと高電圧印加の角度は90°付近が最も放電距離が長くなる。定容容器を用いて燃料依存性を調査しルイス数1以上の条件にて有効な点火法であることが分かった。急速圧縮装置を用いてエンジンに近い条件の高圧場においても長距離放電可能なLBALDIの有効性を実証し、目標を達成した。
著者
正本 忍
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では絶対王政期、とりわけ18世紀前半期のオート=ノルマンディー地方の警察・裁判組織マレショー一セ(marechaussee)について、主としてセーヌ=マリティーム県古文書館、陸軍歴史課古文書館で収集した原史料に基づいて実証研究を行った。マレショーセとは、絶対王政期フランスにおいて、主として田園地帯、幹線道路上の治安維持を担う軍隊組織であり、同時に、プレヴォ専決事件を最終審として裁く裁判組織(プレヴォ裁判所)でもある。18世紀前半期のオート=ノルマンディー地方のマレショーセについて、これまで得られた研究成果は主として以下の4つである。第一に、当該時期の当該地方のマレショーセの隊員名簿を作成し、"Liste des hommes de la marechaussee en Haute-Normandie (1720〜1750)"として公刊した。第二に、当該地方の治安維持はどのような人物によって担われていたのかを明らかにすべく、上記の隊員名簿から得られる情報(年齢、身長、退職理由など)を分析し、「18世紀前半におけるオート=ノルマンディー地方のマレショーセ隊員(1720〜1750年)」と題して学会・研究会で報告した。第三に、プレヴォ裁判の主要な担い手であるマレショーセの将校及び裁判役人について、その兼職や勤務実態に注目し、「アンシァン・レジーム期の国王役人の実像-18世紀前半オート=ノルマンディー地方のマレショーセの事例から-」と題する研究報告を行った。第四に、地域住民の国王権力の受容についてマレショーセと地域住民の関係から検討し、「地域住民とマレショーセ -住民の保護者あるいは抑圧者?-」と題して報告した。上記の3報告は近く論文として学会誌に投稿する予定である。
著者
大塚 紀弘
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中世日本に中国などの外国から渡来した人々、すなわち日本中世の渡来人の存在形態について考察し、それに関する歴史像を提示する。主に平安時代末期から南北朝時代にかけての中世前期(12世紀から14世紀)に焦点を絞り、渡来人に関係する史資料を網羅的に収集・整理し、渡来の経緯や活動の実態について、時系列に沿って総合的に考察する。特に、日本全国の寺院などに伝来した、渡来人が日本で書写・刊行に関わった典籍を研究対象の中心とする。これらを順次調査・撮影し、書写奥書や刊記に見える年代、出身地、書写地および筆跡に基づいて、渡来人の人物像を解明する。
著者
荒木 聡彦 塩井 成留実 澤田 均 松井 太衛
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

「がん細胞や白血球の血管貫通」における血管壁の開口現象の分子機構は、よく分かっていない。血管貫通においては、出血性ヘビ毒ADAMが血管開口を引き起こすことから、ADAMによる血管細胞間解離を解析した。既にLRP6の切断が血管壁開口現象に必要であることを示唆していたが、今回はADAMの結合標的を探索した。その結果ADAMBP1細胞膜タンパク質(仮称)がヘビ毒ADAMに結合することを示すとともに、ADAMBP1阻害抗体により細胞間解離等が阻害されることを示し、ヘビ毒ADAMの結合受容体であることを示唆した。また他にADAMに結合する候補タンパク質として、ADAMBP2,3,4,5を見出した。
著者
飯塚 靖
出版者
下関市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

(1)国共内戦期の中国共産党の兵器の調達と生産状況を研究し、共産党軍の東北での内戦勝利の背景には、旧日本軍が遺棄した兵器への依存、満洲国時期の機械設備や軍事施設・産業施設の利用があった事実を解明した。(2)資料「中共事情」を手掛かりとして、大連での中国共産党による日本人技術者の留用の実態に迫り、「強制抑留」とも言えるその過酷な側面を明らかにした。特に、大連で組織され、多くの技術者を欺瞞的手法で北満にまで送致した、中国経済建設学会なる謎の組織の真相に迫った。
著者
高橋 健一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

1900~10年代のロシア文化においては形而上的音楽論が隆盛を極め、亡命文化においても音楽思想は重要であった。本研究はその中でこれまで十分に解明されていないエミリィとニコライ二人のメトネル兄弟の音楽思想を研究対象とし、1900~1910年代、そして亡命後まで跡付け、その内容を他の思想家や文化人の活動や思想との関連で意味づけることを目的とする。それによって、ロシア象徴主義やイヴァン・イリインの思想を始めとする芸術思想の諸問題やロシア文化のナショナル・アイデンティティの問題を再考し、さらにエミリィが深く関わったユング心理学がロシア文化に与えた影響等についても新たな知見がもたらされると期待される。
著者
赤尾 聡史
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

植物工場など土に拠らない集約的農業が広まった場合,農業副産物の処理ニーズが高まると予想される.これらを事業系廃棄物として処理した場合の経営影響を100 m2規模の施設園芸を対象に行い,農業所得に対して10%前後の処分費を必要とすると見積もった.農業副産物を資源として利用するため成分調査を行い,肥料成分としてリンを含むミネラル含率が高いこと,炭素/窒素比が低く生物変換に注意を要すること,ルテインなどカロテノイド類の含率が高いことを示した.
著者
川堀 真人 七戸 秀夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

脳出血特に慢性期に関して現在有効な治療法は存在せず、多くの患者が麻痺を抱えて生活している。幹細胞はこの麻痺を改善させうる治療法として期待されているがその機序は不明な点が多い。今回の研究では脳出血慢性期の運動機能障害に対する幹細胞の機能改善に関する作用機序を解明することを目的としている。脳出血慢性期モデル動物の作成、最適な細胞のコンディション、投与された幹細胞の分化・栄養分泌機序、脳内ネットワークの改善効果を調べる。
著者
森川 友義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

集団間あるいは国家間における、紛争・テロリズム(特に自爆テロ)といった生命の危険を有する状況で、『マキャベリ的知能』に基づく意思決定がどのように行われるかについて仮説を提供し、データを用いて検証を実施した。
著者
中村 禎子 中山 敏幸 奥 恒行 田辺 賢一 下内 章人 金高 有里
出版者
十文字学園女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、妊娠期の母体の栄養環境に依存して胎児期の発生に異常を来すモデルマウスを用いて、妊娠期に難消化性糖質含有飼料を摂取させ、母体の腸内細菌が産生する水素ガスが胎児へ移行することによって、胎児のWntシグナル伝達を調節して正常な発生に誘導し、成長後の疾病の罹患や重症化へ及ぼす影響をモデルマウスを用いて明らかにする。申請する科研費では、まず、【実験Ⅰ】において、妊娠期に葉酸過剰飼料と、これに難消化性糖質を含有する飼料を与えて、胎児の発生期に惹起する異常に対する影響を観察する。【実験Ⅱ】では、実験Ⅰと同じ飼料を妊娠2週間前から与えて実験Ⅰとの同異を検討する。
著者
肥爪 周二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、平安・鎌倉時代の訓点資料を中心とした、一次資料を利用することにより、日本語の音節構造の歴史を明らかにしようとするものである。研究代表者は、開拗音・合拗音、二重母音・長母音、撥音・促音、清音・濁音のそれぞれについて、従来の学説とはかなり異なる見解を提出してきたが、本研究においては、それらを補強あるいは修正するための具体的なデータを収集した。この成果は『日本語音節構造史の研究』として、2018年度中に刊行予定である。
著者
久保田 裕道 本林 靖久
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

危機的状況にあるブータンの祭礼芸能の変容実態と、その要因となる社会的環境の変化とを民俗学の手法を用いて調査・分析を行い、画像・映像を併用した報告書を作成する。対象は、タシガン県メラ村を中心とし、その他ブータン各地の事例との比較も行う。方法としては、現状を①形態的変容、②意味的変容、③縮小・休止・廃絶等に分類し、その要因を(a)伝承的必然性(b)社会的要因(c)精神的要因(d)活用的要因等に当てはめて分析を行う。その上で分析結果が、祭礼芸能の保護にどのように結びつくのかを併せて考察し、最終的な無形文化遺産保護の提言につなげる。また、現状での新型コロナウイルス感染症による変容実態をも検証する。
著者
小栗栖 等
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中世の手書き写本は、様々な略号が使用される上、句読点もない。文字自体も現代のものとは異なる。そのため、たとえ活字で中世の言葉を読めたとしても、写本そのものを専門外の人間が読むことは極めて困難である。校訂作業とは、そうした手書き写本を印刷本の体裁に仕立て直す作業である。本研究の目的は、フランス最古の叙事詩、『ロランの歌』の、シャトルー写本、ヴェネツィア写本を校訂し、さらに、そのテキストをコンピュータで容易に扱えるようにするところにある。本研究の主な内容は、校訂作業と、その作業を容易にしたり、校訂テキストを扱うための電子ツールを作成するところに存する。
著者
常本 照樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度から13年度にかけて、本研究は、わが国固有の事情に適合した先住民族の権利実現の具体的モデルとなる事例を検討することを目指した。具体的には、アメリカ本土48州において確立している先住民法制の適用を受けておらず、合衆国政府から正式に先住民族としての認定を受けていないという点でハワイ先住民とアイヌ民族に近似性があるとの認識に基づき、ハワイ先住民の法的地位およびそれに関する法制度を調査・検討した。とりわけ、OHA(ハワイ先住民局)の理事選挙の選挙権を先住民に限定することを違憲とした合衆国最高裁のRice v.Cayetano判決の意義・射程を検討するとともに、OHAを中心に実施されている先住民を対象にしたプログラムを調査・検討した。また、現在のハワイ先住民に関する法制度が、深く歴史に根ざしたものであるため、ハワイ王国建国前後からの法制史を調査した。この研究の結果、合衆国法によって先住民族との認定を受けなくても、合衆国憲法の平等保護条項に違反することなく先住民としての権利を保障することは必ずしも不可能ではないことを認識するに至った。アメリカにおいては、まさにこの考え方がRice事件において争われたと見ることができるが、ロジックとして成立しうるとすれば、あとは政治的決断の問題である。そうであるならば、その政治的決断を導く要因は何か、が次に探求されるべき課題となろう。ハワイにおいては1974年の州憲法改正においてこの決断が積極になされ、Rice判決以後、この決断が消極になされそうな気配が見える。この両者を比較して考究することで、ハワイと同様に多数者に対する経済的利得という事情の無い日本において、憲法に抵触することなく先住民族の権利を保障する方途が見えてくるはずであるとの着想を得た。今後は、この着想を発展させ、日本に適合的な先住民法制のあり方を具体的に考究していくことにしたい。
著者
吉野 夏己
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

「嫌がらせ訴訟」とも定義される「スラップ(SLAPP)」対策についは、人格権としての名誉権保護及び裁判を受ける権利と、表現の自由を対立軸として、憲法、刑法、民法、訴訟法など多様な法領域にまたがる法解釈論が求められ、加えて裁判官の訴訟指揮を含む訴訟実務のあり方、さらには、スラップ被害防止法制定などの立法政策について、横断的・多角的視点での検討が求められるところ、わが国においても、「現実の悪意」基準を不法行為法の解釈に取り入れるなど、表現の自由の価値を基底とするスラップ救済法理を探る。
著者
岩田 浩子
出版者
名古屋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では育児行動に着目し,生活行動としての意義と行動特性を明らかにすることを目的に,(1)「おんぶ」と「抱っこ」の現代における意義,および,(2)その行動様式の特徴と作業負担についての分析を試みた。結果を要約すると以下のとおりである:(1)人間の様々な行動様式の中で,労働と育児を同時に担えるおんぶは「運搬法」として抱っこよりも大きな役割を果たしてきたと考えられる。しかし,最近ではおんぶや抱っこは乳児運搬法としてよりも親と子が密接にふれあう方法としての意義が強まっていると考えられる。(2)野外観察によれば,とくに余暇活動時には父親が運搬具なしで背負ったり,片腕だけで抱く事例が数多く観察された。運搬具なしのおんぶや片腕だけの抱っこは子どもが姿勢保持できることと覚醒時に限られ,それ以外は運搬具を用いるか,抱っこにも両腕を用いる必要がある。(3)両腕を用いる抱っこの場合,親子の向き合い方は対面型が最も多く,側面型も約38%あった。子どもを抱く位置は親の胸の中央が最も多く(44%),次いで右側(35%),左側(21%)の順だった。また,親子の向き合い方と抱く位置とは関係なしとはいえないことが分かった。(4)女子大学生を被験者とし,ダミーを用いた抱っこの実験室的観察において,被験者の抱き方は野外観察の親子に見る乳児の抱き方とほぼ同じだった。抱っこの姿勢は通常の直立姿勢よりも全身はやや後傾し,頭部前屈が強まる傾向にあるが,腰部背屈角度には大きい違いはない。(5)ダミー(66cm,7.5kg)を3分間抱いて立つ課題実験において,ダミーを揺さぶる動作や背中や腰部を軽く叩く動作が観察された。時間経過にともなって,踏みかえ動作が現れる被験者もあった。また,抱き続ける間,比較的動きの少なかった被験者にも前脛骨筋と腓腹筋の筋電区には左右相反的で持続的放電が見られ,下肢部にかなり負担がかかっていることが分かった。