著者
水谷 郷一 幕内 博康 町村 貴郎 島田 英雄 菅野 公司 森屋 秀樹 堀江 修 宋 吉男 杉原 隆 花上 仁 佐々木 哲二 田島 知郎 三富 利夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.82-86, 1993-01-01
被引用文献数
12

われわれは4例の特発性食道破裂を経験しその臨床的検討を加えたので報告する.年齢は40〜63歳ですべて男性であり,4例ともに飲酒後の嘔吐を契機にして発症した.初診時に診断できたものは4例中1例のみであり,他の3例は正診できなかった.治療は1例が保存的に他の3例は手術を施行した.手術を施行した1例が敗血症で死亡したが他の3例は軽快退院となった.診断に際しては本疾患の認識が最も重要であり,胸部X線写真,胸部computed tomography(以下:胸部CTと略す),ガストログラフィンを用いた食道造影を早期に行うことが大切である.また治療は,1)破裂孔が比較的小さい.2)破裂が縦隔内にとどまっている.3)縦隔内の汚染が軽度である.4.胃内容が持続的に逆流しない4つを満たすものは保存的治療とし,それ以外の症例は手術により穿孔部の閉鎖,胸腔および縦隔内の洗浄,確実なドレナージを行うことが原則と考えられた.
著者
間下 直樹 横山 裕之 越川 克己 谷口 健次 末永 裕之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.194-199, 2008-02-01
被引用文献数
1

十二指腸球部原発hepatoid adenocarcinomaの1切除例を経験したので報告する.症例は76歳の男性で,健診目的の胃内視鏡検査にて十二指腸球部に2/3周性の隆起性腫瘍を指摘され当院受診となった.内視鏡検査の生検で未分化癌または低分化腺癌が疑われた.腹部造影CTでは主病変の他に明らかな転移は認められなかった.十二指腸球部原発悪性腫瘍の診断で十二指腸球部を含む幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的検査でhepatoid adenocarcinomaと診断され,免疫染色でAFPが強陽性であった.術後第17病日の血清AFP値は1,133ng/mlと異常高値を示していたがその後基準値以下であった.十二指腸原発のhepatoid adenocarcinomaを含むAFP産生腫瘍の報告例は本症例を含めて16例と極めてまれであり,局所浸潤や肝転移を高率に伴い予後不良とされている.治療法に関する一定の見解は定まっていないが,文献的考察を加えて報告する.
著者
有賀 浩子 野池 輝匡 河西 秀 小池 秀夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.382-385, 2000-03-01
被引用文献数
14

症例は76歳の女性.突然に発症した腹痛と嘔吐を主訴として来院した.腹部は膨満し圧痛のみで腹膜刺激症状は認められなかったが, 腹部CT検査で腹水および肝臓両葉に門脈ガス像と小腸の拡張, 小腸壁内のガス像, 小腸腸間膜血管内と思われる部位にガス像を認めた.門脈ガス血症をきたした腸管壊死と判断し, 開腹術を施行したところ40cmの壊死腸管を認めたため切除し端々吻合とした.病理組織結果は虚血による腸管壊死で, 術後経過は良好であった.門脈ガス血症は比較的まれな疾患であり, 虚血性腸疾患に伴うことが最も多く本症例の発生機序は腸管潰瘍部から腸内細菌が門脈内へ移行した敗血症の一徴候と考えた.本邦報告例94例を検討すると, 予後不良の疾患とされていたが近年, 救命症例数は増加しており, 早期の診断と原因疾患の検索および治療が重要と思われる.
著者
湯川 寛夫 町田 大輔 金成 正浩 永野 篤 藤澤 順 松川 博史 清水 哲 河野 尚美 利野 靖
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.476-480, 2006-04-01
被引用文献数
5

胆嚢原発腺内分泌細胞癌はまれな疾患であり予後不良といわれている.本邦では自験例を含め54例の報告をかぞえるのみである.今回,我々は原発巣に対し切除術を施行し予防的放射線化学療法を行った胆嚢腺内分泌細胞癌を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,US, CT, MRIにて胆嚢底部に腫瘤影を認め,腹腔鏡下に胆嚢摘出術を施行した.術中迅速診にて未分化癌疑いとの報告を受け,開腹に移行しD2+α郭清,肝床部切除を付加した.病理組織学所見ではHE染色で粘膜面では高分化型腺癌の像を呈するが,腫瘍の大部分ではN/C比の高い腫瘍細胞が充実性増殖し明らかな管腔形成は示さずrossetteを認めた.免疫染色ではNCAMが弱陽性を示し,腺内分泌細胞癌と診断した.術後,肺小細胞癌に準じて肝門部に放射線治療とcisplatin+etoposideの化学療法を2クール施行し,術後24か月無再発生存中である.
著者
加藤 道男 吉川 恵造 島田 悦司 斉藤 洋一
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.195-202, 1992-02-01
被引用文献数
2

ヒト胃癌組織を用いて免疫組織化学的に epidermal growth factor receptor (EGFR) と transforming growth factorα (TGF-α) を認めた腫瘍の病理組織学的特徴を検索した. EGFRは凍結切片に抗EGFRモノクローナル抗体を, TGF-α はパラフィン切片に抗 TGF-α 抗体を用いて染色し, 病理学的所見と比較した. その結果, EGFR 陽性例は69例中18例 (22.8%) で, 分化型癌には49例中17例 (43.7%) と多かった. また TGF-α 陽性例は86例中24例 (27.9%) で, 未分化型癌には38例中18例 (47.4%) と多かった. そして両者の検討が可能であった36例では EGFR 陽性で TGF-α も認めた症例は3例 (8.3%) ですべて進行癌であった. したがって, EGFR は胃癌細胞の分化度と関連し, 分化型胃癌増殖に EGF が影響を与える可能性が考えられた. また EGFR 陽性腫瘍に TGF-α 産生細胞を認めたことから, ヒト胃癌みの autocrine mechanism で増殖する腫瘍のあることが示唆された.
著者
飯田 拓 山際 健太郎 八木 眞太郎 藤井 幸治 濱田 賢司 水野 修吾 田端 正己 横井 一 伊佐地 秀司 上本 伸二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.106-111, 2003-02-01
参考文献数
19
被引用文献数
4

症例は30歳の女性.1991年頃より心窩部痛が出現,腹部超音波・CTにて肝外側区域に約3.5cm大の嚢胞性病変を指摘された.1996年には肝病変は11cm大に増大し,塩酸ミノサイクリン局注療法を施行された.1998年のCTにて再度6.5cm大に増大,嚢胞壁の肥厚および嚢胞内隔壁が出現したため,肝嚢胞腺腫または嚢胞腺癌と診断,肝外側区域切除術を施行した.摘出標本は7.5×6×4cm大の多房性病変で,組織学的には上皮細胞に悪性所見なく,嚢胞壁は紡錘状の卵巣様間質細胞で構成されており,hepatobiliary cystadenoma with mesenchymal stroma(CMS)と診断された.検索しえたCMS本邦報告例は13例で全例女性であった.自験例では卵巣様間質細胞は免疫化学染色でER・PgR陽性であった.CMSは予後良好とされるが,malignant potentialを有する前癌病変であり,癌化例も認めることから積極的な外科的切除が必要と考えられた.
著者
藤澤 秀樹 千見寺 徹 水谷 正彦 土屋 信 橘川 征夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.1928-1931, 1990-07-01
被引用文献数
6

症例は44歳.主訴は右下腹部の腫瘤と疼痛.来院時体温38.0℃,白血球15,300,CRP6(+).腫瘤は7×7cm,平滑,弾性軟で可動性はなかった.同部に圧痛とブルンベルグ徴候を認めた.虫垂炎による腫瘤形成と診断し,抗生剤の使用により症状は改善した.画像診断,内視鏡検査でも虫垂炎による腫瘤形成との考えと矛盾はなかった.虫垂切除をおこなった.虫垂は5.5cm,根部を除きほぼ全体に硬く腫大し,割面では壁の著明な肥厚を認めた.組織学的には固有筋層より漿膜下層にかけて子宮内膜腺および間質の増生と漿膜下脂肪織内に巣状の出血と強い炎症性細胞浸潤を認めた.一方粘膜面は比較的正常であった.手術後の病歴再聴取により,右下腹部痛にて発症したこと,嘔気,嘔吐がなかったこと,発症が生理時にほぼ一致していたことなど,虫垂子宮内膜症を示唆する症状を得た.子宮内膜症は増加しているといわれ,虫垂炎の診断にあたっても,常に本症も念頭におく必要があると考えられた.
著者
佐埜 勇 川岸 直樹 阿部 道夫 土屋 誉 里見 孝弘 新井 元順 九里 孝雄 渡部 秀一 伊藤 順造 佐々木 幸則 児山 香
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.2530-2534, 1992-10-01
被引用文献数
1

肝細胞癌を合併した非常にまれな抗ミトコンドリア抗体陰性の早期の無症候性の原発性胆汁性肝硬変症の1例を報告する.症例は71歳の男性で,近医で肝細胞癌を指摘され当院に手術目的で紹介入院.入院時自覚症状なく黄疽,貧血を認めず.腹部所見で心窩部に手拳大の腫瘤を触知するほか異常所見なし.血清学的検査では胆道系酵素が上昇し,HBs抗原陰性,HCV抗体陽性だった.腫瘍マーカーは正常範囲内だった.免疫学的検査ではIgMのみが軽度高値を示したほか正常であった.腹部超音波検査,コンピューター断層撮影,血管造影にて肝左葉外側区域の直径7.0cmの肝細胞癌と診断し,肝左葉外側区域切除術施行.病理学的検査では,腫瘍部は高分化型のEdmondson II型の肝細胞癌で非腫瘍部には細胆管の増殖と中等大以下の小葉間胆管に炎症像のみらねるstage 2の早期の原発性胆汁性肝硬変症と診断.経過順調で現在外来通院中である.
著者
神田 裕 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 磯谷 正敏 石橋 宏之 加藤 純爾 松下 昌裕 小田 高司 原川 伊寿
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.2121-2124, 1986-10-01
被引用文献数
13

1970年から1984年までに経験した大腸癌834例のうち手術直接死亡率に差がみられた75歳以上の高齢者大腸癌144例(17.3%)の臨床的特徴,手術に対するrisk factorを検討した.高齢者群は対照群に較べて全身性疾患やイレウス,穿孔などの腫瘍による合併症を有するものや緊急手術例が多いために切除率は低く,遠隔成績も不良であった.イレウス,穿孔などの腫瘍による合併症を伴ったものの手術死亡率は19.3%(11/57)と高率でもっとも大きなrisk factorと考えられた.しかし,手術侵襲の大きさと手術死亡に相関がなく,イレウス,穿孔例の二期切除例に手術死亡がないことを考慮すると高齢者といえども全身状態を把握して積極的に手術すべきと思われた.
著者
生田 真一 初瀬 一夫 川原林 伸昭 相原 司 望月 英隆
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1554-1558, 2000-08-01
被引用文献数
1

症例は透析歴10年の48歳の男性.近医で直腸癌を疑われ当科紹介入院となった.術前検査中に黄疸が出現, 精査で肝門部胆管・直腸同時性重複癌と診断された.1998年8月6日, 拡大肝右葉・尾状葉切除, 胆管切除, 左肝管空腸Roux-en-Y吻合術を施行した.術前3日間は連日透析を施行し, 輸血により貧血を補正した.術中出血量は2,950ml, 尿量は0ml, 術中輸液は1号液と5%ブドウ糖液で維持し, 濃厚赤血球6単位, 新鮮凍結血漿(FFP)18単位を輸血した.術後輪液は50%ブドウ糖液とFFPを中心にGI療法を併用して1日1,500ml前後としたが, 心不全, 肝不全徴候は認めず血清K値は正常範囲で経過した.術後透析は48時間後から抗凝固剤にフサン^〓を用いて再開したが出血傾向は認めなかった.術後17週目に直腸癖に対しHartmann手術を施行した.慢性血液透析患者においても周術期管理に留意すれば, 広範囲肝切除などの高度侵襲の手術も重大な合併症なく施行しうると思われた.
著者
松本 由朗
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.614-623, 1986-03-01
被引用文献数
2

過去15年間に経験した胆道疾患約1,500例について,胆道の画像診断,胆道シンチグラフィおよび臨床所見の総合的解析から,胆道および肝臓,膵臓疾患のなかには,その成因として胆道の形成異常が大きく関与していることを実証した.胆道形成異常は先天性総胆管拡張症と膵管胆道合流異常であり,これらの形態上の新しい定義を提唱し,機能面からも胆管拡張症は胆管内胆汁うっ滞を,合流異常は十二指腸乳頭部における胆汁の通過障害を来すことを明らかにした.その結果胆道の形成異常の存在のみでは機能障害は存在しても臨床症状の発現に至らないことが証明され,加齢,炎症などの後天的要因の関与によって初めて臨床症状が発現することを明らかにした.そして胆道形成異常は胆管結石症,肝内結石症,急性肝炎および肝内胆汁うっ滞型肝障害発生のhigh risk stateであることを提唱した.
著者
松森 正之 大久保 琢郎 向井 友一郎 築部 卓郎 渡部 宜久 大森 敏弘 家永 徹也 佐藤 洋 笹田 明徳 中村 和夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.1994-1998, 1992-07-01
被引用文献数
2

食道平滑筋肉腫はまれな疾患で文献的にはこれまで95例が報告されているにすぎない.最近,われわれは2例の巨大な食道平滑筋肉腫の手術切除例を経験したので報告する.症例1は39歳の男性,多発性の肝転移をともなった巨大な腫瘍であったが,手術を2期に分けて切除しえた.まず1回目の手術で右開胸により腫瘍が浸潤した右肺下葉を切除し体位を変え左開胸開腹連続切開により1,500gの腫瘍を切除した.食道再建は胃管により胸骨後経路で行った.2回目の手術は40日後に非定型的肝右葉拡大切除術を施行し肝の内側区,前下および後下区域の肝転移巣を切除しえた.術後経過は良好で20日後に退院したが,第1回目手術から1年2か月後に多発性縦隔および肝転移で死亡した.症例2は46歳男性,左開胸開腹連続切開により腫瘍が浸潤した左肺下葉と下部食道を切除した.腫瘍の重量は800gであった.再建は空腸を間置し術後経過良好であり,現在術後3か月目になるが外来で経過観察中である.
著者
別府 真琴 土居 貞幸 呉 教東 藤本 憲一 谷口 積三
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.2127-2132, 1988-08-01

肝門部胆管癌手術症例11例につき検討を行った.11例のうち5例は姑息的内瘻術に終ったが,予後は平均12.8カ月(最長26カ月)で治癒切除可能症例が含まれていたことが示唆された.また切除例は6例で,乳頭浸潤型1例を除き,5例が結節浸潤型ですべてV因子陽性でStage IIIまたはIVであった.V因子陽性5症例中,4例は左または右の片側浸潤で,3例に血管浸潤側肝葉切除を施行し,そのうち左尾状葉合併切除を伴う左葉切除術(治癒切除)を施行した症例は6年8カ月後再発なく健在である.残り1例はV_3(Arh)で肝門部切除術,右肝動脈切断を行ったが,肝不全で失った.そして結節浸潤型5例全例が,ly_<1〜3>,pn_<2〜3>で,n(+)は1例であった.
著者
三谷 眞己 片岡 誠 桑原 義之 呉山 泰進 岩田 宏 正岡 昭
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.907-911, 1994-04-01
被引用文献数
18

症例は59歳の男性,十二指腸乳頭部癌にて膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的診断は内分泌細胞癌と管状腺癌の複合癌であった.両癌部位を,グリメリウス染色,フォンタナマッソン染色,免疫組織化学的染色にて検索したところ,内分泌細胞癌部において,グリメリウス染色,Leu7が極散在性に,腺癌部においてグリメリウス染色,クロモグラニン,neuron specific enolase(NSE), Leu7, carcinoembryonic antigen(CEA)が陽性を呈した.これは両者の起源が共通であることを示唆しているとともに,通常,神経内分泌機能を有することが多いとされる内分泌細胞癌部より,腺癌部にかえって神経内分泌機能がみられた.