著者
山本 直樹 柏 淳 車地 暁生
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、脳内在性D-セリンの代謝調節に着目し、統合失調症のなかでもとくにドーパミン受容体阻害作用をもった定型および非定型抗精神病薬によっても十分な治療効果が得られないいわゆる難治症例に対する新たな治療戦略を提供することを目指している。シナプス間隙における内在性D-セリン濃度の制御およびD-セリンの生合成・代謝にかかわる細胞分子機構を明らかにすることによって、統合失調症の新規治療薬をスクリーニングするための標的分子候補の同定を行なった。本研究期間において、主としてD-セリンの細胞外濃度制御因子D-serine modulator-1(dsm-1)の機能解析およびグリア細胞選択的細胞毒をもちいたin vivoにおけるラット大脳新皮質細胞外D-セリン濃度調節の解析を詳細におこない、グリア細胞におけるD-セリンの調節機構をあきらかにした。さらにD-セリンの代謝にかかわるグリア系各細胞の特性を検討している。また、統合失調症症例におけるdsm-1遺伝子の一塩基多型(SNPs)について検討した。統合失調症の感受性遺伝子解析のみならず治療反応性予測への応用を試みている。欧米において統合失調症に対する治療薬候補としてNMDA受容体アロステリック部位アゴニストD-セリンの他、グリシン、部分アゴニストであるD-サイクロセリンの小規模臨床試験がおこなわれ、従来の抗精神病薬に抵抗性症状に対する効果が多施設からなされている。ただしアゴニストの脳内移行性の問題ゆえに臨床的には経口投与量の評価等がまだ定まっておらず、長期大量投与による生体への影響を危惧する考えがもたれるが、興味深いことに今回我々はD-サイクロセリン投与後に中枢性に細胞外D-セリン濃度が選択的に上昇することを見いだした。さらに、このような統合失調症新規治療薬開発の現状や統合失調症の分子神経薬理学的病因論に関して総説および著書を発表した。
著者
久保 武一
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

中枢神経軸索は一度損傷すると再生しないが、その原因の一つとして中枢神経軸索の再生を阻害する因子repulsive guidance molecule(RGMa)が報告されている。RGMaは、中枢神経傷害時にニューロン、オリゴデンドロサイトのみならず、免疫細胞の一種であるミクログリア/マクロファージにおいても発現上昇する。この観測結果から、先行研究課題でRGMaの免疫系における役割を検討し、以下の結果を得た。1、抗原提示細胞(樹状細胞)の活性化にともないRGMaの発現上昇を認めた。2、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージにRGMaが結合することをフローサイトメトリーにて確認した。3、RGMaはCD4陽性T細胞ならびにマクロファージにおいて、細胞内シグナル分子であるRap1の活性化を誘導した。4、Rap1が媒介する細胞機能として、細胞接着性の向上が報告されているが、CD4陽性T細胞ならびにマクロファージを含む脾臓細胞にRGMaを作用させたところ、細胞接着性の向上を認めた。5、過剰な免疫反応により誘導される実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)におけるRGMaの役割を、RGMaの作用を抑制する抗RGMa抗体投与により解析したところ、抗RGMa抗体が治療効果を示すことを観察した。本研究課題ではさらに詳細な解析を行い、RGMaの作用をブロックすることで、CD4陽性T細胞の免疫反応性ならびに脊髄における炎症反応が抑制され、EAE病態が抑えられることを観察した。以上の結果は、RGMaが生体内での免疫反応の活性化に関与することを示唆し、RGMaが過剰な免疫反応を原因とする多発性硬化症などの中枢神経での自己免疫疾患の治療標的となりうることを示唆する。
著者
高瀬 つぎ子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年3月に発生した福島第1原子力発電所の爆発事故によって,多量の放射性核種が大気中に放出され,福島県東部および中央部の広範な地域に放射性物質による環境汚染をもたらした.放射性セシウムによる哺乳類の内部被ばくを考える上で,放射性セシウムの①体内組織中での分布,②体内での代謝過程(生物学的半減期)に関する基礎データに基づいて,体内動態を予測することが重要な課題になっている.本研究では,ウシ(黒毛和種)の体内組織中での放射性セシウム分布および放射性セシウム濃度の動的変化を測定し,測定結果にコンパートメントモデルを適用することにより,筋肉をリザーバーとするセシウムの代謝モデルを提案した
著者
岡村 裕彦 羽地 達次 吉田 賀弥 寺町 順平
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

PP2トランスジェニックマウス(PP2A-Tg)およびPP2A発現を抑制した間葉系前駆細胞を用いて骨形成と脂肪細胞分化におけるPP2Aの役割について検討した。PP2A-Tgマウスは野生型に比べて、体重、骨量および骨髄内脂肪量の増加が認められた。PP2Aを抑制した骨芽細胞と共培養した未分化間葉系細胞では脂肪細胞への分化が促進された。また、PP2Aを抑制した骨芽細胞の培養上清は破骨細胞分化を抑制した。PP2Aは、骨関連因子の発現を介して骨形成を調節する重要な因子であることが分かった。さらに、骨芽細胞のPP2A 発現は脂肪細胞や破骨細胞の分化に関与すると考えられる。
著者
鈴木 雅雄
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近現代美術史のなかにおけるシュルレアリスムの位置づけは曖昧で周縁的なものだが、近代的な視覚文化、特にポスターや絵本、マンガといった静止イメージを用いる視覚メディアの歴史全体のなかで見たとき、きわめて中心的なものとなる。これらの視覚メディアは、イメージを一つの瞬間の表象と考える限り矛盾としか思えない構造を差し出すことで、見るものに時間や物語を作り出させようとするものであるが、シュルレアリスム美術が作り出したイメージの多くもこの様態を共有し、さらには先鋭化しているのであり、その点においてモダニズム美術に対する一つの挑戦となるのである。
著者
上田 和夫 紺谷 浩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

現在までに知られている磁性体の中でもっとも複雑な相図を示すことで良く知られているのはCeSbである。磁場-温度平面での階段状の複雑な相図はデビルズ・ステアケース(悪魔の階段)と呼ばれている。CeSbに限らず一般のCeX(X=P,As,Bi,Sb)で程度の差はあれ、複雑な磁気相図が見られることは、この現象の背後に一般的なメカニズムが存在することを示唆している。CeXがその他のセリウム化合物とことなる特徴は、この系におけるキャリアーの数が大変少ないことで、CeXは小数キャリアー系と呼ばれている。CeXのキャリアーはΓ点のホールとX点の電子からなり立っている。このような、半金属ではそれぞれのキャリアーに対する近藤結合に加えて、電子からホールへ遷移する際にf電子とのスピン交換を伴うプロセスが可能になる。この非対角的交換相互作用にともなう運動量変化は反強磁性波数ベクトルに対応するから、この非対角相互作用は反強磁性的に働くことになる。対角(バンド内),非対角(バンド間)交換相互作用にもとづく二種類のRKKY相互作用の間のフラストレーションがCeXで見られるデビルズ・ステアケースを理解する鍵と考えられる。当研究課題での研究によりこの考えが正しいことが、簡単な一次元モデルを用いて検証された。このRKKY相互作用は、局在スピンによって誘起される磁気的フリーデル振動がその起源である。その詳細を調べるため、近藤格子モデルに対する密度行列繰り込み群のプログラムを開発し、常磁性における電荷およびスピンのフリーデル振動を観測することが出来た。。その周期から、近藤格子の常磁性相では、フェルミ波数が伝導電子の密度に局在スピンの数を加えたもので決まっている、すなわちフェルミ面が大きいことが明らかになった。
著者
高橋 路子 高橋 裕
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

私たちは新規アディポカインとしてケマリンを同定した。ケマリンはChemR23のリガンドで炎症を制御するケモカインでもあることが明らかにされている。一方アディポカインとしての代謝調節作用もあり、代謝と炎症を結びつける因子として注目を集めている。ノックアウト(KO)マウスの解析から、ケマリンが膵β細胞におけるグルコース依存性インスリン分泌、肝臓、筋組織におけるインスリン感受性、脂肪組織における炎症を調節することにより糖代謝において重要な役割を果たしていること、さらに日本人糖尿病患者において血中濃度が低下しており、ヒトにおいても糖尿病発症に関連している可能性を報告してきた。本研究では主にケマリンKOマウスを用いて代謝と炎症の調節機構を解明するとともに、患者検体を用いて炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割を明らかにすることを目的とする。ケマリンの受容体であるChemR23を共通の受容体としているレゾルビンE1をはじめとする脂質メディエーター等を神戸大学質量分析総合センターの液体クロマトグラフ質量分析システム(Sciex 6500Qtrap)や脂肪酸の分離に優れた極性の高いカラム(SIGMA-ALDRICH SP2560カラム)を実装したガスクロマトグラフ質量分析装置(島津製作所QP2010Ultra)を用いて測定、解析している。その結果、ノックアウトマウスの血中、白色脂肪組織中には炎症性のプロスタグランジンD2とE2が上昇し、白色脂肪組織において抗炎症性のレゾルビンD1が低下していることが明らかとなった。現在はヒトにおいてもケマリンの代謝、炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割について解明をすすめている。
著者
吉武 義泰 尾木 秀直
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度および昨年度の実績としましては、治療効果を的確に予測できる可能性のあるバイオマーカーの探索・同定と、それらの簡易的な検出方法の開発を試みるという一つの目的に関しまして、学術論文としてInternational Journal of Oncologyに2本の論文を発表することができたことが一番に挙げられます。今回は発表した分子は口腔癌の進行度を反映することができ進行度マーカーとして利用できることを報告しました。さらに腫瘍免疫療法の標的分子にもなり得ることも見出しました。今後、免疫療法の一助になるよう研究を続けていく所存です。一方で、すでに同定したTh1細胞が認識するHLAクラスII (HLA-II)拘束性抗原ペプチドとこれまでのCTLエピトープペプチドとの併用による進行がん患者における抗腫瘍効果の増強を検討しより効果のある口腔癌ペプチドワクチン療法を確立するという目的に関しても、学術論文としてOncoimmunologyに発表できたことを報告致します。本研究は私どもだけではなく、東京大学医科学研究所および熊本大学大学院生命科学研究部免疫識別学講座との緊密な共同研究の成果です。この業績に引き続き、さらに数本の学術論文がでると考えております。本研究の結果、病期の判断マーカーもなく、また治療の効果を判定するマーカーもなかった口腔癌において客観的に判断することのできる手段を得ることができました。そのことによって、これまでは治療法がないと言われ、だた死を迎えるだけであった頭頸部癌扁平上皮癌難民に対して新たな治療法の第一歩を踏み出すことができました。保険適用になりましたニボルマブにおいても、その効果判定や適用患者を投与前に区分することができるようになるかもしれません。さらに、免疫療法の治療標的分子としても、口腔癌を克服できる一筋の光明になる可能性を秘めていること考えております。
著者
除本 理史 関 耕平 窪田 亜矢
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

申請時の計画に従って、①東日本大震災以外の災害での復興基金制度の柔軟な活用事例、制度設計の研究、②福島原発被災地での現行の復興基金の運用実態の解明、③現行の復興政策ではこぼれ落ちる住民のニーズに関するきめ細かな把握、について、それぞれ担当の責任者を中心に研究を進めてきた。①については、研究代表者が客員研究員を務める関西学院大学災害復興制度研究所と連携して研究を進めた。2017年12月には阪神淡路大震災の際に実務経験をもつ研究者などを招き、合同研究会を開催した。②については、日本環境会議(JEC)震災検討委員会行財政部会と連携して研究を進めた。2017年8月には、被災3県の現地調査、また同年11月にも福島調査を実施した(自治体の財政部局ヒアリング、現地視察など)。また、行財政資料の収集・分析を進めつつ、継続的に研究会を開催している。③については、南相馬市小高区を中心として、帰還住民の実情の把握を継続している。研究代表者を中心となり、対面での研究会だけでなく、インターネット会議システムなども用いて、適宜研究組織内の情報共有とディスカッションを進めるよう、努めてきた。以上を通じて、ハード事業中心の復興行財政の実態がより具体的に把握できるようになりつつある。また復興基金も含め、復興財政の柔軟な運用がやはり重要な課題であることもあらためて確認された。さらに、2017年度には帰還困難区域において、将来的に避難指示を解除し、居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」の設定が進んだ。こうした区域を含め、今後の研究において目配りしていくことが重要であると認識している。
著者
久保田 晃弘
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2014年2月H-IIAロケットの相乗り衛星として、世界初の芸術衛星「ARTSAT1:INVADER」が高度378kmの太陽非同期軌道に投入された。10cm角、1.85kgの1U-CubeSatのINVADERは、その後軌道上で順調に運用を続け、搭載されたミッションOBC「Morikawa」によって、音声や音楽、詩のアルゴリズミックな生成、チャットボットによる対話といった芸術ミッションを達成した。次いで、同年12月には深宇宙彫刻「ARTSAT2:DESPATCH」(3Dプリントで制作した渦巻き状の造形部を有した50cm立方、約33kgの衛星)を打ち上げ、深宇宙からの宇宙生成詩の送信に成功した。
著者
三木 裕和 川地 亜弥子 寺川 志奈子 山根 俊喜 赤木 和重 國本 真吾 越野 和之
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

研究の目的は、自閉症、発達障害の教育実践における教育目標・教育評価の構造を明らかにすることであった。学校教員と大学研究者の合同研究会を、のべ18日間に渡って行い、数多くの授業実践を検討した。その結果、社会性の障害に対して、社会適応行動の獲得が重視される傾向にあるが、文化、科学の伝達、習得をめざした教材、授業が可能であることが明らかになった。また、人と共感すること、創造的に考えることを教育目標とした授業も多く見られた。強度行動障害についは、自閉症の障害特性に応じた環境が推奨されているが、学校教育全般における、共感的情動体験の蓄積がより有効であると推察された。
著者
朝倉 政典 大坪 紀之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題においては、代数多様体の周期積分とレギュレーターの研究を数論的観点から行った。一連の研究において、超幾何関数は主要な役割を果たしている。研究成果は、大きくわけて3種類に分類される。ひとつは、代数多様体の周期積分に関するグロス・ドリーニュ予想の研究であり、パリ大学のフレサン氏との共同研究である。ふたつ目は、超幾何ファイブレーションのレギュレーターに関するものであり、これは千葉大学の大坪紀之氏との共同研究である。最後に、p進レギュレーターに関する研究成果をあげた。これは広島大学の宮谷和尭氏との共同研究である。いずれの研究成果も論文にしており、将来的に出版する予定である。
著者
尾添 嘉久
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

昆虫神経系で抑制性シナプス伝達を担うレセプターは農業薬剤の重要なターゲットである。本研究では、抑制性グルタミン酸レセプター(iGluR)の組織局在、機能および薬理学的性質を多方面から調べ、薬物作用点としての重要性をγ-アミノ酪酸レセプター(GABAR)と比較した。その結果、GABARの方がiGluRより薬剤ターゲットとしては重要であると考えられた。
著者
眞田 克典
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

多元環のホッホシルトコホモロジー環のリー代数構造は、コホモロジー環上に-1次のリー・ブラケットが定義され、次数付リー代数であるとともに、コホモロジー環のカップ積との間に次数付微分則が成立しているものです。これはGerstenhaber構造と呼ばれます。これまで、このGerstenhaber構造に加えて、-1次の作用素(BV作用素)の存在に関する研究が進められており、多元環によっては、リー・ブラケットがこの作用素で表現できることが知られています。この構造はBatalin-Vilkovisky構造(BV構造)と呼ばれます。BV構造は多元環に対する導来同値の不変量であることも知られ、その重要性が認識されています。すでに対称多元環のホッホシルトコホモロジー環はBV構造をもつことが知られており、次の目標として、フロベニウス多元環のホッホシルトコホモロジー環はBV構造をもつか、という問題があります。特別なフロベニウス多元環に対しては、ホッホシルトコホモロジー環に加えて、ホットシルトホモロジー、キャップ積、コンヌ作用素の組が満たす構造(Tamarkin-Tsygan calculus)を利用して、ホッホシルトコホモロジー環がBV構造をもつことが示されています。本研究課題の主要な目標は、以上を踏まえて、フロベニウス多元環に対してコホモロジーを全次元に拡張した完備ホッホシルトコホモロジー環におけるBV構造の存在性を研究すること、また具体的なフロベニウス多元環に対するBV構造を決定することです。本年度は東京理科大学の臼井智氏との共同研究でBV作用素の候補となるものを構成しました。一方で、具体的なフロベニウス多元環に関する研究としては、同大学の鯉江秀行氏、板垣智洋氏と共同で、計算例として重要な対象である自己移入的中山多元環のホッホシルト拡大の箙多元環の表示の研究に取り組みました。
著者
矢原 隆行
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内外の研究成果を収集・整理し、多様な福祉実践の場における参加と協働の技法としてのリフレクティング・プロセスの有効性の検討をおこなうため、①文献研究、②北欧における視察調査、③国内における協働的アクションリサーチを実施した。文献研究および海外での視察調査により明らかとなった多様な領域でのリフレクティングの活用実態と、その基本となる理論のまとめ、さらに、精神保健福祉専門職による研究会、および、大規模社会福祉法人をベースとした協働的アクションリサーチのプロセスと結果については、学術論文、学会報告、著書の形で広く発信をおこなった。
著者
田中 勝
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は全国110ヶ所の伝建地区を対象として伝建地区における生活文化の継承と歴史的町並み・集落の保存とを一体的に実現していくための地域共創の住まい・まちづくりの多様な実践、仕組み、現代的意義について全国規模の調査より明らかにした。また伝建地区における住まい・まちづくり学習の教材として各地区を代表する民家をモデルにしたペーパークラフト3種類を新たに開発するとともに、小・中学校の総合的な学習の時間を活用した町並み保存学習への導入を試みた。民家ペーパークラフトの活用は身近な町並みや生活文化について子どもたちの主体的な学びを育み、町並み保存や地域共創のまちづくりの担い手育成に有効であることを実証した。
著者
市之瀬 敦 吉野 朋子 GIBO LUCILA 黒沢 直俊
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究の初年度にあたる本年度においては,年度を通して、国内の教育機関における実態調査として上智大学,東京外国語大学,神田外語大学,京都外国語大学、天理大学でのポルトガル語教育のカリキュラムや達成目標,特色ある取組等について詳細な調査を行った.2017年10月15日に天理大学を除いた4大学の担当者を交えた研究集会を開催し,報告や聞き取りを通じて調査を行った.この調査に関しては主に研究代表者の市之瀬や分担者全員が担当した.さらに,このテーマに関しては,すでに日本ポルトガル・ブラジル学会の紀要ANAISに論文を分担者の吉野が中心にまとめ発表,掲載している.さらに到達目標との関連では,上記5大学での実態などにも踏まえ,投野由紀夫が提唱しているCEFR-Jとポルトガルポルトガル語,教養ブラジルポルトガル語,民衆ブラジルポルトガル語の3変種との具体的言語的対応を図るべくそれぞれのレベルに対応した詳細な例文集を作成した.例文集の作成は分担者の黒澤を中心に,ポルトガル人やブラジル人のインフォーマントの協力を得て完成している.この例文集はすでに黒澤の勤務校である東京外国語大学で試験的に学生に対してボランティア的使用を促しており,効果の検証や改善に向けた取り組みを行っているところである.例文集は,さらに,シラバスの策定に向けて文法項目との関連などを図るための基礎資料となる.加えて,収集成果や研究資料の整備等を行なっているほか試験的に検定試験の一部を作成している。なお,購入したPCにデータや情報などを集約して整理している。
著者
橋本 義武 阪口 真 大場 清 安井 幸則 中井 洋史
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

グロタンディークの双二十面体に基づいて,通信理論における誤り訂正符号に用いられるゴレイ・コード,ウィット・デザインの構成を見直した.C2有限頂点代数の共形場理論において,量子場の相互作用を記述するフュージョン積と因子化の定式化をおこなった.
著者
田邊 力 曽田 貞滋
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本産アマビコヤスデ属とババヤスデ属を対象に、種分化と体サイズ及び体色擬態についての関係、体サイズ進化要因について調べ、以下の結果を得た。(1)分子系統推定の結果から、アマビコヤスデ属では本州、四国、九州に分布する小型種(3.5~4cm)アマビコヤスデから3種程度の大型種(4.5~6cm)が分化しており、大型の一種は分化後にアマビコヤスデと交雑していると推定された。(2)キイロヤドリバエの寄生はアマビコヤスデの体サイズ小型化への選択圧となっている可能性がある。(3)アマビコヤスデ属とババヤスデ属の間で確認された体色ミュラー型擬態の進化においてババヤスデ属における多発的種分化の関与が示唆された。