著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

科学者の社会的責任の内実は時代とともに変容してきた。現代の責任論は、原爆を作った物理学者の責任論にとどまらず、生命科学、食品安全にかかわる諸科学、環境科学など範囲も多様化している。本研究では、まず専門主義の源泉について考え、次に現在科学と社会との間でおこっている公共的課題の特徴を整理した。さらに、責任概念と倫理との差を検討した。責任(responsibility)とは、他者と対峙したときのresponseとして生じ、応答(response)の能力・可能性(ability)に由来する。責任を「過去におこしてしまったものに対して生じるもの」ととらえる見方だけでなく、「応答可能性」「呼応可能性」といった形で解釈する必要がある。これに対応して、科学者の社会的責任論も、過去に科学技術が作ってしまったものに対して生じるものだけでなく、市民からの問いかけへの応答可能性として定義されうるものへの考察も必要である。これらをふまえた上で再整理すると、現代の科学者の社会的責任は、(1)科学者共同体内部を律する責任、(2)製造物責任、(3)市民からの問いへの呼応責任の3つに大きく分けられることが示唆された。
著者
藤垣 裕子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題の目的は、科学者の社会的責任の現代的課題について、責任論と科学コミュニケーション論の接点にあたる課題を中心に、事例分析をもとに分析をすすめることである。科学者の社会的責任の現代的課題は、(1)科学者共同体内部を律する責任(ResponsibleConductofResearch)、(2)製造物責任(ResponsibleProducts)、(3)市民の問いかけへの呼応責任(ResponseAbility)の3つにわけることができるが、科学者の社会的責任と科学コミュニケーションの重なりあう領域においては、この〓組みの1つには留まらない問いが喚起される。本研究ではこのような領域における事例分析をすすめ、科学者の社会的責任の現代的課題を考察した。
著者
三村 治 出澤 真理 石川 裕人
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度は弱視モデルの作製・骨髄間質細胞のドーパミン産生神経細胞への分化誘導・弱視モデルへの細胞移植方法の検討を行った。弱視モデルは生直後より暗室下で飼育することにより作製した。骨髄間質細胞はDezawaらの報告と同様にドーパミン産生神経細胞への分化誘導が可能であった。弱視モデルへの細胞移植は脳脊髄液経由で細胞懸濁液を第4脳室に注入することにより可能であった。平成18年度は17年度に続いて弱視モデルへの細胞移植を行い、抗体アレイやPCRを用いた解析を行った。抗体アレイでは弱視モデルのタンパク発現を網羅的に解析することが可能であり、種々のタンパクとりわけ、ドーパミン前駆タンパク(Tyrosine hydroxylase;Th)が脳において発現が増強していたが、網膜では既報のようにThの発現は減少していなかった。Apoptosis関連タンパクやMAP kinaseに関するシグナルタンパクなどは脳・網膜共に発現の減少傾向を認めた。これらの結果は既報と同様であり弱視に伴う発現変化を捉えている。抗体アレイの結果をうけPCRを用いた確認実験を行った。PCRではThが弱視網膜においてdown regulationを認め、既報と合致した。細胞移植された弱視脳ではMAP kinase関連タンパクやNeurofilament、GFAPなどの神経グリア系のUp regulationを認めた。この結果から弱視モデルに対するドーパミン産生神経細胞の脳脊髄液経由移植は、弱視モデルによって惹起された様々なシグナル回路に作用し、アポトーシスの回避や神経・グリアの選択的生存をもたらし、さらには弱視モデルにおけるドーパミン量を増加させることとなった。今後、既存のLevodopaの投与と本研究で行った細胞移植の効果との比較検討を行う必要性があり、大型動物での安全試験等も施行していきたい。
著者
高田 清式
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

院内感染の理解を深めることを目的に研修医における処置時の手袋着用状況と白衣の汚染状況を調査した。当大学病院での研修医に焦点をあて、感染教育により向上するかどうかを年次的に検討した。手袋着用率が平成20年度の59.6%に比べ、平成22年度は63.8%であり、白衣のMRSA汚染も平成20年度に2例検出されたが以後は検出されなかった。感染対策の実践において感染教育にて年次的に幾分の改善傾向が示されたと考える。
著者
早川 邦弘 星長 清隆 日下 守 佐々木 ひと美
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

年齢60歳以上と50歳から59歳までの腎臓で高血圧の既往または脳血管死亡の群における心停止ドナーからの腎臓は、レシピエントとして30歳未満の若年者ではなく、55歳以上の高齢者か女性に移植した方が生着率や期間などが有意に優れていると結論した。
著者
三輪 錠司
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

私たちは日常幾多の有害物質に曝されている。また生体内では代謝によって活性酸素などの有害物質が必然的に生成されている。これらは解毒酵素によって無害化され体外へ排泄される。本研究の目的は有害物質が体内で無毒化されていく経路を分子レベルで解明することである。モデル動物C.elegansを使った実験の結果、XREP-1/XREP-3が無毒化に極めて重要な働きをしていることを発見した。XREP-1/XREP-3は、ヒトなどのKeap1/Nfr2と酷似しており、C.elegansでの結果はヒトにも当てはまると期待できる。
著者
米森 敬三
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

マイクロマニピュレータを用いて、数種果樹の果実から単一細胞の液胞液を採取し、その糖含量及び組成を分析することで、果実内での糖蓄積機構をインタクトな単一細胞レベルで解析することを目的として、以下の実験を行った。1.果実の単一細胞からマイクロマニピュレータにより採取した液胞液を用いて、その糖含量と糖代謝を測定する分析法を検討した。その結果、カバーガラス上のパラフィンオイルで覆った酵素液ドロップ中で糖特異的な酵素反応を促し、生じるNADPH量を倒立顕微鏡に装着した顕微測光装置で測定することにより、ブドウ糖・果糖・ショ糖・ソルビトール含量およびインベルターゼ活性をそれぞれ高精度で測定することが可能であることが確かめられ、単一細胞中の糖含量・代謝の測定法を確立することが出来た。2.果実の単一細胞中の浸透圧調節機能を解析するため、浸透圧、無機イオン(カリウム)含量をマイクロマニピュレータにより採取した単一細胞の液胞液によって測定する方法を検討した。その結果、ピコリッターオズモメーターにより浸透圧を、X線マイクロアナライザーを装着した走査型電子顕微鏡によりカリウム含量を定量する方法を確立した。3.上記の方法により、カキ・ブドウ・モモ・ナシ・リンゴについてそれぞれの果実の1つの柔細胞における糖組成、浸透圧、カリウムイオン濃度を成熟期前後に測定し、樹種間での糖蓄積過程の差異とともに同一果実内での部位別による糖蓄積過程の差異を細胞レベルで解析した。その結果、何れの樹種でも果実全体を用いて測定した糖組成と単一細胞中の糖組成はパラレルであること、および成熟に伴う細胞の浸透圧上昇が糖含量の上昇に起因することが細胞レベルで確かめられた。また、樹種によって、果実の部位により細胞の糖組成に差異がみられる場合とそうでない場合があり、樹種によって糖蓄積機構に違いがあることが示唆された。
著者
DARRYL Macer
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

様々な職業の人を対象にしたインタビューやアンケート調査が日本で行われた。オープンコメントの分析方法が検討され、書き込み式のアンケートと、対面式のインタビューとの方法の比較が行われた。結果から、社会を構成する全ての人が、科学に関する議論に様々な見解を持って参加できることが示唆された。利益やリスク、道徳的容認度等に重点を置く人には、統計学的傾向があるように思われる。生命倫理の教科書に、どのような内容を含めるか、というプロジェクトが、研究の第二段階として開催された。これは、諸外国における生物・社会科の教師や、生命倫理の専門家との対話を基に行われる。医療倫理への関心が依然として強いように思われるが、環境問題への関心も増加しているようだ。生命倫理教育のためのチャプターが20篇執筆され、現在編集中である。チャプターには次のトピックが含まれる。チャプターが執筆され、改変、編集されるに伴い、それぞれのチャプターが異なる国々で、先生達によって試行される。2004年2月13日から16日にかけて、つくばにおいて専門家や先生方が意見を交わした。オーストラリア、中国、韓国、インド、日本、メキシコ、ネパール、ニュージーランド、フィリピン、ポーランド、そして台湾の先生方、およびコーディネーターとの意見を交換した。数名の先生が大学および高校において授業を実践した。プロジェクトの主な産物は1)生命倫理教育のための教材2)生命倫理の問題について学校および大学で使用することの出来る教科書3)異なる国々の先生同士のネットワークである。生命倫理教育の成功はいくつかの方法で量ることが出来る。1)生命の尊重が増加2)科学と技術の利益とリスクのバランスを取る3)異なる人々の多様性をより良く理解する。これら全てを達成しなければ成功したと呼べないわけではない。また、教師によって、重きを置くゴールが異なってくるであろう。
著者
荒 このみ
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アメリカ合衆国の宗教組織「ネイション・オブ・イスラム」の前史から今日に至る<イスラーム>の文化表象を調査・研究し、その主要人物マルコムXについての考察を深めた。その成果を部分的にはすでに紀要論文に発表しているが、総まとめとしての研究成果は、単行本として発表することになっており、今年中に刊行予定である。
著者
伊藤 真之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

X線天文衛星「あすか」の位置検出型ガス蛍光比例計数管GISのデータを用いて、太陽X線の地球大気アルベドのスペクトルおよび長期変動を調べた。この結果、太陽活動の極小期から極大期をほぼカバーして、太陽X線とその地球大気アルベドのスペクトルが、0.5-5keVのエネルギー範囲で、いくつかの元素のK輝線を識別できる程度のエネルギー分解能で得られた。スペクトルは、(a)2温度成分の高温プラズマの熱放射、(b)これに対する中性ガスによる反射・吸収の補正、(c)付加的輝線成分から成るモデルで記述された。主として成分(a)が太陽コロナX線の太陽全面にわたる観測期間内の平均スペクトルに相当する。太陽X線に関する主な結果は次のようにまとめられる。1.得られた太陽X線スペクトルは、温度3×10^6K程度および(5-10)×10^6K程度の熱放射としてほぼ記述できる。高温成分は主とし太陽フレアで生成される高温プラズマの放射であり、低温成分は主としてフレア以外のコロナの放射であると考えられる。2. 2成分の温度には、太陽活動周期にともなう大きな変化はみられなかった。3. 2成分の強度は太陽活動周期と同期した変化を示した。変化の割合は高温成分の方が大きく、太陽活動極大期において高温成分の占める割合が大きくなる。付加的輝線(c)には、地球大気のOおよびAr以外に、Mg、SiなどのK輝線が含まれ、これらは(a)の熱放射から期待される輝線に対してエネルギーが低く、強度が大きい。一つの可能性として、太陽コロナにおける電離非平衡の効果が考えられる。なお、研究の構想段階ではASTRO-E衛星も視野に入れていたが、軌道投入失敗のためこれは実現しなかった。ほぼ同じ設計の衛星ASTRO-EIIの打ち上げが予定されており、X線カロリメータによる高分解能のデータを用いて、本研究の方法による展開が期待できる。
著者
筧 文生 野村 鮎子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

日本の宋代文学研究は、一部の古文家や詞の作者を除いて質・量ともに唐代のそれに及ばないのが現状である。この原因の一つには、別集に関する基礎研究の不足があげられる。そこで、我々は清朝考証学の精髄というべき『四庫全書總目提要』宋代別集の部の研究に着手した。『四庫全書』は北宋別集として115家122種の別集を著録している。平成10年度には、この122種の別集の解題すべてについて訳注をつけるという作業を行った。平成11年度は、その中でも特に重要な文学者50家56種の別集提要を選んで整理分析を行い、その成果をまとめた『四庫提要北宋五十家研究』(筧文生・野村鮎子著 汲古書院 2000. 2)を上梓した。また、野村鮎子はこれに関する論文「『四庫提要』にみる北宋文学史観」(立命館文学563号 2000. 2)を発表した。『四庫提要北宋五十家研究』は、日本学術振興会の研究成果公開促進費の助成を受けて出版したものであり、今後、宋代文学研究に必備の文献となるものと確信している。また、版本の研究については、平成10年度は国内の研究機関・所蔵機関を中心に調査し、平成11年度夏には、中国における宋代文学研究の中心である四川大学古籍整理研究所に赴き、日本国内では見ることのできない版本を閲覧する機会を得た。これらの版本研究の成果は上記の本と論文に結実している。ただ、南宋別集は北宋別集の数倍の量があるため、作業が思うように進捗せず、出版に至らなかったことは残念である。数年のうちにはこれを整理し、南宋編の出版をめざしたい。
著者
松井 富美男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

当初の目的に従って、アングロサクソンの生命倫理との相違点を際立たせながら、ドイツ生命倫理の特徴を明らかにした。ドイツの生命倫理は現在二つの根本問題で揺れている。一つは安楽死問題、もう一つはヒト胚問題である。これらは別問題のように見えるが、生命操作への可能性を含む点で共通しナチズムを髣髴させる。安楽死はオランダやベルギーで合法化され、フランスもこれに同調する勢いである。このような隣国の動きは少なからずドイツにも影響を与えている。しかし自己決定権を拠り所にした安楽死容認論は必ずしもドイツ生命倫理の趨勢ではない。ドイツでは安楽死問題に関しても、「生命」の意味を根源的に問い直すことから議論が開始される。他方、ヒト胚研究に関しては、国益と理念の板挟みになっているというのが実情である。「人間の尊厳」は、ドイツ国民の歴史的誓いとしてドイツ憲法にしっかりと根を張っている。そしてこの理念をより具体化したものが「胚保護法」である。このようにドイツの生命倫理は、アングロサクソンのように生命功利主義に偏ることなく、「人間の尊厳」の理念に立ち返りながら生死問題を論じている。本研究においては、こうしたドイツ生命倫理の実情を明らかにするために、初年度はドイツの生命倫理研究所やセンターに赴いて資料収集にあたり、主要文献を訳出して図書や雑誌等々で紹介した。次年度以降は、各種の学会や研究会において「人間の尊厳」の原理的根拠について自らの考えを披露しそれを論文にまとめた。
著者
水谷 房雄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

果樹の主幹部に幅数mmの連結用樹皮を残し、部分的環状剥皮を施し、連結用樹皮の再生を種々の方法で抑制することによって、果樹の小樹化を図ったところ、樹体成長が抑制された。連結用の樹皮を定期的に元の幅に切り戻すと新梢の成長が抑制された。また、植物成長抑制剤のABA, ヒノキチール、トロポロンなどを連結樹皮に処理すると、樹皮の再生と樹体成長の抑制に効果があった。これらの化学物質を連結樹皮部位にのみ処理するので環境にも優しい技術といえる。また、全樹種に適応できる技術であると思われる。
著者
芦田 淳
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

安全・安心・安価で環境親和性の高い全水溶液プロセスによる ZnO/Cu2O 系太陽電池の実現を目指し、両層の薄膜を作製した。ZnO はロッドなどになりやすく連続膜を得にくい問題があったが、核形成と初期成長の詳細な解析を行い、成長初期の水酸化亜鉛の生成を回避することでこれを解決した。また Cu2O では酸素源である電解液中の水酸基濃度と溶存酸素濃度を制御することでキャリアの起源となる Cu 欠損量を変化させうる可能性を見出した。
著者
橋本 征也 田口 雅登 能澤 孝 藤木 明 萱野 勇一郎
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

医薬品を適正に使用するためには、薬物動態特性と個体間変動機構を明らかにし、患者個々に投与設計を行う事が必要である。しかし、一人の患者から速度論的解析に耐えるほど数多くの血中薬物濃度データを得ることは多くの場合困難であることに加え、市販後に一施設で行う臨床薬物動態試験では、対象患者が多くても数十人に限られるため、従来の薬物速度論的解析法は適用が困難である。本研究では、症例数および採血点数が少ない探索的な臨床試験データの解析法として、最近申請者らが考案した三段階の解析法が有用であることを検証するとともに、臨床試験のデザインとデータ解析の発展を目指した。
著者
加藤 徹 倉島 栄一
出版者
宮城県農業短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、地球温暖化が積雪地河川の融雪流出へ及ぼす影響の予測を試みたものである。研究対象流域としては、東北地方の名取川水系大倉ダム流域(宮城県)と北陸地方の小矢部川水系刀利ダム流域(富山県)である。地球温暖化が融雪流出へ及ぼす影響をみるため、気温上昇による両ダムにおける月別総流出高、月別融雪流出高、月別融雪水依存度、旬別総流出高、旬別融雪流出高、流域の積雪水量および消雪日等の変化によって検討した。なお、地球温暖化シナリオとしては、気温上昇に伴う降水量増加を考慮したものをシナリオI、気温上昇を全く見込まないものをシナリオIIと設定した。その結果の概要は、下記のとおりである。"(1)"気温上昇に伴い、降水のうち降雪となる割合が小さくなり、積雪水量が小さくなる。また、融雪時期や流域の消雪日も早まる。そのため、融雪流出の早期化と減少化が顕著となる。"(2)"月別総流出高、月別融雪流出高、月別融雪水依存度、旬別総流出高、旬別融雪流出等はいずれも融雪最盛期の4月、5月には減少し、逆に3月、2月にやや増加して平滑化される。"(3)"気温上昇に伴う降水量増加を見込んでいるシナリオIよりも降水量増加を見込まないシナリオIIの総流出高、融雪流出高等が大きく減少する。"(4)"大倉ダムと刀利ダムとの比較では、気温上昇に伴う総流出高、融雪流出高の減少割合には大きな差異が認められないが、流出高そのものの減少は刀利ダムの方が大きく、大倉ダムの2〜3倍となる。"(5)"以上のように、地球温暖化は、積雪地河川の融雪流出へ大きな影響を及ぼすことが予測される。
著者
坂本 竜哉
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アユモドキの河川本流と産卵場所である氾濫原の間での回遊を見出した。これは淡水域に限られ、数kmと小規模である。野外調査から遡上と産卵を制御する環境-内分泌要因を示唆し、それを基に飼育下での行動の再現に成功した。現在、水没した陸地から生じる"におい"や、テストステロン、甲状腺ホルモンに絞りつつある。サケ科魚類等との比較から、これらは普遍的な回遊の制御要因である可能性がある。このシンプルかつコンパクトな「非通し回遊」は、回遊研究の魅力的なモデルであると思われる。
著者
寺山 恭輔
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

スターリン体制確立期にあたる1930年代について、主要な決定機関たる政治局の諸決定を特別ファイルを含めてほぼくまなく収集したが、その他の史料館の史料も利用しながら、最初の事例としてソ連のモンゴル政策について本にまとめた。当該問題に関連して、秘密警察その他これまでアクセスの困難であった史料を利用した多くの著作を収集し、アルヒーフ史料とともに、新疆、ソ連極東地域について著作を準備中である。その他の地域についてもまとめる作業を行っている。
著者
柿澤 昌
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度には、主に薬理学的実験により、申請者自身が見出した一酸化窒素(NO)依存的な小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおけるLTPが細胞内のカルシウム上昇に依存することが示された。しかもイメージング法を用いた解析により、このCa上昇は、申請者自身の先行研究により示されていた、LTP誘導に必要なNOシグナルと空間的に一致することが示された。これらの結果は、LTP誘導時に小脳プルキンエ細胞内で活性化されるNOシグナルとCaシグナルの間に強い関連性があることを示唆する。そこで平成19年度は、両シグナルの関連性を明らかにすることを目標に研究を行った。先ず、NOシグナルによりCaシグナルが活性化される可能性を検討するため、マウス小脳スライス標本においてNO供与体を細胞外から投与し、プルキンエ細胞内Ca濃度に与える影響をイメージング法によって調べた。その結果、NO供与体投与により、プルキンエ細胞内Ca濃度に上昇がみられることが明らかとなった。引き続き、平行線維刺激により産生される内因性NOによってもプルキンエ細胞内Ca濃度上昇が見られることが明らかとなった。さらに、NOシグナルがプルキンエ細胞内Ca上昇を引き起こす分子機構を解明する一環として、細胞内NO受容タンパクである可溶性グアニル酸シクラーゼの関与を調べた。しかし、可溶性グアニル酸シクラーゼの阻害薬等を投与したところNOシグナルによる細胞内Ca上昇に阻害効果は見られなかった。
著者
斉藤 和義 河野 公俊 田中 良哉
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

転写因子に対する抗体とリウマチ性疾患の臨床病態との関連につき、その網羅的な解析をこころみた。96種類の細胞増殖周期、恒常性維持などに重要な機能をもつ、種々の核内因子をGST融合蛋白として調整し1枚のDEAEシートにブロッティングした。SLE10例をはじめとした患者血清中の対応抗原の検索を行った。血管炎症候群の血清の一部でHMG1に対する抗体が検出された。一方、SLEではPCNAに対する抗体が2例で検出されたが、その他の多数の抗原にも反応しており、疾患特異性や病態への関与などを示す傾向は認められなかった。抗原をアセチル化、メチル化して翻訳後修飾を受けた核内蛋白への血清の反応も検討したが、翻訳後修飾を行うことで新たに得られた陽性結果や陰性化などの変化は認めなかった。