著者
遠藤 貢
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、再編期にある「アフリカの角」地域の調査を実施することを通じ、2020年段階に向けた「アフリカの角」地域の国際関係を読み解く。そして、それと相互作用の中に展開するアフリカ大陸側の旧来の「アフリカの角」を構成してきた国々における新たな政治的ダイナミズムを明らかにする。現在の動きを示している「アフリカの角」地域の動静を丹念に追う作業を実施する。加えて、域内再編がもたらす国内秩序への影響を、より理論的に分析するための理論的可能性を検討する。その際には、政治体制変動研究の知見を生かし、国際政治と国内政治の関係性を読み解く理論枠組みの構築を目指す。
著者
若井 建志 内藤 真理子 川村 孝
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

歯科医師集団(21,260名)の平均9.5年間に及ぶ追跡調査において、喪失歯数が多い場合に、全死亡、脳卒中罹患、肺炎死亡リスクが高い傾向が認められた。また1日の歯磨き回数が多いほど、脳卒中罹患のリスクは低くなる傾向が観察された。一方、喪失歯数と虚血性心疾患、および歯磨き回数と全死亡、脳卒中罹患、肺炎死亡との間には有意な関連はみられなかった。
著者
永尾 一平
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

海洋植物プランクトンが生成する硫化ジメチル(DMS)は、大気中で硫酸エアロゾルとなり、雲形成に不可欠な凝結核となる。このDMSの海洋から大気への放出量を渦相関法などにより正確に測定することが求められている。本研究は、観測船のフォアマストに設置可能な小型で、渦相関法で要求される高時間分解能でDMS濃度変動を測定するため、フッ素との化学蛍光反応を利用した装置から構成される測定システムを構築し、これらを観測船上に設置して北部北太平洋上でDMSフラックス測定を実施した。
著者
新谷 由紀子 菊本 虔
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年日本の大学の利益相反マネジメント体制は急速に整備されてきたが、利益相反を一因とする研究不正がたびたび起きている。このため、本研究では、主要な国公私立大学の教員や外部理事計1,000名に対してアンケート調査を実施し、具体的な利益相反問題に対する意識を明らかにし、報告書を刊行した。これをもとにこれまでの研究成果を付加し、実務者等の手引となるよう『大学における利益相反マネジメントの実質化のために-運用の手引-』を刊行した。また、教職員研修のためのテキストとして活用できる『大学における利益相反を学ぶ-利益相反研修用テキスト-』も刊行して、日本の大学の利益相反マネジメントの向上に資することとした。
著者
辺見 葉子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、従来のトールキン研究から抜け落ちていた「『ケルティシスト』としてのトールキン」という視座から、『指輪物語』をその未刊の草稿原稿を含めて考察することを目的とし、テキスト変遷を詳細に検討すべく、米国マーケット大学と英国オックスフォード大学における調査を行った。マーケット大学図書館のトールキン・アーカイブでは『指輪物語』の追補篇Fの言語に関する草稿の、オックスフォードのボードリアン図書館ではトールキンのブリテン観の根幹を成すケルト語(British-Welsh)観についてのエッセイ"English and Welsh"の草稿のトランスクリプトを、それぞれ作成することが出来た。
著者
山形 眞理子 田中 和彦 松村 博文 高橋 龍三郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

環南シナ海地域の先史時代の交流というテーマに最も合致する遺跡として、ベトナム中部カインホア省カムラン市ホアジェム遺跡を選び、平成18年度(2007年1月)に発掘調査を実施した。ベトナム南部社会科学院、カインホア省博物館との共同調査であり、ベトナム考古学院の協力もいただいた。その結果、6m×8mの面積の発掘区から甕棺墓14基、伸展土坑墓2基を検出することができた。そのうち6号甕棺から漢の五銖銭2枚が出土したことから、ホアジェムの墓葬の年代を紀元後1,2世紀頃と結論づけることができた。平成19年度にはカインホア省博物館において出土遺物の整理作業を実施した。6個体の甕(棺体)をはじめ、多くの副葬土器を接合・復元することができたが、それらはベトナム中部に分布する鉄器時代サーフィン文化のものとは異質で、海の向こうのフィリピン中部・マスバテ島カラナイ洞穴出土土器と酷似することがわかった。これは南シナ海をはさんで人々の往来があったことを示す直接の証拠であり、重要な成果である。ボアジェム遺跡とオーストロネシア語族の拡散仮説との関係、さらには、1960年代にハワイ大学のソルハイムが提唱した「サーフィン・カラナイ土器伝統」の再吟味という、二つの重要な課題がもたらされた。甕棺に複数遺体を埋葬する例があることも大変に珍しい。たとえば8号甕棺からは3個の頭蓋骨を含む多くの人骨が検出され、人類学者によって一人が成人女性、あとの二人は5歳くらいの子供と確認された。成人は改葬ではなく一次葬である。人骨の系統分析(歯冠計測値と歯のノンメトリック形質にもとづく)によれば、ホアジェム人骨の特徴はフィリピンのネグリトとの親縁性を示した。遺跡から採取した炭化物と貝の放射性炭素年代は前1千年紀前半を示したが、これは墓葬に先行する居住の時期と考えられる。
著者
市川 真人 辛島 デイヴイツド
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

前年に引き続き、読書支援アプリケーションの試作にかんして、以下の活動を行った。①科学研究費の範囲ではアプリケーションの開発に十分な資金的リソースにはならないことが判明したため、本研究の範囲を試作とアプリケーションで利用する文学関連データの整理に絞り、研究を進めた。②試作に最適な文学作品とはなにかについて、分析と検討を加え、人物を焦点に中上健次・宮沢賢治の両名、場所を軸に広島を対象とすることに決定。上記のうち、中上健次の作品にかんして、(1)場所(トポス)、(2)人物、(3)出来事、をタグにデータ整理を進めた。③実証実験候補となる、多数のユーザーが参加するイベントを検討。普及が始まったウェアラブル端末を、読書支援に利用できないかの検討を進めた。④電子書籍の現状をめぐる中間報告を、早稲田大学文芸ジャーナリズム学会紀要「現代文芸研究」に発表。
著者
深井 智朗
出版者
金城学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、近代ドイツ宗教思想史研究に社会史的な視点を導入するために、従来の思想史研究の前提であった「著者‐読者」ではなく、「著者‐編集者(出版社)‐読者」という関係モデルを提示した。なぜなら、近代以後の世界では思想もまた市場化し、編集者、あるいは出版社の媒介なしには、思想を知的市場にもたらすことはできなくなったからである。またこのような仕組みの中では、思想を市場に届けるためには、出版社が大きな力をもつようになり、編集者や出版社の思想が、著者に大きな影響力を与えるようになるからである。そのことを近代ドイツの2つの宗教出版社の資料をサンプルに解明した。
著者
深井 智朗
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、高度情報社会における宗教思想家(あるいは団体)と、それを受け取る「読者としての大衆」との関係の変化を、ドイツのヴィルヘルム期に出版社(とりわけオイゲン・ディーデリヒス出版社とクリスチャン・カイザー出版社)の歴史をサンプルに、以下の2点から考察した。その結果以下の結論を得た。すなわち、信教の自由が保障され、宗教が市場した社会では、宗教的思想家と読者との関係が逆転し、著者が読書に影響を及ぼし、知識や宗教的情報を伝達するのではなく、「読者としての大衆」の嗜好が宗教思想家の考えを形成している。
著者
廣岡 秀明
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大学進学率の上昇に伴い、学生の多様化が進み、学習時間の減少も指摘されてきている。いかに学習時間を確保するかは、単位の実質化の議論においても重要な要素となる。本研究では、マーケティングで活用されているゲーミフィケーションの手法を取り入れ、時間や場所にとらわれないウェブを利用した学習教材の開発を行い、これを利用することで学習時間の増加と学習効果の向上を目指している。この結果、アクティブ率は下がることなく推移し、大手SNSに比較しても十分に能動的なアクセスを促す機能を果たしていることがわかった。
著者
松島 俊也 内藤 順平 並河 鷹夫 前多 敬一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

(1) 摂食行動における視覚弁別学習と記銘内容に関する行動学的解析生まれたばかりのヒナ鳥は「何が餌であるか」を生得的には知らない。非選択的に啄んだ後、味覚と視覚との連合によって対象選択性を絞り込む。この一回性回避学習課題は不可逆的でありかつ一回性を持つ点で、広義の「刷り込み」学習と見なされる。啄み行動の頻度に基づいて、物体の諸特徴に関する知覚地図の変化を追跡したところ、苦い物体の忌避カテゴリーが学習初期相(15分〜1時間)は色によって表現されているのに対し、長期相(〜24時間)では形および提示位置に置き換わっていくことがわかった。(2) 大脳視覚連合野における視覚記憶の細胞表現に関する単一ニューロン解析ヒナ鳥の視覚連合野(IMHV核)より、無拘束・覚醒・自由行動下にて、2つ以上の単一ニューロンから同時に数時間以上にわたる神経活動を導出する技術を確立した。上記の視覚弁別課題(一回性回避学習課題)の直前・直後の活動を解析したところ、特徴的なコヒーレント・バースト活動を記銘直後に示すニューロン群を同定した。(3)大脳基底核に共発現する長期増強と長期抑圧に関する神経生理学的解析大脳基底核(LPO核)は回避課題の記憶痕跡が保存されていると考えられている。スライス標本にパッチ電極を適用してLPOニューロンへのシナプス入力を解析した.同一のニューロン群に収束する2群の興奮性シナプスは、両者に加えたシータ・テタヌスが同期した場合に限って、一方の長期増強と他方の長期抑圧が同時に発現した。長期増強はドーパミンD1受容体の活性化を必要とすることから、回避学習の素過程と見なしうる。
著者
北田 暁大
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は「社会と名指される集合的対象を、特定化し、その集合的状態の変化・改善を、何らかの統制された方法を用いて目指す社会的実践(social practice)」としての「社会調査(social survey)」の歴史・社会的機能を、19世紀末~20世紀半ばのアメリカ社会学、行政、財団の動向に照準して分析するものである。この作業は、現代にいたる量的/質的の区分の誕生や統計的手法の採用の起源を確証し議論を活性化させると同時に、欧州と異なる”social”概念のアメリカ的用法の解明に寄与し、近年注目を集めている「社会的なもの」をめぐる議論のブラッシュアップにも繋がるであろう。
著者
木谷 秀勝
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

児童期から支援を継続して10年間追跡調査を続けた高機能自閉症スペクトラム障害(以下、高機能ASD)がもつ安定した「自己理解」の背景には、柔軟な状況判断を通した「自分らしさ」の表現と援助要請スキルの高さ、学習・就労体験からの達成感の高さが重要である。その一方で、青年期以降から支援を継続した高機能ASDの場合、家庭や職場において受身的な姿勢で支援を受けるだけでは、青年期以降の能動的な計画性や予測能力が十分に育たないことがわかってきた。そこで、集中型「自己理解」プログラムを通して、高機能ASDの能動性が賦活され、葛藤や対処スキルへの気づきが促進される効果が示唆された。
著者
種本 和雄
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

チエノピリジン系抗血小板剤であるクロピドグレルの術前至適中止タイミングについてVerifyNowシステムを用いて検討した。同薬剤中止後の血小板機能回復曲線から検討したところ、中止後3~5日でカットオフラインを越えて血小板機能が回復していた。同薬剤術前中止時期としては従来言われている14日に比べて大幅に短縮することが可能である。VerifyNowを用いて評価した術前血小板凝集能と術後ドレーン出血量との関係は有意ではなかったが、血小板凝集能が低い症例でドレーン出血量が多い傾向がみられた。
著者
すぎ本 重雄 藤田 岳久 阪口 哲男 武者小路 澄子 田畑 孝一
出版者
図書館情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

Netscape等のWWWブラウザが広く利用され、ディジタル図書館プロジェクトの多くもこれらを利用している。しかしながら、現在のWWWが提供する多言語環境は十分ではないため、非英語情報の流通は十分ではない。一方、図書館は多様な言語の情報を所蔵するため、最も基本的なサービスであるOPACでさえも多言語環境を必要とするため、現在のWWWをそのまま利用することは困難である。そのため、本研究では、多言語文書を読む機能を中心課題として以下の研究を進めた。1.多言語文書の検索と閲読(ブラウジング)のためのソフトウェアツールセットの開発2.利用者の環境に合わせて多言語文書の利用環境を構築するツールの開発本研究ではは多言語文書ブラウザ(MHTMLサーバおよびそのクライアント)を開発し、それを用いたゲートウェイサービスを行ない、サーバを数ヶ所のサイト(海外)に移植してきた。さらに、ゲートウェイサービス用に開発したソフトウェアを多言語文書の提供に利用できるよう拡張し、日仏英3ヶ国語で書いた日本昔話(10編)からなる多言語電子テキストコレクションの提供に適用した。このほか、本学のOPACデータをSGML化して作成した目録データベースの検索ユーザインタフェースにMHTMLを利用した海外利用者向けのOPACやMHTMLを利用した遠隔地からの日本語入力ソフトウェアの試作を行なった。研究成果については、国際会議、学術雑誌等に発表した。開発したソフトウエアは我々のWWWサイトを通じて公開し、自由にダウンロード・移植できるようにしている。また、昔話のコレクションに関して、コレクションの拡大のための協力者を募集した結果、何人かの応募があり、かつ応募者は国内だけではなく世界的に広がっている。
著者
住谷 昌彦 四津 有人 大住 倫弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

【目的】運動器慢性疼痛患者では,運動恐怖により運動発現過程で知覚運動協応の破綻が生じていることが報告されているが、その定量的評価は確立されていない.本研究では,到達・把握運動の3次元動作計測から取得される運動学的データを用いて運動恐怖による知覚運動協応の変容を定量的に分析することを目的とする。【方法】上肢の運動恐怖を伴う慢性疼痛患者を対象とし、健肢と患肢それぞれについて3次元動作解析を行った。3 次元位置磁気計測システムを用いて、到達・把握運動の運動軌跡を計測した。到達運動における運動速度の時系列変化を算出し,運動開始から運動速度がピークに達するまでの区間(加速期),運動速度のピークから運動終了までの区間(減速期)に分割した。太さの異なる目標物に対する把握動作の指最大開大幅と手運動速度を計測し、目標物の太さに依存する運動量に応じた運動恐怖の変化を動作解析により客観化できるか評価した。【結果】患肢運動は健肢運動に比して明らかに速度が遅く、指最大開大幅も小さかった。この傾向は、目標物の太さに応じて増悪した。ただし、目標物の太さが大きくなると健肢では指最大開大幅が大きくなり、目標物の太さに応じたこのような傾向は患肢でも維持された。【考察】患肢でも目標物の太さに応じた指最大開大幅は変化したことから生理的な運動表象の立案は行われていると考えられる。一方、目標物の太さに応じて加速期の運動が特に障害され指最大開大幅が不自然に小さくなっていること特に障害されていることから運動実行までの過程で運動恐怖が修飾していることを示唆する。これらの結果から、知覚-運動協応の中枢神経系における内的モデルに運動恐怖による修飾回路を組み入れることに成功した。
著者
林 梅 佐藤 哲彦 村島 健司 西村 正男 荻野 昌弘
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、中国辺境地域が、市場経済や国家による開発に組み込まれる過程で、均一的な文化の受容を通して地域社会を変容させながらも、少数民族独自の伝統や文化を継承していく様態を明らかにすることに努めてきた。それは、グローバリゼーション時代において直面せざる得なくなった多文化社会のあるべき方向性を模索する作業で、そこには多重の人為的な「境界」による他者性を生きながらも、そうした「境界」を使い分けている構造があったといえる。
著者
村本 真 矢ヶ崎 善太郎
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,文化財数寄屋建築を対象に現場診断結果を用いた耐震性能評価技術を開発する.本研究の目的は,合理的で信頼性の高い評価情報を得るべく,数寄屋建築を損傷させずに土壁と構造木材の材料特性を推定できる要素技術を提供することである.現地調査において,壁土と木材の材料特性が評価できれば,建物の性能評価に直接有益な情報とすることができる.さらに,薄い壁厚の土壁を有する架構の性能評価実験を通して,数寄屋建築のシミュレーション技術を構築する.数寄屋建築の地震時挙動のシミュレーションにより,効果的な耐震補強法を提案する.これらの要素技術を組み合わせて文化財数寄屋建築の保存設計に直接活用できる基盤を整える.