著者
古野 真菜実 今泉 修 日比野 治雄 小山 慎一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

蓮の花托などの集合体に対する嫌悪はトライポフォビアと呼ばれる。トライポフォビアを誘発する視覚刺激の物理的要因については詳細な検討が行われているものの(Le et al., 2015),認知的要因については検討されていない。本研究では認知的要因について探索的に検討した。トライポフォビア喚起刺激(Le et al., 2015)に対する不快感評定実験の結果,集合体を有する物体が自然物か人工物か(e.g., 蓮かスポンジ)によって不快感が異なることが示唆された。さらに詳細に検討するため自然物・人工物の集合体画像からなる新規刺激を用いて不快感評定実験を行ったところ,自然物は人工物よりも不快感が強かった。以上の結果から,集合体を有する物体における自然物・人工物の違いがトライポフォビアに影響する可能性が示唆された。身体損壊や有害生物の連想からトライポフォビアが生じるとするならば(Cole & Wilkins, 2013),集合体を有する自然物はそのような連想を起こしやすい可能性がある。
著者
山田 恭子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

本研究では,教員志望学生が産出する説明文の構造の特徴を明らかにした。そのために実際に説明文を産出させた直後,その後「表記・表現の容易性(例:文章が固くなりすぎないようにした)」「流れやまとまりに対する配慮(例:順序立てて書いた)」「読み手への興味・関心への配慮(例:読み手にとって身近な事柄を中心に書いた)」「具体性(例:見た目の特徴を書いた)」「説明すべきものの先行呈示(例:説明するものが何なのかを最初に明らかにした」の5つのメタ認知的説明文産出方略の使用の有無を自己評定させた。同時に児童と接した経験の有無の影響も調べた。その結果,学生は他の産出方略と比較して「具体性」を重視しないことがわかった。この傾向は児童と接したことがない学生においてより顕著であった。また,児童と接したことがある学生は,「表記・表現の容易性」「具体性」をより重視するようになる可能性が示唆された。
著者
井関 龍太 川崎 惠里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.105, 2009

過去の出来事を思い出すときには,自分自身がその場にいて実際に周囲の状況を見ているかのように思い出す場合と(一人称の視点),第三者の立場に立って外部から自分を見つめているかのように思い出す場合(三人称の視点)がある。このような想起の視点は,現在の自己との整合性が低い記憶を想起する場合には三人称になりやすいことが報告されている。このことから考えると,現在からより離れた時点の記憶を想起するときほど,三人称の視点で想起されやすいと思われる。そこで,本研究では,手がかり語のイメージ性を操作して自伝的記憶の想起を求めた。一般に,イメージ性の高い語は,より過去の出来事を想起させることが知られている。実験の結果,高イメージ語は,低イメージ語よりも,より過去の出来事を想起させた。しかし,想起の視点は,手がかり語の違いによって有意には異ならなかった。想起の鮮明性は,高イメージ語の場合に高い傾向が見られた。
著者
久保田 貴之 中島 早紀 漁田 俊子 漁田 武雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

中島・漁田・漁田(2015)は,再認弁別におけるビデオ文脈依存効果が手がかり負荷の増大にともなって消失することを示し,手がかり負荷の増大にともなう手がかり強度の低下をアウトシャイン原理の影響と推測した。本研究は,この推測の妥当性を検証することを目的とし,同じ手がかり負荷のもとでも,項目手がかり強度を下げることでビデオ文脈依存効果が生じるかを調べた。実験は,中島ら(2015)の手がかり負荷18条件の材料および手続きを踏襲したが,項目の提示時間のみ,中島ら(2015)の4秒/項目から1.3秒/項目に変更した。実験の結果,手がかり負荷が同じであっても,項目の提示時間が短い場合には再認弁別においてビデオ文脈依存効果が生じた。この結果は,中島ら(2015)の推測の妥当性を高めるとともに,ビデオ文脈依存再認がアウトシャイニングを支持することを意味している。
著者
田中 観自 渡邊 克巳
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

ギャンブル依存症は今や大きな社会問題となっているが,健常者がギャンブル依存に陥る過程は未だに不明な点が多い.本研究では,感情抑制が後のギャンブル課題時のリスク選択に及ぼす影響を検討した.実験では,お笑い動画を実験刺激として呈示し,健常な実験参加者を自由に視聴させる統制群と笑うことを我慢させる実験群に分類した.動画視聴後,参加者は複数のリスクを考慮しながらサイコロの出目を選択できるギャンブル課題を行った.各リスクの選択回数に対して,実験条件と複数の性格特性を含めたモデリングを行ったところ,自己抑制ができると自己評価している参加者は,実験条件に関わらず低リスクの選択をする傾向にある一方で,統制群は実験群に比べて,全体的に低リスクの選択をしていることが明らかとなった.つまり,健常者は感情抑制を受けることで,性格特性とは半ば独立した形で,ギャンブル課題時に低リスクを選択しなくなることが示唆された.
著者
川﨑 采香 佐久間 尚子 大神 優子 鈴木 宏幸 藤原 佳典
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>日常記憶の加齢変化を調べるため、ボランティア研究に参加した高齢者を対象に日本版リバーミード行動記憶検査(RBMT)の「物語」再生による10年間の縦断的変化を検討した。初回(BL)の年齢分布に基づき、3群(age1:55名(56〜64歳)、age2:56名(65〜69歳)、age3:46名(70〜81歳))に分けた。BLと10年目(F10)の再生内容を25項目別に1点(正再生)・0.5点(類似再生)・0点(誤再生/言及なし)に採点し、3群別の25項目別正答率を求めた。この正答率を従属変数とする3群×2検査回の反復分散分析の結果、群の主効果(p&lt;.01)、群×検査回の交互作用(p&lt;.001)が有意であり、F10でage3の正答率が減少した。また、25項目別の正答率を10%ランク別に区切り、BLとF10のランク変化を見たところ、age1では上昇9項目/下降2項目に対し、age3では上昇2項目/下降6項目であったが、age3の下降は正答率80%以上で2項目、50%未満で3項目だった。以上より、日常記憶の加齢変化は緩やかに生じ、記憶容量が減少することが示唆された。</p>
著者
中村 航洋 浅野 正彦 渡邊 克巳 尾野 嘉邦
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.23, 2021

<p>政治的意思決定や選挙行動は,政治家の掲げる公約や政策の内容だけでなく,有権者の偏見や政治家の容姿といった,政治とは直接的関連の薄い要因にも左右される。しかしながら,人々がどのような容姿を政治家としてふさわしいと感じ,なぜそれが政治的意思決定に影響を及ぼすのかは明らかにされていない。本研究では,逆相関法を用いた顔画像分類から,日本人が心のなかで想像する政治家の顔ステレオタイプを可視化し,政治家らしいと判断される顔の特性について明らかにすることを目的とした。実験では,2016年の参議院議員選挙候補者の平均顔にランダムノイズを付加した2枚の画像を生成し,実験参加者に「内閣総理大臣」あるいは「防衛大臣」にふさわしい顔つきの写真を繰り返し選択してもらう課題を実施した。参加者の画像分類を逆相関法により解析した結果,各大臣としてふさわしい男性顔および女性顔のステレオタイプを可視化することができた。</p><p></p>
著者
水原 啓太 柴田 春香 入戸野 宏
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.87, 2021

<p>左右対称な物体において,正面から見た画像よりも,斜めを向いた画像のほうが好まれる (Nonose et al., 2016)。斜め向きの画像は,物体についての多くの情報を表すため,見た目が良く感じられると考えられている。本研究は,左右対称な物体の画像において,物体の左右の向きが物体の選好に与える影響について検討することを目的とした。オンライン実験で,左右の向きのみが異なる日常物体100個の画像を対提示し,見た目が良いほうの画像を強制選択してもらった。画像は物体が正面を向いた状態から,鉛直軸に関して左右のどちらかに30°回転した画像と,それを左右反転した画像であった。その結果,左向きの物体を選好する割合は平均61.2%であり,有意に偏っていた。物体ごとに検討しても左向きよりも右向きのほうが有意に好まれた物体はなかった。この結果について,物体の操作可能性や左方光源優位性の観点から考察した。</p><p></p>
著者
Chanthavong souphatta 時津 裕子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.109, 2021

<p>見る者に不快感や不安感などネガティブな感情を抱かせる"disturbing"画像がインターネット上で人気を博している。本研究の目的は、これらの画像群を構成する意味構造について明らかにすることである。127枚のdisturbing画像における意味要素31種の存否状況を変数として数量化Ⅲ類よる分析を実施した。その結果disturbing画像群は、特定の意味要素だけで構成される画像と、複数の意味要素がまとまって構成される画像に大別されることが確認された。前者の画像群は傷や孔の集合体など生理的嫌悪につながる意味要素で構成され、比較的低次の処理過程からdisturbingnessがもたらされると推測される。一方、後者の画像群には死や儀式を連想させる要素や、文脈との不一致から生じる違和感などの要素によって構成されており、高次の思考・認知過程を経てdisturbingnessが生起すると推察される。</p><p></p>
著者
有馬 比呂志 中條 和光
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

小学校2〜6年生を対象として,相手の情報に基づいて自己の記憶方略を最適化するという相互交流記憶システム(TMS)に基づく認知的分業の発達変容について質問紙調査により検討した。本研究では,2者間で役割を分担して遂行することで高得点になる事態を設定した課題を用いた。課題では,児童がペアとなって学校内にある物を覚え,記憶成績を他のペアと競うというストーリーを用いた。参加児には,登場するペアの一方の記憶方略に関する情報を与え,もう一方の児童が取るべき記憶方略について回答を求めた。明示条件(実験1)では,ペアの相手の記憶方略を直接提示し,もう一方が選択すべき方略を質問した。また暗示条件(実験2)では,相手がどのような方略を選択するかを推論するための情報を提示し,もう一方が選択すべき方略を質問した。その結果,TMSに基づく自発的な認知的分業が可能になるのは4年生以上であることを見出した。
著者
喜入 暁 越智 啓太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

サイコパシーは,冷淡な感情や他者操作性などを主軸とする1次性サイコパシー(primary psychopathy: PP)と,衝動性や反社会性を主軸とする2次性サイコパシー(secondary psychopathy: SP)からなるパーソナリティ概念の1つである。特に,PPは反社会性パーソナリティ障害と決定的に異なる点であり,したがって,PPがサイコパシーを特徴づける側面であることが指摘されている。本研究では,サイコパシーが他者を道具的に捉え扱う傾向(PP)が,女性に対しての女性蔑視傾向として示されるかどうかを検討した。分析の結果,男性参加者において女性蔑視傾向とPPとの正の関連が示された(SPとは有意な関連は示されなかった)。一方で,女性参加者の場合にこの関連は示されなかった。まとめると,男性のサイコパシーは,女性は道具的に支配するものであるという信念を持つことが示唆された。
著者
堀内 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.25, 2011

一般的に自分自身の名前に関する反応時間は短いことが知られている。本研究では,その処理の速さが自己名前の熟知性の高さに起因しているのか否かを検討した。具体的には,名前を繰り返し提示することによりその熟知性の高さを操作した。実験1では,自己名前と3人の他者(親友,男性有名人,女性有名人)の名前が設定され,4回の反復提示が行われた。1回目の反応時間は,自己<親友<男女有名人であった。これは従来の研究知見と一致するものであり,熟知性でも解釈可能な結果である。しかしながら,4回目では他者3名間の反応時間の差は消失したにもかかわらず,自己名前は他者3名の名前よりも反応時間が短かった。さらに,実験2では自己名前と親友の名前が設定され,30回の反復提示が行われたが,それでも,自己名前は親友の名前よりも反応時間が短かった。以上の結果は,自己名前に関する処理の速さは熟知性の高さでは説明できないことを示している。
著者
原田 佑規 箱田 裕司 黒木 大一朗
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.150, 2013

強盗等の犯人が凶器を握っていた場合,犯人の顔や衣服に関する目撃者の記憶成績は低下する。この現象は凶器注目効果と呼ばれており,その生起機序については凶器に対する目撃者の(a)注視パターンや(b)有効視野の縮小が関与していると主張されてきた。本実験の目的は,凶器に対する(a)注視時間と(b)有効視野の大きさを測定し,凶器注目効果に関する実証的な根拠を提供することであった。参加者がキーを押すと,凶器刺激か統制刺激が呈示され,その消失直後に参加者の注視点の周辺に数字が呈示された。参加者の課題はこの数字を正しく検出し,同定することであった。実験の結果,参加者の注視時間は,凶器刺激と統制刺激の間で有意差がなかった。一方,数字の同定成績は,凶器刺激を目撃している時のほうが統制刺激よりも有意に低かった。これらの結果は,注視パターンでなく,有効視野の縮小が凶器注目効果の生起へ関与していることを示唆する。
著者
丸山 真名美
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.67, 2015

折図をみて折るのではなく、折りイメージの手掛かりがない状況で、完成した作品を見本通りに変形する課題を行った。これに関連する要因を検討することが目的である。空間認知能力と、イメージ能力を検討した。<br>課題に成功したものが認知能力が優れていると予想されたが、結果は、失敗したものの方がイメージ能力がたかいとことを示した。その背景として、課題が一般的なやっこさんの顔を白くするというものであり、やっこさんの構造が理解されていないなどということが考えられた。このことから、やっこさんの構造を理解したうえでの変形を検討するなどの、さらに検討すべき要因が示された。
著者
錢 昆 河邉 隆寛 山田 祐樹 三浦 佳世
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.128, 2010

チルトシフト写真の被写体がミニチュアのように見える現象は,一般にミニチュア効果と呼ばれている。チルトシフト写真を観察すると,どのような視覚的印象が生じるのか,また,どのような視覚要因が印象の喚起に関わっているかに関し,両者の関係を網羅的に検討した研究はまだない。本研究はチルトシフト写真の引き起こす視覚的印象を調べた。被験者に本城(2006)のチルトシフト写真10枚の物理的・心理的特性について5段階で評定させ,因子分析を行った結果,「ミニチュア効果」,「評価性」,「密度」,「色彩」,「ぼかし」と「撮影位置」の6つの因子を抽出した。また,ミニチュア効果の高い写真と低い写真の間に,各因子の平均評定値に差があるかを検討した所、チルトシフト写真の被写体の密度,色彩,ぼかしと撮影距離に関する視覚的印象に有意差が見られた。これらの視覚要因が写真のミニチュア効果の生起に関与することを示唆するものと言えるだろう。
著者
佐山 公一 関口 椋太
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

中学生の学習動機の高低が内申書の高低とどう関係するかを,質問紙調査を行い調べた。調査は,塾の教室で授業後の時間を使って行われた。30人の中学生が,20の質問(達成目標傾向尺度,速水・伊藤・吉崎,1989, 2007)に回答した。因子分析(反復主因子法,エカマックス回転)を行い,固有値の推移から,3因子が見いだされ,純粋に勉強ができるようになりたいと思う学習願望,勉強ができると認められたいと思う承認欲求,賞賛や優越感を他者から感じる自己優越感,と解釈した。各因子の因子得点を計算し,内申書の成績で違いがみられるかどうかを分散分析した。その結果,学習願望では,内申書の主効果が認められた。上位(A,B)は,中位(C,D,E,F),下位(G,H,I,J,K)よりも有意に学習願望が高かった。これとは対照的に,承認欲求と自己優越感では,上位,中位,下位で違いが認められなかった。
著者
田中 孝治
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

虚記憶とは,実際には起こっていない事柄を起こったこととして誤って思い出すことである。虚記憶を検討する実験手法として,DRMパラダイムと呼ばれる手法が確立されている。本研究では,DRMパラダイムで見られる虚再認が,漢字一字の刺激に対しても見られるかについて検証を加えた。ルア項目1項目とルア項目の関連項目15項目で構成されるリストを12種類作成し,DRMパラダイムに用いた。その結果,6種類のリストにおいて,関連項目が学習時に提示されると,関連項目が提示されない場合に比べて,後のテストにおいて学習時に提示されていないルア項目についても,学習時に提示されたという偽りの既知感を高めることが示された。この結果は,漢字一字の刺激に対してもDRMパラダイムによって虚再認が生成されることを示すものといえる。今後,本研究で虚再認が示されたリストが頑健なものであるかについてはさらに詳細な検証が必要である。
著者
寺田 知世 三雲 真理子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

音楽には聴取者に良いイメージを喚起させ、自信を持たせる力、自己効力感を向上させる力をもつと考えられるが、これまで調査された音楽は器楽曲が中心である。本研究では、歌詞のある音楽2曲に歌聴取条件とメロディ聴取条件を設け(計4条件)、音楽聴取後の気分および人格特性的自己効力感への影響、歌詞への共感とメロディの印象の差異を検討した。その結果、歌詞に物語性があり、メロディの変化が多い音楽からは、前向きな情動変化や高揚感が得られやすく、メロディから快活で力強い印象を感じやすいことが分かった。一方、歌詞に聴取者を安心させ、落ち着かせる言葉を多く含み、メロディの変化が少ない音楽からは、気分の鎮静化が促され、メロディから陰気で軽い印象を感じやすいことが分かった。さらに、人格特性的自己効力感の得点も高い傾向にあることが分かった。また、4条件で歌詞への共感に有意差は見られなかった。
著者
近江 政雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.91-91, 2013

漢字の記憶における有用性が明らかにされている空書行動の、画像イメージの記憶における有用性について検討した。記憶対象として画像イメージを使用し、イメージの記銘課題と想起課題における空書行動の有用性と、手指の運動そのものの有用性について検討した。その結果、画像イメージを記銘する場合において空書行動が有用であり、想起する場合には有用ではないことを明らかにした。これは、空書行動は漢字のみではなく、イメージの記憶においても有用であり、その記銘プロセスにおいて普遍的な役割を果たしていることを示唆するものである。