著者
吉澤 孝幸
出版者
大仙市立大曲中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. 研究目的 : 本研究では、授業改善の手段として「CAN-DOリスト」を取り入れることで、生徒のスピーキング力や教師の組織的な指導力の向上にどのような効果が見られるのかを検証することを目的とした。2. 研究方法 : 研究を実施するにあたり「拠点校・協力校制度」を活用し、拠点校及び協力校2校の中学3年生247名を対象とした。共通の実践内容として、スピーキングの前に原稿を書かず、メモから英文を口頭で構成するという手法を取り入れ8ヶ月間授業を実践した。拠点校においては「CAN-DOリスト」を到達目標として生徒に意識させ指導を行った実験群と「CAN-DOリスト」を評価の手段にのみ活用した統制群に分け授業を行った。これら試みを量的に検証する手段として、4技能で構成される外部テストを活用した。3. 研究成果 : ライティングにおいて生徒が書いた「文の数」、スピーキングテストにおける「アティチュード」の得点、そして「英語の問いに対する応答」の正答率において、実験群の方が統計的に有意に高い傾向が見られた。次に、共通の指導に対して、拠点校と協力校の生徒間で意識の差が生じるのかを検証するために質問紙を実施しクロス集計を行った。その結果、3校の生徒間でリッカート尺度の積極的肯定的回答に有意差は認められず、3校とも積極的肯定の割合が高いことが認められた。このことから、導入した指導方法は、拠点校・協力校とも同じ程度の影響をもって取り入れられたことが明らかになった。本研究から「CAN-DOリスト」は4技能以外の情意面にも影響を与え、教室における積極的な行動様式を生み出す可能性を示すことができたことは大いに意義があったと言える。また、拠点校が協力校への波及効果の程度や、受け入れ側の教員はどのような意識をもっているかを明らかにできたことで、今後の事業を継続していく上でも有用な情報となると考えている。
著者
樋口 浩朗
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的:本研究目的は、東北地方の大学が設置形態を超えて連携・協同を強化し、適切な機能分化・役割分担を実現するのに貢献できる大学職員の職能開発について研究することだった。○研究方法:勤務先大学及び複数の他大学職員に適切な機能分化とその実現に貢献できる大学職員の職能開発の必要性についてインタビューを行った。また、東北地方を中心とする国公私立大学の職員35名からなる勉強会(第1回大学職員能力開発工房"シリウス")を開催した。○研究成果:東北地方の大学職員が「機能分化・役割分担」について学習する場を設けることにより、自発的・具体的な職能開発の取組が可能となった。具体的な成果物としては、上記勉強会の立ち上げと勉強会がまとめた東北地方における大学機能分化案があり、本案は文科省の国立法人支援課の要請により報告している。
著者
井上 富美子
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究の目的】本研究は、Banduraによって提唱された「自己効力感」の視点から、女子大学と共学大学におけるキャリア教育の相違を明らかにするとともに、女子学生にとってより良いキャリア教育の在り方を提案することを目的とした試行的調査研究として実施した。【研究方法】1. キャリア教育内容を明らかにするため、女子大学(46校)・共学大学(17校)にアンケート調査を実施。2. キャリア教育の成果と課題について女子大学・共学大学から各2校を抽出し、聴き取り調査を実施。3. 大学での学びと「自己効力感」の関係についてWEB調査(女子大卒104名・共学大卒194名)を実施。【研究成果】アンケート調査の回答数は女子大学14校、共学大学6校であった。教育内容に関する回答が空欄という学校が多く、本調査では、キャリア教育の実態を明らかにすることはできなかった。そこで、キャリア教育を正課授業として位置づけている大学4校の聴き取り調査を実施。調査対象者は、キャリア教育担当教員もしくはキャリアセンター職員。偶然にも、うち3校は2010年度文部科学省就業力育成支援事業(就業力GP)採択プログラムを発展させた形で運営しており、大学設置基準の趣旨を十分に理解した取り組みがなされていた。さらに、4校ともにアクティブラーニングを意識し、実践を通じて学生自らが考え行動できるようになることを教育目標としていた。また、今回調査した女子大学では、女性特有のライフイベントを踏まえた進路選択について触れていたが、共学大学では特に触れていなかった。WEB調査では、大学卒業後及び現在の正規雇用就業者数を比較すると共学大学出身者の割合が高かった。自営業および経営者を含むと女子大学出身者の割合の方が高くなった。また、大学卒業後就職した職場に現在も勤務し、職位が部長・取締役クラスになっている割合は共学大学出身者が高かったが、転職を経験しながらも正規雇用で就労を継続している割合は女子大学出身者の方が高いことなどがわかった。今後、年代・地域・設置区分(国立・私立)等を変数とした詳細な分析を行い、課題を整理していく。
著者
前田 一之
出版者
京都教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

教授会の諮問的役割を明文化した平成27年4月の学校教育法改正は, 大学組織における上意下達型のガバナンスに決定的ともいえる法的正当性を付与したが, 国立大学法人化に淵源を有するこれら一連の改革は, 集権化が大学組織の経営効率を高めるという「前提」に依拠しているに過ぎず, 確たる裏付けがなされている訳ではない。「産業企業とは異なる組織特性を有する大学において, 組織構造の集権化は大学経営の質を高め得るのか」, 本研究は, かかる問題意識に基づき実施がなされたが, 研究の趣旨に照らし, 政策的誘導が相対的に生じにくい, 私立大学のみに限定した。従来, 私立大学における経営状態の規定要因を分析した先行研究では, 定員充足率や人件費比率が用いられてきたが, これら指標では, 本研究が目的とする「組織運営の効率性」を把握することはできない。そこで, 筆者は, 私立大学の財務データをもとに, DEAによる効率性分析とTobitモデルによる回帰分析を併用することで, 組織の運営効率に対する所有権構造の影響について実証的観点から検証を行うこととした。分析の結果, 組織構造は, 組織の運営効率に対して, 影響を及ぼしていないことが明らかとなった。逆に, 組織の運営効率に対して, 最も強い影響を及ぼしていたのは選抜性であり, わが国においては, 大学の威信による経路依存性が未だ根強く残っている状況が看取された。今後, 少子化が進行する中で, 大学の自助努力のみを期待する政策では, 多くの大学は自大学で統制不能な要因によって市場からの撤退を余儀なくされる可能性が高い。一方, かかる強い影響力を有する選抜性で統制してもなお, 柔軟性と革新性を志向するアドホクラシー文化が効率性に対して有意に正の影響を及ぼしていた事実は興味深く, この結果は, 米国における先行研究とも符合している。結果的に, 大学組織における中央集権的な所有権構造の有効性は否定されたといえる。
著者
小野 永貴
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

新学習指導要領では学校図書館を利用した学習内容の記述が増加したが、学校図書館単独では高度な教育内容へ全て対応することは困難な場合も多い。そのため、図書館連携による資料やサービスの補完が注目されるが、学校図書館と公共図書館の連携に関する事例調査は多数あるものの、学校図書館と大学図書館の連携に関する研究は少ない。そこで本研究は、図書館における高大連携の実態を明らかにすることを目的とし、調査を通して連携形態の類型化を行った。本研究期間では、対象を国立大学附属学校の一部に絞り、公開されている学校要覧やオンライン資料の調査、実地訪問および聞き取りを実施した。その結果、主に以下のような連携形態が確認された。(1)附属高校生に対する大学図書館利用権の発行による、附属高校生の自主的な大学図書館活用(2)附属高校教員が教材資料を大学図書館で収集したり、授業のための団体貸出・学内配送等の授業支援(3)附属高等学校を有しない大学等における、近隣の高校生への学習環境の開放や、修学旅行等の見学としての高校生の受け入れ(4)附属学校の学校図書館担当職員が、大学図書館職員の人事異動の一環で配置される人的体制(5)大学図書館職員・教員や学生スタッフによる、高校生への図書館活用指導や学校図書館運営支援の直接的な実施一方で、大学図書館の物理的受け入れ能力の限界や、利用指導の不十分、図書館システムの非連携等の制約により、連携体制が有効活用されていない場合も多いことが明らかとなった。また、多くの連携は学校図書館が大学図書館から支援を受ける形態であり、大学図書館が学校図書館からメリットを得られる事例は少なく、連携の非対称性も明らかとなった。将来的な持続的連携のために、相互に利点のある連携形態を構築することが、今後の課題となる。
著者
中山 貴弘
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

ラーニング・コモンズ(LC)は、もともと北米の大学図書館において、情報機器の普及と、インターネット化時代に対応した情報リテラシー能力の養成に重点を置く、学習支援の場としてのインフォメーション・コモンズ(IC)から発展してきたものである。しかし、日本においてLCは、それとはやや異なる文脈で捉えられ、設置されてきたと言える。本研究では、その相違が何に起因するかを調べるため、次の調査およびワークショップを行った上で、日本の現状との対照を行った。①米国大学への訪問調査2015年初秋、カリフォルニア大学ロサンゼルス校およびサンディエゴ校、そして南カリフォルニア大学の図書館を訪問し、LCの運営担当者に聞き取り調査を行った。②北米におけるIC/LCに関連する学説の概観IC/LCに関連する国内外の文献を調査し、北米においてICの基本要件とされているものは何か、またICからLCへの移行がどのような場合に起こるかを概観した。③研究者招聘によるワークショップ開催北米におけるIC/LC研究の第一人者であるBarbara Tierney氏(中央フロリダ大学)を神戸大学へ招聘し、「日米LCの比較」をテーマとして、教職員を対象としたワークショップを開催した。その結果、米国においてICの基本要件とされている「テクノロジーとコンテンツとサービス」について、日本での捉え方に相違があること、またグループ学習の捉え方について日米の相違があることを明らかにした。本研究は、日本において北米とは違った発展経路をたどってきたLCの、日本の大学教育における存在理由を明確にするための基礎的な研究としての意義を持つ。
著者
杉山 智章
出版者
静岡大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

大学図書館が提供する情報には図書・雑誌といった従来からの冊子体資料に加え、オンラインコンテンツやデータベースなどWebでの学術情報の提供も大きな役割を担うようになってきている。一方、学生はレポート作成などの学習に際して、これら図書館が提供する情報を十分活用しきれていない実態がある。これは、図書館が提供するコンテンツが学生にとってわかりやすく構築されておらず、学術情報にアクセスする手段が理解されていないことに原因があると考えられる。これらの問題について、コンテンツの提供手段として新たなWeb上のサービスを先駆的に取り入れている大学図書館等の調査を行った。また図書館のみならず、学務情報や研究者情報など、学習者にとって重要な情報がどのように扱われているのかも調査し、構築しようとする電子図書館サービスの課題点を整理した。さらに大学生からモニターを募り、国内外の大学図書館等のWebサイトや検索サービスを評価することで、学生が学習する上での問題点を探り、より使いやすい機能やインターフェイスについて検討を行った。以上の研究をもとに、学生が学習で求めている情報と図書館が提供するコンテンツを結びつけて示すことができるように、図書館の情報に加え、大学の授業情報や教員情報を関連づける方策を検討した。統合したシステムでそれぞれ異なる形式の情報を扱えるために、統一したメタデータフォーマットへの変換規則を作成し、これらの情報を検索できる新たなサービスをオープンソフトウェアを用いて構築した。
著者
山本 祐輔
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

【研究目的】本研究では、初心者リサーチ・アドミニストレータ(以下URA)やURA志望の職員・若手研究者が、研究プロデュース業務(URA業務)を象徴するケースに触れることで「URA業務の全体像や個々のケースを乗り切るための考え方」を獲得するためのゲーム教材を開発した。【研究方法】以下の手順で研究を行った。①URAおよびURA類似職員に対するヒアリングを通じたURA業務事例の収集、②URA業務の分類・モデル化、③URA業務を象徴するケースの抽出、④ゲーミフィケーションを用いたURA体験ゲームプロトタイプの開発、⑤プロトタイプテスト。【研究成果】研究開始当初、ボードゲーム形式でURA業務を体験・議論することを計画していたが、ゲーム参加者が議論したいURA業務事例を自ら積極的に選び、他の参加者と活発な議論ができるよう、ゲーム形式の再検討を行った。その結果、かるた形式のゲームを開発した。かるたには、URA業務で象徴的な場面に加え、その場面を乗り切るための考え方・方法を記した選択肢が2つ書かれている。ゲームの参加者は50種類のかるたから、自分が議論したいかるたを選択する。選択したかるたを元に、ゲーム参加者はかるたに書かれた場面をどう乗り切るかについて、自分の意見をぶつけながら議論する。最終的に一番盛り上がったかるたを多く持っていた参加者が勝者となる。プロトタイプテストを通じて、本かるたゲームはURA初心者にもURA経験者にも、URA業務に対する考え方を深めるために効果があることが示された。ゲーミフィケーションを用いることで、URA研究会などでは質問・議論しづらいことを遠慮無く他の参加者にぶつけることが可能になった。また、体験したことがないURA業務に対する考え方を、他の参加者から吸収する機会を創出することができた。一方で、ゲームを終了するのに時間がかかるなどの問題も明らかになった。今後はゲームバランスを調整し、URA研究会などでゲーム体験会を実施したい。
著者
矢崎 美香
出版者
九州女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. 研究目的現在大学図書館がレファレンス・サービス(参考調査)の際に使用している記録用紙は、学生の質問に対し一問一答に対応する単発的なものである。そのため長期的学習環境にいる学生が満足できる情報支援サービスではない。本研究では、学生の「課題探求能力」育成を重視すべく、レファレンス・サービスの記録を学生の学習効果がわかるポートフォリオ型のレファレンス・カルテ(学生個人別記録)として構築し、教育的にサポート(支援)できるツールとして、その効果と有効性を明らかにすることを目的とした。2. 研究方法(1)図書館情報リテラシー教育(初年次教育、キャリアデザイン授業、図書館活用等)の実施状況及び実施後のレファレンス・カウンターでの学習支援効果を調査。調査結果については、「図書館情報リテラシー教育実施後の学習支援体制について一質問紙調査に基づく考察」(『図書館学』104号2014.4)に発表。(2)レファレンス・カウンターに来た学生の質問・回答を個人別に記録。レファレンス・カルテのモデル様式の項目を抽出。他大学図書館の記録用紙を分析、項目抽出。(3)抽出した項目からレファレンス・カルテのモデル様式の構築。(4)構築したレファレンス・カルテを他大学図書館において試行、効果と有効性を調査した。3. 研究成果本学においては、レファレンス・カルテの導入により、継続的にレファレンス・カウンターを利用する学生に効率良い学習支援が行えた。また、学生はその記録を見ることにより、学習の躓きを自覚する事ができた。さらに、レファレンス・カルテは、教員と図書館の相互指導のコミュニケーションツールとなり、連携(連絡)体制を取ることができた。検証を依頼した大学、短大図書館においても同様の効果を見ることができた。なお、本研究についての成果報告は2014年日本図書館情報学会春季研究集会(2014.5.24)において発表を予定している。
著者
伊藤 寿隆
出版者
東北学院大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

◇研究の目的大学経営人材として職員の役割に期待が集まっているが、大学の規模(職員数)によっては、単独で職能開発に取り組むことが難しい状況にある。そこで、大学経営を担う人材の職能開発には、複数の大学連携による取り組みが有効と考えた。本研究は、大学職員の職能開発(SD)に関する地域別の実態を明らかにしたうえで、仙台地区の私立大学において実行可能性のある職能開発プログラムの提起を目的として実施した。◇研究方法1. 大学職員の職能開発に関する将来構想と先行事例を概観するために文献による調査を行った。2. 職能開発の実態と課題を抽出するため、仙台地区の私立大学にアンケート調査を実施した。3. 京都地区の大学とコンソーシアム組織及び札幌地区の大学にヒアリング調査を行い、仙台地区における実態との比較による検証を行った。◇研究成果調査の結果、職能開発の実態は大学の職員数や事務組織の規模による差があることを把握できた。仙台地区においては、大学単独では職能開発が進んでいないといった課題が明確になった。職能開発の機会が限られていることは、大学間競争の際に脆弱性をもたらすこととなる。一方で京都地区においては多様な職能開発のプログラムが用意されていることから、大学職員の職能開発には大きな地域間格差があることが実証できた。また、大学職員の役割の高度化・複雑化への対応として政策立案力などの資質を備えるため、職能開発プログラムの内容もより進化したものが求められるようになり、ますます大学単独での実施が困難を極めるようになってきた。このような実態を踏まえ、仙台地区私立大学における共通の課題を解決するためには、大学協働型職能開発プログラムが不可欠と考えられる。導入するまでには、いくつかの環境整備が必要となるが、学都仙台コンソーシアムなどの機関で具体的な方策を検討できるよう基礎資料の提示を計画している。
著者
二田 貴広
出版者
奈良女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、文学教材の「読解力」とメディアの表現の1分析力」との相乗的育成および生徒の自己評価力育成について、下記の仮説を検証し、この学習指導方法の意義を明らかにすることである。仮説1:文学教材の象徴的・比喩的・暗示的表現の「読解力」の習得に、メディアの表現での象徴的・比喩的・暗示的な表現の分析および分析力のスキル化を組み合わせると、「読解力」の習得も「分析力」のスキルとしての定着もすすむというように相乗的育成が生じる。仮説2:仮説1は、授業者が、国語の教材を用いた学習とメディアの表現を教材に用いた学習とをくつなげる観点〉を示した場合に、学習集団に遍在的に成立する。仮説3:生徒にメタ認知的に自己の学習活動を捉えさせると、読解・評価のメカニズムを理解したり、自己の学習到達度を検証したり、他の場面への活用ができるようになる。すなわち、ここまでの学習活動で、PISA型読解力の「情報の取出し、解釈・熟考、評価、学習課題の発見、討論による課題解決」が育成できると同時に、「どのような枠組みで学習をおこなっているのか」といったメタ認知によって、PISA型読解力の枠組みを相対化しつつ自己のスキルや態度、能力を把握できる評価力を育成できる。2011年度までに仮説1は実証できた。2012年度は、以下の3つの方法で比較検証し仮説2と3を実証した。A群「千と千尋の神隠し分析」と「新旧ドラえもん比較」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「CM分析」の学習を組み込む。メディアの表現と文学教材の学習とがどうつながるのかを授業者が適宜説明して、文学教材の読解とCMの分析をおこなわせる。B群「千と千尋の神隠し分析」と「CM分析」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「新旧ドラえもん比較」の学習を組み込む。メディアの表現の学習と文学教材の学習とのつながりを生徒に気づかせるように授業者が支援して、文学教材の読解をおこなわせる。C群「千と千尋の神隠し分析」と「CM分析」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「新旧ドラえもん比較」の学習を組み込む。メディアの表現の学習と文学教材の学習とをつなげる観点を説明したり、示唆したりしない。
著者
角田 賢次
出版者
日本学生支援機構
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

○研究目的 我が国経済・社会の環境変化は、大学経営管理手法の抜本的な改革を余儀なくさせ、これまで大学経営管理の意思決定の関与度合いが低く、意思決定に必要な資質や能力が十分に担保されていなかった大学事務職員に対し、大学改革の推進力としての期待が高まっている。一方、米国の高等教育が、規模や教育・研究水準の面で圧倒的な影響力を有する現状を踏まえれば、我が国の大学は、今後も米国の大学改革の影響を受けていくと考えられる。特にAdministrative Staff(以下「AS」)の現状を見ると、組織的変革の必要性に気付かされる。こうした背景を踏まえ、我が国の大学事務職員(以下「職員」)が、大学経営管理に関していかなる役割を果たし意思決定に関わっていくべきかという観点からASの特質を考察することで、大学経営管理上の問題点を明らかにしつつ職員の職能開発のあり方を考察する。○研究方法 (1)職員に関連する研究蓄積について関連文献及びWebsiteから情報収集を行い、調査・確認事項をまとめてあらかじめ訪問調査先に情報提供した。(2)Finance and Administrative Services,Human Resources,University of California,Berkeley、及びEmployment,Staff Human Resources Service Teams and Operations,Policy and Projects,University of California,Santa Cruzを訪問し、ASの職位・肩書き、待遇、雇用形態、職務内容、職能開発等の現状について調査した。(3)不足する情報等を訪問調査先に確認した。○研究成果公立大学では各州の自治権が強く、私立大学では経営母体の独自性が強いため、米国内ですら一貫したASの現状を把握することは困難であり、ある程度の専門性が認められるASについては、独自の職務名称を用いて非専門職員との区別を図っているため、我が国の職員と厳密な同義語を見つけることは困難である。事務組織の構成も千差万別である。したがって、我が国の国立大学法人の事務局配属職員と米国州立大学のHuman Resources配属ASのような比較対象軸を限定することで考察結果を明確にできる。勿論、専門化が進むASの現状を的確に把握することは継続した研究課題となる。ASは、長期雇用を前提として採用されることは希で、The Chronicle of Higher EducationのAdministrative Positionsの求人では、職務分野毎に毎号数百件のポストの募集が行われているが、将来的にASと我が国の職員との交流の展開が期待される。
著者
土橋 慶章
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

大学の社会的責任に関する取り組み状況を調査のうえ、先進事例として以下2大学の詳細調査を行った。同志社大学(学校法人同志社)は社会的責任の視点を重視した法人全体の事業報告書を作成・発行している。理事会直轄で4課長が実務担当として作成・取り毒とめに当たる。当初はアニュアルレポートに社会的責任の視点を取り入れた形で、2006年度版からは社会的責任報告を明示し、各種取り組みや財務の概要を掲載しており、近年企業において見受けられるようになってきた、財務情報・非財務情報を総合的に報告する統合レポートのような形である。重要視するステイクホルダーとして、学生・保護者、政府・行政(納税者である国民)、寄付者を挙げ、実績だけでなく将来の事業計画やネガティブ情報の掲載、詳細なデータ集の別冊添付、迅速な発行・ウェブサイトへの掲載など、ステイクホルダーの望むものを強く意識した作りがなされている。麗澤大学(学校法人廣池学園)は2010年に発効されたISO26000(社会的責任規格)の活用をいち早く決定し、対外的に宣言した。CSR研究の第一人者で現在学部長を務める教員の提案を機に、賛同する職員が参画し、理事長・学長のコミットメントのもと、推進委員会も発足し、法人全体にわたる取り組みになっている。7中核主題(組織統治、人権、労働慣行、環境、事業慣行、消費者課題、コミュニティ参画・開発)と5活動分野のマトリクス表で課題を整理のうえ、13に区分したステイクホルダーとの対話を踏まえつつ、重要事項を特定している。事項ごとに担当を決め、進捗管理を行うためのフォーマットも完成しつつあり、今後の経過が大いに期待される。大学の社会的責任に関する取り組みは初期段階にあり、上記について「大学の社会的責任に関するグッドプラクティス」としてまとめたことは、今後、大学の社会的責任に関して取り組もうとする者にとって参考となろう。
著者
片桐 俊彦
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

気象庁から提供されている緊急地震速報は遠方地域を緒言とする地震情報を他の地域に早期に知らせる事で各所到達するまでの時間を有効利用することで防災行動時間が稼げる。一方、直下型地震では被害が甚大になり、緊急地震速報を有効活用できないケースが多々ある。そこで、人的被害の回避を少しでも考える観点に立つと、特に生活空間レベルにおいて早期の緊急予報を出せる状況が望ましく、仮に緊急地震速報が得られなくともパソコンから情報を得られる事で対処すべき危険回避行動が可能となる。以上の事項を踏まえ、近年普及率の高い一般的なパソコンを用い、MEMS型加速度計を利用して、初期微動を感知した時点でパソコンからトリガー信号を発信、制御回路を経由して危険回避モデルへの信号伝達を行い、主要動到達までは地震予報装置としての活用(パソコン内での音声による警戒宣言・非常灯の点灯・モーターなどの振動)、また直下型地震が発生した場合は電気系統制御(電磁石などで机の上の物が飛ぶ等防御)を即を行うことを軸に、1台のパソコンで無人地震観測(地震観測データの蓄積と解析)と並行して、地震時に警報や危険回避動作を行うシステム開発(制御ソフト・危険回避モデル等の製作)を行った。実際にはパソコンとAD変換器を通じた加速度計からの地震波(初期微動)情報を得て、パソコン内での開発ソフトによる地震発生の警告音声出力を行うと同時に危険回避モデルに無線信号伝達し、制御回路を介して危険回避モデルを起動する。以上の事柄についてシステムを組み上げ、実際に動作確認を行い、目的通りの一連の動作が確認できた。今後目的を絞り、危険回避モデルを如何に有効的に利用するかの検討・研究を継続したい。この研究では汎用性があり社会にも貢献できる有用なシステム構築が達成でき、これを土台に更なる研究を重ね利便性を高めたい考えである。
著者
齋藤 俊浩
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究目的東京大学秩父演習林を含む埼玉県西部の奥秩父地域においては、1990年代からシカの個体数が増加していると推定され、過度の採食による下層植生の衰退など、森林植生に及ぼす影響は深刻である。森林の植生変化は、その森林の生態系の上に成立している自然の音環境にも影響を及ぼしている可能性があり、本研究においては、シカの個体数増加が森林生態系へ及すインパクトを、音環境を指標として捉えることを目的としている。研究方法森林のタイプ、標高別に調査地を4ヶ所設置した(調査1〜4)。調査地1、2、3では、5月〜8月にほぼ週に1回(調査地4は、月に1回)のペースで定点録音を行い、調査地1、2では、同じく週に1回、ウグイスのさえずり録音を行った。定点録音は、ステレオマイク、さえずり録音は、モノラルマイクを用い、記録媒体は、主にメモリーレコーダーを用いた。録音データは、コンピューターに取込みソナグラムを作成し、また、聞取りによって音源を確定した。これらの音声データは、これまでに構築してきたデータと比較するとともに、さえずり録音による音声データについては、さえずりの頻度や構造を比較した。研究成果本調査の録音データから、鳥類のさえずり、風の音、セミやバッタといった昆虫の発する音といった森林の音環境の構成に大きな変化はみられなかった。下層植生が衰退している調査地1、2、3においては、ウグイスの個体数の減少が示唆され、特に調査地2では、ウグイスのさえずりが確認できなくなっていた。下層植生の変化が少ない調査地4においては、ウグイスは個体数をこれまでと同様に維持していると考えられ、さえずり頻度にも変化はみられなかった。シカの個体数増加による下層植生の衰退により、営巣場所などを下層植生に依存しているウグイスが、個体数を減少させたという間接効果の可能性があり、ウグイスのさえずりという本調査地域の音環境の主要な音源に大きく影響していると考えられる。
著者
鈴木 敬明
出版者
静岡県工業技術研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

就労者の生体リズムの乱れの低減を目的として、眼内に入射する光の分光強度をサングラス様のレンズフィルターを装着することで制御するために、生体リズムに影響する波長と視認性を確保するための波長をバランスよく透過するフィルタの開発を行い、その効果を実験的に検証した。生体リズムに影響を与える530nmを中心とする波長の光を遮光し、かつ、サングラスの安全規格を定めたJIS T7331(ISO14889)の規定を満足するレンズフィルターの分光透過率分布を解析的に明らかにした。算出した分光透過率を持つレンズフィルターを誘電体多層膜蒸着にて試作し、メガネフレームに取り付けてサングラスとして被験者が使用できる試作品を開発した。開発品の効果に対する検証実験として、開発品を装着しない場合、装着した場合、開発品と同じ視感度透過率を有するND(Neutral Density)タイプのサングラスを装着する実験を各3日間行い、尿中のメラトニン代謝物、心拍変動、睡眠・活動量を計測した。、その結果、定性的ではあるが開発したフィルタが睡眠に与える影響が確認された。加えて、装着時に問題となる視認性について、交通信号の表示が明確に認識でき、昼間の運転時に使用できる可能性を確認した。色覚特性(色弁別特性)については、色覚特性測定実験を行ったところ、B~G、Y~Rの色域で弁別機能の顕著な低下が認められた。この点については、今後、改善の余地があると考えられる。
著者
河崎 哲嗣
出版者
京都府立嵯峨野高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

現在,青少年の「理数・科学技術離れ」が巌然と存在し,青少年の学力低下や理数系進学者数の減少も深刻な社会問題になっている。日本の数学教育研究においては,後期中等教育及び高等教育分野での研究が盛んでないこともあり,高等学校と大学との連携や科学・技術分野との融合を意識した研究はほとんどなされていない。このような現状認識に鑑み本研究は,理系分野への進学を目指した中学・高校生を対象にし,大学との連携も意識した新しい高等学校(中等教育学校)数学単元の開発を将来の最終課題としている。今回の取り組みでは,大学・企業団体を中心にして催されているソーラーボートコンテストへの出艇を目指し,中学・高校生の科学・技術への興味・関心を高める活動に焦点を充てた。2007年5月26日東京大学工学部キャビテーションタンク棟にて,流体力学の考えとソーラーボート製作のノウハウを享受された。また,8月25日には第11回クルーレスソーラーボート大会先端技術部門に参加し,船体の模擬実験として工夫を試みた。新たな船体製作は,京都教育大学木工室を拠点とし現在も改良工夫中である。また,京都教育大学安東茂樹教授から中学・高校レベルにおけるボート製作資料及び指導を受け,今後も生徒自身が制作でアイデアを加味できるように改良を続けていく。次に,数学からのアプローチとして,位置や距離の把握を地球規模で捉える内容を扱ったテキストや船体構造に向けての空間把握の簡単な認識調査を行った。前半のテキストについては,京都府立嵯峨野高等学校第1学年自然科学系統20名対象に「シンガポール〜学校までの距離測定」として冬休みの課題とした。また後半の認識調査の結果は,数学Iの空間図形への応用の中で行い2面角の理解が育成されていない問題点が明確になった。これらの内容は,http://www2.hamajima.co.jp/~mathenet/wiki/index.php?NetaTaneMenuでも公開しており,また12月7日キャンパスプラザ京都において,京都高大連携研究協議会主催の第2分科会「高大数学教育の接続の可能性を具体的実践から探る」,続いて3月24日近畿大学理工学部において数学教育学会春季年会Organized Session Bの両会で一部発表を行った。さて先進技術であるGPS機能を取り入れたマイコン制御を駆使したプログラミング教材は,京都教育大学附属高等学校山田公成氏から援助を受け模擬実験を重ね概ね完成している。京都教育大学附属高校の情報の授業の中で基礎実験として取り入れる方向として発展拡大していく。今後生徒の数学への興味・関心を高め,数学の学習内容の理解の増進を図ることを基本としつつも,大学数学(工学系及び技術)を意識した教材を提供し,更に広めたいと考える。従って今回は1年で区切りをつける研究ではあったが,次年度以降も研究開発を続け成果報告を行う計画である。