著者
小林 正則 國土 典宏 関 誠 高橋 孝 柳澤 昭夫 前川 勝治郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.2399-2403, 1999-10-01
参考文献数
17
被引用文献数
10

症例は66歳の女性. 他院にてS状結腸癌にて結腸切除術1年後, 肝転移を来たし当科にて肝左2区域切除, S6部分切除を施行した. 入院時血清AFP1,036.8ng/mlと異常高値を認めた. 肉眼的に根治であったが術後短期間に皮下組織内および残肝に再発し初回手術より1年4か月後(肝切除より94日後)死亡した. 病理組織像では, 原発巣および肝転移巣ともに通常の大腸癌に見られる腺腔形成部と明るい細胞質を持つ細胞がシート状に配列した部(hepatoid differentiation)よりなっていた. AFP産生性は免疫組織学的に原発巣および肝転移巣の両者で検出された. AFP産生大腸癌の報告はきわめてまれであるが, 予後不良なこのようなタイプの大腸癌の存在することを念頭に置き, 診療に当たる必要があると考えられた.
著者
高嶋 吉浩 三浦 正博 舛田 誠二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.1071-1075, 1995-05-01
参考文献数
13
被引用文献数
1

箸刺入による外傷性頸部食道損傷の1例を経験した.19歳の女性.1993年7月食器運搬中に転倒し箸が右頸部から刺入し,抜去することなく来院.内視鏡にて食道損傷と確診した.箸摘出,食道縫合閉鎖術にて治療した.本邦の外傷性食道損傷35例および箸刺入傷23例を検討した.外傷性食道損傷の死亡例は保存的治療3例中2例(66.7%),手術的治療31例中1例(3.2%)だった.24時間以内に1期的閉鎖術となった11例では縫合不全は1例(9.1%)のみだったが,24時間以降の場合,1期的閉鎖術5例中4例(80%)が縫合不全を来し,ドレナージ術12例中3例(25%)が再手術を要した.よって,本外傷には早期手術的治療を行うべきである.箸刺傷23例中17例が単純抜去されたが,うち10例は遺残先端の摘出術を要し,完全抜去された7例中2例は消化管損傷のため手術的治療を要した.完全抜去されないもの,消化管損傷を伴うものでは保存的治療は妥当ではないと推察された.
著者
舟橋 整 赤毛 義実 竹山 廣光 毛利 紀章 若杉 健弘 寺西 太 早川 哲史 福井 拓治 田中 守嗣 真辺 忠夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1601-1605, 2001-11-01
参考文献数
9

切除不能進行胃癌に対し腹腔動注併用化学療法が奏功した症例を経験したので報告する.症例は59歳の男性.上腹部痛を主訴に来院し, 上部消化管内視鏡検査にてBorrmann IV型胃癌を指摘された.1999年6月手術施行するもT4, N3, P1, H0, M1, CY1:stage IVのため試験開腹とし, 左右横隔膜下にリザーバーを留置してmodified low doseCDDP+5FU regimenにて化学療法を施行した.9月にTh9/10のレベルでAorta内に動注用リザーバーを留置し, 以後外来通院にて腹腔動注併用化学療法を施行した.2000年4月食思不振にて再入院するまでQOLを損なうことなく外来通院にて腹腔動注併用化学療法が施行できた.
著者
生方 英幸 春日 照彦 本橋 行 片野 素信 渡辺 善徳 後藤 悦久 中田 一郎 佐藤 茂範 田渕 崇文
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.1581-1586, 2003-11-01
被引用文献数
18

症例は65歳の男性で, Billroth II 法・結腸後吻合を施行されている残胃に発生した早期胃癌にて残胃全摘, Roux-Y法・結腸後吻合を施行した.術後3日目より肝機能障害出現,術後4日目上腹部痛出現,術後9日目CTにて十二指腸の著明な拡張を確認,術後12日目黄疸が出現した.術後13日目超音波ガイド下経皮経腸ドレナージを施行.造影所見より輸入脚閉塞症と診断された.上部消化管造影では食道空腸吻合部下部の空腸に狭窄を認めた.翌日より腹痛は劇的に改善し,術後27日目カテーテルを抜去し経口摂取を開始した.以後は順調に回復し術後38日目退院となった.輸入脚閉塞症は急速進行性に致命的経過をとる重篤な疾患である.これまではほとんどの症例で手術が施行されてきたが,死亡率は11%〜28%と高率であった.今回我々が施行した経皮経腸ドレナージは簡便で患者侵襲が少ないため,症例によっては輸入脚閉塞症に対して有効な一手段となると考えられた.
著者
能見 伸八郎 田中 承男 井口 公雄 稲葉 征四郎 橋本 勇
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.15, no.12, pp.1376-1380, 1982-12-01
被引用文献数
13

教室で過去19年間に経験した大腸癌は299例みられ, 粘液癌は34例 (11.4%) みられた. この34症例について, 項目に分けて臨床的に検討を加え, 粘液癌を含む大腸癌全症例と比較した. その結果, 粘液癌は若年者に多い傾向がみられ, 占居部位では右結腸に有意に多発していた (p<0.01). また, リンパ管侵襲が多く (p<0.01), 深達度は全例 ss (a_1) 以上であり, 腹膜播腫陽性例が多くみられた (p<0.025). 5年生存率は, 大腸癌 stage II 症例の71.7%に対して, stage II 粘液癌は39.0%と悪かった(p<0.05).
著者
幕内 博康 町村 貴郎 宋 吉男 水谷 郷一 島田 英雄 徳田 裕 杉原 隆 佐々木 哲二 田島 知郎 三富 利夫 大森 泰 三吉 博
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2599-2603, 1991-10-01
被引用文献数
30

近年,診断技術とくに色素内視鏡の進歩により,食道表在癌はもとより食道粘膜癌も増加してきた.粘膜癌で粘膜筋板に達しないものでは脈管侵襲やリンパ節転移をきたすことも極めてまれである.そこで内視鏡的粘膜切除術の適応を,(1)粘膜筋板に達しない粘膜癌,(2)長径2cm以下,(3)食道全長に多発していないもの,とした.われわれは18例23病巣に内視鏡的粘膜切除術を施行しており,このうち表在癌は15例19症巣であった.手技は,(1)ヨード染色により病巣の範囲を確認し,(2)病巣周囲にマーキングを行い,(3)インジゴカルミン・エピネフリン加生食水を粘膜下に注入し,(4)内視鏡的粘膜切除術を施行して組織を回収し,(5)再度ヨード染色で切除範囲を確認するものである.皮下気腫をきたした1例以外合併症はなく,穿孔例や緊急手術の適応となったものはない.本法の発展普及と食道癌の予後改善を期待する.
著者
中居 卓也 白石 治 川辺 高史 船井 貞往 香山 仁志 康 謙三 安富 正幸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.2674-2678, 1999-12-01
参考文献数
13
被引用文献数
2

症例は56歳の女性.発熱と腹痛を主訴に来院した.前医で,下部胆管癌に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が今永式(I型再建法)で再建され,術後繰り返す胆管炎と肝膿瘍に膿瘍ドレナージが行われていた.血清ALPなどの胆道酵素や上部消化管造影検査では異常を認めず,^<99m>Tc-PMT胆道シンチグラフィーからも胆管空腸の吻合部狭窄や胆汁うっ滞所見はなかった.食事摂取で発熱などの胆管炎症状が現れ,抗生剤動注療法も奏効しなかった.胆管炎の原因が食物の胆道内への逆流と考えられ再開腹後,再建法をI型からII型に変更した.術後,6か月経過した現在,胆管炎の再燃は認めない.
著者
川嶋 寛昭
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.739-747, 1987-03-01
被引用文献数
1

Pinhole collimator使用Tc-99m-E-HIDA胆道シンチグラフィーを用いて基礎的研究を行った結果,本法は優れた画像分解能を示し,健常人にて鮮明な拡大胆道像をえた.そこで胆石症術後症例88例の胆道から十二指腸への胆汁の排出率を放射能活性の減衰率から算出したところ,胆嚢結石群では64.1%,胆嚢から胆管へ逸脱したと考えられる胆管結石群では50.4%,胆管で生成された原発性胆管結石群では18.4%とこの順に低下し,さらに原発性胆管結石群では,cholecystokininにも反応しがたい変化の存在が想定された.また胆道末端部からの放射能活性の減衰は術中胆道内圧値と逆相関し,加齢により低下した.
著者
河野 暢之 勝見 正治 谷口 勝俊 福永 裕充 山本 達夫 岡 統三 尾野 光市 淺江 正純 三木 保史 小西 隆蔵 遠藤 悟 植阪 和修 玉置 英人 児玉 悦男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.18, no.12, pp.2436-2440, 1985-12-01

食道静脈癌に食道離断, 血行遮断, 脾適除, 胃瘻造設術を施行した症例に^<99m>Tc Sulfer-Colloid 混入試験食のによる gastroscintigram により術後の胃排出動態をみた, 幽門形成術付加群5例, 非付加群9例の2群の胃排出時間 (T1/2) を経時的に測定したところ, 術後3ヵ月までは幽門形成術付加群に胃排出時間のばらつきがみられたが, 以後は排出遅延例はみられず, 経時的に短縮する傾向がみられた. 3ヵ月以後両群は分時胃排出率もほぼ等しく, 同じ胃排出動態を示し, 幽門形成術の有無による差を認めなかった. また胃形態よりみて術後は牛角胃を呈していた. 胃瘻造設により術直後の胃拡張, 過度の胃内圧上昇を防ぎさえすれば, 幽門形成術は必要でないと思われた.
著者
河合 秀樹 阿保 七三郎 北村 道彦 橋本 正治 泉 啓一 天満 和男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.2424-2427, 1994-11-01
被引用文献数
7

食道癌術後の後縦隔経路再建胃管に発生した潰瘍により大量出血を来し, ショック状態に陥った患者に対し胃管切除術を施行することにより救命しえた症例を報告する. 患者は72歳の男性で1988年6月1日, 食道癌根治術を施行され, 術後に計80Gy の頸部, 縦隔T字照射を受けている. 再発の兆候も見られず順調に経過していたが, 術後3年7か月後に突然下血, 吐血し, ショック状態となったため, 緊急入院し内視鏡を施行, 再建胃管に発生した潰瘍からの出血と判明し内視鏡的止血およびバルーンによる圧迫止血を試みるも止血できず胃管切開直視下縫合による止血術を2回施行するも再出血を来したため3回目の手術で開胸下に胃管切除術, 頸部食道皮膚瘻, 空腸瘻造設術を施行しようやく止血しえた. 患者は6か月後に有茎結腸による胸壁前食道再建術を受け現在経口摂取訓練中である. 本症例では術後の照射および酸分泌能の残存が潰瘍形成に関与していたものと考えられる.
著者
酒井 滋 山川 達郎 石川 泰郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.2635-2639, 1991-10-01
被引用文献数
7

1990年5月29日から1991年2月までの約10か月間に教室を受診した胆嚢摘出術を要した患者は91症例あり,このうち56例(61.5%)が腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応となった.この56例の全てに本法を試み,52例(92.9%)が本法による胆嚢摘出に成功し,残る4例(7.1%)は術中に開腹術に変更された.開腹術に変更された理由は急性胆嚢炎1例,胆嚢管・胆嚢動脈の剥離困難1例,胆嚢周囲の高度の大網癒着2例であった.開腹術となった急性胆嚢炎の症例ではクリップが充分かからず胆嚢動脈が断裂したためであった.一方,本法の適応から除外された35例の理由は,総胆管結石の合併,急性胆嚢炎,上腹部の手術既往,胆嚢管の閉塞,Mirrizi症候群,胆道奇形,胆嚢結腸瘻等であった.本法を施行する外科医は合併症を防ぐために術中対処困難な事態が生じた際は,開腹術へ変更することを躊躇すべきではない.
著者
万代 光一 平井 敏弘 三好 雪久 大田垣 純 山下 芳典 向田 秀則 峠 哲哉 新本 稔 服部 孝雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.20, no.11, pp.2501-2507, 1987-11-01
被引用文献数
3

目的:食道癌の併存病変について,臨床病理学的検討を行い.その実態を明らかにすることを試みた.方法:過去10年間に切除され,十分な組織学的検討が可能であった食道癌症例88例を対象とした.切除食道の全体にわたり階段状組織切片を作製し,併存病変の発生頻度を検討した.併存病変はdysplasia,多発癌,壁内転移,上皮内伸展に大別した.さらに,dysplasiaをmild,moderate,severeの3段階にgradingを行った.結果:多発癌の頻度は13.6%,severe dysplasiaも含めた悪性異型病巣の出現頻度は21.6%であった.食道癌の多発異型病変の頻度は高く食道癌の多中心性発生の可能性を支持しえた.
著者
桑田 博文
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.943-952, 1983-06-01
被引用文献数
4

分節的胃切除術における幽門洞枝温存の意義を解明する目的で, 術後1年目の胃横切2群 (幽門洞枝切離と温存群) と対照の正常群について空腹時の胃節電図を観察した. 横切2群の横切上部は正蠕動放電のみで放電間隔, 伝播速度ともに正常群の胃体部に類似した. 横切下部は不規則な正蠕動放電の中に逆蠕動放電をみ, 正蠕動放電の放電間隔と伝播速度は正常群の幽門洞部に較べ延長と遅延を示し, 異常運動が観察された. この異常運動は幽門洞枝の有無に関係なく存在し, 胃内容排出傷害の問題に関係すると推察される. 従って, 分節的胃切術の際, 幽門洞枝の有無にかかわらず幽門筋切離術が必要と考えられる.
著者
新井 利幸 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 磯谷 正敏 堀 明洋 青野 景也 森 直治 前田 敦行 河合 正巳 高野 学 山口 竜三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.2135-2140, 1994-09-01
被引用文献数
21

最近10年間に経験した消化器外科手術後に発症した急性肺塞栓症例8例を臨床的に検討した. それらは同期間の手術例の 0.07% に相当し, 平均年齢65.5歳 (55&acd;75), 1例が男性, 7例が女性, また7例が悪性疾患, 1例が胆石症であった. 術後の安静解除の時期に呼吸困難, 胸痛, 胸部不快感あるいは急性循環不全の症状がみられ, 心エコーで右心の拡張が認められれば急性肺塞栓症が強く疑われる. 肺動脈造影は診断のもっとも確実な方法であり, これを施行した5例全例で塞栓が証明された. 8例中5例は線溶・抗凝固療法で軽快したが, 3例は死亡した. そのうち2例は発症後数時間で失ったが, 1例は補助循環下に線溶・抗凝固療法を行い11日間の生存が得られた. 急性肺塞栓症に対しては, 必要なら補助循環を併施し, 強力な循環管理下に線溶・抗凝固療法をまず行うのがよいと思われる.
著者
加瀬 卓 小平 進 寺本 龍生 久 晃生 古川 和男 山口 博 捨田利 外茂夫 長谷川 博俊 郭 宗宏 西堀 英樹 北島 政樹 向井 万起男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.2055-2059, 1992-07-01
被引用文献数
11

1970年1月から1991年9月までに当教室において経験した,痔瘻に随伴した肛門管癌7例について検討した.7例のうちわけは男性6例,女性1例で,年齢は43〜77歳(平均59.1歳)であった.痔瘻または膿瘍発症から癌確診までの期間は4年〜47年(平均22.9年)であった.主訴として粘液分泌,肛門部痛,腫瘤・硬結触知,出血,肛門狭窄,などが認められた.7例全例に腹会陰式直腸切断術が施行され治癒切除4例,非治癒切除3例であった.組織型は粘液癌3例,高・中分化腺癌3例,扁平上皮癌1例であった.7例中4例は,初回生検で確定診断可能であったが,残りの3例は癌確診までに頻回の診断手技を要した.長期にわたり痔瘻を有し,粘液分泌,腫瘤・硬結触知などの症状を呈する症例については癌の合併を考慮し瘻管切除を含む頻回の生検を施行して確定診断を下すべきであると考えられた.

1 0 0 0 OA 小腸腫瘍8例

著者
江里口 直文 西田 博之 久保田 治秀 原 雅雄 吉田 浩晃 星野 弘也 木通 隆行 中山 和道 大石 喜六
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.2438-2441, 1990-10-01

今回11年間(1977年〜1987年)の小腸腫瘍自験例8例について検討し,また本邦における5年間(1981年〜1985年)の剖検例の検討を行なう機会をえたので報告する.8症例のうちわけは悪性リンパ腫3例,平滑筋肉腫1例,未分化癌1例,脂肪腫2例,平滑筋腫1例であった.症例の検討では穿孔例(悪性リンパ腫3例,平滑筋肉腫1例)を除く4例の主訴は,脂肪腫の2例で腹部膨満感および下腹部痛のように比較的軽度な症状を示し,平滑筋腫では下血を,また未分化癌では悪心,嘔吐および高度の腹痛であった.いずれも経口的小腸透視で術前病巣診断が可能で,病変部はTreitz靭帯近傍および回腸末端部であった. 日本病理剖検輯報少こよると発生頻度は0.2%〜0.4%と非常に低く年次的推移に特徴的なものはなく,組織型では癌腫,悪性リンパ腫,筋原性腫瘍が多かった.