著者
小野 政輝 安田 伸
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

樹脂配糖体は、糖部が部分的にアシル化されたオキシ脂肪酸のオリゴ配糖体で、ヒルガオ科植物に特徴的に含有される。本科植物の、サツマイモ、ハマヒルガオ、ハリアサガオ、ブラジルヤラッパ、ルコウアサガオ、マメアサガオおよびコヒルガオの7種を材料に、樹脂配糖体の研究を行った。その結果、36種の樹脂配糖体を得た。これらのうち、15種の新規樹脂配糖体を含む22種の構造を各種機器分析データならびに化学反応を用いて決定した。また、構造決定した化合物のうち、1種に抗単純ヘルペス1型活性、3種に白血病細胞株(HL-60)に対する細胞傷害活性を見出した。
著者
三浦 直 小田 由香里 志澤 泰彦 塚越 絵里
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

歯科の研究領域では、現在のところサツマイモを材料とした研究はない。ヒトに対するう蝕予防効果や歯周病の発生を予防でき、低コストで、人体に対して無害で使用回数にも制限がないような天然物由来の物質が、口腔ケア組成物として望まれている。そこで本研究課題では、普段の食生活で利用している国産サツマイモに着目し、口腔ケアとりわけ歯周病予防の応用につながる物質を探索し、その成分を特定することを目的としている。現段階では歯周病原菌に対する増殖抑制の効果を示す、活性成分を探索し、これを特定することを目標としている。
著者
小幡谷 英一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

木材の物理・化学加工技術を組み合わせ、枯渇が危惧されるグラナディラ材の代替材を、持続可能な汎用木材や天然樹脂を用いて製造する技術を開発する。具体的には、化学処理(寸法安定化)と樹脂含浸圧密(緻密化)を複合することで、グラナディラ材に匹敵する高い力学性能と寸法安定性を達成する。グラナディラ材のストックが払底する数年以内の実用化が求められることから、第1段階として、薬品を用いた化学処理と合成樹脂を用いた樹脂含浸圧密を組み合わせ、速やかに実用化できる材料を開発し、第2段階として、天然化合物や天然樹脂を用いた、持続可能な加工法を検討する。
著者
藤原 辰史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

伊藤永之介の描いた東北地方の農村分析によって、わたしは、近代日本の開発政策におけるある重要な性質について明らかにすることができた。それは、開発を進める日本政府が、単に、農村住民の生活世界を破壊しただけではなくて、農村内外の非合法的な世界に対する農村生活者の柔軟な対応力に頼っていた、という点である。たとえば、農村住民たちは、開発政策と不況で苦しむなかで、非合法でどぶろくを作り、販売して苦境を凌いだり、軽犯罪をおかしてわざと逮捕され、一時的に苦境から脱出したりしていた。伊藤文学は、いかに農村住民たちが日本のダイナミックな開発政策を生き延びたのかについて、生き生きとかつコミカルに描いているのである。
著者
山村 ひろみ 渡邊 淳也 GIBO LUCILA 鈴木 信五 藤田 健 黒沢 直俊 岸 彩子 小熊 和郎 大森 洋子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は現代ロマンス諸語のうち代表的な、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガルポルトガル語、ブラジルポルトガル語、ルーマニア語のテンス・アスペクト体系の対照研究である。これら6つの言語のテンス・アスペクト体系を記述的に考察するために、本研究はまずAgatha ChristieのThe Thirteen Problemsの各言語訳と原本のパラレルコーパスを作成した。次に、同コーパスを用いて、①各言語における「大過去」の記述および分析し、従来指摘されることのなかったロマンス諸語間のテンス・アスペクト体系の異同を具体的に示すと同時に、②各言語に特有のテンス・アスペクト現象の再検討を行った。
著者
星 裕一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

(1)劣p進体上の多重双曲的曲線、p進局所体、Kummer忠実体上の双曲的曲線、という3つの数論幾何学的対象に対するGrothendieck予想型の成果を得た。(2)望月新一氏との共同研究により、組み合わせ論的遠アーベル幾何学を発展させた。(3)双曲的曲線に付随する外Galois表現の核や像の研究を行い、数体上の一点抜き楕円曲線の上の穏やかな有理点の有限性を証明した。(4)合同部分群問題の副p版に関する共同研究を飯島優氏と行った。(5)p進Teichmuller理論における重要な対象である冪零許容固有束、冪零通常固有束の標数が3の場合の研究を行った。(6)数体の単遠アーベル幾何学を発展させた。
著者
松宮 政弘
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

カニ・エビなどの甲羅を構成するキチン質は地球上に豊富に存在するが、その多くが利用されずに廃棄されている。一方、このキチン質をキチン分解酵素(キチナーゼ)で分解すると、機能性食品素材として有効活用できることがわかりだした。本研究ではカニ・エビのキチンの分解に適したキチナーゼを海洋生物から探し出す基礎研究、それを活用するための応用技術開発を実施した。2魚種の胃より各2種、2種のタコより各1種、計6種のキチナーゼを分離し、機能を解析した。さらに魚類、軟体動物、カニより計11種のキチナーゼ全長遺伝子を取得した。機能解析から活用できるキチナーゼの遺伝子を選び、微生物によるキチナーゼ生産を実施した。
著者
脇坂 聡 乾 千珠子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

一般的な「味覚」は味刺激の伝導のみならず、「歯ごたえ」「舌ざわり」などの一般体性感覚などを統合した感覚である。近年味覚障害が増加傾向にあるが、その場合は味覚と一般体性感覚が統合した感覚障害である。味覚障害は女性に多い疾患だが、性差の原因は未だ不明である。本研究では、女性ホルモンが味覚障害に及ぼす影響について女性ホルモンの分泌量の異なる幼若期、思春期、成熟期、更年期の4ステージにおける亜鉛欠乏性味覚障害モデル動物を作製し、基本味に対する嗜好性の変化を行動学的に調べ、味刺激に対する神経活動の変化を免疫組織学的手法を用いて調べる。さらに一般体性感覚の変化も検討する。
著者
佐藤 環
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

近世諸藩における弓術師範の養成・登用において,業績主義的要素がいかに投影されたかを実態として明らかにすることが本研究の目的である。弘前藩ではまず藩外から高名な射手を登用し弓術師範となした段階,次にその移入師範の教導により弘前藩士による弓術師範の再生産が可能となった段階,そして全国規模の競射会である「通矢」参加によりそこでの成績が弓術師範任用基準として重視される段階へと進んでいった。水戸藩学弘道館では弓の腕前の試験である「見分」が実施され,業績主義的な教育の制度化が試みられている。
著者
大西 志保 馬 寧 平工 雄介 川西 正祐
出版者
鈴鹿医療科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

大気中浮遊微粒子はヒトに発がん性があり、粘膜付着や肺への進入により炎症を起こす。本研究では、黄砂を曝露したマウスの肺に炎症が認められた。また、酸化DNA損傷マーカーの8-oxodGの増加や、ニトロ化DNA損傷マーカーの8-ニトログアニンの増加が示された。プロテオーム解析では、黄砂曝露により発現量の増減がみられるタンパク質が見つかった。抗酸化および抗腫瘍に関わるタンパク質のひとつが増加傾向、癌抑制に関わる可能性とヒト肺腫瘍での減少が報告されているタンパク質のひとつが減少傾向にあることが分かった。以上、黄砂曝露によって炎症と酸化ニトロ化DNA損傷が起こる可能性が示された。
著者
宇田川 妙子
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年グローバル化の一方で、ローカルなものへの注目が高まっている。本研究は、そのなかで改めてローカル、ローカリティが何かを考えるため、元来ローカルな文化が強いとされるイタリアにおいてローカルコミュニティの事例調査を行い、理論的な再考も行った。その結果ローカルとは、それ自体でグローバルと二項対立的に存在するものではなく、グローバル、ナショナル等の関連の中で再編されること、ゆえに近年のローカルブームには批判的視点も必要であること、また近年はローカルな場にこそグローバル等の他の空間が重なるようになり、時間観とともに空間観の再編が起きていること等を明らかにし、新たなローカリティ論への足掛かりを得た。
著者
藤川 玲満
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、読本への史学(史書)や地誌からの影響の観点から、近世中後期の学術研究の発達と戯作の形成の関係を明らかにしようとするものである。具体的には、上方の読本作者を研究対象の中心とし、その著述態度と研究史の情勢の関係、書物の受容の様相、史書と地誌の関係等に着目した検討を行う。読本の形成について、創作の技巧の点のみでなく、文壇・学芸の潮流との連繋の観点を加えて総体的に理解することは不可欠と考えられる。時代環境に即した読本史の解釈と、より広い領域からの再評価を推進することを目指す。
著者
狩谷 秀治 谷川 昇 中谷 幸 井上 理人 河野 由美子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

(1)用手的ナノバブル生成器を用いて血栓化させた血管内にナノバブルを大量に発生させ、超音波を照射すると血栓溶解作用が促進された。(2)用手的ナノバブル生成器を発明し特許出願した。(3)用手的ナノバブル生成器を用いると小動物での実験にナノバブルを投与できることが証明された。今後マウス、ラット、ウサギの生体内でキャビテーションを生じさせることが可能である。(4)用手的ナノバブル生成器を用いると微量の液体で極めて高密度のナノバブルを供給することが可能である。これに超音波を照射することにより極めて高いキャビテーション効果を試験管やシャーレ内で発生させることができた。
著者
下向井 龍彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

従来、当事者相互の決意・合意・一味団結を神仏に誓約する中世の起請文に対して、奈良・平安時代の起請については、発議・禁制などとされ、中世の起請文とは異質なものと理解されてきた。藤原実資の日記『小右記』に散見する「起請」の記事を検討すると、公卿(右大臣・大中納言)・右近衛大将として実資が関わった摂関期宮延社会の起請は、(1)近衛府起請、(2)殿上起請、(3)公卿起請、の三つに分類できる。(1)は儀式での精勤を求める天皇の譴責に対して、近衛大将が勤務内規と賞罰を定め、近衛府官人・舎人全員で遵守誓約するものであり、(2)は天皇に日常的に奉仕する場である殿上における風紀・勤務状況について、やはり天皇の意向や要求・譴責を受けて、摂関が内規と罰則を定め、殿上人全体でその遵守を誓約するものであり、(3)はとくに受領の昇進・遷任(次の受領のポスト)を左右する成績判定を行う受領功過程において、財政監査上の重点チェック項目(たとえば賀茂斉院禊祭科の完済証明を受けているかどうか)について、絶対見逃さないことをいうことを、受領功過程に参加する公卿全員が遵守誓約するものである。いずれの起請も、自分たちで制定した内部規律を当事者自らが遵守することを誓約するものであることが明らかになった。また「起請宣旨」「起請官符」として布告されるから、起請そのものが「官旨」「官符」と受け取られることになるが、それは起請にもとづく宣旨官符なのであって、起請=官符宣旨なのではない。起請とは、あくまでもその内規なり合意事項の遵守を誓約することであった。このような摂関期の起請の考察をとおして、摂関期の法=規範形成のありかたに新知見を提示し、とくに「公卿起請」には、受領人事の公平性を確保しようとする公卿集団の自己規制機能があったことを明らかにした。
著者
守田 智 吉村 仁 伊東 啓 泰中 啓一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究課題では社会に遍在するネットワーク上での拡散現象に着目している.この1年で,特に知られるようにもなった感染性拡散モデルに対する基本再生産数およびそれを拡張したタイプ別再生産数の定式化を行った.驚くべきことに従来から知られていた公式より正確なものが得られた.実在のネットワークではリンクのつながり具合に相関がみられるが,この相関を考慮した場合についても定式化に成功した.また,上記の研究をリアルな性感染症拡散モデルにも応用している.