著者
宮崎 安将 金子 真也
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

きのこの子実体形成には光が必要である。シイタケの光受容体遺伝子 Le.cry は、担子菌初のクリプトクロム型光受容体をコードしていた。その産物Le.CRY の解析 の結果、青色光領域を吸収し子実体形成に関わることが示唆された。プロテオーム解析の結果、 リン酸化や糖鎖付加などの翻訳後修飾を介して、子実体形成に関わる代謝経路やシグナル伝達 経路が存在することが分かった。トランスクリプトーム解析の結果、光応答遺伝子群を網羅・ 同定した。
著者
那谷 耕司 菅原 明
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

EXTL3はヘパラン硫酸の生合成に関与する糖転移酵素である。本研究では膵β細胞特異的にEXTL3を欠失したマウスを作製した。このマウスでは膵β細胞の増殖能が低下しており,ランゲルハンス島に特徴的なマントル・コア構造が認められなかった。またインスリン分泌が低下しており,耐糖能異常が認められた。以上の結果から, EXTL3が合成するヘパラン硫酸が,膵β細胞の増殖,インスリン分泌機能において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
著者
皆月 昭則 西川 奏 三好 邦彦 渋谷 卓磨 土田 栞
出版者
釧路公立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

医療資源の集約化による地方・地域の長距離移動マタニティの存在を明確化して,マタニティ支援アプリを開発した.アプリは,スマートフォンとクラウド基盤によって,妊娠期のマタニティへ情報・知識を表示する機能や妊娠後期においては陣痛推移機能と記録の共有が可能である.開発では,地域の行政の保健師・医療機関の専門家の知見を用いながら実装し,医療者の検証によって改良したアプリケーションをホームページサイトで公開配付した.
著者
後藤 恵 梶 龍兒 森垣 龍馬
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

大脳基底核回路の中核的役割を演じる線条体にはストリオソームとマトリックスと呼ばれる2つの機能分画が存在する。研究期間内に、ジストニア症状を呈する遺伝子改変動物モデルまたヒト疾患モデルではドパミンD1受容体シグナルの低下がストリオソームに選択的に存在することを見出した。さらに、ジストニアを主症状とする線条体変性疾患ではストリオソーム優位の神経細胞脱落がみられるが、このコンパートメント特異性病変の形成にニューロペプチドYやPSD-95 などの神経保護因子の発現が関与していることを示した。これらの所見はジストニアの発現機序として私が提唱する“ストリオソーム仮説”と符号するものである。
著者
佐々 充昭
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1992年中韓国交正常化の後、中韓の歴史学者を中心に中国内にある韓国系独立運動関連史跡に関する調査が行われた。その後、中韓関係の緊密化により、それらの中の重要なものが韓国系資本によって整備・復元された。特に中国東北部には数多くの関連史跡が存在し、それらは今や多くの韓国人旅行者たちが訪れる有名な観光地となっている。またこの地域は、高句麗の帰属をめぐって中韓間で歴史認識論争が行われている場所でもある。本研究では、中韓間で先鋭化している歴史認識論争や中国内の朝鮮族コミュニティーの動向と関連づけながら、中国東北部において観光地化が進んでいる韓国系独立運動関連史跡の実態について明らかにした。
著者
宇佐見 義之
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

カンブリア紀に生息した節足動物アノマロカリスの生態を研究した。アノマロカリスは種によっては肢を持つ底棲の水棲動物であるが、主に発達した14対のヒレで海底近くを泳いだものと思われる。そこで、本研究では流体の中でこれら14対のヒレをどのように動かしたらうまく前進するか計算した。流体の中で複雑な形状の物体を動かす計算は通常は難しいが、本研究では粒子法を採用することによりこの計算を実行した。粒子法は越塚が開発し配布しているMPS法のプログラムを利用した。その結果、アノマロカリスは14対のヒレを波打たせるように滑らかに動かす方法が速度/エネルギー比という観点で効率良く全身することがわかった。次に、アノマロカリスの形態の変化を研究した。アノマロカリスの形態は化石でしかわからず、また、どのような生物から進化してかについての化石情報は一切ない。そこで、コンピューターの中で原始的なアノマロカリスの形態を仮定し、そこからの進化過程を研究した。原始的な形態としては細い付属肢を仮定し、その幅が広がることにより完成したアノマロカリスの体型になる過程を考えた。その結果、付属肢の幅が広がるにつれ速度/エネルギーが一定になるように速度が上昇するが、完成したアノマロカリスになった途端、速度/エネルギーが飛躍的に大きくなることがわかった。化石では、完成したアノマロカリスの化石しか発見されないが、いずれにせよ、アノマロカリスはなんらかの原始的な生物から進化した筈である。しかし、それらの途中段階は化石には残らず、完成した体型を獲得した段階で繁栄し、また多様化を起こしたと考えられる。このような進化のプロセスが、本研究で解明した力学を背景に起こったと考えることができる。
著者
道上 静香 中川 雅央
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は,タブレット端末を用いたテニスのゲーム分析ソフトを開発すること,砂入り人工芝コートとハードコートを用いたプロテニス選手のシングルスの試合における客観的データと指導者の主観的データを獲得し,それらを比較すること,そして,得られた科学的知見に基づき,日本テニス独自の技術・戦術の指導法を構築することであった.新たに開発されたソフトウエアは,両サーフェスにおけるシングルスの試合の特徴を明らかにし,砂入り人工芝コートを用いた日本テニス独自の技術・戦術の段階的な指導方法の確立や個々のテニス選手の技術・戦術的欠点などの抽出に役立つことが明らかとなった.
著者
平田 健治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

指図による占有移転の方法による即時取得の要件は何か。この明瞭化が本研究の目的であった。その点については、ドイツ法、フランス法、英米法、さらにはローマ法の議論を参照することで、要件設定の際に考慮されるべき諸要素を析出したことが成果である。それを列挙すれば、日本の指図による占有移転の要件の沿革から見た欠陥の指摘、占有改定と指図による占有移転の方法が前提とする取引態様の定型的相違に着目すべきことの指摘、物権関係(所有権移転)と債権関係(賃貸借や寄託契約)の連携のあり方が絡むことの指摘、占有意思、とりわけ即時取得において占有意思変更を議論とすることの問題の指摘などである。
著者
菊池 勇夫
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

東北地方北部の盛岡藩・八戸藩を中心に、馬・狼・猪・焼畑・大豆生産およびその他の要素を含めた生態系・環境について相互連関的な考察を行うことが研究の大きな目的であった。まだ、研究途中にあるが、この3年間のおもな成果は、1749年(寛延2)の八戸藩における猪飢饉の実態について明らかにし、その背景や要因について考察し、報告書にまとめることができたことである。1749年の飢饉は冷害型凶作が原因であり、猪荒れはそれほどではないという批判があったが、1740年代の猪荒れがかなりの作物被害を与えており、1749年がそのピークに達していたことは事実であり、猪荒れを過小評価できないことを論証した。ではなぜ、猪が異常繁殖したのか。そこには、地域の主要な産業であった大豆生産と馬産の2つが大きくからんでいた。大豆は商品作物として、17世紀末から江戸市場向けに生産・移出されるようになり、焼畑を含む山野の開発が進み、猪に襲われやすい耕作環境になった。また、藩牧および民間における馬産も展開したが、馬産にとっての大きな障害は馬が狼に襲われることであった。マタギ(鉄炮猟師)を動員した狼狩りによって、天敵のいなくなった猪が急増したと推測される。猪飢饉は、開発による生態系の破壊が招いた典型的な災害であったと評価することができる。以上の主論文のほかに、八戸城下に居住していた安藤昌益の農本的あるいはエコロジカルな思想形成が、地域の飢饅・風土的環境と密接に関わっていたことを論じた論文、各藩が幕府に届け出た被害高である損毛高の算出根拠について検討した論文、鳥獣害の被害を食い止めるための鳥追いの労働が誰によって担われてきたのか明らかにした論文など、この間に作成し、報告書収録または別途論文として発表することができた。
著者
片井 みゆき 櫻井 晃洋 加茂 登志子 福嶋 義光
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2011-00-00)

女性医師の離職防止・キャリア向上のため、男女医学生と保護者を対象に意識調査を行った。女性医師の仕事と家庭の両立に対し、医学部入学直後の男子医学生の約30%が否定的な意見を述べた。一方、女子医学生のほとんどは肯定的であったが将来への不安感が強く、男女医学生の意識に明らかな性差がみられた。女性医師のキャリア形成に関心を持つ保護者は、女子医学生の母親が最も高率だった。こうした性差をふまえ医学部でのキャリア教育を行う必要があり、ジェンダーバイアスの解消が医学における男女共同参画のためにも望まれる。
著者
井上 彰 後藤 玲子 DUMOUCHEL PAUL
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度は、平成28年度の研究、すなわち、「平常時」から(部分的にせよ)かけ離れたカタストロフィ後の世界において、分配的正義を支える価値や理念がいかなる身分を有するのかについて精査し、そのうえでカタストロフィ後の世界に適用可能な価値の構成や適用順序について明らかにする研究をふまえて、わが国を含む様々な国や地域の不平等や不正義の問題への応答を試みた。具体的には、政治哲学パート(井上彰が担当)では、これまでの復興にかかわる分配的正義をめぐる原理的議論を分析哲学の手法を用いて批判的に吟味し、経済哲学パート(後藤玲子が担当)では、復興にかかわるような格差を生む分配メカニズムについての考察を、経済学や社会的選択理論の知見をふまえるかたちで進め、社会哲学パート(Paul Dumouchelが担当)では、カタストロフィ後の経済社会のあり方、ありうべき姿について社会思想史やロボット哲学・倫理学の観点から検討した。その研究成果の一部として、研究代表者の井上が主催するかたちで、2018年1月19日に、Questioning Methods, Theory, and Practice in History and Politicsと題するシンポジウム(Strategic Partnership Program: The Australian National University and the University of Tokyo, Australian National University-University of Tokyo Joint Research Seminar)を東京大学駒場キャンパス(東京大学大学院総合文化研究科グローバル地域研究機構アメリカ太平洋地域研究センター)にて開催し、政治や歴史をめぐる方法論的反省とその刷新可能性について分野横断的に議論した。
著者
池谷 文夫
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

(1) 期皇帝権時代(おおよそ950-1150年), (2) 後期皇帝権時代(おおよそ1150-1350年), (3) 晩期皇帝権時代(おおよそ1350-1550年)の皇帝及び皇后の機能・権力を, 皇帝夫婦の巡幸や両者による文書発給事例に即し具体的に検証した。特に, 「皇帝」と行動をともにした「皇后」について, 国王・皇帝証書等の発給文書への関与や, 自己の固有財産(寡婦資産)の寄進等に関して, そして「皇后戴冠」後の「后」の帝国における位置・立場に関して, (1), (2), (3)期における具体例を史資料の読解・分析を通じて解明した。これらの研究成果をまとめて約18万字に及ぶ「研究成果報告書」である『神聖ローマ帝国史の研究神聖ローマ帝国皇后列伝-共治者, 皇后・王后から妃へ-」』を完成させた。
著者
吉武 哲信 梶田 佳孝 出口 近士 寺町 賢一 梶原 文男
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、都市計画にもとづくまちづくりのウェイトが低下し、都市じまい的なまちづくりを志向する地方小規模自治体が存在することを、都市計画マスタープラン(都市MP)策定の意義に対する自治体の認識を調査・分析することによって明らかにしたものである。九州、中国、四国地方を対象とした調査の結果、都市MP未策定においてもデメリットがないものの、都市計画事業の実施に都市MPを関連づけて策定することが多いこと、一方で新規の都市計画事業や民間開発が想定できない状況では、都市MPを充実させるインセンティブは働かず、総合計画や区域MPで都市の将来像を緩やかに示すことを望む自治体が存在することが明らかになった。
著者
迎 寛 赤田 憲太朗 川波 敏則 野口 真吾 内藤 圭祐 畑 亮輔 西田 千夏 山﨑 啓 城戸 貴志 矢寺 和博
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

気管支洗浄液を採取した肺炎患者(177名)を対象に16SrRNA遺伝子を用いた網羅的細菌叢解析法を用いて、誤嚥リスク因子の有無により分類し原因菌解析を行った。誤嚥リスク有群(83名)では口腔レンサ球菌が有意に多く検出され、その規定因子として、全身状態不良や1年以内の肺炎の既往が抽出された。これにより、口腔内常在菌として過小評価されてきたレンサ球菌が、誤嚥性肺炎の原因菌として重要なことを明らかにした。また、口腔衛生状態と原因菌との関連性の検討(n=34)では、口腔内衛生状態(OHI)が不良群で嫌気性菌の検出が有意に多く、口腔内不衛生が下気道検体の嫌気性菌の検出に関与すると考えられた。
著者
上中 明子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)がん抗原の同定:培養肺癌細胞由来mRNAからcDNAライブラリーを作成し、10,000クローンを1プールとした40プールのライブラリーを作成し、第一次、2次のスクリーニングを完了。第3,第4次スクリーニングへ向けて、CTL側の調整を終了した。(2)(2)抗原の特質解析ツールとしてのモノクローナル抗体の作出:がん・精巣抗原XAGE-1bに対するモノクローナル抗体USO9-13を、開発した簡易モノクローナル抗体作成法によって作出した。組織染色によりその反応特異性を明らかにした。さらにXAGE-1b蛋白の抗体が認識する領域を明らかにした。(3)(3)がん免疫療法におけるT細胞免疫反応動態の解析:免疫療法における免疫反応動態の解析は重要であるが、がん抗原特異的に反応するT細胞の頻度は著しく低くその検出は困難である。そこで、T細胞免疫モニタリング法の検討および実際に使用可能な方法を検討した。モデル抗原としてインフルエンザA-24ペプチドを用いて末梢血リンパ球を刺激し、培養条件およびのアッセイ法の検討を行った。その結果、5%プール血清、IL-2 10u/mlおよびIL-7 10ng/ml添加AIM-V培地で、12日間の刺激培養で抗原特異的T細胞が効率良く検出されることを明らかにした。また、がん抗原と特異的に反応するT細胞の検出法として、エリスポット法、細胞内IFNγ検出法、IFNγ分泌細胞検出法を比較検討し、IFNγ分泌細胞検出法が高感度に検出することを明らかにした。CHP-NY-ESO-1蛋白の臨床試験におけるT細胞免疫反応動態をIFNγ分泌細胞検出法により解析した。末梢Tリンパ球をオーバーラップペプチドを用いて刺激し、再現性の高い結果が得られることを明らかにした。CD4 T細胞のモニタリングでは、4回の免疫で、約半数の症例に特異的T細胞の上昇をみとめた。