著者
佐々木 大輔
出版者
市立札幌大通高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

【研究目的】本研究では、テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム(以下、「TRPG」)というコミュニケーションゲームを利用して社会的スキルトレーニングをおこなうことの展望を確認する。本研究では、定時制高校の生徒がTRPGに参加した際、ゲーム中にどのように意識して普段とは異なるコミュニケーションをおこなっているかを確認した。また、TRPGがキャリア教育の一環として授業に組み込むことができるかどうかを確認するため、教員が一緒にゲーム参加した場合、それらの意識がどのように変化するのかも確認した。【研究方法】計4回のTRPG体験会において、終了後に質問紙調査をおこなった。参加者は合計64名。また、そのうち14名が教員と同じ卓でゲームに参加した。ゲームに対する面白さ、および、社会的スキルの4側面(反応読解、反応決定、感情統制、反応実行)について、普段と比較してどの程度実践できたかを5件法で質問した。また、これらを教員が参加した場合としなかった場合の両方を想定させて質問した。【研究成果】面白さは教員卓のとき教員不在想定時に低く、教員と一緒だと面白さを教員に帰属してしまうことが明らかになった。対人目標決定は教員卓のとき教員同席想定時に高く、教員と一緒だと、何をすればいいかは教員が一緒の方がわかりやすいと考えることが明らかになった。対人反応実行では教員卓のとき教員同席想定時に高くなることから、教員と一緒だと伝えようという努力を教員が一緒の方がしやすいと考えることが明らかになった。以上のことから教員の同席による否定的な効果は確認されず、促進する効果が確認されたため、キャリア教育の一環として授業に組み込むことが可能であることが示された。
著者
山本 剛
出版者
学校法人 福島成蹊学園 福島成蹊高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

本研究では, 生徒たちに電気伝導度を精密に測定させ, 電気伝導度の低下量とミカヅキモ(Closterium moniliferum)の細胞数との関係, 電気伝導度の低下量とストロンチウムイオン濃度の関係を明らかにする。この結果に基づき, 福島で起きた原発事故後の放射性物質の除染活動を, 生徒たちが採集し, 培養したミカヅキモを利用し, 実現できるかどうかデータ収集を試みる。また, 藻類の種類による電気伝導度の変化を調査し, より電気伝導度を低下させる藻類を発見する。実際の汚染水中には放射性セシウムのような他の金属イオンも存在するので, 他の金属イオンが共存する中でも選択的にストロンチウムイオンを吸収するかどうか, また, より効果的な吸収条件についてもデータ収集を実施する。研究方法は, メトラー社製の電気伝導度計を用いて, 一定量のミカヅキモが投入された塩化ストロンチウム水溶液の電気伝導度を投入後から15分間1分ごとに測定。塩化ストロンチウム水溶液の濃度と電気伝導度の関係を表す検量線よりストロンチウム濃度を求め, 低下前の値と比較し, ミカヅキモのストロンチウム吸収量を求めた。研究成果としては, 一定量の塩化ストロンチウム水溶液であれば, 細胞数が多いほど全体の吸収量が増えると予想していたが, 細胞数が多くても吸収量が少なく, 適正な細胞数があることが明らかとなった。また, 1細胞当たりの吸収量も同じ量になると予想していたが, かなりばらつきがあった。また, ミカヅキモの種類で比較するとClosterium moniliferumよりもClosterium lunulaの方が光学顕微鏡による顆粒の観察により, より多くのストロンチウムを吸収することができる可能性が高まった。採集したアミミドロ(HydrodictyunSp.)も電子顕微鏡観察により, ストロンチウムを吸収していることが明らかとなった。
著者
坂梨 仁彦
出版者
熊本県地域振興部文化企画課
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的:ヤマドリ(キジ科)は、本州以南に留鳥として生息する日本固有の鳥類である。色彩多型に富み、5亜種に分けられている。狩猟鳥として人気が高く、個体数の急激な減少を見せている。また、その分布の境界では中間型が知られており、保全研究の上でも、混乱を来している。この原因の一つが、亜種を顧みない放鳥の影響ではないかという懸念が指摘されており、その真偽のほどは未だに不明である。そこで、本研究では、ヤマドリの放鳥以前の個体群の遺伝子と、現生の個体群の遺伝子を比較解析することにより、放鳥の影響の有無を探ろうというものである。研究方法:私は、これまで、日本全国から狩猟により得られた現生のヤマドリ約200個体について、オリジナルなプライマーの設計を行うなどして、ミトコンドリアDNA(mtDNA)コントロール領域の分析を試み、全部で64のハプロタイプを見い出すことができた。そのハプロタイプには、地域による若干の偏りは認められたものの、亜種または地域に固有のハプロタイプはなく、全国的に同じようなハプロタイプが広く存在していることが明らかになった。今年度は、主として、放鳥事業が始まる(1973)以前に捕獲され、剥製として保管されている標本からDNAを抽出し、mtDNAの塩基配列の決定を行った。剥製のDNAはかなり断片化が進んでおり、新たなプライマーの作成が必要であったが、約100個体の剥製のコントロール領域ドメイン1の塩基配列、約400bpを決定することができた。研究成果:その結果、現生の個体には見られなかった新たなハプロタイプを見いだすことができた。しかし、これらの個体は、現生のものと同じように、地域固有のものでは無いものと思われた。つまり、ヤマドリは、相当な数が狩猟により捕獲され続けていたにもかかわらず、遺伝的な多様度は大変高く(0.98)、今も昔も変わりなく、多様な個体群から構成されているものと推察された。さらに、養殖されている放鳥個体からも複数のハプロタイプが見いだされたが、特有のものはなく、放鳥が特に何らかの影響を与えているとは考えにくいと結論される。
著者
樋口 浩朗
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

○研究目的:本研究は、山形大学のような地方国立大学において、職員が地域密着型のマネジメントを行うためには、どのような課題があり、どのような手法により能力開発すべきかを明らかにし、提言することだった。○研究方法:まず、マネジメントとは何か?地域密着型大学とは何か?について文献(ドラッカー氏の著作等)及び実地(広島大学、国立大学協会、公立大学協会等)調査を行った。それを踏まえ、本学の40歳以下の中堅・若手職員による勉強会を立ち上げ、上記課題の洗い出しを行うと共に、学長・理事との意見交換を通じ、本学に相応しい職員のトップマネジメント能力の開発について調査した。○研究成果:大学のトップマネジメントを支える職員には、大学(理念、機能等)と地域に関する基礎知識と学内外とのコミュニケーション能力が不可欠であることが明らかになった。なお、平成22年度は本研究成果を活用し、東北地方の国立大学との連携を深める。
著者
岩尾 祐介
出版者
中村学園大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究目的】近年、学内で学生をアルバイト雇用する「学内ワークスタディ」を実施する大学が増えている。2015年度採択の「学内ワークスタディ実施による教育的効果の研究」において、実施大学はさまざまな教育効果を期待していることが明らかになった。しかし同時に、エビデンスに基づいた科学的な効果測定を行っている大学はごく僅かで、「学内ワークスタディ」に昇華できず、単なる「学内アルバイト」に留まっている大学も多く存在することも判明した。そこで本研究では、全国の私立4年制大学から広く情報を収集し、調査、分析を行い、理想的な学内ワークスタディ制度モデルを開発し、全国の私立大学と共有することを目的とした。【調査方法及び研究結果】全国の私立4年制大学にアンケート調査を行い、227大学から回答を受けた。その結果、ワークスタディを全学的に実施している大学は32.9%、一部実施は53.8%であった。約87%と大半の大学が実施しているものの、各大学において「アルバイト学生の管理及び運営体制(22.5%)」、「授業と学内アルバイトの調整(18.5%)」、「予算的問題(16.3%)」(※複数回答)とさまざまな課題があることが明らかになった。また、私立大学等経常費補助金に学内ワークスタディ事業支援があり、要件を満たせば一定の補助金を受けられるが、この補助金は学生の経済的支援に主眼を置いていることから、学生の成長や教育効果を期待する大学の方針と適合せず、学内ワークスタディ実施大学のうち申請しているのは21.5%に留まっていることも明らかとなった。【研究成果】アンケート調査をとりまとめ、研究結果を九州地域大学教育改善FD・SDネットワークQ-conference2016にて発表するとともに、「学内ワークスタディハンドブック」を制作し、全国私立4年制大学に送付することで研究成果を広く還元した。
著者
大竹 秀和
出版者
立教大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究の目的】正課外教育(①正課外教育プログラム、②クラブ・サークル支援、③ボランティア活動支援、④インターンシップ、⑤地域を意識した取組)は、各大学で積極的に実施されており、①の正課外教育プログラムについては、職員の運営への関わりや参画度合いが高いことが、先行研究より明らかになっている。しかし、②クラブ・サークル支援~⑤地域を意識した取組に関する先行研究は限られており、正課外教育において職員が担っている役割は明らかとなっていない。学士課程教育において正課教育と同様に重要な役割を担う正課外教育の各取組で、職員の役割を明らかにすることは、学士課程教育の質向上、教職協働の促進、正課外教育に関わる職員に求められる能力を検討し、能力開発を進めていく上で必要である。そこで本研究では、各大学で実施されている正課外教育において、職員が担っている役割を明らかにすることを目的として研究を実施した。【研究の方法】全国の国公私立大学775校の正課外教育を担う部署(学生支援担当部署等)を対象に、質問紙によるアンケート調査を行うとともに、特徴的な2大学に対してヒアリング調査を実施した。【研究成果】本調査の有効回答数は319校であり、回答率は41.2%であった。調査の結果、正課外教育を実施していると回答した303大学において、特に④インターンシップについては、職員が中心的な役割を担うと回答した大学が41.6%、教員と職員が協働し同程度の役割を担うと回答した大学が32.2%と高い割合を示した。その他の正課外教育の取組においても、職員が中心的な役割もしくは教員と同程度の役割を担うと回答した大学が60%を超え、正課外教育における職員の役割の重要度が高いことが明らかとなった。ヒアリング調査においては、職員がどの範囲まで正課外教育に関わるか、正課外教育を学士課程教育の中でどのように位置づけるか、危機管理体制の構築などについて課題を抱えていることが挙げられた。
著者
米田 洋恵
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

リサーチ・アドミニストレーター(RA)と産学官連携コーディネーター(CD)が連携して研究支援にあたることは、研究の推進に大きく寄与する。そのため、両者の連携を重視した柔軟で効果的な研究支援を実現する組織体制・組織マネジメント方法として「プロジェクト型組織モデル(以下「本モデル」)」を提案し、その有効性を検討した。本モデルでは、RAとCDが職掌ごとに別々の組織に所属するのではなく、両者が同一組織に所属し、プロジェクト単位で混合チームを設置する。本研究では、一部に本モデルを導入した金沢大学のRA・CD組織、先端科学・イノベーション推進機構(FSI機構)を調査対象とし、平成28年4月から1年間活動状況を記録した。その結果、新たに融合研究を行う研究チームの立ち上げにおいて、本モデルが著しい成果を上げたことがわかった。また、本モデルにおけるマネジメントの困難さ、具体的には、業務内容およびマネジメント担当者の資質が、本モデルを導入した組織のマネジメントの成否に非常に大きく影響する可能性があることがわかった。同時に行った、他研究機関における組織体制調査においては、RA・CDの連携の重要性は認識しているものの、実際に取り組みを進めている組織はごく限られることがわかった。また、取り組みを進めている組織のなかで最も成果をあげている組織が本モデルを導入していることがわかった。比較検討した結果、本モデルは、RA・CD組織において、業務内容とマネジメント担当者の資質によっては大きな成功を収め得るため, 導入にあたっては、この二点の検証を経る必要性が高いことがわかった。なお、本研究の実施期間内では、他のより効果的な組織体制・運営方法については十分な検討を進めることができなかった。RAとCDが一貫した研究戦略に基づいて活動し、研究推進に大きく寄与しうる組織体制およびマネジメント方法を明らかにするためには、さらなる調査を行う必要がある。
著者
佐藤 哲也
出版者
熊本県警察本部科捜研
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

1. 研究目的近年、法科学鑑定における体液識別法として、体液に特異的に発現しているmRNAを指標とした方法が報告されている。mRNAの利用は、検査法の一元化による消費試料の削減や高い検出感度を達成できることから、利用価値が高いと考えられている。これまでに報告されているmRNAの検出法は、主に逆転写とリアルタイムPCR法を組み合わせた方法が用いられているが、反応に時間を要し、専用の機器を必要とする。そこで本研究では、逆転写・増幅を等温で迅速行うことができ、増幅を肉眼で簡便に確認できるRT-LAMP法が体液識別に応用可能か検討を行った。2. 研究方法血液、精液、唾液について検討を行った。血液はhemoglobin-bata(HBB)、精液はsemenogelin1(SEMG1)、唾液はstatherin(STATH)を標的とし、プライマーを設計した。各体液からtotal RNAを抽出し、Loopamp RNA増幅試薬キット(栄研化学)を用いて増幅した。増幅の検出は、蛍光試薬を加えて目視で行った。血液、精液、唾液、汗、尿、膣液を用いて体液特異性及び各体液の検出感度について検討した。なお、本研究は日本法科学技術学会倫理審査委員会の承認を得て実施した。3. 研究成果設計したプライマーを用いて増幅を行ったところ、各mRNAに特異的な増幅が見られた。次に、体液特異性について検討したところ、1時間以内の反応で、HBBは血液、SEMG1は精液、STATHは唾液でのみ蛍光を示した。検出感度は、血液は0.3nl、精液は30nl、唾液は0.3μl相当まで検出することができた。以上の結果から、RT-LAMP法は血液、精液、唾液の体液識別においで有効であることが考えられた。ただしSTATHは、鼻汁に含まれるとの報告があるため、唾液についてはその他の標的についても検討する予定である。
著者
小曽根 淳
出版者
亜細亜大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

我が国では、17世紀半ば頃オランダから伝わった測量術を紅毛流と称してきた。主な特徴は、平板上の用紙に現実の距離関係の縮図を描き、相似比を用い実際の距離を求める。言い換えれば、三角法でなく作図を用いて二点間距離を求める訳である。その紅毛流測量術伝来に関する定説は、「1650年頃、オランダ人外科医カスパルが、長崎の樋口権右衛門に伝えた」というものである。しかし、調べてみると「1650年に砲術手ユリアンが、江戸の幕臣北条氏長達に伝えた」ことが明らかとなった。更に、オランダ商館長への商務員報告に驚くべき記述がある。1650年、幕臣達に伝えられたのは三角測量であった、というものである。ユリアンは幕臣達にsine,tangent,secantの表を写させ、「90ページの数字ばかりの小冊子」を用いて応用計算を教えた。その原本を求めオランダを訪れたが、それは三角関数表であった。すると三角関数表伝来の歴史が80年程早まり、和算史や測量術史が直接的な影響を受けることになる。今後、それを詳しく検討したい。オランダ人による三角関数表伝達は、その時点では受容されなかった可能性が高い。角度の概念を持たぬ幕臣達は、三角関数表を用いた応用計算を思うように理解できなかったからである。測量術史における平板測量と三角測量との違いは、原理的には相似法と三角法の違いにあるが、幕臣達だけでない多くの江戸人もその狭間で苦しんだ。この事例は三角法を苦手とする生徒達への対応に際して、示唆を与えてくれるように思われる。三角比導入の一つの方法は、任意の二つの相似な直角三角形での隣接二辺の比の不変性によるが、そう考える必然性を説得力ある豊かな内容で教える工夫が求められる。本研究では・紅毛流の起源について定説を覆す展開を得た。一方、それを含めると教育的、科学史的意義の解明には新たな展開の可能性があり、今後の課題としたい。
著者
草野 剛
出版者
垂井町立表佐小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

中1ギャップの解消のために、同じ中学校へ進学する小学生を対象としたスポーツ交流会を平成21年度より行ってきた。本研究では、こうした小学校区を越えたスポーツ交流が中1ギャップの解消に及ぼす効果について検証したい。スポーツ交流会(ドッチビー大会)の前後に参加者の児童を対象に質問紙調査を行い、スポーツ交流が中1ギャップの解消に及ぼす効果について検証をした。質問紙については、南ら(2011)の中学校生活予期不安尺度を使用した。期待尺度については、草野(2002)をもとに新たに作成した。ドッチビー大会参加児童全員に質問紙調査の趣旨と手続きについて了解を得て、調査に協力していただいた。有効回答数は112名(有効回答率84.3%)であった。期待得点、社会・文化不安得点、対人関係不安得点のそれぞれについて、対応のあるt検定を行った。期待得点については、t=-4.26, df=111, p<.01で、統計的に優位な差が見られた。スポーツ交流会は身体運動や情動反応を伴うので、不安や緊張を低減したことも影響していると考える。社会・文化不安得点についてもt=-2.79, df=111, p<.01で、統計的に優位な差が見られた。また、対人関係不安得点についても、t=-2.66, df=111, p<.01で統計的に優位な差が見られた。このスポーツ交流会は中学生が進行しており、情報的サポートを得ることで不安が低減されたとも考えられる。また、スポーツ交流会後の児童の感想(自由記述)では、「友だちができた」「どんな子が来るかがわかった」という友人関係の広がりについての記述が多く見られた。また、「中学校での生活について分かった」「中学校の勉強のことも聞けた」というように中学校生活についての情報的サポートを受け、不安が解消したという感想もあり、移行期不安の低減に効果があったと考えられる。
著者
髙木 浩明
出版者
清風高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

○研究目的古活字版の研究は、川瀬一馬の『古活字版之研究』(初版 : 安田文庫、1937年。増補版 : A・B・A・J、1967年)において総合的かつ網羅的な調査がなされている。同書は古活字版の研究にとって必読の文献であるが、川瀬氏の研究以後、新たに見出された伝本や所蔵先が変わった伝本、分類自体を見直さなければならないものも多く存在する。古活字版の悉皆調査を通して川瀬氏の調査研究結果を再検討すること、さらには、古活字版がいかなる人的な環境、ネットワークのもとに生み出されたものかをより多くの資料調査を通して明らかにして行くこと、将来の古活字版データーベース構築へ向けての礎とすることを目的とする。○研究方法本研究では、宮内庁書陵部に所蔵される古活字版(予め目録から抽出した130点)を対象に、体裁・表紙・装釘・題簽・内題・尾題・本文・匡郭・版心・丁数・刊記・印記・備考(識語や書き入れの有無など)の13項目について原本に当たり、一点一点丁寧に調査した。○研究成果調査を予定していた古活字版のうち、修補の必要があって原本での閲覧ができなかったもの等があったものの、121点の古活字版の調査を行い、これまでの調査分と合わせて971点のデータの蓄積ができた。今回の調査での一番の収穫は、川瀬一馬の『古活字版之研究』に著録されていない以下の古活字版を発掘できたことである。医経小学(558-24)、活幼全書(558-58)、黄帝内経素問(403-110)小学集説(国-159)、素問入式運気論奥(403-86)、年代紀略(谷-10)は全くこれまで所在すら知られていなかったもので、元亨釈書(556-106)、左大将家六百番歌合(155-195)、北渓先生性理字義(国-195)は新たに異なる版種を見出すことができたものである。
著者
遠山 紗矢香
出版者
静岡大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、本学情報学部にて構築した学習ポートフォリオシステム「Joy-Port」運用から明らかになった有効性を、他大学に向けて提供することである。キャリアデザインの多様化が進む昨今、学生個人が自らの強みを見出すために、大学内外での学びを振り返り可能な形で記録する学習ポートフォリオの作成が重要視されている。しかし、学習ポートフォリオシステムの機能や運用方法は導入機関の事情に大きく影響を受けるため知見の一般化が困難である。そこで本研究では、Joy-Portの知見を他大学に提供する目的の下、本システムにおける目標設定(Todo)機能とその運用方法について、人の学習理論に基づいた一般化を試みた。大学生の、学習履歴の蓄積や進捗状況の管理に対する負担感を把握するため、14名に対してアンケート調査を行い、さらに詳細を尋ねるため半構造化インタビューを異なる3名に対して行った。その結果、達成可能な肌理のTodoを単独で作成できると考える学生と、Todoに書くべきことがわからないので友人と話し合ったり手本を参考にしたりしたいと考える学生の2パターンに分かれることがわかった。前者のタイプの別の学生2名に対して、学習履歴の蓄積方法を尋ねる半構造化インタビューをした結果、2名は自らのパソコンをポートフォリオとして活用していたことがわかった。つまり、2タイプの学生いずれにもJoy-Portが価値を持つには、個人の学習状況の管理だけでなく、他者の学習状況を参考に自らを振り返る機能の実現が有効である可能性が示唆された。また、Joy-Portの利用ログを分析した結果、ユーザのアクセスが集中するのは、キャリア形成に関する授業等でJoy-Portの利用が喚起された時であり、恒常的かつ自主的にJoy-Portを利用することは、学生の学年に依らず困難であることが示唆された。以上をまとめると、理想的な学習ポートフォリオシステムは、個人が目標設定し学習履歴を蓄積する機能だけでなく、学生が協調的に個人の過程を参照して議論し合うための機能の実現と、目標設定や振り返りを定期的に促すための授業やイベント等を企画することが重要だと考えられる。
著者
徳吉 剛
出版者
長崎国際大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

大学設置基準の改正に伴う大学における「職業指導の義務化」により、大学は教育課程におけるキャリア教育等、学生に対するキャリア及び就職支援体制を見直した。さらに近年の厳しい日本の雇用状況の中、大学の入試制度の多様化や大学の教育環境で自ら「学ぶ」ことが難しい学生が増加し、学生の基礎学力の低下が指摘され、高等教育機関である大学は学生の基礎学力向上や学生の卒業後の進路決定に対し影響を与える就業意識の向上と就業力育成が喫緊の課題となった。本研究は、学生に対するキャリア支援と学生の自主的な活動との関係性や効果を明らかにすることを掲げ、初年度である本年度は限られた環境の中、実態調査としてキャリア教育(対象1~3年生)受講学生に対するアンケート調査の実施、また分析及び効果測定として基礎力及び基礎学力測定テストの結果に対し、学生の入学時の「入試種別」、学生の自主的な活動である「課外活動」等、さらに就職者や未就職者との関係性の分析を明らかにすること、さらに本研究の最大の課題は、自ら考え、学び、行動し、検証する立場にある学生に対し効果的な学生生活とキャリア支援について提言することが主たる目的である。本年度の研究によって得られた一部の分析結果は、学生の自主的な活動とキャリア教育やキャリア支援プログラムにより、学生の情報収集力、情報分析力、課題発見力、構想力を含むリテラシー領域である「問題解決力」、さらに「基礎学力」についてはある一定の効果がみられたが、コンピテンシー領域である学生の様々な経験を積むことで身についた行動特性、さらに経験を振り返り意識して行動することで育成される力については効果が一部低くなるという知見を得た。今後の学生に対するキャリア支援の方向性として、学生の自主的な活動に対する更なるリテラシー及びコンピテンシー領域の意識付けと学生と教職員との三位一体が有効であると考えることができた。
著者
上西 浩司
出版者
国立大学法人奈良教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

【研究目的】教務担当職員のキャリア・パスに関して各大学の人事政策を調査・分析し、当該職員の能力開発において組織的な取り組みの一つである人事政策が果たす役割や課題を考察する。【研究方法】2012年12月から2013年1月にかけて全国の国公私立大学(短期大学、大学院大学を除く)746校の人事担当責任者に対して、キャリア・パスの人事政策上の位置づけを調査するため、人事異動の状況、昇任基準、研修など職員の育成策、教務担当職員の業務範囲及び職能基準など人事に関する状況について郵送によりアンケート調査した(回答数165校、回答率22.1%)。【研究成果】調査結果から人事政策の現況について次のことが指摘できる。1)事務職員が業務処理能力を高めたいと志向する動因としてキャリア・パスの明示をとらえた場合、キャリア・パスとともに人事異動の方針や管理職への登用基準・条件等をあわせて示す必要があると考えられるが、今回の調査では当該条件にあてはまる大学はほとんどなかった。2)事務職員の人事異動はほとんどの大学で肯定的に実施されていて、人事担当責任者の"ジェネラリスト志向"を具現化したものととらえられた。3)事務職員の自己研鐙に対しては、ある程度の支援をしている大学が一定数あったが、自己研鑽と人事・給与面の処遇を直接的に結びつけている大学はほとんどなかった。また、事務職員の育成に関連した大学院へ派遣している大学は少数であった。当初の問題意識は、教務担当職員の能力開発に関する大学の人事政策が果たす役割を考えることであったが、今回の調査からは教務担当職員の専門性を意識した人事政策というものを見出せなかった。"ジェネラリスト志向"の中でどのように教務担当職員の専門性の向上をはかっていくかは、今後の人事政策における課題と思われる。
著者
和田 初枝
出版者
サレジオ工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

[研究目的]本研究では、貸出履歴のバスケット分析による分析結果を教育カリキュラムの情報と関連づけ、その結果を利用した新たな主題分野による分類および配架方法を決め、部分的ではあるが授業関連コーナーを作成しその有意性を検証する。[研究方法]1. 同時貸出資料の組み合わせを把握するために、図書資料の貸出履歴(13,377件)のバスケット分析を行いその結果をシラバスに記載された教育カリキュラム情報と参照し、カリキュラムの内容に沿った主題分野を定義した。2. 十進分類法以外の独自分類や配架法を実践している図書館にインタビュー調査を実施した。これらの結果も踏まえ分類・配架法を決定し、その有意性の検証を行った。[研究成果と今後の課題]1. 合計で767の分類に及ぶ貸出中、以下の組合せにおいて特に高い共起性が明らかになった。(1)「電気工学(540)」と「電気回路・回路理論(541.1)」(2)「電気測定・制御(541.5)」と「電気回路・回路理論(541.1)」(3)「電気工学(540)」と「電気測定・制御(541.5)」(4)「システム・ソフトウェア(007.63)」と「プログラミング(007.64)」(5)「プログラミング(007.64)」と「情報処理(007.6)」(6)「社会科学教育(含就職試験)(307)」と「大学・高等・専門教育(含就職問題)(377)」2. 教育カリキュラム情報を参照し、高い共起性とカリキュラムにおける関連を持つが、分類が離れてしまっている以下の分類から構成する主題分野を定義した。配架法は下記主題を十進分類法に併記し、別置の授業関連コーナーを作る。(1)「電気基礎」 : 電気系の特に低学年の教育カリキュラムに関連する分野「電気工学(540)」と「電気回路・回路理論(541.1)」と「電気測定・制御(541.5)」で構成(2)「キャリア」 : キャリア教育に関連する分野「社会科学教育(含就職試験)(307)」と「大学・高等・専門教育(含就職問題)(377)」で構成3. 教育カリキュラムに沿った主題による分類・配架法の効果について今後も継続して検証する予定である。
著者
中村 章二
出版者
愛知教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は, 大学の単位により取得する資格として「教員免許」を取り上げ, 教員免許を取得する学部と他の学部への質問紙調査により, 修学支援体制(CAP, GPA)の違いと資格取得コースの課題を検討したものである。調査の結果, 修得単位が過大とされてきた教育学部も, セメスター毎のCAP設定単位数は, 他の学部と大きな差は認められず, 教育学部特有の問題では無いことが明らかになった。しかし, 大学設置基準が定める1単位当たりの学習時間から観ると, 双方が過大なCAP設定であり, 学生の質が多様化している現在は, 学習成果の指標であるGPAを基に「個に合わせた指導(アカデミック・アドバイジング)」の導入が必要である。特に資格取得コースは, 社会的な資格を得るため, 教育の質を維持することは重要で有り, 資格取得に必須である「教育実習」の参加資格にGPAの活用を提言するものである。なお, 教員養成大学への訪問調査では, セメスター導入に伴う教育実習期間の変更や団塊世代の大量退職に伴う実践的な授業科目の設置等, 大学改革への対応を確認できた。また, 複数学部を持つ大学を訪問した際「学部の壁」を大きく感じることがあった。教員免許取得コースを持つ大学には「教職センター」の設置が求められているが, 資格取得コースとして質を維持・保証するためには, センターが主体的に学部を超えて活動することが求められる。また, 成績証明書へのGPA記載が少ないことや, 記載されている場合も修得した科目・単位のみであり, 「証明書上でGPAが確認できない」ことが多いことが判明した。これは, 社会的に証明書としての信頼を損なうもので, 担当する教務部門が教育システム(CAP, GPA)を理解し, 業務に反映させることが必要である。これらの研究成果は, 当面, 次により発表したが, 今後も学会や論文等により公表する予定である。大学教育改革フォーラムin東海2015(2015.3.7名古屋大学)第21回大学教育改革フォーラム(2015.3.13-14京都大学)