著者
大坪 紀之
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

数論的な多様体のL関数とモチーフ的コホモロジーとの関係、またその円分体論への応用を研究した。とくに、円分体のヘッケL関数の特殊値とフェルマー曲線のモチーフ的コホモロジーとの新たな関係を、一般超幾何関数を用いて示した。また、超幾何ファイブレーションという多様体族を新たに定義し、その周期に対するGross-Deligne予想を証明し、そのレギュレーターを一般超幾何関数を用いて表すことができた。さらに、フェルマー曲線塔の副有限ホモロジー群の構造を決定し、それを用いて、Ihara-AndersonによるJacobi和の普遍測度の、簡明な構成を与えた。
著者
松田 稔樹
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、応募者が提案する「問題解決の縦糸・横糸モデル」と、同じく政策評価を課題として「総合的な学習の時間」から教科のカリキュラムを設計する「新・逆向き設計手法」を活用して、「Neo教育工学の目的が達成可能か?」を問う。ここで言う「Neo教育工学」は、「あらゆる社会問題を教育手段で解決する学問」であり、その目的達成手段がカリキュラム開発手法だからである。具体的には、SDGsの複数課題を題材に、各教科で学ぶべき学習要素を明確化し、モデルに即したゲーミング教材やe-portfolioでコーチングすれば、転移を含めた目標達成が可能なことを事例として示す。
著者
古郡 鞆子 松浦 司 李 青雅
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

世界に広がる肥満化現象の実状、肥満の背景にある社会・経済的環境についての把握と考察をし、肥満が日常生活や仕事(雇用、賃金、その他の待遇)、医療費や社会保障などに与える影響を経済学の立場から分析した。肥満は、保健衛生面では汚名やいじめ、がんや生活習慣病の発症、短命、医療・医療費の増大、労働面では生産性の低下や採用・職種・賃金・昇進等での差別の問題を生んでいる。そのそれぞれを通し、肥満が社会に与える影響の分析を行い、健康な生活の維持、肥満予防・対策に関する考察と提言を行った。
著者
五味 文 岡留 剛 荒木 敬士 福山 尚 角所 考 井村 誠孝 小椋 有貴
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は元来予後良好な疾患とされていたが、病状が遷延し、重篤な視力低下に至ることもある。さらに近年ではCSCと加齢黄斑変性との関連が示唆されてきており、実際一部のCSC例は滲出型加齢黄斑変性に移行することがわかってきている。本研究の目的は、CSC症例における遷延・加齢黄斑変性移行例のリスク因子を見出し、早期の介入を促すことで更なる病状進展、視力低下を抑制することである。具体的には、①眼科画像検査、②身的・外的ストレス評価、③視覚異常のシミュレーション、の3つのアプローチで、ハイリスクCSC症例の早期発見を試みる。
著者
田中 克典 加藤 鎌司 山本 悦代 大庭 重信
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では果実形質が選抜されていたことを検討するために,果肉色(CmOr)や果実の酸味(CmPH)に関連する遺伝子についてDNAマーカーを開発するとともに,それらのマーカーを用いてメロン種子遺存体を分析した.分析により,メロン種子遺存体の解析によって,近世の商業都市である大坂城・城下町ではメロン仲間の選択において酸味や果肉色に好みがあったこと,それらのメロン仲間が日本在来のマクワやシロウリと関連があることを示していたことがわかった.今後,作物への嗜好と選抜との対応,これに関わる社会や政治的背景を研究するため,これらDNAマーカーを幾つかの時代のメロン種子遺存体に適用する.
著者
金 炳学
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、学術的独自性として、韓国においても紛争解決手段として多用されている間接強制に焦点をあて、日本においてその理論的背景についての分析がなされていない現状から、韓国における間接強制の弾力的活用をめぐる法改正議論について検証をする。あわせて、本研究の創造性として、韓国の理論的状況の対比を通じて日本民事執行法上の間接強制が帯びている独自の可能性について、姉妹法たる韓国法との比較法的見地から理論的・実証的意義を再確認し、ドイツ・日本・韓国の比較民事手続法的考察をし、アジア法からヨーロッパ法への法の環流を促す新たな可能性をみいだす。
著者
永井 成美 坂根 直樹
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「働き方改革」により柔軟な働き方が広まりつつあるが、社会のインフラを支える24時間シフト制の職種は一定数存在する。体内時計とのズレにより生じるシフトワーカーの疾病や傷害を予防し、生産性と社会秩序を維持するためにも時間栄養学に基づく「食べ方改革」が望まれる。本研究では、1)食べる時刻(朝・昼・夕・夜間)や活動・睡眠時間帯を考慮した「食べ方改革レシピ」と「食べ方改革ルール」を開発し、2)夜間勤務のある事業所での介入研究により効果を検証する。最終目的は、一億総活躍社会をめざす「働き方改革」の中で勤務時間の変更が難しい夜間・シフト勤務者の健康を「食」で下支えし、活力ある社会の実現に貢献することである。
著者
佐藤 恭一
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

回転と直動の運動の組み合わせは,工作機械における穴加工,穴の内径研磨など,多くの産業機械に見られる運動である.通常は,回転運動を回転型のモータに,直動運動をリニアモータに,それぞれ独立して負担させ,この二つのアクチュエータを結合することにより,回転・直動の二自由度運動を実現している.本研究では,この二自由度運動の一つのアクチュエータシステムによる実現と,駆動デバイスの小形化・高機能化をはかること目的に,リラクタンス力により回転力を発生するスイッチトリラクタンスモータ(以下SRMと記す)に着目した.従来の回転型SRMに,固定子磁極の回転軸方向の磁束密度分布を制御する機能を付加することにより,リラクタンス力によってトルクと同時に軸方向推力も制御することを可能とした.これにより,出力軸の回転と軸方向のストロークを両立するモータ機構を試作レベルで開発した.その諸元は次のとおりである.構造(突極:回転子4極,固定子6極),定格出力400W,定格回転数2000rpm,軸ストローク40mm,軸方向推力30N.このモータ機構を実用レベルとするために,「回転・直動する出力軸の回転角度と軸方向変位の同時検出法の開発と,回転・変位センサのSRM内への搭載」,「回転速度・トルクと軸速度・推力の制御法の確立」,「二自由度SRMの電磁気的および機械的最適設計」の課題に取り組み,各課題解決の指針を提案した.さらに,制御性能を維持しつつ,モータ駆動電気回路の電流センサの個数を低減する回路を提案し,実機試験によりその有用性を確認した.
著者
平野 和彦 中村 聡 馬 燕
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

康有為は中国清末の思想家、政治家である。変法運動の中心的存在でとして影響を与えたが、1898年の戊戌政変(百日維新)の失敗後、康有為は中国を離れて日本経由で長い海外亡命生活を送ることになる。その前後の思索をまとめた『大同書』は後世の思想家に大きな影響を与えた。本研究で扱った康有為自筆資料は、特にその海外亡命時代と中華民国になって帰国後に書かれた詩文で、先行研究との間に、多く文字の異動が見られるものや、筆写した年代が異なる資料が散見され、比較研究によって康有為の足跡をより明瞭にする研究となった。
著者
中野 幸夫
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

気相ヨウ素分子が大気中に放出されるとヨウ素エアロゾル生成を引き起こす。この気相ヨウ素分子の大気中への生成の新たな過程として,海洋中のヨウ化物イオンの光分解が一つの候補として考えられる。しかし、この生成過程が大気環境に与える影響の評価は未だ行えていない。本研究では,この過程による気相ヨウ素分子生成量の水素イオン指数,溶存酸素量,ヨウ化物イオン濃度など海洋条件における各パラメータ依存性について高感度分光測定法を用いた実験的決定の研究を行った。その結果を用い、この過程が実際の大気環境へ与える影響力についてのモデル計算を行い評価した。
著者
光本 滋
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「1968年」の大学改革は、欧米では新しい社会批判の理論や社会運動の生成などとも絡めて旺盛に研究されている。日本でもこの時期、各大学でとりくまれた改革は大学の課題をほぼすべて取り上げており、改革の方向としても優れたものを豊富に含んでいた。にもかかわらず、大学はその成果を継承し発展させることができていない。それはなぜなのか。この問いに答えるために、本研究は、「1968年」を歴史的な参照点とし得ていない、日本の高等教育研究の水準が何によってつくりだされたのかを検証する。そのために、同時代の大学改革の内実を明らかにし、理論・実践の到達点と高等教育論の展開に資する視点および課題を明らかにする。
著者
松原 隆彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高赤方偏移宇宙の大規模構造からいかにダークエネルギーをはじめとする宇宙論的な情報を得るかについて、解析的な方法と数値的な方法の両面から詳細に研究した。とくにバリオン音響振動を用いてダークエネルギーの制限を得るために必要な理論的に強力な手法を開発した。そして実際のSDSSデータを解析した。さらに、宇宙初期状態を探るために重要な、ゆらぎの非ガウス性に関する情報を得るため、必要な理論的手法を確立した。その手法を用いて、宇宙マイクロ波背景放射温度ゆらぎのデータを解析した。
著者
松原 隆彦
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

宇宙論的な非線形摂動論における独創的な理論手法である「統合摂動論」の枠組みの中では天体のバイアスを一般的に扱うことができる。天体バイアスの具体形については不定性があるが、バイアス関数というものが重要な役割を果たす。本研究では、いくつかの異なるバイアスモデルについて具体的にバイアス関数を求めることに成功した。さらにそれを用いて最終的な観測可能量であるパワースペクトルや相関関数などがバイアスの違いによってどのような影響を受けるかを系統的に調べた。その結果、大スケールになるほど、また、高赤方偏移になるほど、バイアスモデルによる違いは小さくなることを明らかにした。
著者
松原 隆彦
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

宇宙の大規模構造という観測量から、初期宇宙の物理を探求するための手法を模索する。これまでに研究代表者は、大規模構造の統計量について準非線形領域で力学的な統計解析を系統的に行う手法である統合摂動論を確立した。この理論を初期宇宙における具体的な問題に応用することにより、独創的な成果を得ることができる。具体的な研究課題は2つある。ひとつめは、インフレーション理論において励起される可能性のある初期ゆらぎの非ガウス性を宇宙の大規模構造の統計解析によって制限することである。ふたつめは、初期宇宙に形成される可能性のある原始ブラックホールがどのような空間的分布をするのか調べることである。
著者
角田 肇 吉川 裕之
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

子宮頸部に発生する扁平上皮病変(扁平上皮癌を含む)はその原因としてHPV(Human papillomavirus)が関与していることが明らかにされているが、腺癌においても同様に発癌関与している可能性がある。子宮頸部腺癌におけるHPV陽性率は報告によって30〜90%とばらつきがあり、また腺癌病変の周辺にはしばしば扁平上皮病変を伴うため、これまでの報告が腺癌部の感染の状態を正確に反映しているか、あるいは扁平上皮に感染したHPVを観察しているのかははっきりしない。本研究ではLaser capture microdissection法により、子宮頸部腺癌部のみのHPV感染を厳密に確認することで、腺癌においても扁平上皮癌と同様にHPV感染が発癌の契機となっているのかを検討した。子宮頸部腺癌症例60例(類内膜腺癌19例、内頸部型37例、腸型1例、低分化腺癌2例、未分化腺癌1例)についてLaser capture microdissection法を用いて腺癌部のみを扁平上皮部、間質と別に採取し、コンセンサスプライマーを用いたPCR-RFLP法によりHPVのタイピングを行った。腫瘍部のHPV感染の有無を検討すると60例中38例(63.3%)でHPV感染を認めた。内訳は内頸部型37例中21例(56.8%)、腸型1例は陰性、類内膜型19例中15例(78.9%)、低分化腺癌2例中1例、未分化腺癌1例中1例であった。陽性例38例中32例が18型に感染していた(複合感染7例を含む)。一方、扁平上皮病変(CIN)では検討が可能であった16例中5例(31.3%)でHPV18型に感染していた。腺癌部と扁平上皮部で異なる型のHPVに感染している症例はなかった。以上より扁平上皮の混入をなくした頸部腺癌細胞そのものにHPV感染が認められることが明らかとなり、18型感染が優位であることが確認された。また、共存する扁平上皮病変と同一の型のHPV感染であることを証明した。
著者
小熊 剛
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

真菌は難治性呼吸器感染症の原因となるが、時に全く病態・治療の異なるアレルギー性気管支肺真菌症などの難治性アレルギー疾患も引き起こす。その原因真菌はアスペルギルスの頻度が最も高いが、一方、真正担子菌でいわゆるキノコの一種であるスエヒロタケなども原因となる。本研究では、実際の疾患の患者喀痰などから培養された真菌を用いて、真菌が難治性アレルギー疾患を引き起こす機序を培養細胞やマウスモデル系を用いて解析する。さらに市販の1200種以上の薬剤セットのスクリーニングによる新規薬剤の創出(ドラックリポジショニング)、環境真菌の無毒化システムの構築、により新たな治療の構築を目指す。
著者
中村 和彦
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

海洋生物などに由来する生理活性物質について、環形動物ウミケムシの炎症惹起物質コンプラニンをモデルに機能解明を目的として化学的研究を進めた。また植物成分からコンプラニンに構造が類似したアセチレンアミドを単離し、メラニン生成を阻害することを見出した。またGrubbs触媒によるジオールの開裂反応を見出し、生理活性について考察した。
著者
荒川 健佑
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、乳酸菌の抗真菌性に着目し、真菌をターゲットとした「バイオプリザバティブ(食品保蔵因子)」と「プロバイオティクス(保健機能因子)」の両面で食品利用可能な乳酸菌株の単離・選抜・同定(1年目)、選抜菌株が産生する抗真菌物質の単離・精製・同定(2-3年目)、選抜菌株の効果についてのin vitroおよびin vivo評価(2-4年目)を行う。
著者
崔 銀姫 友永 雄吾
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、1950年代から2000年代までの凡そ半世紀にわたって日本で放送されたテレビのドキュメンタリー番組における「アイヌ」というエスニシティの言説と表象の考察を通して、日本の現代社会における他者性の構築と変容を考察したものである。特に、本研究は、過去約60年間のドキュメンタリーにおけるアイヌの表象と他者性に関わる変容を,言説的実践や意味の生成,権力的作用といった表象のシステムに注目しつつ、学際的な(メディア研究や歴史学,人類学,民族学等)視座を踏まえたカルチュラルスタディーズの研究方法を用いて、番組を分析・考察するものである.
著者
鷲谷 花 土居 安子 紙屋 牧子 岡田 秀則 吉原 ゆかり アン ニ 鳥羽 耕史
出版者
一般財団法人大阪国際児童文学振興財団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、スクリーンへの映写メディアである映画及び幻灯(スライド)を、近現代日本における社会運動組織が、どのように宣伝・教育・記録といった目的に活用してきたかを解明すべく、主に社会運動の一環として自主製作・上映された映画及び幻灯のフィルム・スライド・説明台本といった一次資料の調査に取り組んできた。本研究プロジェクトの3年間にわたる調査研究活動により、第二次世界大戦後を中心とする日本の社会運動と、映画及び幻灯の自主製作・上映活動の連携の実態や、そうした活動に関わった組織及び人物の動向の一端が明らかになった。また、複数の貴重な一次資料を発掘し、修復及び保存、公開を進めることができた。