著者
大西 弘高 任 和子 西薗 貞子 北野 綾香
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

看護領域の臨床推論と混同されやすい看護過程と看護診断について概念の整理を行った。そして看護領域の臨床推論には、医学モデルに基づく推論と、看護独自の視点に基づく推論の2つがあることが明らかになった。多職種協働の発展に従い、看護師の特定行為研修で医学モデルの臨床推論がカリキュラムに組み込まれたこともあり、看護師の臨床推論と医師の臨床推論は歩み寄ってきている。臨床推論の教育方法としては、複雑さと不確実性の中で患者の経時的な変化を捉えて推論・判断を行う練習をするために、ケース・スタディが有効である。その方法の一つとして、Inquiry-based Learningがある。
著者
涌井 徹也 米杉 政則 西岡 拓哉
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

風力発電の普及促進を図るために二重反転型垂直軸タービンを用いた浮体式洋上風力発電システムの開発を念頭に置いた空力-弾性-制御連成解析モデルの開発を行った.開発の第1段階として直線翼垂直軸型風力タービンを用いた陸上設置式システムの乱流変動風況下での連成挙動の解明を行った.これより,二重反転垂直軸型タービンを設計する際の有益な知見を得ることを目的とした.数値解析を通して,高風速下では回転周波数の翼枚数倍の変動がタービントルクに大きく現れ,弾性振動や荷重変動に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.
著者
堀 久美 木下 みゆき
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究代表者による情報発信活動を行う女性の側からの調査・検討に、研究分担者が計画した情報学の側からの調査・検討を加えることで、多面的かつ包括的な研究を実施することができた。初年度は、大きく以下の4項目を実施した。①研究代表者・分担者のそれぞれの専門領域における先行研究から明らかとなった知見について整理・共有したうえで、本研究の対象となる震災記録等について、資料収集・分析を行い、女性たちが残したかった経験、ジェンダーの視点がどのようなものであったかを検討した。②本研究の対象となる震災記録活動に携わる女性団体から研究協力者を得て、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の被災地での女性の記録活動についてプレ調査を行った。プレ調査に基づき、調査方法や調査項目の妥当性等を検討し、次年度の本調査実施に向け、調査計画を具体化した。③震災記録の収集・発信が期待される被災地の専門図書館である男女共同参画センター情報ライブラリー/図書室として、兵庫県、仙台市、熊本県、熊本市の関連施設においてプレ調査を行い、調査方法や調査項目の妥当性等を検討し、精査した。これを踏まえ、次年度の本調査実施に向け、調査計画を具体化した。④上記の3項目の研究実践の途上で、災害に関する男女共同参画センターの情報機能について、長期的な観点からその成果を明らかにすることが、本研究にとって有効であることが分かり、新たに、阪神淡路大震災後から現在までの、兵庫県立女性センターの情報ライブラリー担当者を対象とする調査計画を立案・実施し、考察を行った。
著者
額田 均 八木橋 操六 馬場 正之 土原 豊一 根本 孝一 成瀬 桂子 中村 二郎 マルカス ミュラー 小笠原 早織 辻井 麻里 デニース マックラクラン
出版者
(財)額田医学生物学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1)高血圧が糖尿病性神経障害の発症・進展に関与していることは、大規模疫学調査から証明されたが、高血圧自体が末梢神経障害を惹起するかは不明だった。今回、高血圧ラットを用いた実験において、高血圧自体が末梢神経障害を起こすことが明らかになった。また、高血圧ラットの末梢神経では、糖尿病性神経に認められたのと同様に、虚血・再灌流傷害に対して形態学的・電気生理学的に脆弱性を認める。2)糖尿病性神経障害の発症機序は解明されていない。糖尿病ラットを用いて、神経内鞘マクロファージの活性化が、その発症に関与していることが証明された。3)末梢動脈閉塞症に伴う痛み・灼熱感、血行再建術後に出現するしびれなどの感覚障害に対しては早急な治療法の確立が望まれる。HGF遺伝子の逆行性神経内導入により感覚障害の改善が認められた。本法は虚血再灌流障害に対する有効な治療法となりうると考えられた。
著者
竹内 幸絵 佐藤 守弘 熊倉 一紗
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究2年目はまず広告業界誌『プレスアルト』の冊子体に記載されていたリスト情報を元に、広告作品の詳細来歴情報(広告主やデザイナー、印刷手法など)についての文字起こしを行なった。情報は5619作品分取得することができた。次にこの文字情報と、初年度撮影済の広告現物スナップ写真(画像情報)6183枚との照合作業を行い、画像情報に適切な文字情報を紐づけて行く作業を行った。およそ8割の画像情報について合致させることができた。最後にデータベースソフトを用いてこの結果を管理する仕組みを構築し、文字情報(例えば企業情報やデザイナー名)から関連する画像情報を呼び出すなどの一括検索が可能な形式に生成した。一方このデータベースとは別に、現存またはコピーが確認できている冊子体298冊の全ページのPDF化を行った。これは脆弱な冊子の記事を研究時に確認閲覧可能とするために必要な作業であった。広告印刷物というエフェメラメディアの研究では、たとえ現物が残っていたとしても制作年すら同定が難しく、まして印刷形式や色数、紙の質などの確定は著しく困難である。この不確かな状況がこれまで広告研究の推進を阻害して来たといえる。本研究の固有性は、破棄され後世に残りにくい広告の実物が現存すること、そしてのみならず、その制作時の来歴が冊子体により明確であるという点にある。従って今回の研究では、数千点の作品画像情報に明確な来歴情報を紐づけて整理することが大きなひとつの目標であった。この当初のねらいの基礎部分を上記の二つ基礎のデータを二年度までに制作することで実装した。すなわちデータベースで数千の作品の検索を行い、その作品のさらなる詳細情報を冊子から読み取るという研究環境を整えることができた。
著者
小林 武
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は2年を期間としたもので、第1年度たる平成13年度においては、基礎をなす作業にとりくみ、まず直接民主政にかんする研究文献に検討を加え、またスイスに赴いて、その直接民主主義制度を調査した。これをふまえて、第2年度の平成14年度においては、文献の研究を深め、また、アメリカ合衆国カリフォルニア州の直接民主政、とくに住民投票について調査した。こうした研究の進行の中で、大韓民国において憲法上定められている重要政策についての国民投票をも検討対象とし、その調査のためにソウル市に赴いた。わが国で、この間に直接民主政にかんして顕著な動向がみられたのは、住民投票、とりわけ市町村合併についてのそれである。市町村合併は、住民生活の場のありようを決定する基本的な問題であるだけに、住民投票の動きが全国各地で生じており、直接民主政研究にとっての重要テーマである。そこで、関係の自治体に赴いて実態にふれ、調査した。併せ、国立国会図書舘等で文献研究を進めた。以上の作業をとおして、平成14年には、スイスの国家緊急法制および政治過程を扱った各研究、またわが国の民主主義を立憲主義との関係で論したものとを公にした。ついで、平成15年には、憲法改正手続および首相公選構想における国民投票と、市町村合併等における住民投票にかんする論稿を発表した。『研究成果報告書』は、これらを軸にしたものであり、そして、今後できるだけ早い時期に、本研究の包括的成果を一書にして上様したいと考えている。
著者
鈴木 孝仁 岩口 伸一
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

石油分解酵母Candida tropicalis Pk233株では、グルコースを炭素源とする半合成液体培地にエタノールを添加した培養で、高率に菌糸形成が誘導される。このエタノール添加培養と、無添加の酵母型増殖を示す対照培養との間での遺伝子発現の差異を利用し、サブトラクション法によって、パン酵母のチアミン合成遺伝子THI5と相同性の高いホモログ(CtTHI5と命名)がエタノール添加培養で特に発現が強い遺伝子として分離された。エタノール添加培養でのCtTHI5転写発現は、酵母の脱極性化の進む第一相で強く、菌糸の伸長が起こる第二相で微弱となった。第一相の増殖期にチアミンを培地に添加すると、その後の菌糸伸長に遅れを生じ、酵母型に近い短い菌糸が連鎖し枝分かれした菌糸体が形成された。この遺伝子を機能喪失させるため、URA3及びハイグロマイシン耐性の遺伝子を挿入させて遺伝子破壊を行ったところ、エタノール無添加培養でも細胞伸長が起こるようになり、またチアミンの類似物であるオキシチアミン添加によって、エタノール無添加培養で菌糸が形成されるようになった。そこで、CtTHI5の発現によるチアミン生合成は細胞伸長を第一相でむしろ抑制することにはたらいていることが示唆された。さらにこの遺伝子破壊株がチアミン要求性にはならないことから、この酵母には、CtTHI5以外にもチアミン生合成にはたらく同義遺伝子があることが示唆された。エタノール添加培養にバルブロ酸をさらに添加することにより、菌糸形成が抑制されることが新たに判明した。この菌糸形成の抑制は、すでに判明しているイノシトール添加の場合と同様に、第一相前半にこれらの薬剤を添加することによってもたらされ、チアミン生合成に先立ってイノシトールリン脂質生合成の調節系がはたらいていることが示唆された。バルブロ酸を添加したエタノール培養にチアミンをさらに加えると、菌糸形成の抑制が部分的に解除されることから、チアミンがこのイノシトールリン脂質生合成調節系にも関与する1因子であることが示唆された。
著者
高井良 健一 木村 優 岩田 一正 齋藤 智哉 金子 奨 小島 武文 高石 昂 福泉 志織 吉田 友樹
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究を通して、高等学校の新任教師の専門的成長を支えるものとして、すべての子どもたちの学びを保障する授業づくりに責任をもつ専門的共同体の存在が大きいことが明らかになった。学校における専門的共同体は、授業研究を通して、教師たちの語り合い、聴き合い、語り直しによって、形成される。新任教師たちは、着任当初は、子どもたちの学びに対する一元的な語りが特徴であったが、授業研究会への参加を重ねるごとに、多元的な語りを身につけ、これに伴い、子どもたちとの関係も組み替えられてきた。
著者
荒井 弘和
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、大学生競技者のスポーツ・ライフ・バランスに対する貢献を目指して、以下の3つの目的を設定する。競技の満足度と生活の満足度との関連を検討する (研究Ⅰ)。競技の満足度・生活の満足度と関連する要因を検討する (研究Ⅱ)。スポーツ・ライフ・バランス支援プログラムの効果を検討する (研究Ⅲ)。本研究によって、「アスリートライフスタイル」の重要性が明らかとなったこと、メンタリングが競技者の満足度に関連するということ、本研究で開発されたプログラムは、スポーツ・ライフ・バランスを促進させる可能性があることが明らかとなった。
著者
岡本 能里子
出版者
東京国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は、昨年度に続いて、日本言語政策学会の「メディアと言語政策」の分科会において、「メディアとしての教科書・教材を考える」と題した企画を担い、日本の国語教科書、ドイツの歴史教科書の図や写真、イラストとテキストとの関係に焦点をあて、言語教育におけるビューイングの考え方を意識して言語教育に組み込む必要性を提示した。国際語用論学会では、2つのパネル発表を行った。1つは、オバマ氏広島訪問とプラハ演説報道における写真をはじめとするビジュアル要素と大統領のスピーチとの相互作用から、伝えられるメッセージを批判的に分析し、何が伝えられたのかを明らかにした。2つ目は、目的のある話し合いのLINEチャット分析を通して、スタンプや写真と文字の相互作用を通したマルチモードのコミュニケーション実態を検証した。これらの発表を通して、国内外で、日本語の4種類の文字と縦書き横書きという世界でまれな正書法を駆使し、マルチモードによる意味構築がなされている実態を明らかにし、そこに埋め込まれるイデオロギーや価値感に気づくためのマルチリテラシーズ育成が言語教育に必須であることを強く伝えることができた。
著者
齋藤 夏雄 伊藤 浩行
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

正標数の代数的閉体上において定義された滑らかなdel Pezzo曲面のF分裂性について研究を行った.次数2のdel Pezzo曲面について調べ,標数2および3のときにのみF分裂性を持たないものが実際に存在することを示し,その特徴づけを与えた.特に標数が3のとき,F分裂性を持たないdel Pezzo曲面は一意的に定まることを明らかにした.さらに,次数2で標数3のdel Pezzo曲面F分裂性を持たないものが得られるような射影平面のブローアップを考えたとき,その中心となる7点の配置を完全に決定した.
著者
池上 恒雄 古川 洋一 伊地知 秀明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究において我々は肝特異的Kras活性化及びPten欠損による新規肝内胆管癌マウスモデルを樹立した。Cre-loxPシステムにより活性化型Kras変異とPtenホモ欠損を胎生期の肝前駆細胞及び成体期の肝細胞に導入したところ、肝内胆管癌のみを生じた。一方、Kras変異とPtenヘテロ欠損では胆管癌と肝細胞癌を、Kras変異単独では肝細胞癌のみを生じた。タモキシフェン誘導性のCre-loxPシステムを用いることにより、肝内胆管癌は胆管上皮由来であることが示唆された。このマウスモデルはヒトの肝内胆管癌の発生メカニズムや治療法の研究に有用であると考えられる。
著者
湊 信幸 富田 淳
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

日本に現存する中国絵画、中国書跡の内、これまで未調査であった重要な作品ついて、書画家印、鑑蔵印、落款の調査を実施した。今回の調査の対象としては東京国立博物館に保管されている中国書画作品に重点をおいて実施した。調査は、従来通り、原則として6×4.5判カメラによる原寸大の白黒写真として撮影した。これらの写真資料については、B6判のカードに貼り、それぞれ基礎データを記入し、分類整理の作業を継続実施した。収集資料の基礎データを作成するにあたっては、特に難解な書画家印・鑑蔵印の印文の読みに努めるとともに、データベース化のために、これまで蓄積された写真資料については、スキャナーを用いてデジタル画像化をこころみた。また、従来6×4.5サイズのカメラでは原寸撮影できなかった大きな印について、デジタルカメラによる調査の有効性を検証するため、デジタルカメラによる資料撮影を一部実施した。これらのデジタル画像を含む基礎資料のデータベース化について検討をおこなった。特に問題としたのは、原寸撮影による写真資料をデジタル画像化し入力する際に、印影の大きさを示すための有効な方法についてであるが、これについては充分な結論を得るに至っておらず、今後の課題として、さらに検討を重ねていきたい。また、本研究の将来の目的である「日本現存中国書画家鑑蔵家落款印譜』公刊のための基礎的作業の一つとして、諸資料の中から、よく知られている主な書画家、鑑蔵家を抽出し、文字データと画像データを示したものを報告書としてとりまとめた。
著者
湊 信幸 富田 淳
出版者
東京国立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

日本に現存する中国絵画、中国書跡の内、本研究にとり重要である作品を選定し、諸作品に押印されている書画家印、落款を、原則として6×4.5判カメラによる原寸大の白黒写真撮影、必要に応じて6×4.5判カメラによる原寸大のカラー写真、また印色の記録の為に35ミリカラースライド撮影により調査を実施した。今回の調査と対象としては東京国立博物館に保管されている中国書画作品に重点をおいて実施した。調査により収集することの出来た諸印、落款の原寸大焼付写真資料を、従来、収集整理した写真資料と同様にB6判のカードに貼り、原則として、それぞれに印文、落款、書画家名、賞鑑家名、用印年代、作品名、作品の制作年代、所蔵者、作品登録番号、ネガ番号、撮影年月日等の基礎データを記入し、画家、書家、賞鑑家別に分類整理をおこなった。また、諸資料の整理にあたっては、落款および諸印の真偽の問題等について、日本国外に現存する作品の諸印の関係資料も、出来る限り比較して検討する作業を実施し、諸印と落款に関するいくつかの個別的問題について具体的に検討を加えた。さらに、今後の課題として、収集した写真資料のデジタル化の問題についても検討をした。
著者
吉田 正広
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、ロンドンにおける第一次大戦の戦死者追悼記念碑や式典のあり方を、企業、地域社会、国民国家さらに帝国に至る重層的なアイデンティティ形成の問題として考察する。その際、記念碑の様式や式典のあり方にコミュニティ毎の違いがあることに着目し、地域社会の特質や政治との関連で記念碑や式典を考察する。ロンドン・シティの狭い区域内に数多くの記念碑が点在する。それは決して偶然ではなく、シティの金融機関に勤める従業員の多くが志願して戦死したことと関係する。初年度は、ロンドン・シティの調査と分析を実施した。2017年11月12日(日)リメンバランスサンデーの正午ごろに、王立取引所前のロンドン部隊記念碑前で始まった追悼式典を実際に観察し、その様子を動画および画像に収めた。これはコミュニティの追悼のあり方を知る上で重要な機会となった。また、金融機関や教会、鉄道の駅の記念碑など、11月12日の追悼式典後の記念碑の様子、とくに奉納されたポピーの花輪の文面を画像に収め、式典参加者やそのメッセージを資料として入手した。現地調査後半では、かつてのロンドンの波止場地区であるポプラー周辺や、さらにロンドン東部のイーストハム、ウェストハムに残る企業の記念碑を調査した。研究成果としては、イングランド銀行記念碑の設立に関する一次資料を分析し、職員たちによる記念碑設立活動の詳細を明らかにした。それはイングランド銀行の職員たちの自発的な活動として追悼委員会を通じて行われた。同委員会は、職員の階層や所属する部門の特質を反映した。また、職員総会での委員長ブライアントの演説を分析すると、世界の金融センターとしての自負心やその中枢としての自行への誇りが、強い愛国心を表明させたこと、また、自行の敷地拡大時における教会の解体や物質文明を担うことへの罪意識が、記念碑としての十字架建立の提案に至ったことを確認した。
著者
川久保 友紀 鮫島 達夫 笠井 清登 川久保 友紀
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

これまでわれわれは脳機能イメージング(近赤外線スペクトロスコピー:NIRS)によって精神疾患における前頭葉機能障害を捉えてきた。特に統合失調症におけるNIRS信号の前頭葉異常は、全般的な生活機能評価と有意な関連があることを見出した(Takizawa, et. al., 2008)。NIRSは光を用いた安全で非侵襲的な技術であり、自然な姿勢・環境で被検者に負担が少ない検査を実現しているため、将来、精神疾患の臨床場面において、補助診断、薬効予測や症状評価への応用が期待されている。本研究ではさらに一歩進めて、こうしたNIRS信号の意義を明らかにするため、これまでに統合失調症の認知機能障害との関連についての先行研究があるcatechol 0-methyltransferase (COMT) (val^<108/158>met)遺伝子多型に着目し、完全に非侵襲性な脳機能計測技術(NIRS)と分子遺伝学的分析を双方向に組み合わせ、統合失調症の前頭葉機能異常を明らかにすることを目的とした。平成18年度から成19年度にかけて、計画通りにさらに被検者数を増やすことができた。サンプル数を増加させても結果に変化はなく、各群で語流暢性課題遂行成績に有意差はないにも関わらず、COMT遺伝子多型のMet carrier群では、Val/Val群に比べて、課題遂行中の[oxy-Hb]増加が大きく、有意差のあるチャンネルを前頭前野に認めた。本研究でも統合失調症の前頭葉機能への神経伝達物質関連遺伝子との関連が示唆された。こうした結果を、平成19年度に第62回アメリカ生物学的精神医学会(San Diego, USA)等、国内外の学会や雑誌で発表してきた。現在、英文雑誌へ投稿中である。そして今後も、薬効予測・薬効評価につながるNIRSの精神疾患への臨床応用を裏付ける研究を続けていく方針である。
著者
長谷部 晃 佐伯 歩
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

口腔カンジダ症の原因病原体のCandida albicansが、なぜ口腔内に常在できるのか不明である。我々は、C. albicansの経口摂取がそれに対する経口免疫寛容が誘導するからではないかと考えた。経口免疫寛容とは、食物に免疫反応が起こらないのと同様に、口から摂取された異物に対して免疫反応が起こらないシステムのことである。そこで、経口的にC. albicansを若いマウスや高齢のマウス、TLR2遺伝子欠損マウスに摂取させたがC. albicans特異的血中抗体に対する免疫抑制を誘導せず、TLR2の有無もC. albicansに特異的な抗体産生誘導には影響しないとわかった。
著者
柳井 秀雄 檜垣 真吾
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度および14年度の研究により、以下の成績を得た。残胃癌において、約4割と非常に高率のEBウイルス感染を検出し、極めて重要な成果として、英文誌に報告した(Scand J Gastroenterol 2002)。慢性胃炎・胃癌症例について、胃内視鏡検査時に被験者への十分な説明と承諾のもとに、通常の診断目的の生検に加えてシドニーシステムによる胃粘膜5点生検を行い、EBウイルスDNAのBamHI-W断片をリアルタイム定量PCR法にて検出し、ウイルス感染の有無、胃内分布と感染コピー数、の検討を行った。その結果、65.7%の症例において、胃生検切片からEBV DNAが検出された。胃粘膜よりのEBV DNA検出は、中等度の萎縮性胃炎例の萎縮中間帯に有意に高頻度であった(論文投稿中)。胃癌手術例での、EBウイルス感染細胞に多数存在るEBV encoded small RNA1 (EBER1)に対するoligonucleotide probeを用いたin situ hybridizationでは、EBウイルス関連胃癌は、胃体部の胃粘膜萎縮境界近傍に存在していた。胃癌120病巣におけるEBER1 ISHによる検索では、EBV関連胃癌は、内視鏡的粘膜切除を行った54病巣には見られず、外科手術の66病巣中3病巣(5%)を占め、胃型の粘液形質と関連を有していた(論文準備中)。これらの結果より、EBVは、慢性萎縮性胃炎の経過において中等度の萎縮の進展に伴い萎縮境界近傍に感染し、発がんに関与するものと推定している。これらの成果を含めて、画期的な邦文成書「EBウイルス」(監修:高田賢藏、編集:柳井秀雄・清水則夫)を編集し、発刊予定である(診断と治療社、東京、2003年6月予定)。
著者
久野 マリ子
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成元年(1989)から平成4年(1992)にかけて調査された東京都下のデータが収集されたままになっていた。これらをもとに、『新東京都言語地図』を作成し、発表した。東京方言の伝統的特徴を示す162項目、高年層と青年層の分布図である。首都圏方言の古層を明らかにするには、伝統的な東京方言の実態を明らかにする必要がある。この資料は明治35年~昭和3年生まれの生え抜きの高年層の話者と、昭和42年から昭和45年生まれの青年層の話者について、対面聞き取り調査した資料である。両親もしくは少なくとも一方の親がその土地の出身で、言語形成期をその地で過ごした男性の話者に限定した話者から得られた資料は、平成の世の東京都方言の実態を反映している。調査音声資料が残されている。とりわけ、高年層の話者のデータは貴重で、現在では、すでに明治生まれの話者に話を聞くことは不可能である。当時の東京都下の方言を記録した音声資料を公表することは、東京方言の実態、首都圏方言の研究に大きな価値を持つと言えよう。音韻の項目については、伝統的な音声特徴の年代による差を明らかにした。例えば、ヒとシの混同や、直音化は青年層では消えかけている。連母音の融合では、体言よりも用言の方が融合しやすい。形容詞では場面により青年層で融合形が増加することが指摘された。例えば、「大根」は連母音が融合したデーコンと発音する話者は青年層ではほとんどみられなかった。一方、「痛い」では、とっさの場合に発音するとき、イテーと発音する話者は青年層の方が高年層よりも多く観察された。ただ「痛い」の場合は、イテーと答えた話者は高年層の方が多く、青年層では減っていた。このことから、場面差による連母音の流合が青年層では若者ことばとして広まりつつことあることが予測できる。引き続き、足柄上郡出身の明治20年代生まれの話者によるライフヒストリーの文字化作業も行っている。
著者
兼崎 友
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

常温性のシアノバクテリアが突然変異の蓄積によりどこまでの高温耐性を獲得できるのかという命題に挑むため、3年に及ぶ長期間の寒天培地上での高温順化培養により、シアノバクテリアS. elongatus PCC 7942の通常の生育限界温度である43℃を大きく超えた株群を得ることに成功した。これらの高温耐性突然変異株群について、ゲノム上の突然変異部位を次世代シーケンサーを用いてゲノムワイドに同定し、さらに遺伝子組換えを用いた実験から高温耐性に寄与した変異遺伝子座を概ね明らかにした。この高温耐性突然変異株では、高温下での転写産物プロファイルや細胞形態、生育速度などに大きな違いが見られた。