著者
山口 晃志
出版者
埼玉県警察科学捜査研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

催眠薬の尿中代謝物をスクリーニングする簡便な方法としてイムノアッセイを利用した「トライエージ」がある。しかし、「トライエージ」で検出されない催眠薬もある。特に、ゾルピデム及びゾピクロンは広く普及している催眠薬であるにもかかわらず、これらの代謝物は「トライエージ」では検出できない。そこで本研究では、ゾルピデム及びゾピクロンの尿中代謝物の分析を目指した。ゾピクロン代謝物(デスメチルゾピクロン)は文献に従い本研究で合成し、ゾルピデム代謝物はサノフィアベンティス社からの譲渡品を用いた。代謝物を添加した尿を固相抽出カートリッジ(OASIS MCX)で固相抽出し、LC/MS/MS(SRMモード)分析したところ、濃度1ng/mlでも検出可能であることが分かった。本研究で確立した分析方法を用いて実際に起こった強姦事件の被害者の尿を分析し、ゾルピデム代謝物を検出した。催眠薬の多くは、体内で水酸化されグルクロン酸抱合体の形で尿中に排泄される。そのため、尿中催眠薬代謝物を微量分析するにはこれらグルクロン酸抱合体の性質を明らかにすることが重要である。そこで、代表的な催眠薬であるトリアゾラムの尿中主代謝物であるヒドロキシトリアゾラムのグルクロン酸抱合体の合成を目指した。文献に従いヒドロキシトリアゾラムを合成した後、水酸基をアセチル基で保護したグルクロン酸との反応を試みた。反応生成物のマススペクトル(ESI)を分析したところ、ヒドロキシトリアゾラムにグルクロン酸部分が導入された化合物と思われるm/z値を与えた。しかし、NMR分析をしたところ、複数の生成物の混合物であることを示唆する結果を得た。今後、合成条件を変え、収率の向上を目指す予定である。
著者
小澤 静江
出版者
江戸川区立春江中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1、目的 ある一定の場所の地下の深い所から浅い所まで1mおきにボーリング資料を採取し、その中に含まれる珪藻及び、珪質鞭毛藻を分析し、過去の環境の変化を推論させる。2、方法 (1) 江戸川区の7地点の小中学校のボーリング資料を江戸川区教育委員会学事課施設係の協力を得て深度60m〜1mまで1m間隔で得た。(2) 薬品処理をする。(3) 深度ごとのプレパラートを作る。(深度ごとに10〜20枚)3、結果 1.平井(小松川三中)…深度60m〜55mでは海だったと考えられます。その後、深度55〜30mまでは3回海進海退を繰り返し、その後深度30m〜10m間での長い間海の時代が続き、その後、しだいに陸になったのではないかと考えられます。2.清新(清新二中)…深度60m〜15mまでは、平井の結果とほぼ同じでした。しかし、深度15mから急に陸になり深度10m頃から、また海になり、現代に至ったと考えられます。3.松江(松江二中)…深度30mより深いところでは、陸生のケイソウが多く、ほとんど陸だったと考えられます。深度30m〜15mは長い間、海が続き、そのあと少しずつ陸になっていったと考えられます。
著者
山科 典子
出版者
山形大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1.目的本研究は、保育者が幼稚園児にどのように関わることで、文字への関心が生まれ、就学前の適切な発達が促されるのか、教師による意図的な環境構成を教育課程と絡めて考えることを目的とした。2.方法(1)年長1学期と3学期に個別に面接を行い、文字への関心と実態をはかる。(2)「おみせやさんごっこ」「お手紙ごっこ」「かるた・すごろく」など遊び場面と、「グループの名前を決めよう」「運動会のポスターをかこう」など生活場面における、子どもと文字のかかわりを観察し、援助する。(3)小学校1年生との交流を持ち、育ちの違いを意識しながら、文字とかかわる。3.結果と考察(1)面接により、年長中頃には、ほとんどの子どもが50音を読めることがわかった。書き方になると、その割合は減少。読み・書き両面において自分の名前に関する意識は高い。しかし、書ける子どもにおいても、鉛筆の持ち方や書き順には課題が多かった。ここから、読みが先行すること、関心が高く接する機会が多いものから習得すること、書くことにおいては指先の発達との関連が推測される。(2)遊園地ごっこにおいて、ホワイトボードの活用を提示。子どもが、どんな遊園地にしたいか、絵や文字で記す。仲間にイメージを分かりやすく伝えると共に、次の日の遊びへの橋渡しとしても有効だった。文字の持つ「伝える」「残す」という働きが、遊びの中でも大きな意味を持った。(3)1月にした1年生との給食試食会では、平仮名で書かれたカードをプレゼントされた。一緒の活動後、学校の楽しさを伝え、君を待っているよというメッセージをもらったことは、幼児にとって心動く体験であった。文字は書けないが読むことはできる子ども達にとって、文字に対する大きな刺激となった。楽しかった思いと共に、家庭にお土産としてカードを持ち帰るということは、入学への期待を膨らませる意味においても有効であった。
著者
倉田 耕輔
出版者
静岡県警察科学捜査研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

3Dプリンタで拳銃を作成する場合、市販されているモデルガンやエアガンの3Dデータを元に作成されることがあると考えられる。本研究では、「撃鉄を稼働させるバネ」に着目し、3Dデータの段階で、モデルガンキャップや紙火薬等を撃発する機能を有しているか否かの判断が可能か検討した。実験として、モデルガンの機関部を開け、撃鉄バネの代わりに「ねじりバネ」を用いて撃鉄を作動させた。この時の撃鉄の動きを高速度ビデオカメラで撮影し、この映像から時間と撃鉄の角度の関係を測定した。使用したねじりバネは、バネ定数の大きいものと小さいものの二種類である。次に、モデルガンのフレーム、撃鉄等の寸法、重量を計測し、FEMソフトウェアであるSolidWorksを用いて3Dデータを作成した。作成した部品をソフトウェア上で組み合わせ、撃鉄の動きをシミュレートし、時間と撃鉄の角度の関係を求めた。ただし、撃鉄を作動させるバネのバネ定数は、実験で用いたねじりバネのバネ定数を計測し設定した。実験で求めた時間と撃鉄の角度の関係とシミュレーションで求めた時間と撃鉄の角度の関係を比較すると、バネ定数の小さいバネを使用した場合は両者の関係に開きが見られたが、バネ定数の大きいバネを使用した場合については両者の関係は比較的近い結果となった。この違いは、撃鉄とフレーム間の摩擦に起因するものと考えられた。摩擦の影響を少なくするためには、シミュレーションで設定した摩擦に係るパラメータの精度を上げ、バネ定数を大きくしていくことで対応することが可能と考える。よって、実験を重ね、本モデルの各パラメータの精度を上げることで、3Dデータの段階でモデルガンキャップや紙火薬等を撃発する機能を有しているか否かの判断ができる可能性があることが示唆された。
著者
紺野 昇
出版者
大阪府立住吉高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

平成24年から施行の小・中学校新学習指導要領では理科での実験・実習の重視が述べられているものの、一方では、久しく小・中学校での「理科離れ」が大きな教育課題になっている。そこで、中学校理科教育の充実に役立てることをねらいとして、中学校で扱う理科実験の方法を紹介する教材や、科学に関する情報の提供を行うDVD教材の開発と、データ検索のための専用簡易ソフトウェアの開発を試みた。今回、中学校の第一分野を中心に中学校で扱う理科実験に資する教材データベース(独自に開発した専用検索エンジンソフト付き)と、科学教育に関わる動画像などの教材資料集を制作し、DVDでの配布を試みることとした。取り扱うデータは、中学校理科教育の内容を、学年と第一分野(物理・化学)と第二分野(生物・地学)の分野に6分野、さらに環境教育とその他基本実験の2分野を加えた計8分野別に、協力者とともに約150件(H24.4頒布時は80件、その後、最終データは約150件へ拡充する予定)の実験教材のデータを作成した。第一分野では実験方法等を紹介する教材を中心に、第二分野では授業を補足する教材を中心にデータベースを制作した。また、データベースの検索エンジンソフトは、Visual Basicの開発ツールにより専用のデータベース検索エンジンソフトも開発し、同時に頒布することとした。このソフトは、キーワードでの検索の他、データ名の一覧からリスト検索する方法を併用した。このデータベースには、抄録テキストの他に、画像や表も表示できるタイプに利便性を高めている。なお、このデータベース編集ソフトも今回開発した。これらのデータベース公開に向けて、Webサイトの準備も進めている。
著者
谷川 智康
出版者
兵庫県立有馬高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

研究の目的:多地点で流星電波エコー観測(HRO)を行うことにより、エコー検出の時間差から流星の速度を決定することである。研究の方法:速度決定の最低地点数である6地点のデータを取得すべく3地点で2周波数の観測を行った。(1)観測機器設置揚所:兵庫県立有馬高校(三田市)、兵庫県立西脇工業高校(西脇市)、兵庫県立篠山鳳鳴高校(篠山市)(2)送信局:福井工業高等専門学校(53Mhz)矢口徳之氏長野県豊科町(28Mhz)2007年11月より観測し、しし座流星群、ふたご座流星群、しぶんぎ座流星群の活動時期を中心に観測を行った。研究の成果:・データについては現在解析中であるが流星の速度を決定する品質のデータはまだ検出できていない。・GPS受信機から1ppsの信号をパソコンに取り込むための回路の作成に成功した。・今回、用意した機材を今後も活用し、継続して観測していきたい。なお、この研究は高校生に本格的な科学研究を体験させる教育的な目的も含んでいたため、観測機材の設置校を中心に参加を呼びかけたが、応募者がなく残念であった。今後の観測継続にあたっても高校生に呼びかけ、単なる流星観測でなく教育的意義も持たせていく予定である。研究に関連し、神戸大学が主催した"月面突発発光観測兵庫チーム"に参加し、ふたご座流星群の際には流星体の月面衝突発光観測にも参加した。上記の観測継続にあたっては神戸大学が主催している"月面突発発光観測兵庫チーム"と共同体制をとっていく予定である。月面衝突発光の際に借り受けた高感度CCDカメラを使って、電波観測と同時に映像による流星観測を行い、流星の軌道決定を併せて行うとより精度の高い観測データが得られることを学んだ。今後はこの高感度カメラを併用しながら流星の速度計測に取り組んで行きたい。
著者
竹内 和雄
出版者
寝屋川市教育委員会
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的携帯電話に過度に依存してしまう、所謂「携帯依存症」や「ネットいじめ」の実態を明らかにするとともに、特に、その有効な対応方法、対策方法を見いだすことを目的とした。特に、学校園ですぐに使用できるDVD作成や子ども自身による、ネットいじめ撲滅の取り組み(生徒によるいじめ撲滅劇上演)等、即効性のある取り組みを研究した。○研究方法全国各地の状況の聞き取り調査を実施し、他の都道府県(長野県、東京都、福岡県等)の子ども及び教職員等から情報収集し、トラブルだけでなく、効果的な指導法についても情報交換した。また、市「携帯ネットいじめ対策会議」で中学校教員と対策を検討し、アンケート調査及びピア・サポートによる対応方法について研究した。○研究成果市内アンケートや他府県の聞き取りからフィルタリングの設定が有効であることがわかった。保護者用啓発資料作成し、「フィルタリング・ローラー作戦」を実施し、市内の小中学生のフィルタリング設定率が48.2%から79.2%に上昇するなど、成果があがった。また、調査の結果、小中学生の携帯電話でのトラブルが、ネットいじめや携帯電話依存だけでなく、多岐にわたっていることが判明した。市中学生サミット(市内12中学校の生徒会執行部員で構成)のメンバーで考える機会を持ち、その結果を踏まえて、中学校教員や千葉大学、関西大学等と連携して「チェーンメール」「個人情報」「ソーシャルネットワークサービス」の3つの対策ビデオ教材を作成した。ビデオ教材は、市内の全中学校に配布し、授業や朝礼等で活用しており、広く一般に公開する予定である。中学生自身に携帯電話について、考える機会「ケータイサミット」を実施した。その結果を踏まえて、「ケータイネットいじめ撲滅劇」を作成。上演の様子は関西テレビに取り上げられるなど、注目を集めている。また、劇の様子は、DVDにまとめ、全小中学校に配布している。
著者
町田 一男
出版者
藤岡市立鬼石小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

○研究目的:養護教諭を中心に,健康生活指導を行う「すくすく教室」を通して,児童が勉強会や測定等を行いながら,自分自身生活を振り返ることで生活習慣改善の主体的な取り組みに気付くこと。○研究方法:・「すくすく教室」を月1回程度定期的に,水曜日のなかよしタイム(通常より長い昼休み)に実施する。実施後のアンケート調査・分析を行う。・月1回程度の形態測定及び運動量・運動強度測定(5月と11月,各2週間)を実施する。・学習した内容,測定結果は各家庭に知らせ,連携を図る。○研究成果:・「すくすく教室」では,児童が身近に感じているおやつの中の清涼飲料水から始まり,おやつ,食事と広げていくことで,砂糖からご飯,カロリーと児童の中の「ものさし」を意識させる指導ができた。外部の管理栄養士と連携することで,勉強会の進め方やプリントの作製のアドバイス,使用する教材の提供,指導後の話し合いを通じて専門的なアドバイスを受けながら取り組むことができた。学習結果を家庭に返すことにより,家庭で親子の追学習が行われるなど,家庭での健康への意識・理解を高めることができた。・「形態測定」では,食生活や肥満傾向など課題がある児童について,家庭と連携した個別指導ができた。・「運動量・運動強度測定」では,児童の興味・関心を引き出し,自ら運動しようという意欲を引き出し,結果を返すことを通じて,保護者が自分の子どもの健康状態に意識することが深まった。
著者
櫻川 智史
出版者
静岡県工業技術研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

熱中症とは、温度と相対湿度が高い場合に起こる様々な病的症状の総称である。これまで、熱中症はスポーツ活動や労働作業時の問題として取り上げられてきたが、近年では日常の生活活動時にも多く発生している。特に、高齢者は若年層に比べて体温調節機能が低下していることや、水分をあまり補給しないことで脱水症状に陥りやすく、日常生活の中で熱中症を発症するケースも多く見られている。しかし、高齢者施設での熱中症の危険性を数値で評価している事例は少なく、具体的な問題点や対策法も提示されているとはいえない。本研究では、夏期暑熱時の高齢者施設における熱中症の危険性に着目し、気温(乾球温度)、相対湿度、黒(グローブ)球温度等を用いた暑さ指数(WBGT)を指標とし、木造および鉄筋コンクリート(RC)造施設内の温熱環境を評価した。評価対象は、静岡市内の特別養護老人ホームとした。当該施設は、木造平屋建とRC造4階建により構成される。夏期暑熱時(7~9月)の各棟共用部分における測定の結果、RC造棟では、冷房の強弱により急激に温湿度が変化した。木造棟では、空調による制御が比較的容易であり、温湿度やWBGTの急激な変化は認められなかった。しかし、空調をしないと木造でも熱中症の危険性は高くなり、注意を要した。空調の使用で熱中症の危険は回避される一方、冷房を嫌う高齢者も数多く観察された。特に、リウマチ罹患では冷風による痛みを危惧し、毛布・靴下の着用や、極端に冷房を避ける傾向が認められた。高齢者と若年者では単なる温度感覚差のみならず、生理的な特性(発汗機能など)も大きく異なるため、高齢者の熱中症の危険性は増大する。夏期暑熱時においては、室内であっても高齢者の特性に配慮した熱中症の対策が必要となる。また、年間を通した温湿度計測においても木造棟はRC造に比べ湿度変化が小さかった。
著者
須佐 宏
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

本研究は「紀伊万葉」に代表されるようなご当地ソングを小学校の歴史学習とも関連づけながら、子どもたちの興味・関心を誘い,古典学習の教材としてどう活かしていくかの研究である。取り上げた歌は、山部赤人が和歌浦の地で読んだ「和歌浦 潮満ち来れば 潟を無み 芦辺をさして田鶴鳴き渡る」の歌。4年生と1年生で実践を試みた。4年生では、教材化にあたって、実際に見たことのある景色を事前にデジタル画像として保存し、子どもたちのつまづきや気づきに合わせて提示できるようにした。また,子どもたちが実際に足を運んで記録してきたデジタルデータも保存できるようにした。また、音声言語として声に出して読むことが児童の古典理解を大きく助けるものだと考え、個々の音読データを記録し、自己の読み声も確かめられるようにもした。1年生では、親子体験プログラムという計画を立て、撮ってきた画像を使った万葉クイズや親子暗記対決などをし、親子で楽しみながら少しずつ身近なものになるよう心がけた。1年生にとって意味理解は難しいが、ことばのリズムとして体得するにはちょうどよく、1年生の子どもであっても、容易にこの歌を覚えて暗唱できるようになった。親子で行った歌会では、1年生が★なみのおと こころにひびき 気もちいい けしきもよくて すてきなじかん(まりん)★かたおなみ みんなできたよ たのしいな あそんでいたら しおがひいたね(たいが)★かたおなみ 大きいうみが ありました こんどはなつに いってみたいよ(こうせい)などの歌を詠むことが出来き、和歌浦を身近に感じると共に、五七五七七のリズムを楽しみながら身につけていく機会を持つことができた。
著者
山本 和雄
出版者
岡山市立岡山後楽館高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1研究目的(1)郷土出身の文学者坪田譲治を媒体として,高校教育において〈郷土への愛着・郷土愛と郷土理解・地域文化の伝承〉・〈生涯学習の基盤〉青成の必要性を、地域に「生きる力」の一環として、教材開発の過程においてなるべく広く啓蒙する。(2)〈生涯学習〉の場で、教材のパイロット版を応用活用できる方法を模索する。(3)坪田譲治周辺の《地域文化資源》についても遺族・親族等から取材・調査し、記録する。2.研究方法(1)6月9日「岡山県高等学校教育研究会国語部会春季大会」において、21年度「補助金」で制作した「デジタル資料パイロット版」の紹介と利用方法説明、22年度研究の概略を口頭説明し、「中間のまとめ」の一部を小冊子として希望者に配布。(参加者約70名)(2)5月から開講した「市民講座坪田譲治研究」の受講生と共に新資料の調査に着手。(3)夏季休業中に「文芸部」の生徒も(2)の調査に参加。(4)8月3日「岡山文学教育の会第40回文学講演会国語教育実践発表会」(後援岡山市教育委員会参加者約50名)において、21年度研究成果と22年度中間発表。(5)「岡山後楽館高校公開市民講座坪田譲治研究」を、特別編を含めて通算7回、岡山県立図書館で行った。うち夏季休業中の2回は,高校生一校内授業の受講生と文芸部員も参加し、一般市民の方々と交流しながら受講した。(6)授業「岡山の文学」を11月から県立図書館で数回行った。譲治に関する各グループ別設定テーマの調べ学習とまとめの後、授業で発表会を行い相互評価させた。また、「現代文」においては「公開市民講座」で検討した作品を教材としてレポートを作成させた。(7)21年度同様、県立工業高校建築科との連携を行い、親族への取材成果をそれに反映させた。3研究成果(1)「公開市民講座」の実施で,一般市民の参加者と勤務校生徒との接点ができ、学習教材の開発に多面的価値観とその見解を得ることができた。(2)21年度例作の「デジタル教材」について、著作権等に配慮しながら修正を行い、夏季以降希望校に貸与できる打ち合わせ、準備ができた。(3)坪田譲治のいわゆる「最初期・初期」の小説作品(郷土岡山でも一般に知られていない)を、教材候補としてあえて取りあげた。新たな発見があり、教材選定の基準の一つを確定することができた。(4)「公開市民講座」はテーマ別に通算7回行った。テーマごとに興味を持った、様々な市民の方の参加があった。その感想・意見は、授業での生徒のものと同様、今後の研究活動に大変有効である。(5)県立岡山工業高校との連携は、「岡山県工業教育誌」に紹介された。(6)「公開市民講座」は、8・10・11月に実施した計4講座が「あっ晴れ!おかやま国文祭応援事業」に承認された。うち、10・11月の講座は「おかやま県民文化祭協賛事業」としても承認された。また、3月に実施した「講座特別編パネルディスカッション坪田譲治と岡山の自然」は、岡山市の「おかやま文学フェスティバル2010関連事業」として承認された。
著者
平良 文亨
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

放射性核種の物質輸送は大気環境に依存し、地球規模で拡散すると考えられている。原子力ルネサンスが叫ばれる昨今、日本の西端に位置し原爆被ばく経験を有する長崎、1986年4月に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故の影響があった周辺地域及び1949年~1989年の間に450回以上の核実験が実施されたセミパラチンスクにおける現在の放射線被ばくリスクについて評価した。まず、長崎県内における環境放射能調査から、放射性核種が気流の影響を受け大気環境に依存した挙動を示すことが確認された。次に、チェルノブイリ原子力発電所の事故により放射能汚染のあった地域(ゴメリ、ミンスク、コロステン、ブリヤンスク等)で消費される食用キノコ類を採取後、ガンマ線の核種分析を実施し放射能レベルの解析及び実効線量を算出した結果、チェルノブイリ原子力発電所に近接する地域(ゴメリ、コロステン)では長崎の約1,400倍高いセシウム-137濃度を示し、公衆被ばくの年間線量限度の約6分の1であった。また、土壌の核種分析結果から、チェルノブイリ原子力発電所事故の影響が大きいとされるブリヤンスク及びゴメリ州(ゼレズニキ)における外部被ばくの実効線量が比較的高い傾向であった。一方、セミパラチンスク市内に流通する食用キノコ類及び土壌の人工放射性核種レベルは長崎と同程度のバックグラウンドレベルであったが、核実験場施設内では閉鎖後20年経過しているものの複数の人工放射性核種が検出された。以上から、チェルノブイリ原子力発電所近傍及びセミパラチンスク核実験場内では、人工放射性核種が大量に放出された当時に比べ低レベルであるものの、現在も人工放射性核種が環境中に存在.し放射線被ばくリスクが賦存していることが示唆される。今後も低レベル放射線による健康影響評価についてフォローする必要がある。
著者
天海 丈久
出版者
青森県総合学校教育センター
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

日本版DN-CAS認知評価システム(DN-CAS)は,適用年齢が5歳から17歳までと幅広く,検査で測定できるプランニング,注意,同時処理,継次処理の4つの認知処理能力は,幼児児童生徒の「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の立案の際に重要な情報を提供する。本検査結果の分析と解釈は,現在喫緊の課題である発達障害を有する高校生の支援も含め,特別の教育的支援を必要とする幼児児童生徒を教育する学校現場にとって,大きな示唆をもたらすものであると考える。そこで本研究では,DN-CASの分析を学校現場が実施しやすくするためのツールとして,「学校向けDN-CAS用所見作成マニュアル」を開発した。1 DN-CAS認知評価システムの実施発達障害を有する幼児児童生徒について検査を実施し,データを得た。2 認知尺度のパターン化学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD),広汎性発達障害(ASD)について,PASSプロフィール,下位検査プロフィール,使用した方略の特徴についてパターン化を行った。なお,統計処理にあたっては,SPSS Statistics 19を使用した。プランニング,同時処理,注意,継次処理のプロフィールとして,LDは注意は高くならず,継次処理は低くならないこと,ADHDは「N字型」を示すこと,ASDは「逆N字型」を示すことが示唆された。また,下位検査のプロフィールとして,LDは「図形の推理」「関係の理解」「表出の制御」が,ADHDは「表出の制御」が,ASDは「発語の速さ/統語の理解」が相対的に低くなる傾向が示唆された。3「学校向けDN-CAS用所見作成マニュアル」の開発日本特殊教育学会第48回大会(長崎大学),日本LD学会第19回大会(愛知県立大学)でポスター発表を行うと同時に,情報収集を行った。また,第39回発達神経心理学研究懇話会(DN-CAS事例検討会)においても情報収集を行い,得られた知見を総合して,Microsot Excelにより「学校向けDN-CAS用所見作成マニュアル」を開発した。開発にあたっては,試作版を青森県総合学校教育センター特別支援教育課,日本版DN-CAS作成者で評価した。公開については,現在関係者間で検討中である。
著者
江谷 和樹
出版者
上越教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1研究目的本研究は、小学校音楽科におけるアジア伝統音楽の指導について、インドネシア・バリ、島に伝わる行列形態の打楽器合奏「ガムラン・バラガンジュールgamelan balaganjur」の表演特性に基づく教材開発を試み、児童の音楽行為を省察することを通して、この教材がもつ教材価値を明らかにする教育実践研究である。2研究方法バラガンジュールの表演は、演奏者同士のコミュニケーションを基盤に行われる。演奏が行われる状況の中で、演奏者同士が繰り広げる臨機応変な音楽行為を省察することで、教材としてのバラガンジュールの価値を分析するとともに、小学校音楽科授業における実践の可能性を探る。3研究成果(1)バラガンジュールの音楽構造が、「ギラッgilak」と呼ばれる基本旋律の繰り返しで構成されるため、小学校の児童でも個別の技能差に関わらず比較的容易に演奏に取り組めること。(2)演奏者同士が独自の合図を共有し、場の状況に応じて太鼓奏者が出す即興的な合図をきっかけに、一時停止、身体的パフォーマンスの挿入等、多様な表演ができること。(3)演奏者が特定の楽器に固定されず、一旦全てのパートを口頭伝承で習得するため、個々の奏者が常に音楽の全体像を把握して演奏でき、状況の変化に瞬時に対応することが可能であること。
著者
中村 豊
出版者
宮崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【目的】2007年度科学研究費補助金を受け、生鮮食品の品質管理用小型温湿度記録装置が、動物陸送時の微環境温湿度の経時的モニタリングに有効であることを実証した。今回は、この装置を用いて長距離空輸される動物に及ぼす輸送箱内温湿度の影響を検討する。【方法】小型データロガー「ハイグロクロン(Dallas Maxim USA)」を用いて、動物輸送時の空調車内部と空港内荷物保管室、機内貨物室の輸送箱外部、および輸送箱内部の温湿度を測定記録する。動物輸送は静岡県厚木市から宮崎県清武町まで陸送と空輸で所要時間約25時間である。この間車内温度は15℃、機内貨物室は25℃前後に設定し、測定間隔は5分とした。【結果】測定は20年9月2日、9日(夏季)および21年1月13日、27日(冬季)に行った。1.記録された夏季と冬季の荷物保管室、機内貨物室の平均箱内温度は25.4±3.0℃、27.7±1.8℃、および15.3±3.6℃、25.5±5.4℃であった。2.平均箱内湿度は92±3.6%、83.5±3.9%、および85.2±11.7%、72.6±16.2%であった。【考察】空港到着後の平均箱内温湿度を陸送時と比較すると、夏季温度は荷物保管室、機内貨物室で上昇するが、冬季では荷物保管室で降下し機内貨物室では上昇することが示された。陸送中の箱内湿度は高めであるが、荷物保管室の箱内湿度は夏季でさら上昇し、冬季ではほぼ同じ湿度を保ち、機内貨物室では夏季、冬季ともに降下することが示された。動物を空輸する場合、空港に到着した輸送箱が荷物保管室や機内貨物室に置かれている短い時間に、急激な温湿度変化で箱内温湿度環境が悪化し、輸送動物に大きな影響を与えることが示唆された。以上より長距離空輸する際、ウサギ等の高温多湿に弱い実験動物輸送には充分な配慮が必要であることが判った。
著者
國眼 厚志
出版者
朝来市立山口小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

○研究目的…本研究では安価で軽量、操作の簡単なマルチタッチスクリーンタブレットを持ちながらの机間巡視授業が技術的に可能かどうか、それを様々なOSとそれが搭載される端末を用いて検証し、実際の授業効果を確かめようとしたものである。○研究方法…マルチタッチスクリーンを採用しているタブレットでOSの異なる3機種、アンドロイド端末(ICONIA TAB A500)、iOS端末(iPad、iPhone4)、ウィンドウズ7端末(ICONIA TAB W500)を用いて無線でプロジェクターに投影可能かどうか、そして授業がスムーズに行えるかを検証した。○研究成果…アンドロイド端末においては高額なシステム(UCHIDA WIVIA等)を用いることで無線投影できる可能性も示唆されたが、現状では困難なことがわかった。iOS端末(iPad、iPhone4)では2通りの可能性が得られた。1つはAPPLE TVを用いてHDMI端子のあるプロジェクターに飛ばすことができた。パワーポイントと互換性のあるキーノートを用いてプレゼンテーションを行えば十分授業ができる確証を得た。もう1つは本体をソフトウェア的に改造しなければならないが、プロジェクターに接続されたウィンドウズパソコンに転送できることで授業が行えた。ただ、これは学校現場では少々使いづらいものであった。最後にウィンドウズ7搭載のスレートパソコンであるが、これも2通りの成果が出た。1つは無線ディスプレイのドングルを取り付け、飛ばすものである。これはメーカーの協力もあり確実に行えた。もう1つはTeamViewerというフリーソフトを用いて固定パソコンと同期させるものである。固定パソコンに接続された書画カメラを使うこともでき効果的であった。どちらも実現可能であるが、後者はCPUパワーに依存する向きがあるので次期OSと改良型スレートパソコンの登場に期待したい。授業はスムーズに行え、学習に遅れがちな児童の近くでパソコンを操作しながら進めることができた。
著者
有村 和章
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1 主要研究内容(1)第4学年の「物質とエネルギー」区分に関する実社会や実生活との関連性の児童の認識について調査を実施した。(2)第4学年単元「電気や光の働き」において,実社会や実生活との関連性の認識を重視した学習内容を設定し,指導計画に位置付けた。(3) 実社会や実生活との関連性の認識を深め,児童が主体的に学習を振り返ることのできる自己評価法確立のために,評価の視点を設定し,自己評価カードを作成した。(4) 実証授業により,児童の認識の高まりと資質・能力,科学概念の獲得の状況を行動記録及び発言記録から分析した。2 主要研究成果(1)4年生においては,電気について動力源としてや,生活に不可欠なものとしての見方や考え方はもっているが,それが人工的に作られ,消費されるものであるといった見方や考え方をもつ子どもはまだ少ない。そのため,LEDなど節電のための機器に対して関心を持っている子どもは非常に少ないことが分かった。(2)第4学年単元「電気や光の働き」に,「回路を流れる電流の強さによって,乾電池の消耗度も変化すること」(内容(1))及び「LEDは豆電球より弱い電流で発光するためその利用は節電へつながること」(内容(2))を付加した。内容(1)については,直列つなぎと並列つなぎの場合の豆電球の点灯時間を比較する実験を行い,点灯時間と電流の強さを関係付ける学習内容を設定した。内容(2)については,低電圧で発光するLEDを教材として採用し,LEDと豆電球をそれぞれ使用した場合の乾電池の消耗度を比較する実験や,手回し発電機を用いて発電に必要な力を比較する実験等を位置付けた。その結果,電気の消耗を意識し,節電に心がけようとする子どもや,身の回りで行われているLEDの信号機の設置等節電への取組へ関心をもつ子どもが増えた。(3)自己評価法については,「追究活動への取組」,「問題解決の成就感や達成感」,「自然を見つめ直そうとする思いや態度」の視点から自己評価できるよう単元毎に自己評価カードを作成したところ,自己の高まりを自己認識したり,自らの課題を明らかにしたりする姿が見られた。
著者
飯沼 秀子
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

法令に基づき、月に一度、空気中の放射性物質の濃度測定を行っているが、放射性物質の使用がなかった実験室で、バックグランドより高い数値が検出されることがあった。検出された数値は、自然放射性物質であると考えられる。そこで、作業環境測定に及ぼす影響を知るため、自然放射性物質の測定を行った。(1)自然放射性物質の定期測定1年間、週1回定期測定を行った。試料採取はダストサンプラを使用し、ろ紙に吸着させた。採取場所は、非管理区域の屋内で行い、採取時間は8時間、採取量は約10,000L採取した。試料測定は、液体シンチレーションカウンタを使用し、採取直後から1時間測定を60回行った。また、バックグランドとして未使用のろ紙の測定値を使用した。作業環境測定への影響を知るために、同じ条件である屋内で採取したためか、採取日による測定値の変動は見られたが、季節・湿度・温度との相関は見られなかった。また、天気との関連については、採取日に雨の日が少なかったため、雨の日との関連は分からなかった。晴れの日と曇の日では、曇の日が高い傾向があったが統計的に言えるほどではなかった。また、当センターの定期作業環境測定では自然放射性物質の影響を除去するため、採取の48時間経過後に測定を行っている。経時変化を見るとほとんどの採取試料が48時間後には、バックグランドまで下がるが、採取直後の測定値が高いときなどに、48時間経過してもバックグランドまで下がらないことがあった。(2)採取した自然放射性物質の核種同定試料採取は(1)と同様に行い、名古屋大学アイソトープ総合センターにて、ゲルマニウムγ線スペクトルメータで核種を同定した結果、天候によるエネルギーのピークの位置の差はなく、4回ともトリウム壊変系列やウラン壊変系列由来の自然放射性物質であった。これらのことから、当センターでの作業環境測定に影響をあたえる自然放射性物質の基礎的な情報を得ることができたと考える。
著者
千葉 勝吾
出版者
東京都立大島高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1 調査の概要質的調査として大都市と地方の下位ランク校6校の生徒及び卒業生20名に対する面接調査をおこない、高校における進路指導の効果と外部要因の影響について検討した。量的調査として大都市部の専門高校1校の3学年全員分の進路決定過程についてのデータを分析して、大都市の他の高校や地方の高校と比較し検討をおこなった。2 研究の成果(1)下位ランク校の生徒たちは、計画的に可能な限り少ない努力で楽をしながら、成績は低位であっても卒業して、フリーターも含めたなんらかの進路実現を果たすという「自己を充足させるメカニズム」を持つということが確認され、さらに調査から判明したことは以下の3点である。第1は、質問紙調査では高校入試において.実際に受験した高校が第1希望だったと回答するものの、実際のところは入試のランクを下げた結果の選択であり「潜在的」な不本意入学者という点である。第2には、生徒たちの学校生活を送る方策の方向性は、消費社会に引き寄せられたものとなっているものの勉強嫌いで何事にも意欲のない性格的な特性をもつわけではないことがあきらかになった。第3には、しっかりとした進路意識や進路選択の意志のないままに、進路決定に進まざるを得ない場面が少なくないとうことがわかった。(2)進路形成について、生徒一人一人の進路希望や進路指導の経過を逐一記載し、指導の状況を管理するためのデータを分析した結果、学校が提供する指導/支援は進路形成のチャンネルとして捉えることができた。具体的には、(A)「コーチング」実践と呼ばれる、教師がボランタリに課外のプログラムを設けて、生徒を支援しようとする特別な指導体制。(B)A商業高校における基本的な進路形成チャンネルである「全体指導」の枠組。(C)「個別サポート指導」というべき進路形成チャンネル。(D)「離脱」のチャンネルーの4つが確認された。
著者
上田 学
出版者
大阪教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

車いすは福祉機器であるため,パンク修理でさえ自転車店では扱ってくれない。本研究では,中・高生のボランティア活動による車いすの定期点検に注目した。第1段階として,中学生が障害者施設を訪問し,車いすの点検整備を試行し,社会工学的見地から,問題点や改善点などの調査を行い,継続的な点検整備ボランティア活動への基礎資料を収集することを目的とした。平成20年2月10日,大阪市更生療育センターに通う中途障害者の車いす整備を,中学生のボランティア活動として実施した。センターにお願いして車いす16台の不具合の事前調査を実施した後,中学生24名(知的障害児2名を含む)と指導者3名により整備を行った。整備内容は,汚れ落としと虫ゴム交換(16台全て),ネジの増し締め(5台,1台ボルト破損交換),きしみ止め(3台)であった。その後,実施したアンケートでは,障害者は感謝していたが,中学生からの質問や問いかけ,アンケートの質問に対しては,多くを語ろうとしない人が多かった。センター職員の方の話しによると,まだ中途障害になったショックから立ち直っていない方が多いこと,言語障害が残っていること,利き手が不自由で文字を書くことに対して億劫になっているとの理由からだそうだ。それに対し,障害者の方々との短いやりとりにも関わらず,中学生はボランティアの意義を確かな手応えとして感じていた。特に障害児がボランティア活動の喜びを感じていたことは,非常に良かった。本ボランティア活動に対しては,センターの職員の方から,日頃出来ていないメンテナンスが出来て非常に喜んでもらえ,次年度からも継続実施の要請があった。ただ次年度からは,事前の訪問を増やし,中途障害者であるお年寄りとのコミュニケーション不足を解消することが,社会工学的見地からも重要であることが分かった。