著者
武田 史郎
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、応用一般均衡モデルという手法を利用し、地球温暖化対策の分析をおこなった。特に、1) 既存の研究ではあまり考慮されていなかった不完全競争、規模の経済性の要素を応用一般均衡モデルに導入し、不完全競争や規模の経済性が持つ意味を考慮した形で温暖化対策を分析した、2) 国家間の排出権取引はこれまで多くの研究で分析されているが、国際間でのクレジットメカニズムを応用一般均衡モデルで分析できるようにしたという二つが研究の特徴である。
著者
平島 円 高橋 亮 西成 勝好
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

pHを高くし,アルカリ性に調整したコーンスターチ,タピオカ澱粉,ジャガイモ澱粉の糊化および老化特性について検討した。高pHでの澱粉の糊化は,pHにより同様の傾向を示した。いずれの澱粉においてもpH11付近では糊化が起こりにくいため,澱粉糊液の粘度は低下した。一方,pH12を超えると糊化が起こりやすくなるため,糊液の粘度は上昇した。しかし,pH13付近では糊液の粘度は著しく低下した。これはアミロース鎖やアミロペクチン鎖の分解が原因だと考えられる。コーンスターチとジャガイモ澱粉糊液の保存に伴う離水量はpHが高くなるほど少なく,高pHほど老化の進行がゆるやかになるとわかった。
著者
樫見 由美子 福本 知行
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究によれば、不法行為責任の加害者が責任無能力者である場合に、損害賠償責任を免責する制度趣旨は、法命令の意味を理解できず、また自らの行為の結果を認識できない者、その多くが精神的にも経済的にも自立できない弱者に対して、その者の将来の成長や生活を著しく脅かすことのないように損害賠償責任を免除することにあると解釈する。そして、その趣旨からは加害者の賠償責任に関して、交通事故のように自賠責保険等による責任の補てんが可能であるか、加害者である被用者個人から賠償責任が使用者に転嫁される使用者責任の場合には、加害者の責任能力の有無を問うことなく、運行供用者及び使用者の免責が認められるべきではないとする。
著者
保母 恵 谷山 牧 山下 留理子 鳥本 靖子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

地域包括支援センターにおける総合相談支援は、すべての活動の出発点となる最も重要な業務の一つである。保健・福祉の専門職が、専門性にかかわらず高齢者のあらゆる相談に応じ、必要な支援につなげるワンストップサービスを担っている。相談件数は増加の一途をたどっており、相談内容は多様化、複雑化しており、保健医療の専門知識だけでなく、幅広い知識と、支援スキルが求められる。しかしながら、地域包括支援センター保健師等を対象とした研修は少なく、多忙な業務の中研修を受ける機会も乏しく、力量不足を感じながら相談支援業務を行っていることが懸念される。そこで本研究では、地域包括支援センターで保健師等が必要とする個別支援スキルを明らかにし、必要なスキル習得のための教育プログラムを作成し、Web学習可能な教材を開発することを目的としている。方法として、教育プログラムを作成するにあたり、3年以上地域包括支援センターで経験ある保健師にインタビュー調査し、相談支援業務で用いているスキルを抽出し、その後、全国を対象に質問紙調査を行う。令和3年度は、これまで聴取できたインタビューデータを分析し、質問紙の作成を試みたが、追加のインタビュー調査が必要と判断され、調査協力者を再選定した。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による活動自粛等の影響により、協力者の確保に難航した。そのため、調査地域を広げる手続きを行い、新たな調査協力者を確保し、追加の調査を開始した。
著者
森田 晃司 平田 伊佐雄 津賀 一弘
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、要介護者の咀嚼能力と腸内細菌叢に着目し、咀嚼能力の向上により腸内環境叢の種類や多様性が変化し短鎖脂肪酸が増加する影響について調査することで要介護者の肥満や便秘以外にも全身状態を改善させる可能性を明らかにすることを目的とする。客観的咀嚼試験による咀嚼能力をはじめとする各種口腔機能、シーケンサーによる腸内細菌叢の測定に加えて短鎖脂肪酸、免疫グロブリン、α―アミラーゼ活性、セロトニン、特異的IgE、経皮水分蒸散量やBMI・便秘・口臭を解析することで咀嚼能力と肥満や便秘など全身状態との関連を観察研究と介入研究から明らかにする。
著者
関谷 昇
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、プロテスタントの拠点であった東フリースラントのエムデン(神聖ローマ帝国北西部)で活躍したヨハネス・アルトジウス(1557-1638)の政治思想を本格的に考察するものである。彼は、宿敵ボダンとは異なる新たな主権論の軸に、水平的・重層的・分権的な政治秩序を構想していた。そこには、アリストテレスやローマ法の受容、中世団体論の影響が色濃く見られ、絶対主権の支配ではなく、主権者(立法者)と統治者(執行者)との双方向的な関係のダイナミズムが見出される。究極的な価値対立の時代において、いかなる政治を通じて共生の秩序を具現化しようとしたのか、主権国家のオルタナティヴとして、その核心に迫る。
著者
金坂 清則
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

R.H.ブラントンの名は日本の灯台建設の父として知られ、幾つもの研究があるが、彼が作成した地図類、特に、帰国後に編纂しロンドンで出版した日本図Nippon〔Japan〕(1876)については、従来ほとんど注目されてこなかった。しかし、この図は、当時日本で出版されていた日本図のどれよりもすぐれた内容を備えた作品として、またブラントンのお雇い外国人としての事績が明確に盛り込まれた図として注目に値する。やはりお雇い外国人であったE.クニッピングの編になる日本図Stanford's Library Map of Japanが出版されたこの3年後の時点では、既に陸軍参謀局「大日本全図」(1877)は出ていたものの、内務省地理局編「大日本国全図」が出版されたのは1881年のことだったし、当時の日本に存在した大部分の日本図の水準はこれら欧州製日本図の水準を下回るものだった。このようないわば逆転現象が生じたのは、何よりもブラントンやクニッピングがお雇い外国人の立場を生かして、国の基本地図の整備を急務としていた当時の国家機関がその作成のために収集・保持していた最高の地図情報-それには伊能図、「官板実測日本地図」も含まれる-もを入手することができたからである。また、そのようなローマ字表記された日本図の需要があったことも無視できない。そこで、本研究では、近代日本図に関する研究の立ち遅れの克服とブラントン研究の展開をも目指して、ブラントン図に関する詳細な書誌的・地図学的検討を行い、新たな多くの知見を提示した。この成果については、雑誌「地図」に発表し、そこに、原寸大の精巧な複製図4シートを併せ出版することになっているが、このような研究のために、精緻な複製図の見本印刷を作成したり、国会図書館や内閣文庫・神戸市立博物館・横浜開港資料館での調査と、写真や複写の形で収集した所蔵資料の分析を行い、また、当時の世界の地図や地理学の水準を示す書籍を購入しての検討も行った。
著者
櫻井 智美 森田 憲司 飯山 知保 渡辺 健哉
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

従前の石刻研究による基礎データと『全元文』を主に利用し、元は宋・遼・西夏・金の制度をどのように継承したのか、南北に差はあるのか、そして、元の制度はどのように明に引き継がれ、また影響を与えたのか、というような、朝代を越えた制度の関係性を明らかにするために、元代の粛政廉訪司を初めとする監察機関といくつかの地方都市行政組織に注目して、その成立・変遷・解体の様相を明らかにする。
著者
野津 寛 納富 信留 吉川 斉 葛西 康徳
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

葛西(研究分担者)が令和31年度3月13日から22日まで米国の大学及び学会(テキサス州南メソディスト大学ロースクール及びボストンのAssociation for Asian Studies学会)に出張する予定だったが、コロナウイルスにより先方から通知が来てキャンセルすることになった。そこで、令和2年度中に改めて出張ないし海外研究者を招聘するため、当該費用は令和2年度に繰り越した。この予算は、海外からの研究者招聘に使用する予定であった。しかし、令和2年度もコロナウイルスにより、研究分担者の海外出張と海外研究者の招聘に使えなくなり、再び次年度に繰り越すこととなったた。そのため、この繰越金に関する研究実績はあげられなかった。
著者
吉永 真理 野井 真吾 鹿野 晶子 大西 宏治 そとあそびプロジェクト・せたがやのメンバーと世田谷区子ども若者部児童課のみなさん
出版者
昭和薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

自然環境に恵まれた都心部で1776組の親子を対象にした質問紙調査を行なった。子どもたちが放課後を過ごす場は低学年では学校や公園で、高学年は塾や習い事の頻度が高く、外遊びが少ない実態が明らかになった。体を動かして遊ぶ、自然環境で遊ぶ、水辺で遊ぶ時間が多いほどSDQの情緒、仲間関係、向社会性は良好だった。ゲーム時間は多動に関連していた。DSM-5/ADHDでは、からだを動かして遊ぶ時間が30分以上であると不注意傾向が少なくなることが示された。まち探検&遊び活動のアクション・リサーチでは活動量の個人間のばらつきが大きく、最後の30分間に活発に活動している群は不活発群より有意に覚醒度が上昇した。
著者
早川 公
出版者
大阪国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

文化人類学界では、公共人類学に代表されるように、近年になって社会との具体的な関与のあり方やそのための理論の模索がさかんになってきた。本研究では、大きく2つの問題に応えるために以下の課題を設定する。第1に、これまで文化人類学者の余技とみなされてきた「アウトリーチ」の取組みに着目し、その具体的実践から制作の技法を抽出する。そして第2に、これまで文化人類学の学術的意義とみなされてきた他者理解とは別の仕方の特定を分析する。この2つの検討を通じて、公共領域の問題に関わる人文社会科学の具体的なあり様を提示することが本研究の目的である。
著者
千々岩 崇仁
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

沖縄本島で土壌などの棲息環境が互いに独立している国頭村と糸満市で捕獲したハブについて、ホスホリパーゼA2(PLA2)を中心とした毒アイソザイムの組成と一次構造を比較した。その結果、沖縄島ハブ固有の毒アイソザイムの組成や一次構造は共通していたが、地域固有のサブタイプが含まれることも見出した。本研究は、個体の可塑性や小さい地域に由来する多様さと、それらが集団としての表現型へ収束するダイナミクスをタンパク質と遺伝子で実験的に観察・検証している。
著者
中田 友明
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では以下の3点について研究を展開する予定である。[1]多成分性雄性フェロモンの機能解析:雄イモリの肛門腺に発現するソデフリンとその類縁遺伝子を特異的に欠損させた動物を作成、正常雌との配偶行動や繁殖成功率を正常雄と比較し、個々の性フェロモンの役割を解析する。[2]各性フェロモン受容体および性フェロモン応答神経系の同定:イモリ性フェロモンの受容体タンパク質は同定されていないため、その遺伝子クローニングや脳内神経系の同定を行う。[3]各性フェロモンに対する応答神経系の調節機序の解明:生殖期には雌雄とも異性の性フェロモンに応答する感覚細胞が増加するので、その内分泌学的機序を探る
著者
亀野 陽亮 横倉 正倫 尾内 康臣 桑原 斉 山末 英典 和久田 智靖
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

うつ病患者数は年々増加し、その対策は喫緊の課題である。近年、神経炎症仮説とグルタミン神経仮説に基づく新薬の治験結果が報告されたが、いずれも効果は非常に限定的であった。そこで、活性化ミクログリアとセロトニントランスポーターのダブルトレーサーPET、1H MEGA-PRESS MRS、炎症性サイトカインとトリプトファン代謝物のメタボローム解析によるマルチモダル解析を行い、神経炎症とセロトニン/グルタミン神経系と抑うつ症状の相関性を検討する。そして、うつ病病態における活性化ミクログリアとセロトニン/グルタミン神経系の相互作用の役割を明確にし、新たな治療シーズの創出を目指す。
著者
北越 大輔 鈴木 健太郎 鈴木 雅人 山下 晃弘
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

ICT機器(スマホ,タブレット等)と自宅に設置したセンサを用い,高齢者が要支援・要介護状態となることを予防する取組を,家族や地域を巻き込み継続的に実現可能とする包括的介護予防システムの構築を目指す.これまで個別に開発してきた認知訓練部,見守り部,対話エージェントの各々に改善や拡張を加えながら統合を図る.各部,各機能の有効性や,統合後のシステム利用を通した長期的・相乗的な介護予防効果について評価する.
著者
井川 正道 米田 誠 岡沢 秀彦
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

筋萎縮性側索硬化症(ALS)では,酸化ストレスが運動ニューロンの変性に関与していることが家族性ALSやモデル動物による研究から示唆されているが,患者生体脳における実証はまだない.本研究では,申請者らが開発した62Cu-ATSM PETによる酸化ストレスイメージングによって,ALSにおける神経変性への酸化ストレスの関与を明らかにした.62Cu-ATSMは,過還元状態と呼ばれる,おもにミトコンドリア呼吸鎖の機能不全により電子が過剰に滞留し,酸化ストレスを惹起している部位に集積するため,本PETは酸化ストレスを生体で画像化できる.12名のALS患者(平均年齢65歳)と同年代の健常対照者を対象とし,頭部の62Cu-ATSM PETを施行した.30分間のダイナミックPET撮影を行い,各被験者のstandardized uptake value(SUV)画像を作成し,Statistical Parametric Mapping 2(SPM2)を用いて,解剖学的標準化および全脳平均を行った.さらにSPM2を用いて患者群と対照者群で集積を比較し,SPM上で患者群で有意な集積増加が認められた領域のSUV値を算出し,群間での比較および重症度との相関を検討した.その結果,SPMにて両側の運動皮質と右頭頂葉皮質に,対照者群と比較して患者群で有意な集積増加が認められた.患者群における両側運動皮質のSUV値は対照者群より有意に増加しており,さらに患者群における同部のSUV値は,重症度と正の相関を示した.以上より,ALSでは,運動皮質における酸化ストレスが増加しており,症状が強いほど,すなわち神経変性が進むほど,酸化ストレスが増加することが示された.したがって本研究により,ALSにおける神経変性には,酸化ストレスが関与することが明らかとなった.
著者
尾崎 敬 村垣 泰光
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

甲状腺再生の有無を調査するため、再生に必要な幹細胞(もしくは癌幹細胞)存在の有無を検討した。幹細胞・癌幹細胞遺伝子としてOct4が重要な因子とされているが、この遺伝子発現を誘導する手段として我々はマイクロ波を利用した方法を確立し、甲状腺未分化癌から(癌)幹細胞を誘導する可能性を形態学的・分子生物学的に示した。マイクロ波照射(2450MHz、47℃)後、未分化癌の細胞形態が変化し、細胞接着が低下することが示された(spheroid形成)。さらにOct4遺伝子発現が有意に増加することが示され甲状腺(癌)幹細胞である可能性を示唆した。(癌)幹細胞の存在は今後の甲状腺再生の可能性を示すものである。
著者
白石 成二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

臓器移植や造血幹細胞移植後などの患者に免疫抑制剤サイクロスポリンやタクロリムスを投与すると下肢を中心とした劇痛を発症する。この疼痛は鋭利な金属で刺されるような、電気が走るような発作性の痛みで、NSAIDsやオピオイドの効果がなく難治性であり、カルシニューリン阻害薬誘発疼痛症候群(Calcineurin inhibitor induced pain syndrome: CIPS)として報告されているが、未だに有効な治療法がなく、多くの移植患者のQOLを低下させており治療法の開発が求められている。本研究は、CIPSの発症メカニズムを明らかにし有効な治療法を開発することである。