著者
勝本 雅和
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

意匠権の書誌情報に基づき、企業のデザイン活動に関して、その量的水準、デザインマネジメントに関連する構造、デザイン活動の質を計測する手法を開発した。またそれらを用いて企業パフォーマンスへのデザイン活動の影響を分析した。その結果、デザイン活動の水準は企業パフォーマンスに正の効果があり、その効果は研究開発投資と比較すると概ね10分の1程度であることが明らかとなった。またデザイン活動の構造、質についても企業パフォーマンスに影響を与えることが示された。
著者
中土 純子
出版者
東京福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

生活保護法は、日本におけるセーフティネットとして重要な役割を果たす制度である。近年、社会構造や家族機能の変化に伴って、現代的貧困という見え難く複雑化した社会問題が深刻化しており、生活保護行政は、多くの生活課題を抱えたケースへの介入や問題解決の困難さに直面している。そこで本研究では、生活保護法におけるソーシャルワーク機能について、アウトソーシング(外部委託化)の可能性を阻害要因と効果の両側面から検証し、社会福祉専門職である社会福祉士が、現代社会の貧困問題や制度の狭間で支援困難となりやすいケースへ介入する意義を明らかにする。
著者
原田 孝
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

可動部に接続した複数のケーブルの長さを制御して可動部の位置と姿勢を変化させるケーブル駆動パラレルロボットは,長いケーブルを用いることで広い動作範囲を有し,スタジアムカメラの移動などに利用されている.しかしながら,可動部を回転させたときにケーブルどうしが干渉し,回転動作範囲が制限される問題がある.そこで本研究では,可動部に回転プーリを組み込み,エンドレスケーブルを用いてプーリを摩擦駆動する新たな機構により,回転プーリの無限回転を実現する新しいロボットを提案し,力学的な解析に基づいた設計方法を確立し,数値計算および基礎実験による検証を行った.
著者
岡本 康裕
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

CCRF-CEM細胞にネララビンを添加し、限界希釈法で培養し、ネララビン耐性株を2つ樹立した。耐性株はMTTアッセイで親株より高いIC50(55倍および78倍)を有していた。耐性株ではネララビン代謝に関連するENT1、DCK、DGuoKのmRNAの発現が有意に低下した。DCK のプロモーター領域の脱メチル化は関与していなかった。耐性株では、p-Aktの発現亢進が認められ、PI3K/AKT経路の発現亢進が示唆された。また、ネララビン処理72時間後にはp-ERKの過剰活性化が見られた。ネララビン代謝経路に特異的なMEK/ERK経路の過剰活性化が耐性化の原因と考えられた。
著者
石井 望 中村 光彦
出版者
長崎総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成十八年度、北京にて發見した「北西廂訂律」は、現存最古の元曲譜として極めて貴重なものだったので、平成十九年度はその詳細な分析のために、比較の封象となる曲譜を蒐集し、比較を行なった。その結果「北西廂訂律」に古メロディーが留存してゐることがいよいよ明瞭になって來た。メロディー研究の基礎となる曲韻研究に於いては、范善臻「中州全韻」の七聲體系こそが崑曲の正統であることを示す證據を「韻學驪珠」など諸韻書に求め、學會にて口頭發表した。曲韻研究の基礎となる音韻學概念を六朝に遡って探求し、インド輪廻方式の呉語音圖「歸三十字母例」が音韻學の源であり、それ以來呉語の曲韻に至るまで清濁を高低としてゐることを明らかにした。メロディー研究の今一つの基礎となる音階研究に於いては、太平御覧等に見える「制は角音にのっとる」との記載にもとづき、ファ・ファ#・シ・シ♭を曖昧にする音階が唐代より宋詞・元曲を経て崑曲に至るまで基本原理となってゐることを明らかにし、臺灣にて口頭及び誌上にて發表した。また分擔者中村光彦の指導する卒研にては、機器吹奏を以て崑曲笛の音階を試測し、今後各地の古樂器の音階を計測するための準備を整へた。
著者
紺野 啓
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

超音波が細胞に与えるメカニカルストレスが、 培養細胞にもたらす種々の促進的効果を得ながら培養が行い得るシステムを開発した。初期の基礎的照射実験では超音波照射部である振動子の、次段階の実験では照射対象の、いずれも予想を大きく上回る温度上昇が判明したため、これらを回避しつつ目的とする効果が得られるよう装置の改良を進め、照射におけるおおまかな安全域を決定し得た。この条件は現在の装置で単純に設定できる範囲を超えるため、今後、装置の改良をさらに進める必要がある。
著者
西 信康
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、万物の生成変化に関する中国古代道家思想の生成論と、人性論を含む儒家の倫理学説とを対象とする。道家の生成論を儒家の倫理学説に対する存在論的基礎を提供するものと想定し、儒道二学派の思想的形成過程とその思想的交渉の具体的様相を解明する。併せて、儒家の倫理学説における解釈史上の諸問題を実証的に解決し、各資料の新解釈の提示のみならず、研究者の視点を更新する解釈学的批判に取り組む。対象となる一次資料は、世代を超えて今日まで伝わる伝世(でんせい)文献と、新たに発見された出土資料との二種類である。
著者
鳥山 優 小池 亨 道羅 英夫
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

棘皮動物に属するマナマコは,刺激に応じて「内臓の自切・放出」を行う。我々は「その内臓放出個体を横切断すると,各切断体から個体が再生すること」を発見しており,そこには器官再生の根幹を成す分子機構が関わると考えられる。本研究は,この再生実験系における「器官再生の起点となる再生芽」に着目し,その構成細胞の起源と再生芽形成・器官形成に関わる分子機構を明らかにすることを目的とする。具体的内容として,①再生芽形成・器官形成過程の組織学的解析,②各種ステージの再生芽の網羅的遺伝子発現解析,③目的遺伝子発現細胞の同定と機能解析を行う。本研究により,再生医療の技術開発に繋がる基礎的な分子機構の発見が期待される。
著者
明間 立雄 藤岡 仁美 舩橋 利也
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、海馬の高次学習機能の神経基盤にミクログリアが関与する可能性を調べるために、海馬の可塑性を検討している。このために、①Adeno-associated Virus(AAV)発現系の確立、②ミクログリアのみでCreを発現している動物の確立、③解析系の確立、を行っている。①に関しては、Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugもしくはdiphtheria toxin A subunitをAAVを用いて脳内に発現する系を確立した。すなわち、準備は整った。②に関して、ミクログリアのマーカーであるCD11bに注目していたが、CD11bを発現していないミクログリアの存在が別の系の研究から明らかとなったのでIba1もしくはCX3CRに注目している。後者は、抗体の特異性に問題がある可能性があり、今日まで染色にいたらずCX3CR-GFPマウスの使用を検討している。また、CD68のプロモーターでDREADDを発現するAAVの使用も考慮している。③に関して、受動的回避学習や、Y迷路、オープンフィールドの解析系を確立した。その過程で、本教室の条件では、マウスとラットがIAの再強化や学習の消去過程、情動など、異なることが示唆された。従って、これまで蓄積したデータを生かすためには、やはりラットの方が適しているとの結論に達し、現在、CX3CRのプロモーターでCreを発現するラットを作成中である。
著者
中井 智也
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-01-04

本研究では、数学能力の神経基盤を、以下の段階を経て明らかにする:(1)数学能力の脳機能モデルとしてのニューラルネットワークモデルを構築する。(2)実験参加者が数学課題実行中のMRI計測を行う。課題内容からニューラルネットワークにより抽出した特徴量と脳活動の多変量線形回帰により符号化モデルを構築し、各特徴量の脳情報表現を検討する。(3)脳活動の予測精度を元に、複数のニューラルネットワークモデルのうちヒトの脳機能に最 も近似したモデルを調査する。(4)構築した符号化モデルの一部の構造を崩すことにより、仮想的な脳機能への影響をシミュレートする。
著者
竹田 雄一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

高次算術的リーマン・ロッホの定理の定式化とその証明に向けて,研究を行った.具体的には,iterated doubleと呼ばれる既約でない多様体上の計量つきベクトル束に付随する高次解析的トーションの理論を構成することを試みた.そして証明を完成させるために必要な高次解析的トーションに関する十分条件を見つけた.また筆者は,t-コア分割と呼ばれる特別な性質をもつ自然数の分割について研究を行った.そして,t-コア分割に関係する興味深い2次形式を発見して,その2次形式やそれに関連する有限体上の幾何を用いて,t-コア分割の分割数の間の関係式を導出するための,組み合わせ論的な手法を見出した.
著者
木村 宣彰
出版者
大谷大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

中国とインドの交流は西域を媒介としており、西域の仏教や国情が密接に関係している。インド・西域からの渡来僧は、中国へ仏教を伝えることを目的にしている。例えば、月支の竺法護や亀茲の鳩摩羅什等の例に見られるように経典翻訳や教義理解や実践の指導を行っている。ところが、中国からインドへの入竺求法の動機は学問的な関心であった。中国僧の入竺は既に三世紀の後半から始まっている。その最初は魏の朱士行であり、魏の甘露五年(260)に西遊しているが、その動機は『道行般若経』を読み、文意が通じなかったため自ら西域に原本を求めるためであった。また道安の『放光光讃略解序』によれば、晋成帝の時代(327〜334)に慧常・進行らが西遊しているが、その目的も学問的な課題であった。かの法顕や玄奘も同様に自らの仏教研究の課題の解決にあった。また中国僧の入る竺の目的として自らの宗教体験や受戒の正否を確かめることもあった。その点で中国僧の入竺は、日本仏教における巡礼や、世の諸宗教にみられる聖地巡拝とは全く異なる性格のものであった。この様な目的でインドに渡った中国僧のためにインドに「漢寺」が存在していたことを確認した。『法苑珠林』所引の王玄策の『西域志』や引継の『印度行程』などによってそれを知ることが出来る。中国とインドの交流が最も活発になるのは5世紀と7世紀であり、逆にそれが減ずるのは6世紀と8世紀である。これは西域の事情や中国の秦や唐など国情と密接に関係している。中国僧の入竺記録としては法顕の『仏国記』や玄奘の『西域記』などは著名であるが、その他に、雲景の『外国伝』、智猛の『遊外国伝』、法勇の『歴国伝記』などが存在した。それらの逸文の収集に努めた。今後の残された研究課題としては、それらの入竺或いは渡来の僧たちが中国仏教の形成と発展に如何なる影響を与えているかの解明が是非とも必要になる。
著者
陶 徳民
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、近代における日本人のリンカーン受容の主要事例を検討し、新知見を提示したものである。結論として、リンカーンの健全な個人主義の精神(向上心、職分意識とリーダーシップ)と開かれた政治の理念(正義論、民主主義と人種差別撤廃)がジョセフ彦・松村介石・新渡戸稲造・内ヶ崎作三郎・高木八尺・賀川豊彦などの著述および国定修身教科書を通じて伝播し、青少年の立身出世の精神、国内政治の民主化と国際舞台における政府の人種平等主張などに多大な影響を及ぼした。
著者
谷川 晋一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、Chomsky (2013, 2015) が提唱するラベル付け理論において、(i)標準的な主語位置に現れる非名詞句・非主格句が機能主要部Tとどのようなagreementを行うのか、(ii)動詞句内に残る主語・主格名詞句はどのようにして距離的に離れている主要部Tとagreementを行うのか、を明確にすることである。(i)については、素性継承の結果、話題素性のagreementもしくはphi素性に関する部分的なagreementがあることを示した。(ii)については、距離的に離れている2要素間でも同一位相内であればC統御に基づきagreementが行われるという結論を導いた。
著者
三浦 弘
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

イングランド北部の数地点とマン島において、英語の各地域方言発音を現地にて録音し、音声特徴の現状を社会音声学的な手法で記録し分析した。社会音声学的な手法というのは、地域的な相違のみならず、被験者の社会的階級や年齢などを考慮して方言発音の変異を分類し、音響的な音声分析の結果に基づいて音韻体系を考察するものである。調査はマージサイド州リバプールとマン島(平成29年度)、ランカシャー州プレストンとヨークシャー州ブラッドフォード(平成30年度)、及びランカシャー州ランカスター(令和元年度)にて実施した。
著者
鈴鴨 富士子 蔵品 真理 秋山 純子
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は絵画に発生する劣化生成物の発生原因を解明し、材料の有する特性や保存環境の影響を明らかにすることを目的に行った。更に適切な修復処置を提示すると共に、発生の予防を提言することを目指した。本研究において絵画作品の調査・分析の他、湿熱劣化実験を実施した。また予防修復処置としてワニス塗布の効果を考察した。本研究から劣化生成物の予防処置や適切な保存環境を検討する際の指針を示すことができたと考える。