著者
寺本 渉 吉田 和博 日高 聡太 浅井 暢子 行場 次朗 坂本 修一 岩谷 幸雄 鈴木 陽一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.37, 2010

背景的・空間的な「場」の本物らしさに関係する臨場感はよく取り上げられるが、場面の印象にとって重要な前景的要素(対象や事象など)の本物らしさを表す感性については検討されていない。本研究では,この前景的要素の本物らしさに対応する感性を「迫真性」と定義し,臨場感との比較を通じて,その時空間特性を検討した。まず,「鹿威し」がある庭園風景を素材とし、その提示視野角と背景音の音圧レベルを操作した。その結果、臨場感は視野角も音圧も大きいほど高まるが,迫真性は視野角が中程度,背景音が実物と同じ場合に最も高くなることがわかった。次に,鹿威しの打叩映像と打叩音の時間ずれを操作した結果,臨場感は音が映像に先行しても高く維持されるのに対し,迫真性は音が映像に対して遅れても維持された。以上の結果は,臨場感と迫真性は異なる時空間情報によって創出される独立した感性であることを示唆する。
著者
井関 紗代 伊藤 紀節 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<br><br>マーケティングにおいて、顧客の忠誠心を獲得することは必要不可欠である。先行研究では、地域の店舗への忠誠心に影響を与える購買動機が検討され、その購買動機に対して性差が生じることが示されているが、購買時の文脈が想定されていない。本研究では、コンビニエンスストアにおいて、性別と購買動機が、地域の店舗への忠誠心に影響を与えるプロセスを、モデル化し検証した。その結果、女性は男性よりも、多くの品揃えの中から商品を選びたいと考え、目的なしに店内の商品を探求する傾向があることが明らかになった。品揃えを重視する人は情報獲得を重視し, ユニークな商品を探す傾向が強くなることもわかった。また、 商品探求をする傾向の強い人ほど、ユニーク探求, 社会的接触を重視し、利便性を重視しないことも示された。情報獲得、ユニーク探求、利便性、社会的接触を重視する人ほど店舗に対する忠誠心を高めやすいということも明らかになった。
著者
関口 貴裕 加藤 駿
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

スマートフォンを見ながら歩く際(歩きスマホ)に注意が前方の地面のどの範囲(奥行き距離)まで及ぶかに関する人々の認識の正確さを検討した。そのためにまず50名の参加者に,歩きスマホをしながら床面のLED光に気づくと思う最短の距離を,その場に立つことで報告させた。そして,20 mの直線歩行を歩きスマホをしながら繰り返す中で,途中7カ所設置されたLEDの1つをランダムに点灯し,それへの気づきが得られた距離を実際の空間的注意範囲を示す値として測定した。注意範囲の自己評価の広さにより参加者を狭群,中群,広群に分け,実際の注意範囲とのズレを群間で比較したところ,狭群,中群のズレがそれぞれ平均3.0 cm,5.1 cmと小さかったのに対し,広群では自己評価値の方が実際より平均61.1 cm広くなっていた。この結果は,歩きスマホ中の注意範囲を過大評価する傾向の人が3分の1程度いることを示唆している。
著者
伊藤 万利子 三嶋 博之 佐々木 正人
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.23, 2010

本研究では、けん玉の技の一つであるふりけんの事例を通して、視覚―運動スキルを必要とする動作における姿勢調整について検討した。実験では、けん玉の熟練者4名と初心者4名にふりけんを200試行行ってもらった。ふりけん動作時の実験参加者の身体運動(頭部、膝)と玉の運動は、3次元動作解析装置によって記録された。分析によると、頭部・膝の運動ともに熟練者群のほうが初心者群よりも大きかったが、熟練者の運動のほうがより玉の運動と協調していた。特に各ふりけん試行の最終時点に注目すると、熟練者群のほうが初心者群よりも頭部運動と玉の運動のカップリングは強かったが、膝の運動と玉の運動とのカップリングの強さは両群で変わらなかった。以上の結果から、熟練者群では運動する玉に対して頭部が動的に協調するように姿勢を調整していたのに対し、初心者群では玉に対して頭部を静的に安定させた姿勢でふりけんを行っていたと考えられる。
著者
茶谷 研吾
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.139, 2015

抑制や隠蔽を試みているにも関わらず表出してしまう表情を微表情(micro expression)と言う。微表情は500msしか持続せず,隠蔽時に表出するため嘘を検知する有効な手がかりになると考えられている。これまで微表情は嘘検知の観点からしか研究されておらず,微表情が表情認知に及ぼす影響は明らかにはなっていない。本研究では微表情により後続する一般表情の表出強度は高く真実味は低いと受け手に判断されるとの仮説を立てて,幸福と怒りの一般表情を対象にこれを検討する目的で実験を行った。その結果真実味に微表情の影響は見られないものの,幸福の一般表情においては微表情がAU17のみである時に,怒りの一般表情においては真顔とAU20のみである時に他の条件と比較して表出強度が高まることが明らかになった。このことから微表情は後続の表情との相違が大きいほどその表出強度の判断に影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
大島 和 南部 美砂子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.33, 2011

近年,ポジティブ・イリュージョンという概念が重要視されているが,この概念に関する研究は十分には行われていない.本研究ではポジティブ・イリュージョンに対する理解をより深めるために,リスク認知とリスクテイキング行動との関連に着目した.質問紙調査では外山(2000)の自己認知尺度および,本研究で作成したリスク認知とリスクテイキング行動の尺度を用いた.分析の結果,自己の将来に対する楽観主義において,高揚的な認知が危険行動を抑制することが明らかになった.将来に対する前向きな思考が,危険な出来事に遭わないようにするためにはどのような行動をとるべきかを適切に判断して,危険を回避していると考えられる.しかし,これはポジティブ・イリュージョンの与える影響の一つを確認したに過ぎない.今後はさらにポジティブ・イリュージョンの効果に対する理解を深めることが重要になると考察した.
著者
西崎 友規子 永井 聖剛
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

複数の課題を同時遂行するといずれかの課題成績が低下する。しかしながら日常生活では,スマートフォンに代表される機能的な機器の広がりと伴に複数課題同時遂行による問題は避けられない。認知資源の容量,さらに容量の配分スタイルの個人差は,多くのワーキングメモリ研究から明らかにされており,日常的な同時課題遂行による問題にも個人差が生じると考えられる。本研究は,個人に応じた適切な容量配分バランスとその方法を知り,安全に複数課題を同時遂行するためのインタフェース設計に生かす指標の作成を目的とした,基礎的な検討を行った。ワーキングメモリ課題で測定されるHigh span群は,聴き取り課題遂行中,低負荷の書字課題を課した際に聴き取り課題の成績が低下したのに対し,Low span群は聴き取り課題の成績は変化せず,高負荷時のみ低下した。また,これらの結果は日常的な&ldquo;ながら行動&rdquo;の程度とは関連がなかった。
著者
鹿内 菜穂 澤田 美砂子 八村 広三郎
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.93, 2011

鑑賞者は舞踊からから何を感じとるのか.舞踊のどのような身体動作からどのような印象を受けるのか.本研究では,舞踊に対する鑑賞者の感性を調べるため,運動情報のみの条件による鑑賞者の舞踊動作の読み取りについて検討することを目的とした.舞踊の熟練者(男女各3名)は,喜び,悲しみ,怒り,歩行の4種類を表現した.モーションキャプチャとデジタルビデオカメラにより収録を行い,点光源映像は3Dアニメーションソフトウェアで作成した.また,点光源映像は正立像と倒立像の2種類を用意した.鑑賞者が,1)表現者の意図する感情を識別できるか,2)運動情報のみでも印象を得ることができるか,ということを確かめるため評価実験を行った.その結果,鑑賞者は,正立像における感情表現は識別可能であること,正立像と倒立像において近似した印象を得ることがわかった.
著者
遠藤 光男
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

&nbsp;顔の順応効果は順応時の顔と順応後に評定する顔が異なっても生起するが,同一の場合の方が強いことが示されている。今回は,顔の順応効果に対する単純接触効果の影響を検討する目的で,歪曲顔への順応による正常性と魅力の知覚の変化を順応時の歪曲顔と順応後に評定する顔が同一の場合(接触条件)と異なる場合(非接触条件)で比較した。その結果,正常性に対する順応の効果は順応時間(2分,4分)にかかわらず接触条件で有意に強くなったが,魅力に対する順応の効果は4分条件でのみ接触条件で有意に強くなった。したがって,顔順応効果における単純接触効果は,魅力よりも正常性の評定の方に感受性が強いことや,魅力に対する単純接触効果には正常性(平均性)に対する単純接触効果が介在していることが示唆された。
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

超常現象や疑似科学等の実証的根拠を欠いた事物の信奉 (empirically suspect beliefs; ESB) に関する先行研究では,ESB は分析的で熟慮的な内省的思考により抑制されること,分析的認知スタイルの持ち主はESBを持ちにくいことが指摘されてきた。しかしながら,日本人参加者を用いた先行研究では,直観的認知スタイルの方が信念をより良く説明すること,さらに分析的認知スタイルは,むしろESBを高めることが示されている。本研究では,日本および西洋文化圏の参加者を対象に,論理的推論やニュメラシー等の認知能力指標,直観および分析的認知スタイル,その他の人格・思考特性がESBをどの程度予測するかを検討した。その結果,認知能力および分析的スタイルではなく,直観的スタイルが信念とより強く関連していることが示された。また,ESBに対する媒介変数の影響は文化によって異なることが示された。
著者
永井 聖剛 Patrick J. Bennett 熊田 孝恒 Melissa D. Rutherford Carl M. Gaspar Diana Carbone 奈良 雅子 石井 聖 Allison B. Sekuler
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.51, 2007

Classification image法により視覚情報処理方略を詳細に示すことが可能である.例えば,顔画像が提示され個人弁別課題が与えられたとき,「顔のどの部分にどれくらい強く処理ウェイトをおくか」をピクセル単位で明らかにすることができる(e.g., Sekuler et al., 2004).ただし,この方法は相当数の試行数を必要とし,障害者など特殊な被験者に適用することは容易では無かった.本研究ではサブ・サンプリング刺激提示,ならびにデータ加工法の洗練により,従来より遙かに少ない試行数で,従来と同等に高い精度で顔情報処理の特徴を明らかにすることに成功し,自閉症者の顔情報処理を詳細に調べた.実験の結果,自閉症者においても健常者と同じく目・眉の領域に処理のウェイトをおくが,自閉症者ではそのウェイトが弱く,額にも処理ウェイトをおくなど健常者にはみられない処理方略を示した.
著者
大庭 真人 岡本 雅史 飯田 仁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.74-74, 2009

会話において,話し手の発話の分節に合わせ聞き手が動作を行う結果として話し手と聞き手との動作の間に同調が観られる事例が報告されている(Kendon, 1990).本研究では,コンテンツユーザとしての観客が漫才においてどのように笑いを享受するのかを分析するため,漫才師による公演を漫才師・観客ともに撮影収録した.漫才師2組に2本ずつの漫才を行ってもらい,230秒と298秒,357秒と262秒の映像音声データを収録した.このデータから,観客の同調現象に着目し,分析した.観客の漫才師に対する反応は「笑う」「拍手」をするといった非常に制限されたチャネルを通じて行われているようだが,実際には笑うという観客が同時に起こす反応に加え,漫才師が笑わせる合間の姿勢を変える動作においても,複数の観客間に同調現象が観察された.これは会場の離れた位置の観客間でも観察されており,漫才師に起因して生じることが分かった.
著者
斎川 加奈恵 仁平 義明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.108, 2015

&nbsp; 本研究では,顔と よくある名前の対連合学習成績に,「似顔絵を描く」,「顔の特徴を言葉で表現する」などの,顔を記憶するための方法がどう影響するか検討した.実験では,「顔」写真とその下部に書かれた&ldquo;よくある名前&rdquo;を連合させて記憶する,3つの条件群が比較された。結果では,まず,似顔絵を描くと「氏&名」の正確な記憶をしないことが明らかになった。多重比較では,「似顔絵を描く」条件は「じーっとよく観察して記憶する」条件に比べて有意に記憶成績が低かった.似顔絵を描くことは,名前情報処理のための資源配分を減少させることになり,記憶成績を低下させると考えられた.さらに,似顔絵を描くことが氏名の記憶を阻害することを別な面から確認するために,似顔絵の上手さと氏名の記憶成績の関係が分析された.その結果,最後まで正しい氏名を想起できなかった刺激数(「無答数」)と上手さには,中程度の負の相関が見られた.
著者
向居 暁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.136-136, 2011

本研究は、符号化時と検索時における自然音の差異がカテゴリーリストの再認、および、虚再認にどのような影響を及ぼすかを検討した。全ての被験者(73名)は音声呈示されたカテゴリーリスト(5リスト、15項目)を雨の音を聞きながら聴取した。直後再認課題(冊子にて視覚呈示)においては、ある被験者群(37名)は符号化時と同じ雨の音を聞きながら行った(雨音群)のに対し、別の被験者群(36名)は全く別の風の音を聞きながら課題を行った(風音群)。その結果、風音群は、雨音群より正再認率が有意に高くなった。さらに、風音群の方が、ルアー項目の虚再認率、および、remember判断率において有意に高くなった。再認時に呈示された雨の音が、単語を「再認する」という行為を全体的に抑制する可能性が示唆された。
著者
宮代 こずゑ
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.20, 2011

本研究は、単語の意味の印象と文字表記形態(タイポロジー)の印象一致度を操作し、潜在記憶に与える影響を調査することを目的としたものである。予備調査では、ひらがな及び漢字表記された154語と、行書体・ポップ体・古印体との印象一致度を調査した。その結果から、本実験にて使用する単語60語を選出した。次に行われた本実験_I_においては、単語の意味-文字表記形態の印象一致度が潜在記憶に与える影響を調査するため、単語完成課題が実施された。実験計画は項目(印象一致/印象不一致/新; 被験者内要因)×文字形態(ひらがな/漢字; 被験者間要因)の3×2要因であった。本実験_I_は学習課題、妨害課題、テスト課題の3段階から成っていた。結果、単語の意味-文字表記形態の印象一致度が潜在記憶に与える影響は見出すことが出来なかった。その次に実施された本実験_II_においては、顕在記憶に与える影響を調査するために再認課題が行われた。結果、本実験_II_においても単語の意味-文字表記形態の印象一致度が持つ明らかな影響は認めることが出来なかった。
著者
柴田 寛 行場 次朗
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.39-39, 2007

本研究では二者間で行われる協同動作の適切さを評定しているときの事象関連電位を調べた。二枚一組の写真が刺激として使用され、一枚目の写真では一方の人間が物体を手渡し、二枚目の写真ではもう一方がその物体を受け取った。実験参加者は、写真の組み合わせが適切か不適切かの判断を受け取り動作に対して行った。二つの時間枠において不適切な動作の観察が適切な動作の観察よりも大きな陰性電位を生じさせた。第一の陰性電位(300-500 ms)は頭頂付近で最大であったが、第二の陰性電位(700-900 ms)は前頭付近で最大であった。N400は意味的プライミング、N700は心的イメージを反映して引き起こされる傾向が知られている。そのため、第一の陰性電位は手渡し動作の観察が適切な受け取り動作をプライミングさせた処理を反映したのかもしれない。第二の陰性電位は不適切な受け取り動作を心的に修正させた処理を反映したのかもしれない。
著者
久保田 貴之 平野 由紀子 漁田 俊子 漁田 武雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

本研究は,対連合学習における項目対とビデオ文脈の意味的関連性が記憶成績に与える影響の方向性を調べた。先行研究では,項目対とビデオ文脈の関連性が記憶成績に与える影響の方向性が明らかにされていなかった。そこで,本研究は,項目対とビデオの関連がある条件(関連あり条件),項目対とビデオの関連がない条件(関連なし条件)に,グレー背景を用いる統制条件(グレー文脈条件)を加えた。実験の結果,関連あり条件およびグレー文脈条件の平均再生率が,関連なし条件に比べて有意に高かった。また,関連あり条件とグレー条件の平均再生率に有意な差は見られなかった。これらの結果は,(a)項目対とビデオ文脈間の関連性によって記憶成績が引き上げられること,(b)1回提示では,引き上げられた成績が,統制条件を上回らないことを示唆している。
著者
安藤 花恵 三浦 佳世
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.130, 2007

本研究では、質問紙調査により、演劇経験1年目、2年目、3・4年目、5年以上の俳優がどのような態度で演劇に取り組んでいるのかを検討した。目指す俳優像、脚本を読む際の態度、演技プランを立てる際の態度、演技中の態度について、それぞれ16~18の項目の評定をおこなった。その結果、経験1年目、2年目の俳優は、演技中になりきろうとしたり、役になりきることができる俳優を目指すなど、「なりきる」ということへの志向が強いことが明らかになった。経験2~4年目の俳優には、自分のセリフに線を引いたり、脚本を読む際にまず自分のセリフを探したり、自分の出るシーンを重点的に読むなど、自己中心的な傾向が見られた。経験が5年以上になると、そのようななりきることへの志向や自己中心的な傾向は消え、存在感のある俳優や華のある俳優を目指すなど、感性的に優れた俳優を目指すようになることが示された。
著者
布井 雅人 吉川 左紀子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.30, 2013

我々の選好判断は,対象と共に呈示される他者の影響を受けている。中でも,他者の視線方向や表情は,視線が向けられた対象の評価を表すシグナルとして,観察者自身の選好判断に用いられている (Bayliss et al., 2007)。このような他者の影響は,複数の研究で検討されているが,それらでは,1人の他者からの影響のみに焦点が当てられてきた。そこで本研究では,他者が複数存在する場面において,その人数が選好判断に及ぼす影響について検討した。実験では,画面上に4人の顔写真を呈示し,その中でターゲットに視線を向ける人数 (0, 1, 2, 4人) とその表情 (喜び・嫌悪)を操作した。その結果,4人全員または1人が喜び表情で視線を向けたターゲットの好意度が上昇し,4人全員また1人が嫌悪表情で視線を向けたターゲットの好意度が低下した。これらの結果は,複数の他者が存在する場面においては,視線・表情に加え,他者の人数が選好判断に影響することを示すものである。
著者
森田 尚人 福田 由紀
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.149, 2009

鉄道利用環境の迷惑行為の低減に向けて、事業者は様々な対策を実施している。しかし、その対策は迷惑行為と遭遇しない場合でも実施されており、この影響について検討する研究は少ない。そこで本研究では、まず予備的な検討として、各迷惑事例を詳細な特性から把握する。通学に鉄道を利用する大学生39名に対し、別の調査で収集した迷惑行為27事例について「迷惑評価」に加え、「わざとやっている(故意性)」、「我慢できる」、「利用環境が悪くなる」といった側面からクラスター分析による分類を行った。その結果、3分類の採用が妥当と考え、それぞれ、乗車時マナー違反、自己中心的マナー違反、社会規範的マナー違反と命名した。この分類について、「鉄道係員への抑止要望」の評価から1要因の分散分析により比較したところ、主効果が有意であった(F(2,76)=235.3 p<.00)。多重比較の結果、社会規範的マナー違反(M=4.31,SD=1.07)は乗車時マナー違反(M=3.06,SD=1.02)よりも有意に高く、 自己中心的マナー違反(M=5.62,SD=0.81)は他の群よりも有意に高かった。すべての群間に有意な差がみられた。本研究で示された結果をもとに、今後の鉄道利用環境における具体的なマナー向上対策について検討していきたい。